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米国は、6月前後に2000億ドル25%関税を実施する。これによる輸入物価上昇が懸念されてきた。米国も関税合戦の飛び火を浴びるという予測だ。これを占うものとして、4月の輸入物価の上昇率が注目されていた。

 

蓋を開けて見たら、事前予想の0.7%上昇が0.2%上昇に収まった。輸入先の分散、つまり中国一極のサプライチェーンが、多極化していることを窺わせている。こうなると、中国は一層、トランプ大統領に追い込まれる形になる。

 

当のトランプ氏は、意気軒昂である。米中は「ささいな口げんか」と言っている。 

 

「トランプ米大統領は14日、米中貿易摩擦は『ささいな口げんか』で、中国との通商協議は決裂していないと述べた。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、両国の交渉団は協議を継続しており、話し合いは良好との見解を示した。中国の外務省報道官はこの日、双方が協議継続で合意したと述べた」(『ロイター』5月14日付け)。

 

トランプ氏が、「口げんか」と言い放った裏には、米国の実損(輸入物価上昇)がないことを指しているのであろう。その実態を見ておきたい。

 

『ロイター』(5月14日付け)は、「4月輸入物価は0.2%上昇、当面緩やか、関税合戦響けば利下げも」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米労働省が14日発表した4月の米輸入物価は前月比0.2%上昇(前年同月比で0.2%下落)し、市場予想の0.7%上昇を下回った。石油・石油製品や食品が値上がりする一方で、資本財が10年ぶりの大幅な落ち込みとなり、上昇幅を抑制した。物価圧力は当面落ち着いた状況が続く見込みだ。足元のインフレは、利下げが必要なほど低くはないものの、ここにきて再燃している米中の関税合戦が実体経済に悪影響を及ぼした場合、利下げもあり得るという」

 

4月の輸入物価は、前月比0.2%上昇、前年同月比0.2%下落である。完全に落ち着いた動きである。市場予想の前月比0.7%上昇を大幅に下回った。注目の中国からの輸入物価は、後のパラグラフに示したが、前月比0.2%の下落である。この要因説明は後で行なう。

 

(2)「トランプ大統領が前週、2000億ドル規模の中国製品の輸入関税を10%から25%へ引き上げたことで物価圧力が今後高まる可能性がある。エコノミストらはトランプ氏の動きで、物価が最大0.2%ポイント押し上がると試算する。ムーディーズ・アナリティクス(ペンシルベニア州)のシニアエコノミスト、ライアン・スイート氏は『関税がすべて消費者に転嫁されればコア消費者物価指数(CPI)の伸びは前年比で0.4%ポイント押し上げられる見込みだが、一部企業が売り上げ減少を恐れて、コストを負担するとみられることから、消費者への実際の影響は小幅になるだろう』と指摘した」

 

中国製品の2000億ドル25%関税による影響は、輸入物価を最大0.2%ポイント押上げると試算されている。これまで、断片的な報道では、輸入業者がかなりバイアスをかけた話をしており、米国消費者にしわ寄せが行くと見込まれてきた。また、関税がすべて消費者に転嫁されれば、コア消費者物価指数(CPI)の伸びは、前年比で0.4%ポインと上昇になるという。

 

これも、実際にそうなるか不明である。輸入先の分散や、中国企業の負担増があるからだ。詳細は、次のパラグラフで説明したい。

 

(3)「中国からの4月の輸入物価は前月比0.2%下落した。3月は横ばいだった。4月の前年同月比は1.1%下落と、17年5月以来の大幅なマイナスだった」

 

4月の中国からの輸入物価は、前月比0.2%下落。前年同月比では1.1%下落だ。米国が関税を引き上げていながら、輸入物価は下落している。これは、中国企業が関税引上分を負担しているからだ。統計では、7割を負担していると言うが、丸々負担しているのが実相であろう。中国の生産者物価が、急速に伸び率を鈍化させている理由はこれだ。

 

米国の関税引上が、中国企業の経営を蝕んでいるのだ。習近平氏は、粋がって「米国と戦う」と言っているが、その裏で犠牲になっているのは、哀れにも中国企業である。米国は、世界最大の市場という魅力によって、輸入先企業へ圧力をかける実態が、輸入物価の下落に現れているのだろう。