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15日のブログで、「中国、『的外れ』米へ報復策、米国債売却よりも資金流『懸念が大』」と取り上げた。中国が米国債を売却しても報復にならず「意味なし」という結論であった。

 

ところが16日、中国は3月に米国債を204億ドル売却したというニュースが報じられた。中国は、「鬼の首」でも取ったような感じだが、ますます「田舎侍」という印象を強めるだけだろう。

 

『日本経済新聞』(5月16日付け)は、「中国が米国債を売却、32年ぶり少なさに」と題する記事を掲載した。

 

この記事と同時に、私が15日に書いた記事、「中国、『的外れ』米へ報復策、米国債売却よりも資金流『懸念が大』」をぜひ、読んでいただきたい。私の記事の情報源は、米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』である。米国を代表する経済紙と日本を代表する経済紙では、これだけ見方が異なるという点でも興味深い。

 

(1)「米財務省によると、中国の3月の米国債保有額は11205億ドル(約120兆円)と20173月以来、2年ぶりの少なさになった。市場では、米国の関税引き上げの報復で、中国が今後米国債の売却を増やすのではないかとの思惑がある。中国は米国債の最大の保有者であり、仮に売りを強めれば、米金利が上昇し、景気に強い逆風となる。財務省が15日公表した米国債の保有状況で明らかになった。中国は3月に米国債を204億ドル売り越しており、この額も1610月以来、約2年半ぶりの大きさだ5月の米中貿易摩擦の激化は反映されていないものの、すでに米国債の保有を減らす傾向が強まっている」

 

先ず、米国の国債出来高が1日当たりどの程度かを明確にしたい。最大限で6000億ドル。月間では20兆ドルに達している。15日の私の記事では「1日当たり20兆ドル」としたが、「1ヶ月」に訂正したい。中国は、3月1ヶ月で204億ドルの売却である。何回かに分けて売却したはずだから、国債市場では、「さざ波」も立っていないはず。これでは、報復にはならないのだ。

 


(2)「中国共産党系メディアの環球時報の幹部は13日、『多くの中国の学者が米国債を圧縮する可能性を議論している』とツイッターで投稿した。中国が米国に対し、報復関税を課した日の投稿で、市場では中国政府の意向と読む向きもあった。5月に入り、中国政府高官は米国債の保有について具体的には言及していない。ただ、報復の意図がなくとも、関税引き上げで中国の輸出が鈍れば外貨を稼ぐ力が落ち、回り回って米国債に投資する原資が細る。ここ数年は日本国債への投資や、途上国の開発支援など対外資産の運用を多様化している面もある。ただ、中国が実際に米国債の圧縮を強めれば米中関係は泥沼化する。米中双方の景気に打撃となる。市場では非常にリスクの高い交渉カードとして、「核兵器」にたとえる声もある

 

上記記事で、下線を引いた部分について、コメントを付けたい。

 

    「報復の意図がなくとも、関税引き上げで中国の輸出が鈍れば外貨を稼ぐ力が落ち、回り回って米国債に投資する原資が細る」

 

中国の生産年齢人口ピークは、2013年であった。その後は減少に向かっており、貯蓄率が低下している。これは、経常黒字の減少を意味するもので、米中貿易戦争がなくても米国債を購入する余力は減っている。この重大事実をぜひ知って欲しいのだ。中国による米国債市場への影響力は、極論すれば「自然消滅」に向かうはずだ。

 

    「中国が実際に米国債の圧縮を強めれば米中関係は泥沼化する。米中双方の景気に打撃となる。市場では非常にリスクの高い交渉カードとして、『核兵器』にたとえる声もある」

 

この指摘は、かなり現実とは異なる。中国が3月に204億ドル売却しても国債利回りには何の影響もなかった。米国債の流通利回りは、FRBの政策金利に影響されるので、中国が売却したところで、「大海の一滴」程度である。中国が、米国債保有額1兆ドルを一度に売却するという仮定は、余りにも非現実的で最大の損を被るのは中国だ。従って、少しずつ売却するのが、中国自身にとっても最大の利益確保策となる。これでは、報復にならない。一度の売却は、「自爆テロ」と同じなのだ。

 

米国債は、流動性の面でも抜群の魅力である。中国は、その米国債を売って何を買うのか。代替の有価証券は存在しない。基軸通貨国の米国債が最大の魅力を備えていることに変わりない。「核兵器」になるとは、まさに空想の世界である。