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米中貿易戦争は、第4弾に入りそうな気配を漂わせてきた。米国が、これまで対象外としていた約3000億ドル(約33兆円)分の中国製品に「第4弾」の関税をかけるというのだ。玩具やスマホなどの消費財が、全体の約4割を占め、第3弾(約24%)から割合が高まると指摘されている。

 

太平洋戦争に喩えれば、米機のB29が日本本土を爆撃するような話である。米中貿易戦争がここまで戦線拡大されずに終息するように、切に祈るほかない。米国があくまでも「初志貫徹」の姿勢を見せているのは、「我に正義あり」だからだ。WTO(世界貿易機関)の自由公正な貿易を守り、ルール違反国の中国を許さない、という原則論がある。話は逸れるが、米国が広島と長崎へ原爆2発を落とした理由は、早期の戦争終結であった。中国製品に「第4弾」の関税をかける、トランプ氏の狙いもここにある。

 

中国は、対等の原則に反するとか、話合い路線が本筋だとか「泣き言」を言っている。だが、中国も報復して、米国をギャフンとさせる必要がある。そこで出てきたのが、中国保有の米国債売却説だが、米国は一笑に付している。

 

中国が、米国債1兆ドルを一時に投げ売りすることは、「自爆テロ」と同じで、中国に大変な売却損を出すのは必定。その売却したドルを中国へ持ち帰れば、大幅な元高で中国の輸出がさらに難儀する。要するに、米国債を大量に売却することは、中国にとってリスク100%の話なのだ。「話半分」という喩えもあるが、米国債売却説は、それにも該当しないただの「与太話」である。

 


『ロイター』(5月15日付け)は、「中国、制裁合戦で守勢に立たされ手立て枯渇」と題する記事を掲載した。

 

米国と中国の通商問題を巡る「制裁合戦」は、不均衡是正を目指すトランプ米政権の攻勢を受けた中国が守勢に立たされ、自国の利益を損なわずに反撃する手立てが枯渇しつつある。

 

(1)「米国は華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)を狙い撃ちしたり、海軍艦艇に台湾海峡を通過させるなど、関税以外の面でも中国への攻撃を強めている。関係筋によると、こうした米国の圧力の高まりを背景に、中国の指導部は米国と合意にこぎ着け、経済の長期的発展を阻害しかねない貿易戦争の泥沼を回避しようとしている。しかし米国に譲歩しすぎていると受け止められ、愛国派から反発を食らう危険も十分念頭にある。米国の要求に応じて、国有企業や戦略的に重要なセクターに対する政府補助金や税制上の優遇措置を打ち切れば、国家主導の経済モデルが崩れ、共産党の経済支配が弱まる恐れがあるという」。

 

日本が終戦の決断を下したのは、2発の原爆投下である。中国は、トランプ氏から第4弾の「関税爆弾」の投下準備を見せつけられ、「終戦」を決意せざるを得ない状況に追い込まれている。習氏は、この状況をどのように捉えるかだ。「共産党支配継続」が第一であるから、これの見通しがつけば合意するのだろう。

 

(2)「中国の政策当局の内部関係者は『まだ弾は残っているが、全て撃ち尽くすことはないだろう』と述べ、あくまでも両国が受け入れ可能な合意に達することを目指す姿勢を打ち出した。中国が現在使える報復手段には必ずリスクが伴う。中国が昨年7月以降最大25%の追加関税を課した米国からの輸入品は合計で約1100億ドル相当となっている。一方、米国勢調査局のデータでは、米国がさらに中国への締め付けを厳しくした場合に中国が報復のために追加関税率を導入できる米国からの輸入品は、原油や大型航空機などおよそ100億ドル相当にすぎない。対照的に米国は中国からの輸入品3000億ドル相当について追加関税率を導入することをちらつかせている」

 

中国が、最後に撃てる弾は100億ドル程度。米国はこの30倍の3000億ドルに関税をかけられる。中国は、敗戦直前の日本と同じ状況だ。B29に竹槍で立ち向かうようなもので、消耗戦になるだけである。

 

(3)「報復手段を関税から米企業に対する非関税障壁に移せば、中国市場は不公平との受け止め方が広がって調達や投資の面で外国企業の中国離れが起きるリスクがあるという。

折悪しくトランプ氏は米企業に対して生産拠点を米国内に戻すよう呼び掛けている。ピーターソン国際経済研究所のロバート・ローレンス研究員は最近、記者団に対して『サプライチェーンに対する中長期的な影響が非常に過小評価されている。私が中国側ならばこの点を深刻に心配するだろう』と述べた

 

非関税障壁で米企業虐めをやれば、外国企業の中国離れを起こすだけである。中国から外資系企業が脱出してしまえば、中国は「もぬけの殻」同然になる。こうして中国全土にはりめぐらされたサプライチェーンは寸断される。まさに戦時中の日本が、米機から絨毯爆撃を受けたような「焼土」になりかねない。ここは、メンツとか国権とか言わないで、実利に徹して消耗を少なくすべき段階だ。習近平氏が、「名将」であるか、ただの「威張りや将軍」であるか、評価の境となろう。