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やりたい放題である文政権の財政出動に、身内のシンクタンクKDIから「ノー」というレポートが出てきた。現在の大統領府と与党は、目障りな発言には容赦ない非難を浴びせる。このパターンから言えば、無事に済むとは思えない。ひたすら「安全祈願」をするのみである。

 

文政権は、自らの失政による景気落込みを財政出動でカバーしている。こういう繰り返しは、韓国経済に大きな後遺症を残す。それは、日本経済が辿った失敗の道でもあるのだ。

 

景気悪化には、短期要因と構造要因の二つがある。短期要因は財政でカバーできるが、構造要因は制度改革の分野だ。日本では、高度成長の夢が忘れられず、構造要因の存在に気付かず、膨大な国債を発行し続けた。ご存じの国債発行残高1000兆円超は、この結果である。

 

文政権は、日本の失敗した道を強引に歩み始めている。しかも、進歩派政権の永続を願うという醜い野心満載の暴走である。今、韓国のやるべきことは、文政権を支えている労組と市民団体の暴走を食い止める構造改革である。多分、これは不可能であろう。

 

『朝鮮日報』(5月17日付け)は、「韓国の国策シンクタンク、財政出動に待った」と題する記事を掲載した。

 

韓国政府が短期的な景気浮揚のための財政出動政策を繰り返せば、国家財政に大きな負担となり、経済成長率低下という構造的問題も解決できないという国策シンクタンクの見方が示された。

 

(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は16日に開かれた「2019年国家財政戦略会議」で、『世界的な金融危機以降、韓国は国家財政を満たすことに重点を置いてきたが、現在の状況は低成長、二極化、雇用(低迷)、少子高齢化など韓国社会の構造的問題の解決が急務だ』と述べた上で、『財政の思い切った役割がいつよりもまして求められている』と強調した。ところが、国策シンクタンクの韓国開発研究院(KDI)が提示したのは、全く異なる方向の意見だった」

 

下線を引いた部分は、韓国経済の潜在成長率低下がもたらした症状である。GDP成長率が高ければ、その中で吸収できた問題が、現在は不可能になっている。そこで、政府のやるべきことは、市場活力を引き出す制度改革だ。日本でもよく使われた「制度疲労」の克服である。制度が長くなれば既得権益者が増える。それを排除するには、制度を変えること。「ガラガラ・ポン」をして振り出しに戻す。その勇気があるか。日本は足りなかった。韓国はゼロどころかマイナスである。

 

(2)「韓国開発研究院(KDIは『世界的金融危機以降の韓国経済の成長率鈍化と長期見通し』と題するリポートで、『成長鈍化に対処するための拡張的財政政策は長期的な方策にはならず、むしろ相当の副作用が発生するリスクがある』と警告した。リポートを執筆したクォン・ギュホ研究委員は、『政府が支出を増やし、需要を支えるやり方は短期的には効果があるかもしれないが、構造的な変化を引き出すことができる政策ではない』と批判した。現在の成長鈍化は構造的な要因によるものであり、短期的な処方である財政拡大では解決が難しいという趣旨だ」

 

下線を引いた部分は、構造要因=制度疲労による成長鈍化への対応策が、財政出動に依存する不適切さを指摘している。現在、中国経済の不振に対して、政府は財政出動でカバーしている。これも間違いである。共産党という統制経済の制度疲労による現象なのだ。これも改革は困難。よって中韓経済は大嵐に見舞われる。これが、私の結論である。

 

(3)「KDIは成長率を高めるための方策として、自由な経済活動を支える構造改革と技術革新を続けるべきだと提言。そうした努力によって、成長率に対する全要素生産性の寄与度を1.2ポイントまで高めなければ、2020年代に現在と同水準の2%台半ばの成長率を維持できないと予想した。全要素生産性は一国の全般的な技術、教育水準、社会制度の効率性などが生産にどれだけ寄与しているかを示す指標だ。クォン研究委員は「韓国は金融、労働、企業活動規制など制度的な側面でまだ生産性を向上できる余地がある。たゆまぬ革新と自由な経済活動に有利な制度的環境を整えるための努力を続けるべきだ」と訴えた」

 

下線を引いた部分の実例は、米国経済の躍動を見れば分る。1929年の世界恐慌、2008年のリーマンショック。二つのバブルを跳ね返した原動力は、自由な経済活動を支える構造改革と技術革新にある。だから、高い生産性を実現している。

 

この柔軟な経済構造を生むには、自由闊達な社会構造を必要とする。米国の大統領には、ついにアフリカ系米国人が登場した。型破りの現大統領にも任期と選挙というハードルがある。誰も、このルールから逃れない。ルールは平等である。米国の活力は、この一点にあると見る。