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米国は、中国との通商協議で相次いで強硬策を取っている。米企業は、ファーウェイとその関連企業68社と事実上、取引を禁じるという厳しい内容である。これに対して,米国内は与野党が一致して支持しており、米中関係は一段と厳しさを増している。

 

米中貿易協定が、妥結寸前で急旋回した原因は中国側にある。中国が、約束を破ったからだ。中国の国内事情によるもので、「反習近平派」が結束して動いたものと観察されている。国内経済の弱体化が、習氏の政治基盤を脅かしたものだ。

 

米中対立が激化すれば、中国経済はさらに疲弊化するという悪循環に陥る。そこへ、米国は一連の強硬策を取っているので、中国側はさらに政治的に困惑しているとみられる。

 

『ブルームバーグ』(5月17日付け)は、「トランプ大統領のファーウェイ排除、中国台頭阻止の非常手段か」と題する記事を掲載した。

 

ホワイトハウスは15日、中国に対する両面攻撃を仕掛けた。すなわち、米国家安全保障上の脅威と見なされる企業による米企業への製品販売を大統領令で事実上禁止するとともに、中国最大のテクノロジー企業、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)をブラックリストに載せて、同社への製品供給も事実上禁止するとした。

 

(1)「これが実行されれば、ファーウェイの経営は大きな打撃を受けるほか、クアルコムやマイクロン・テクノロジーなど米半導体メーカーの業績が圧迫され、次世代通信規格5Gネットワークの世界展開が阻害される可能性がある」

 

ファーウェイの「5G」は、米企業の強力な支援があってこそ進んできたもの。その支柱が、トランプ氏によって取り外されたに等しい。ファーウェイの「5G」事業は当然、打撃を受ける。米国は,それが目的である。

 

(2)「ユーラシア・グループのアナリスト、ポール・トリオロ、マイケル・ハーソン、ジェフリー・ライトの3氏はリポートで、『トランプ政権のこの措置は対中姿勢の著しいエスカレーションだ』と指摘。完全に実施されれば、ブラックリスト入りにより『ファーウェイだけでなく、ファーウェイの世界の顧客ネットワークを危機にさらすことになる。ファーウェイはソフトウエアの更新や通常のメンテナンス、ハードウエアの交換もできなくなるだろう』と記した」

 

ここで指摘されていることは事実だ。米企業との関係を絶たれたファーウェイは、翼をもぎ取られたに等しい。ただ、米国の覇権を狙う中国のハイテク中核企業に、米企業が利益のためとは言え「塩」を送り続けることは背信行為でもあろう。

 


(3)「中国は、トランプ大統領の真の狙いは中国封じ込めではないかとの疑念を強める可能性が高く、2大経済大国である米中の長い冷戦に突入する可能性がある。米国は、世界市場をこの数カ月にわたり混乱に陥れてきた貿易戦争に加え、今後の経済を支えることになる5Gネットワークにファーウェイ製品を採用しないよう、世界中で圧力をかけてきた」

 

米中が冷戦に入るきっかけは、中国の世界覇権宣言と急激は海洋進出にある。単なる経済分野だけで中国を観察することは危険である。氷山(経済)を見るだけでなく、海水に没している部分(軍事)も総合的に眺め、中国の意図がどこにあるか。それを推測して早めに手を打つのが安全保障政策である。

 

(4)「ファーウェイは電子メールを通じて声明を発表。米国による『この決定は誰のためにもならない』とし、『当社の取引相手の米企業は大きな経済的打撃を受け、相当数の米雇用が影響され、世界のサプライチェーンに存在する協力関係と信頼関係が損なわれるだろう』と指摘。この措置の影響を緩和する対応策を講じるとともに、解決策を模索するとした」

 

ファーウェイが、中国政府と無関係であると言えば言うほど疑惑は深まる。数々の証拠が上がっているからだ。国際情報戦の最先端を行く米国の目を欺くことはできないだろう。中国政府は、世界中にスパイ網を敷いている。しかも、学校や市民生活の中にまで手を伸している現実から判断して、米国の判断は間違っていない。