ポールオブビューティー
   


ファーウェイの任CEOが、ブルームバーグのインタビューに応じた。弱味は微塵も見せず、米国と真っ向勝負する構えだ。この強気が、ファーウェイの経営にマイナスにならないか。次々と、米欧IT企業の取引停止のニュースが入る中で、いささか常軌を逸した面も窺える。中国政府が、背後に控えていることが強気にさせていると見る。純粋な民間企業のCEOならば、ここまで強気には振る舞わないであろう。

 

『ブルームバーグ』(5月27日付け)は、「トランプ政権の脅しには屈しないーファーウェイ創業者インタビュー」と題する記事を掲載した。

 

任氏(74)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、トランプ政権による禁輸措置がライバルであるエリクソンノキアに対してここ2年ほど積み重ねてきたリードに影響を与えると認めた上で、スマートフォンと第5世代(5G)移動通信における優位を維持するために、独自の半導体供給強化策もしくは代替措置を見いだしていくと述べた。

 

(1)「ファーウェイは時間があれば自ら解決策を見いだす能力があると任氏は主張。数年にわたり半導体の設計を進め、今は自社製スマートフォンの多くでそうした半導体を使用しているほか、スマホやサーバー向けの基本ソフト(OS)の開発にも取り組む。ただ、任氏はどれくらいのスピードでこうした代替策を強化できるかとの質問に正面から答えることは避け、「われわれの修理工がどれだけ素早く飛行機を直せるか次第だ」とし、「金属もしくは布、紙とどんな材料を使っていようが、目的は飛行機を飛ばし続けることだ」と話した。社内での対策がうまくいかなければ、急成長を遂げている消費者部門が低迷し、クラウドサーバーなどの新規開拓事業が頓挫する恐れもある」

 

強気の発言の一方で、下線を付けたように弱気をみせている。「飛行機を飛ばす」とは、会社存続を意味している。ファーウェイが、厳しい局面にあることを垣間見せている。

 


(2)「米政府が対ファーウェイ禁輸措置に加え、中国の有望な人工知能(AI)企業に規制の網を広げる可能性がある中で、中国政府が米国の大企業を本土市場から締め出すとの観測も浮上。ゴールドマン・サックスのアナリストは、中国がアップル製品を禁止すれば、アップルは利益全体の3分の1近くを失い得ると試算している。任氏はそうした対アップル規制に反対すると表明。「まずそんなことは起こらないだろう。もしそんなことがあれば、私は真っ先に反対する。アップルは私の先生だ」と述べた。「生徒としてなぜ先生に反対するのか」。

 

中国政府が、「米国の大企業を本土市場から締め出すとの観測」は、これまでしばしば伝えられるが現実的でない。中国は、外国企業の進出がなければ、今後の経済発展が不可能であるからだ。長期の安定したドル資金の流入を欲しているのは中国政府である。この現実を無視できないだろう。

 

(3)「トランプ政権にとって最大の懸念は、ファーウェイがテクノロジー超大国になる中国の野望を主導しつつ、中国政府のスパイ活動を手助けすることだ。同社はかねてから、米企業から知的財産を盗んだとしてシスコシステムズやモトローラ、TモバイルUSなどから提訴されている。こうした窃取がファーウェイをテクノロジー企業として進化させることに寄与したと批判する向きもあるが、任氏はそうした主張を一蹴。「私は明日の米国製テクノロジーを盗んだのだ。米国はそうしたテクノロジーを持ってさえいない」と語った上で、「われわれはすでに米国の先を行っている。もしわれわれが後れを取っているなら、トランプ大統領が執拗(しつよう)にわれわれを攻撃する必要はないだろう」と指摘した」

 

この下線部分は、スパイ網で米国技術の種を奪えるという自信である。これは今後、ファーウェイを窮地に追い込む「問題発言」となろう。米国情報当局は、この一言に吸い寄せられたと見る。不注意な発言をしたものだ。虚勢を張って墓穴を掘った感じだ。