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韓国の左派系メディアは、日本の天皇を「日王」と呼ぶ。日本人として、この言葉に出会うと、何とも言えない違和感を覚える。日本で天皇陛下と尊称を付けているのに、「日王」とはと何ごとか。そういう反発心も起こるのは無理からぬことだ。

 

「日王」の背景は、秦の始皇帝が自らを皇帝の初めと称したことと無関係でない。朝鮮李氏は、「皇」は中国皇帝しか使ってはならないという思いがあった。これが災いし、明治維新で明治天皇が李氏へ特使を遣わし、開国挨拶状を送ったところ李氏が受取りを拒絶した。日韓は、この時からギクシャクする不幸な関係で始った。

 

朝鮮に大きな影響を与えた儒教の朱子学は、物事をまず「定義」から考えるという。李氏による「皇」の定義では、中国の皇帝だけが皇である。日本の「天皇」を受け入れられなかったのは、朱子学の「定義」に盲目的に従ったことなのだろう。

 

韓国左派系メディアが、「日王」としたり顔で呼ぶ裏にあるものは、日本が1990年代に起こした「バブル崩壊」と関わっているように思う。朝鮮李氏が、「天皇」という言葉を拒否した傲慢さと、似通った屈折した心理が働いていたのだろう。日本経済は落ちぶれた。こういう認識で、植民地時代の思いと重なる天皇を「日王」と呼んで憂さ晴らしをしたのであろう。以上は、私が考える韓国「日王論」の背景である。

 

『朝鮮日報』(6月15日付)は、「『天皇』と親日派」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の社会政策部次長、金秀恵(キム・スへ)氏である。

 

(1)「日王は最近30年間で新たに生まれた韓国語だ。北東アジア歴史財団韓日歴史問題研究所のナム・サング所長は、『世界の中でも韓国だけで使われている言葉だ』と話す。米国でも中国でも台湾でも東南アジアでも使わない。タイは自国の王には「ガサット(王)」という言葉を、日王には「ジャッグラパット(皇帝)」という言葉を使う。日本共産党は2004年まで君主制廃止を党の綱領に明記していた。今も「情勢が熟した時に国民の意に沿って存廃を解決すべき対象だ」としている。彼らも「天皇制は問題だ」とは言っているが、「日王制は問題だ」とは言っていない。漢字で表記しない限り、日本人は「日王(にちおう)」という言葉を聞き取れないし、意味も分からない」

 


日本人にとって、「天皇」という言葉には独特の響きがある。戦時中、兵士は戦場で「天皇陛下万歳」といって突撃した。その暗い哀しい思いと「天皇」は結びついている。しかし、時間が経ち、戦争を始めたのは狂信的な軍部の一部であったことが分かり、「天皇」への気持ちは揺らぎないものに変わったと思う。「天皇」は軍部に利用されたのだ、と。戦後の「象徴天皇制」は、政治との関わりを絶ち、日本国統合のシンボルとなられたのだ。

 

日本共産党は、「天皇制廃止」を叫んだことが、戦後の混乱期に政権を獲れなかった理由である。石橋湛山はこう喝破していた。日本人の心中深くに、天皇への深い敬愛の念がある。日本共産党は、そのことを見落としていたというのだ。

 

(2)「日王という言葉は1989年前後に広まり始めた。独島(日本名:竹島)問題、慰安婦問題、教科書歪曲(わいきょく)問題が相次いで浮上した時期だった。初期には天皇という言葉も使われていたが、徐々に日王の方が天皇より多くなった。ただし、よく見ると、このような変化は必ずしも普遍的ではなかった。今も韓国人の大多数は日常で日王よりも天皇という言葉の方をよく使う。左派であれ右派であれ専門家の大多数も論文を書いたり討論をしたりする時、天皇とは言うが日王とは言わない」

 

韓国マスメディアに見る独特の傲慢さが、「日王」という言葉を生んだのだろう。それが、広く使われなかったとすれば、「日王」はマスコミ業界の「隠語」にすぎない。「符丁」といってもいい。そういう公式化されていない言葉を使うのは、韓国マスコミの「反日」という独特の偏向思想の産物だ。

 

マスコミは、社会の公器である。それが、隠語・符丁の類いの「日王」を堂々と使うことは、公器の私物化である。この「公器」の基準から外れたメディアは、いずれ読者の支持を失っていく運命だ。韓国左派系メディアの発行部数が少ない理由でもあろう。

 

(3)「ソウル大学のパク・チョルヒ教授は「日王という単語は、正確に言えば『メディア用語』だ」と話す。この言葉は学者が論文を書く時に使う言葉でも、外交官が外交をする時に使う言葉でもない。韓国人が日本人と話す時に使う言葉でもなく、韓国人同士が韓国語で韓国メディアに文を書く時、「私は親日派ではない」ことを示す時の言葉だ。それでも、真摯(しんし)に考えなければならない時が来た。(韓国)大統領は日王を天皇と呼ぶのに、メディアは天皇を日王と書く。おかしいくはないだろうか

 

韓国人が韓国語で韓国メディアに文を書く時、「日王」は「親日派ではない」ことを示す合い言葉だという。ここまで、「偏向報道」していることに気付かないのだろうか。日本のメディアで、「親韓派」でないと断り書を付ける記事を見たことはない。鳩山元首相は、「反日・親韓」派である。誰も彼を批判する人はいない。そういう人も一人くらいいないと困るのだ。