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中国は、改革開放(1978年)から40年もの間、米国が無警戒であることをいいことにして、米国の機密技術をふんだんに持出してきた。この状態が今後も続くという想定で、2050年をメドに米国覇権に挑戦する計画を立てていた。米国は、とんだピエロ役であり、踏み台になっていたのだ。

 

この現実を知った米国が、猛烈な巻き返しに出ている。現在の米中貿易戦争の本質は、米国が始めた中国による「泥棒行為」の取締である。この本質を理解しないと、中国が一方的な被害者になる。本当は、米国が被害者であったのだ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月12日付)は、「シリコンバレーから消える中国マネー、蜜月から一転」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国人投資家はかつて、その財力と世界最大かつ最難関である中国市場へのアクセス提供という面からシリコンバレーで歓迎されていた。だが今、状況は一変している。米中関係の緊張激化を受け、中国系VCは昨年終盤から米国での投資を後退させている。また、規制を回避するため新たな方法で取引を交わすようになったり、米国拠点を閉鎖したりしている。一部の米投資会社は、中国との有限合資会社を解消したり、特殊な取引構造によって中国系VCの存在を分かりにくくしたりしている。また、中国系VCから巨額の投資を受けている一部の米新興企業は、そうした投資を表に出さなかったり、当局に目をつけられないよう中国人投資家を排除したりしている」

 

中国マネーの正体は、バブルマネーである。不動産バブルで儲けた資金が、ベンチャーキャピタルとして米国へ流れ込んでいた。中国が不動産バブルを止めなかった理由は、米国技術を盗み出す資金となっていたからだ。習近平氏が、不動産バブルを煽った背景に、こういう戦略が隠されていたことは疑いない。それだけに、不動産バブルの後遺症は、金融面だけに止まらず、「中国製造2025」まで及んでいたことが今、はっきりしてきた。

 


(2)「調査会社ロジウム・グループによると、米スタートアップ企業に対する中国マネーの投資は2018年初めに過去最高に達したが、同年5月から減速し始めた。中国国有企業による投資は昨年末にはほぼゼロになったという。また、米企業の買収を含む中国の対米直接投資は2016年が460億ドル(約5兆円)だったが、2018年には9割減の50億ドルにまで落ち込んだ。こうした背景には、米国の経済的・軍事的優位が脅かされるのを警戒した米政府が、人材や技術の流出阻止に乗り出したことがある。一部の中国人投資家は、米中貿易交渉が今年4月に合意に至り、投資の道が再び開かれることを期待していた。しかし、現実には追加関税の応酬と事態はエスカレートした」

 

下線を引いた部分は、余りにも楽観的過ぎる。米国は、中国を「仮想敵」に据えており、従来のようなウイン・ウイン関係には戻らない。対立の激化は必至である。

 

(3)「米通商代表部(USTR)は昨年11月の報告書で、米国の技術を盗み出す中国の取り組みについて批判。中国政府と関連のあるVCがいかにして米企業の知的財産を入手しているかを指摘した。その中で、デジタル・ホライゾンの狙いは米国の技術を中国に持ち出すことにあるとして名指しで非難した。デジタル・ホライゾンはかつて「丹華資本(ダンファ・キャピタル)」の名で知られ、中国国有企業の中関村発展集団の投資部門などから出資を受けている。シリコンバレーで最も活発な中国系VC1つであるデジタル・ホライゾンは、米大手VCと共に約5000万ドルを調達し、多くの米スタートアップ企業に投資している。調査会社ピッチブックによると、シリコンバレーがまだ中国資本を積極的に受け入れていた2015年当時、デジタル・ホライゾンはパイロットAIへの約50万ドルの出資を主導し、同社にとって最初の大口出資者となった」。

 

中国のデジタル・ホライゾンは、技術スパイの窓口になっていた疑惑が持たれている。米スタンフォード大学の物理学教授も務めていた張氏(デジタル・ホライゾン会長)は、昨年12月1日に死去した。サンフランシスコの検視当局は自殺と判断。うつについて言及した遺書らしきメモが見つかったとしている。昨年12月25日、中国人の超著名な物理学者が謎の死を遂げている。中国スパイに深く関わっていたとされる。米中対立が、意外な場所で波紋を呼んでいる。これだけ深く米国へ浸透していた証であろう。