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中国経済を支えたのは、不動産バブルと技術窃取である。この二つが、中国の存在を過大評価させた理由だ。中国を評価する場合、GDPの規模だけに目を向けて、いずれ米国を抜くと錯覚している。中国経済について心血を注いで研究をしたこともなく、他人の主張を鵜呑みにした「中国論」ほど、害毒を流すものはない。

 

中国に本当の潜在成長力があるならば、不動産バブルを意図的に長引かせ、あぶく銭を必要とする「短期戦略」をするはずがない。また、基礎技術力があれば、先進国から技術を盗み出す卑劣な行為を重ねるはずがない。経済倫理感欠如の中国ではある。だが、国家先導によって技術窃取して来た例は、人類史上初めてである。

 

こういう中国が、ついに墓穴を掘った。柄にもなく、世界覇権に挑戦すると「竹馬」に乗った結果、米国がその竹馬の足を払ったのである。その上、不動産バブルで補給線は伸びきっている。新たな物資(成長率プッシュ)を届けられない状況に追い込まれている。米国が貿易戦争を仕掛ければ、もんどり打って竹馬から落ちる局面だ。

 

中国の超高度成長を実現させた「一人っ子政策」が、人口面の潜在成長力を極限まで破壊した事実を無視している。この点については、最後に触れる。戦時中の日本が、大東亜共栄圏の夢に酔った以上の夢を持ち始めた中国だ。客観的な分析もないままに世界覇権論を口外して、米国の逆鱗に触れたのが現在の状況である。

 

『中央日報』(6月17日付)は、「米中貿易戦争で片方に寄るのは致命的敗着」と題するコラムを掲載した。筆者は、李熙玉(イ・ヒオク)/成均館大政治外交学科教授/成均中国研究所長/リセットコリア外交安保分科委員である。

 

(1)「今回の(貿易)戦争は米国が中国の浮上ペースを落として覇権を強化する時間を確保するためのものだった。中国もここで引けば「中華民族の偉大な復興」の夢が水の泡になると判断して背水の陣を敷いたのだ。 したがって米中貿易戦争は今後、通貨、エネルギーと資源、標準と規範、体制と制度などあらゆる領域に拡大する可能性が高い。特に米国は同盟国にも中国の新たな脅威に共同対処することを要求する一方、戦線から離脱すれば友邦と見なさないという脅迫もしている」。

ここでの認識は、米中が互角の勝負と見ている。現実は、互角どころか大きな格差がある。この筆者は、米国が覇権国であることを忘れた議論をしている。ここに間違いの原点がある。米国ドルは基軸通貨である。世界中で通用する通貨だ。人民元は、ローカル・カレンシーに過ぎない。世界の金融情報は、すべてワシントンに集まるシステムである。

 

米国の市場は世界一の厚みを持っている。この米国市場へアクセスできるのは、「特恵である」とトランプ氏が自慢するほど。要するに、米国市場の持つ絶対的な力が、米国経済の力をさらに大きく押上げている。米中問題を議論するならば、この程度の認識を持つべきである。米中が、互角という前提は完全な誤りである。

 

(2)「両国は相手を完全に屈服できず、相互依存が深まった状態で休戦を模索するはずだ。そのきっかけは6月末に大阪で開催されるG20(20カ国・地域)首脳会議になるかもしれず、次期米大統領選挙を控えた特定の時点になるかもしれない。このように見ると、現在の局面は休戦を控えて経済領土を拡大するための最後の戦闘と見ることもできる」

米国は、米中貿易戦争が長引けば長引くほど、サプライチェーンの再編成に乗り出す。中国にある製造機能を、外国へシフトさせることだ。産業の空洞化現象が始まる。これは、米中の相互依存が「分解」することで、「相互依存」とは逆方向である。米国政府は、中国との関係を希薄化させる方向へ進んでいる。米国が、TPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰するようなことがあれば、中国を完全に米国市場から切り離しできるのだ。この現実を知るべきである。


  
(3)「中国もこの戦争を復碁して、次のような未来戦略を準備するだろう。

    技術の自主化を高度化し、バリューチェーン体系の国内化を模索する一方、レアアース(希土類)のような供給リスク指数が高い鉱物資源の戦略的価値を再点検する。

    「供給側構造改革」を通じて製品と企業の競争力を改善し、内需中心の発展戦略を通じて経済体質を変える国家主導型の構造調整を本格化する。

    創業と教育革新を通じて科学技術人材養成に総力を挙げ、世界が中国に知識財産権の使用料を支払うようにする。

    中国系通信ネットワークに対する米国の報復措置に対して「国家技術安全保障リスト」を作成するなど正面対抗カードを準備する。

    ロシア・中央アジアに続いてアフリカ連合(AU)55カ国にもファーウェイ5G網を構築しながら戦略的友軍を確保する」

中国は、前記5項目によって米国に対抗するだろうと指摘している。この実現性はあるだろうか。

    自主技術の育成は、これまで不可能であったから技術窃取してきたもの。米国から技術制裁を受ければ、ますます困難になる。レアアースは無意味であることを、私は繰り返し指摘してきた。

    供給構造の合理化は、市場経済において初めて可能である。国有企業中心の中国経済では不可能である。

    中国は、これまでに技術窃取してきた特許料を支払うことが前提になる。

    ファーウェイの「G5」に仕掛けられている「バックドア」問題は、安全保障の基盤を破壊するだけに米中それぞれの陣営が分かれるべきである

    中国陣営は、発展途上国グループだ。米国陣営と別々になる場合、中国陣営は世界最大市場の米国市場へのアクセス権を失うことを意味する。中国が自陣営で経済支援することは不可能になる。中国自体が米国市場へのアクセス権を失った状態で、慢性的な経常赤字が不可避になるからだ。

 

ここに列記されていることは、中国側の情報であろう。総論として言えることは、実現不可能である。中国の劣勢は明白である。米中の100年覇権戦争など考えられない。中国が、それに耐えられる潜在成長力を欠くからだ。合計特殊出生率は現在、余りの悪化で公表を抑えているほど。「1」を割っていると見られる。米国の合計特殊出生率は、「1.77」(2017年)である。合計特殊出生率は、端的に潜在経済成長率を示す指標である。この米中比較だけでも、「100年覇権戦争」はあり得ないのだ。