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英国の歴史家アーノルド・トインビ-は、古い文明が新しい文明に遭遇したとき、二つのパターンの存在を指摘した。

 

新しい文明へ敢然として挑戦する「ヘロデ派」。逆に逃げ帰って、自らの伝統的文明へ閉じ籠もる「狂信派(ゼロット派)」である。中国文明は、後者の「ゼロット派」である。中国4000年の歴史は専制政治である。民主政治という新文明を、恐ろしくて採用できないという臆病文明なのだ。

 

中国が、米中貿易戦争とファーウェイという中国にとって永遠のエース企業が、米国から「核爆弾」を落とされて、大きな衝撃を受けておりパニック状態という。ここで、習氏が取った行動が興味深い。ゼロット派そのものだ。

 

ロシアのプーチン氏に6月4回も会談して相談したこと。さらに、大阪G20の直前に北朝鮮を訪問する。狙いは、米中首脳会談でトランプ氏の気を引くためだ。「北朝鮮に米国の方針をよく話してきたから」と言いつつ、トランプ氏の歓心を買う戦略と見る。中国は、米国との「冷戦」をぜひとも回避したいのが本音だ。

 

ここで、米国がサプライチェーンの再編成に手を付けられたら、中国にとっては「死の宣告」を受けたも同然なのだ。中国は、強いようで脆い。トランプ大統領のような「直撃弾」を投げ込むタイプには、対応マニュアルがないに違いない。つまり、中国の歴史上の人物にはいないキャラなのだろう。

 


『大紀元』(6月18日付)は、「
貿易摩擦にファーウェイ禁輸措置、中国当局がパニック状態」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国問題専門家は、米中貿易戦の激化と米政府の華為技術(ファーウェイ)禁輸措置によって、中国当局が混乱に陥っていると指摘した。米ITニュースサイト「ザ・ヴァージ(The Verge)」は529日、米中関係について中国問題専門家2人を取材した記事を掲載した。記事は、トランプ米政権の中国通信機器大手のファーウェイ禁輸措置は、科学技術歴史上の大事件にたとえた。米政府の制裁で、次世代通信規格(5G)通信網構築の有力なサプライヤーとされたファーウェイは現在、八方塞がりになった」

 

ファーウェイは、中国政府の懐刀の役割を担っている。技術窃取の大役もフファーウェイが果たしている。そこへ撃ち込まれた直撃弾である。中国の衝撃が大きいのは当然である。

 

(2)「欧州シンクタンク、欧州国際政治経済研究所(ECIPE)のディレクターを務めるホスク・リーマキヤマ氏は、中国当局が先に「貿易戦を仕掛けた」と指摘した。中国当局は国内企業保護のため、数年前から米製品の一部に対して関税を課し、米グーグルやフェイスブックなどのIT企業を中国市場から排除した。豪シンクタンク、ローウィー研究所のエリオット・ザーグマン氏は中国に10年間滞在したことがある。同氏は、中国経済は表面的には繁栄しているように見えるが、実際には脆弱だと強調した。「中国の経済成長は、生産活動ではなく、完全に投資に頼っている」ため、中国当局が成長率目標を達成するには、より多くの融資が必要だという。「ザ・ヴァージ」は、中国経済がネズミ講に近いと指摘した

 

中国経済がネズミ講に近いという指摘は、まさに正鵠を得たものだ。具体的には、自転車シェアリング事業を指している。大衆から15~20元の申込金を受け取り、爆発的な人気を呼んだが、その内に飽きられて破綻した事業である。不動産バブルという「投機経済」もネズミ講に近いだろう。市場経済による地味ながら堅実に積み上げてきた経済成長ではない。「一か八か」というバブルに依存した不健全経済である。この点について、私も全く同感である。この程度の経済が、世界覇権挑戦と言い出したところに不遜さを感じる。

 

(3)「リーマキヤマ氏は、米中貿易戦の激化で、米GDP成長率が3%水準から2%水準に低下し、米経済は減速すると予測されるが、その影響は限定的だとした。一方、中国GDP成長率が同じく1%下落すれば、中国経済にとっては「壊滅的な影響を受ける」とリーマキヤマ氏とザーグマン氏が口を揃えた。ザーグマン氏によれば、米中貿易摩擦などの問題で「疾風迅雷の進撃」をしてきたトランプ大統領について、中国当局は「常に不意を突かれている」「予想もつかない」ために困り果てているという。両専門家は、中国当局が完全にパニック状態に陥っていると指摘した」

 

米国経済が、3%から2%成長に低下しても問題は起こらない。中国では同じ1%ポイントの成長率低下でも大きな打撃を受ける。理由は、中国の対GDP比の債務総額が300%前後と格段に高いことだ。それだけ「固定費」の高い経済である。換言すれば、損益分岐点の高い経済体質になっている。付加価値が消えてしまうのだ。この状況は今後、永続化するはずである。中国は、金利もまともに払えなくなる経済体質に落込んでいる。不動産バブルを利用した経済成長の結末が、こういう形で襲って来たものだ。