a0960_005041_m
   

16日の香港デモは、200万人が参加したと主催者が発表した。香港市民の4分の1にも当る大規模なものだった。中国派市民まで参加したというから、いかに「逃亡犯条例」改正案への危機感と反中国感情の強いかを示した。

 

台湾は、香港からの移住者が多いことでも知られている。反中国感情の強い台湾が、香港からの移住者の受け入れ先になるのは当然であろう。台湾は、今回の香港デモへの「連帯デモ」が開催されるなど、市民の「自由を守る」意思の固さを示した。

 

『ロイター』(6月18日付)は、「台湾は反中国の『希望の光』、香港からの移住者急増」と題する記事を掲載した。

 

香港で暮らすユン・シウカンさん(67)にとって、元英領の当地から中国本土への犯罪容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案が決定打となった。ユンさんは荷物をまとめ、中国統治下にあるこの街を捨て、民主主義を誇りとする台湾で新たな生活を始めることにした。中国政府の支配が香港のあらゆる面に浸透し、市民の自由が失われつつあることに嫌気がさしたのだ。「自由と民主主義がなければ、牢獄に入れられたようなもの、強制収容所で暮らすようなものだ。自由がないなら、死んだ方がましだ」。香港で16日に起きた大規模抗議デモの参加者に台湾の旗を振りながら、彼女は言った。

 

(1)「中国が「一国二制度」を侵害しているとして、この数年で台湾に移住した数千人の香港住人の列に、ユンさんも加わることになる。中国は、いつか台湾にも同制度を導入することを目指している。中国は、自治を守る台湾を自国の一部とみなしており、支配を回復するための武力行使を排除していない。自らへの「一国二制度」適用に圧倒的な抵抗を示している台湾は、香港支持を明確にしている。中国からの圧力がエスカレートする中でも台湾は断固とした姿勢を維持しており、中国側からの「再統合」の呼びかけに強く反発する人が多い」

 

台湾は、中国人意識がなく自らを「台湾人」と言うほど。これだけ、「反中」感情が強いのは、民主主義の価値を認識しているからだ。韓国では、この点が曖昧にされている。「北朝鮮愛」が強く、台湾と異なる。

 

(2)「今回の条例改正案は、香港と中国政府の関係を複雑にしてきた一連の問題の1つだ。中国本土からの移民流入と、本土からの投資が一因となった不動産の価格高騰に、香港の人々は不満をつのらせている。民主的な改革を妨害し、選挙に介入、そして中国指導者に批判的な書物を専門に扱う香港の書店主が2015年以降で5人失踪した事件を画策するなど、中国の介入は行き過ぎだと批判する声は根強い」

 

現在の香港市民は、中国との関係が強くなった結果、マイナス点が目立ち過ぎて息苦しさを覚えている。これが、中国への不満の原点だ。その点で、台湾は中国からの影響力を排除する動きが強い。

 

(3)「公式統計によれば、台湾居住権を得た香港とマカオの住人の数は、2018年は1267人に達し、10年前から倍以上に増加した。マカオは元ポルトガル領で、現在では香港と同じように中国支配下の特別行政区だ。こうした移住は、民主主義を訴えて香港を数カ月間マヒ状態に追い込んだ2014年の「雨傘運動」後に急増し、その勢いは衰えていない。2019年14月の台湾移住者は約400人で、前年同期比で40%増加した」

 

(4)「一部の若者は、香港を脱出したいあまり、36歳以下の台湾男性に義務付けられている兵役に参加して居住権を得ようとしている。台湾の居住権を得るには、通常150万香港ドル(約2000万円)程度の費用がかかる。「香港にとって、民主主義の灯だ」。16日のデモに参加していた、香港立法会(議会)の議員事務所で働くチェン・チュンマンさん(32)は、「香港市民に、希望を与えてくれる」と台湾について話した。」

 

台湾の存在は、香港市民にとって希望を与えてくれる光である。台湾移住には、約2000万円の居住権を必要とするので、若者には不可能である。そこで、兵役に参加して居住権を得るという涙ぐましい努力がされている。苦しくても、「自由」を重視する人間の基本的な欲求に勝てないのだろう。