テイカカズラ
   

けさ発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

対米で貿易黒字の6割

経常黒字減少の不気味

少子高齢化の影響深刻

米中合意が経済再建策

 

米中首脳会談は、今週末の大阪G20サミットで開催される運びとなりました。ここで、米中通商交渉は合意がなるのか。あるいは、「休戦状態」として、さらに交渉を続けるのか、関心を集めています。米中ともに決裂は避けたいところだけに歩み寄りが期待されます。仮に決裂するような状況であれば、会談を開催しないと見られます。

 

中国共産党機関紙『人民日報』は22日の論説で、中国には貿易戦争に持ちこたえる力と忍耐があり、米政権がそれを続けようとするなら、最後まで闘う用意があると表明しました。相変わらずの戦闘モードです。これまでも強気発言を連ねていますが、「実力行使」は抑止しています。米国債の売却やレアアース(希土類)の輸出禁止措置など取り沙汰されたものの、噂の域を出ていません。

 

これは、米国に対して打撃を与えられないということと、米国のさらなる報復を招くという危機感が先立ったからです。米国は目下、第4弾の関税攻勢として3000億ドルの輸入に特別関税を掛ける準備をしています。これに対して、中国が対抗できるのは100億ドル相当とされています。これでは、勝負になりません。中国は完全に守勢に立たされたのです。

 


対米で貿易黒字の6割

中国は、貿易黒字全体の約6割が対米貿易によって生み出されています。下世話風に言えば、中国は上得意さんの米国と喧嘩を始めた訳です。米国が強気に振る舞うのは、「米国市場」の強味を十分に活用して、関税戦略を立てているからです。

 

中国の1~5月までの輸出は、前年比.4%増。輸入は3.7%減でした。輸出が意外と堅調な感じを与えますが、これには裏があります。米国が第4弾の関税引上げの準備を始めているので出荷を早めたのではないか、というものです。下半期になれば輸出減少がはっきりすると見られています。

 

こうして輸出減少基調が鮮明になれば、貿易黒字が減ることから経常収支が赤字に振れるのではないかという懸念が強まります。中国の貿易黒字はすでに年々、減少過程にあります。

 

中国の貿易黒字の推移

2014年 3830億ドル

15年 5939億ドル

  16年 5097億ドル

  17年 4195億ドル

  18年 3518億ドル

 

貿易黒字の減少は、国内の労働力・土地・資金の各コストが上がったためです。以上の3点におけるコスト上昇の背景を見ておきます。

1)労働力コスト上昇は、生産性を上回る賃金上昇によります。

2)土地コスト上昇は、不動産バブルによる地価(土地利用権)上昇によります。

3)資金コスト上昇は、不動産バブルによる信用崩壊に伴う信用リスク上昇を反映しています。

 

以上の3要因のうち、土地コスト上昇と資金コスト上昇は不動産バブルによって発生したことが分かります。GDPを押し上げる目的で、人為的に不動産バブルを利用してきた「ツケ」が、貿易黒字の減少を招いたことは確実です。

 

中央政府が、短兵急にGDPを押し上げるべく行ったインフラ投資の資金は、地方政府の負担となりました。地方政府には財源がありません。土地国有制を利用して土地利用権(地価)の価格を引き上げたのです。経済学の用語で、「供給独占」があります。土地国有制は、土地供給の独占になります。こうして地方政府は、土地価格を一方的に引き上げる形で「供給独占」を行い極大利潤を獲得しました。これが回り回って、貿易収支を減らす要因となったのです。経済は、循環するという言葉の意味がよく分かると思います。

 

経常黒字減少の不気味

貿易黒字減少は、経常黒字減少の大きな要因です。国際収支の構造を簡単に申し上げると、次のようになります。(つづく)