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世界一の大気汚染国家である中国が、7月1日から世界一厳しい自動車の排ガス規制に踏み切る。有害物質の排出量の45割削減を義務付ける厳しい内容で、深刻な大気汚染の解消を狙って予定より1年前倒しで実施するもの。中国政府は外資規制の緩和などで競争を促し、100社以上が乱立する自動車業界の健全化を目指している。技術や資金力に乏しい地場の中小メーカーの淘汰が進む可能性があるという。

 

『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「中国車メーカー淘汰の波、来月から排ガス規制強化」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国政府は欧州の基準を参考に2001年から排ガス規制を施行し、現在は5段階目となる「国5」基準を設定している。来月1日に導入する「国6」基準は窒素酸化物(NOx)などの排出量を23年までに段階的に45割削減する内容で、欧州の現行規制「ユーロ6」より厳格だ。中国メディアは「国6基準は世界で最も厳しい規制になる」と伝えている。国6基準は大気汚染が特に深刻な河北省や山西省、陝西省などのほか、上海市や四川省など15省・直轄市で先行して適用する。対象となる地域の新車販売台数は中国全体のほぼ半分を占める」

 

世界一の大気汚染になるまで環境対策を放置しておき、それも限界に達すると一挙に厳しい規制を加える。これは、中国の環境対策全般に当てはまることだ。環境対策を甘くしてきたのは、GDPを押し上げる効果を狙ったもの。こういう作為的な行政が、どれだけ資源の無駄遣いを行ったか分らない。

 


(2)「中国の新車販売台数は世界首位だが、100社以上が入り乱れ、過剰設備などが課題になっている。習指導部は「自動車大国」から世界をリードする「自動車強国」への転換を目指している。22年までに段階的に外資規制を緩和する計画で、日米欧系は中国事業の自由度が高まる見通し。その前に再編・統合を加速し、外資に対抗する中国大手を作り上げる構想だ。国6基準は技術や資金力のある大手に有利に働くのは確実だ。自動車業界担当のアナリストは「新たな環境規制の導入で開発や資金面でふるいにかけられ、中小メーカーの淘汰が加速するだろう」と予測する」

 

米国でも自動車草創期には、100社以上がひしめき合った歴史がある。しかし、世界一の自動車生産国が、なお100社以上の企業を抱えてきたのは、いかに競争条件が甘いかを象徴している。この段階まで来れば、中国の民族系自動車メーカーは、整理の段階に入ったことを示す。

 

(3)「国6基準が導入されると、メーカーの製造コストは増加する。国5基準車の生産や販売、登録は全面的に禁止されるため、エンジン設計などの技術力を高める必要がある。1台当たり1200元(約2万円)以上の製造コスト増になるとの試算がある。例えば、中国大手の吉利汽車の新車1台当たりの平均純利益(18年)は約13万円だ。地場メーカーは製造コストの増加を販売価格に転嫁せざるを得ず、安さを武器にする中小は厳しい状況に追い込まれる」

 

新しい規制基準の「国6」が導入されると、1台当たり1200元(約2万円)のコスト増加要因になる。大手の吉利汽車の新車1台当たりの平均純利益(18年)は約13万円と言うから、それだけ利益が減る計算になる。中小メーカーが経営的に立ちゆかなくなるのは必至である。