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中国は、米中貿易戦争で「最後まで戦う」などと血迷ったことを言ってきた。本心は、米国と争って米国市場から隔離されるリスクを自覚するようになったのであろう。膨大な生産能力を抱えており、これを受け入れてくれる市場は米国しかないのだ。

 

『ロイター』(7月8日付)は、「世界は中国を締め出すことはできない=副主席」と題する記事を掲載した。

 

中国の王岐山国家副主席は8日、北京の清華大学で開かれた世界平和フォーラムで「世界は中国を締め出すことはできない」と述べ、中国とその他の国々は共存する必要があると訴えた。貿易戦争の相手国である米国が念頭にあるとみられる。

 

(1)「王副主席は、「中国の発展が世界の他の地域を締め出すことはできない。世界の発展も中国を締め出すことはできない」と強調。また、米国を名指しすることはせず、「国家安全保障の名を借りた保護主義」についても警告した。その上で、主要国に世界の平和と安定にさらに貢献するよう呼びかけた。王氏が公的な場で発言するのは珍しい。同氏は習近平国家主席に非常に近い存在とされており、昨年に副主席に就任する前は習政権の腐敗撲滅運動を推進する役割を担っていた」

 

下線は、ごく常識的な内容だが、なぜこの席で語られたかに注目すべきである。米国がサプライチェーンの再編成に乗り出していることへの危機感である。現在の米中貿易戦争は、米国が中国を世界経済の輪から隔離しようとしていることを意味する。中国が余りにも身勝手なことを続ければ排除する。これが、米国の揺るぎない決意となっている。

 


(2)「王氏は中国の市場開放への決意をあらためて表明し、中国が世界を必要としているのと同じくらい世界も中国を必要としていると語った。「世界の大国は責任を果たすとともに模範を示し、世界の平和と安定にさらに貢献し、協調的発展の道を広げるべきだ」と強調。「発展が全問題を解決する鍵を握る」と述べた。フォーラムにはファンロンパイ欧州連合(EU)前大統領や北京駐在の西側諸国の外交当局者らが参加した」

 

世界も中国を必要としていると語っている。世界=米国と読み替えるべきである。米国の膨大な市場へのアクセス権は「特典」である。米国トランプ大統領は、自信をもってこう言っている。それ故、米国と取引できる条件として、中国と貿易協定を結ぶなというほど中国への警戒心を示している。このように米国から標的にされている中国が、「私を捨てないで」と米国にすがりついている感じだ。日頃の大言壮語に似つかわしくない言動である。