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けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

保守派が経済実権を握る

債務総額はGDPの3倍

社会融資総量低下の意味

債務依存型の中国起業家

 

中国経済は、債務拡大という深みに向かって進んでいます。「自殺行為」と言える現象ですが、なぜこういう危険な状態が放置されているのでしょうか。それは、米中貿易戦争で米国の要求する経済構造の改革を拒否している結果です。中国の保守派は、毛沢東思想に心酔している派閥です。市場経済システムを拒否して、国家の指導する経済システムが、最良最上なものとして崇めているだけに、米国の改革要求を受け入れるはずがありません。

 

習近平国家主席は、5月初めの米中貿易交渉が暗礁に乗り上げた後、「自力更生」という言葉を使い始めました。これは、米ソ対立でソ連技術者が一斉に本国へ引き揚げた後、毛沢東がソ連の力を借りずに核開発を継続するときに用いた言葉です。習氏は、毛沢東と同様に「自力更生」宣言しましたが、米国の力(市場)を借りずに「中国製造2025」を実現させるという宣言と理解されています。

 

保守派が経済実権を握る

この「自力更生」宣言の裏に、中国の保守派と改革派による経済路線を巡る意見対立があります。具体的には、習近平氏の子ども時代からの盟友、王岐山国家副主席が政策決定過程から外されたと観測されています。

 

『大紀元』(7月4日付)は、次のように指摘しています。

 

王滬寧・中央政治局常務委員(党内序列5位)が、実質的に米中貿易戦への対応を主管しているとしています。金融のエキスパートで米ウォール・ストリートに強いパイプを持つ王岐山氏、朱鎔基・元首相派の高官が、完全に仲間外れにされていると指摘しました。

 

この情報は、初めて外部に漏れてきたものです。王岐山氏が、党規約で定めた定年制にも関わらず国家副主席へ横滑りさせた理由は、米国との調整役期待とされていました。その「エース」が米中交渉から外されたのは、保守派と改革派が鋭い対立をしていることを窺わせています。改革派が後退する一方、王滬寧・中央政治局常務委員が浮上しています。王滬寧氏は経済の専門家ではありません。民族派=国粋派で、習近平氏に取り立てられ「側近」に収まっています。

 

王滬寧氏は米国に留学しています。だが、生粋の国粋主義者です。米国のあら探しの書籍を出している、筋金の「反米主義者」です。この王氏が、中国側の米中通商交渉キャップとなれば、妥結希望の芽が摘まれるような気分に陥るのは仕方ないでしょう。

 


習近平氏が、この強硬派を米中貿易交渉の最高指揮者に据えた理由は、何でしょうか。米国の市場改革派、ライトハイザー氏(USTR代表)に対抗させる目的でしょうが、単なる交渉テクニックの役割期待でなく、米国との長期対抗の軸に据えていることを示唆しています。この王滬寧氏起用が、中国にとって吉と出るか凶と出るか。きわめてリスキーな要因をはらんでいます。

 

王滬寧氏は、先に触れたように米国留学を経験していますが、国粋主義者ゆえ米国を軽視する根本的な欠陥を抱えています。日本の明治維新に大変興味を持ち、軍事力拡充が世界覇権への近道と信じていると指摘されています。こうなると、中国が、市場経済ルールから逸脱した行為に走る危険性が考えられます。

 

具体的には、さらに債務拡大を続けてゆく危険性です。中国経済は、すでに顕現化すべきマイナス信号を国家権力によって握り潰しています。例えば、全国の住宅価格動向も、不動産企業が値引きして販売しようとすると、「待った」がかかって値下げさせません。別荘販売では、景品に新車1台が付くセールスも禁止されています。こうして、人為的に住宅価格の値下がりを防ぎ、不動産バブルを継続させる荒業を行っています。このような無理が、無限に続くはずはありません。(つづく)