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ロイター通信と言えば、世界を代表する通信社の一つだ。そこが配信したコラムに驚いた。日韓の経済紛争が、日韓経済を共倒れに導くというのだ。もっとも、コラムは記者の個人的見解と断っているが、ロイターの看板を背負った記事だ。事情を知らない読者が読めば、額面通りに受け取りかねない「危ない記事」である。

 

『ロイター』)(7月11日付)は、「日韓の無謀な貿易戦争、行き着く先は共倒れ」と題するコラムを掲載した。

 

日本と韓国の政府間対立は、「相互確証」的な痛手をもたらすだろう。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、日本側が韓国の基幹産業である半導体企業を標的に導入した輸出制限に対抗し、日本の機械や設備、製品を標的にする可能性がある。韓国は日本への報復を検討している。

 

(1)「二国間の緊張は昨年、元徴用工を巡って韓国最高裁が日本企業2社に対し賠償を命じたことで高まった。日本側は、この問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだとして判決に反発。明らかに憤慨した安倍晋三首相は、特定の半導体材料を韓国に輸出する際は契約ごとに審査・許可することを義務付けることで反撃した。文大統領の報復手段は限られている。ただでさえ両国経済がそれぞれ大きな圧力にさらされているこの時に、850億ドル(約9兆2000億円)規模の二国間貿易に暗い影を落とすことになる

 

文大統領は極力、報復手段は取りたくないとしている。あくまでも、外交手段での解決を望んでいる。日本への有効な報復手段がないことの裏返しである。日本が、資本財や中間財など他国製品で代替不可能な高級品を生産していることでもある。このコラムを書いた記者は、担当間もないのか実態把握が不十分で執筆したのだろう。ロイター通信東京で取材すべきだった。

 


(2)「時価総額2550億ドルのサムスン電子など韓国企業は、日本製の機械や素材、化学製品に大きく依存しているが、それに比べて日本への輸出量ははるかに少ない。この不均衡により、韓国は対日貿易赤字をずっと抱えており、昨年の額は240億ドル超に上った。そのため、いかなる措置も韓国国内の半導体やテクノロジー産業にダメージを与えるリスクがある。また、世界貿易機関(WTO)から反感を買う可能性もある。それでも韓国政府の決意は固い。文大統領は10日、大手財閥30社の首脳級を集め、部品や材料の調達支援を大幅に強化すると述べた」

 

ビール、たばこ、衣類などの消費財は他国製品に代替可能である。だが、日本の核心部品素材なくしてスマートフォン、自動車、精密化学など韓国の産業は回らないのが実態だ。病院の超音波CTなどは日本製が大半で、放送も日本製装備がなければ撮影や送出は難しいというのが現状である。文大統領はこの実情を認めて、他国からの購入を諦め、自国で生産せざるをないと言ったのだ。 

(3)「その詳細は不明だが、世界最大の半導体・スマートフォンメーカーであるサムスンのような企業が調達先を変更すれば、長期的には既存のサプライヤーが市場シェアを失うことになりかねない。税関データによると、日本は2018年に240億ドル相当の資本財を韓国に輸出している。 対立のいかなる激化も、経済への圧力を増すだけだ。両国経済は、ともに世界的な需要の減速や米中貿易戦争の対応に追われている」

 

既述の通り、技術的に見て日本製品から他国への乗り換えが困難である。だから、韓国はWTOや米国に訴えて、韓国が正しく日本が間違えているので、輸出規制を撤廃させようとしている。

 

日本は、輸出手続きを厳しくすると言っているだけで、「輸出禁止」ではない。それ故、輸出手続きが終わるまで時間はかかるが、輸出そのものは継続する。韓国の生産を止めれば、世界のサプライチェーンに影響が出る。それは、回避するだろう。

 

日本政府は、今回の一件を外交手段に使うもので、韓国経済を混乱させる目的でない。ここを誤解しているから騒ぐに過ぎない。日本は、外交的に韓国を引きつける目的である。相撲で言えば、相手の回しを掴んで動きを封じることだ。