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台湾の蔡英文総統は11日、米国に向けて出発した。外交関係のあるカリブ海諸国を訪れるのに合わせて米国を訪問し、行きと帰りで米国に2泊ずつ滞在する。過去のトランジットでは米国は1泊が原則であった。往復4泊となるのは、米台関係が一歩進んだことを物語っている。

 

トランプ米政権は、8日に台湾への22億ドル(約2400億円)相当の武器売却を発表した。中台の軍事力バランスが現在、中国へ傾いていたのでこれを回復させる目的である。台湾国防相は、記者会見で「アジア太平洋戦略」に貢献すると発言した点が注目される。

 

米国は、中国封じ込め戦略として、前記の「アジア太平洋戦略」を策定した。日本・米国・豪州・インドが一翼をなすが、ここへ台湾が加わる構想を明らかにしたもの。中国は、台湾を解放して「アジア太平洋戦略」のループを切断する方針であるが、今回の米台の武器売却契約はこれを阻止する強い意志を示したと見るべきだ。

 

以上のような背景の下に、蔡総統が米国で4泊するという異例の日程を組んだものであろう。この米台緊密化は、来年1月の総統選に影響を与えると見られる。

 

『日本経済新聞』(7月11日付は)、「台湾の蔡総統、米接近で支持集め 総統選まで半年」と題する記事を掲載した。

 

台湾の次期総統選で再選を目指す蔡英文総統が、米国と接近して支持を集める戦略を打ち出している。11日からの外遊では米に立ち寄り、関係強化を内外にアピールする。香港での反中デモ拡大を受け、台湾でも中国への警戒感が高まる。蔡氏は米との関係を深め、親中色が強い野党との違いを打ち出す。投開票が半年後に迫るなか、米中対立が選挙戦を左右する構図が一段と鮮明になる。

 

(1)「『外部勢力』の脅威に直面するなか、理念の近い国と協力して民主制度を強固にする」。蔡氏は11日、ハイチなどカリブ海4カ国歴訪への出発前に談話を発表した。中国の圧力を背景に、2016年の政権発足から5カ国との外交関係を相次ぎ失った。直接訪問で関係をつなぎ留める狙いだが、真の狙いは経由地として立ち寄る米との関係強化との見方がある。蔡氏は往路でニューヨーク、復路でコロラド州デンバーに立ち寄る。台湾メディアはデンバーで共和党のコリー・ガードナー上院議員と会う可能性があると報じている。蔡氏は外遊の際、度々米に立ち寄って交流している。16年にはフロリダ州マイアミで共和党のマルコ・ルビオ上院議員と会見し、今年3月にはハワイでハワイ州軍のローガン少将と会談した。「一つの中国」原則を掲げる中国はこうした動きに反発してきた」

 

蔡氏が、米国で往復4泊という異例のスケジュールを立てたのは、米国の蔡氏への間接的な支援表明であろう。来年1月の総統選を控え、蔡氏の続投を歓迎する証拠だ。国民党は中国へ接近しており、総統選で国民党候補が当選すれば、「アジア太平洋戦略」に齟齬を来たすという懸念もあるからだ。

 


(2)「経済政策への不満などで蔡氏の支持率は低迷してきたが、今年に入ってからは復調が鮮明だ。きっかけは、1月に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が演説で「一国二制度」を用いた台湾統一の推進を明言したことだ。6月上旬には香港で中国本土への容疑者移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めるデモが激化したことも、台湾の人々の対中警戒感を刺激している」

 

香港デモが、蔡氏の総統選を有利にさせている。台湾では、香港デモの原因になった「一国二制度」が、形骸化され中国の思いにままになる懸念を大きくさせたからだ。

 

(3)「台湾で中国への警戒感が高まっていることは、中国と距離を置く与党・民主進歩党(民進党)の蔡氏には追い風になっている。対米接近には中国への強硬姿勢を打ち出し、20年1月の総統選まで追い風を持続させる思惑も透ける。シンクタンク台湾民意基金会の6月の調査では、蔡総統の支持率は47.%と、約18カ月ぶりに不支持率を上回った。総統選での再選に望みが出てきている

 

中国脅威論が、蔡氏を有利にさせるという「神風」が吹いている。さらに、米国との強いつながりを誇示できれば、「鬼に金棒」となる期待が出てくるのであろう。