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日韓関係が大揺れのところへ、また新たな「火だね」が持ち込まれた。朝鮮半島で有事の際、国連軍が朝鮮戦争に参加していない日本を戦力支援のトップに掲げ、韓国国内をざわつかせている。

 

韓国海軍は昨年12月、海上自衛隊哨戒機に無断でレーダー照射して大変な問題を引き起こした。日韓両国の防衛当局はその後、会談を行ったものの未解決なままである。韓国軍による自衛隊への強い対抗心のあらわれと見られている。こういう微妙なところへ、国連軍(中心は米軍)の「ご指名」とはいえ、朝鮮戦争に未参加の日本が戦力支援トップに出たことは驚きである。韓国国内では、時も時だけに話題を集めている。

 

『朝鮮日報』(7月12日付)は、「半島有事、国連軍司令部は、日本の戦力支援を初明記」と題する記事を掲載した。

 

米国が日本の国連軍司令部参加を検討するかのような動きを見せ、論争が起きている。国連軍司令部は朝鮮戦争に参戦した関係17カ国から成り、日本は構成員ではない。ただし日本には、有事の際に国連軍の兵たん基地・入境基地の役割を果たす7つの国連軍司令部後方基地がある。

 

この記事は、米国が日本を重視していることに、韓国が感情的に面白くないという面が浮き彫りになっている。昨年12月にレーダー照射の件が未解決であり、日韓にはモヤモヤした感情が残っている。そこへ、米国が「当てつけ」のように自衛隊重視路線を浮上させたので、韓国軍が反発して見せたのであろう。韓国は、何ごとも日本と張り合う姿が鮮明に出ている。

 

(1)「在韓米軍司令部が11日に発行した『在韓米軍2019戦略ダイジェスト』で米国は、国連軍司令部を紹介するに当たり、異例にも日本に関する内容を掲載した。『戦略ダイジェスト』は「国連軍司令部は監査および調査、監視、停戦協定教育、非武装地帯への接近のコントロール、外国要人の訪問の通知および支援任務を強化するため、国連軍戦力提供国の兵力増員に引き続き務める予定」として「国連軍司令部は、危機の際に必要な日本との支援および戦力協力を続ける」と記した。国連軍司令部が日本を通して戦力支援を受ける、と明示した」

 

国連軍(17ヶ国)に入っていない日本が、朝鮮半島有事の際に自衛隊が参加すると明示したことに韓国が反発したもの。韓国では、韓国の承認なく自衛隊の韓国への進出を認めないなどと高飛車である。自衛隊が支援に出るという緊迫化した事態で、日本への感謝もなく振る舞う姿勢に驚く。自衛隊が、こういう礼儀知らずの国へ支援に出るとは、考えさせられる問題だ。 

 


(2)「米国が、日本の国連軍司令部参加を検討するかのような動きを見せ、論争が起きている。国連軍司令部は朝鮮戦争に参戦した関係17カ国から成り、日本は構成員ではない。ただし日本には、有事の際に国連軍の兵たん基地・入境基地の役割を果たす七つの国連軍司令部後方基地がある。在韓米軍司令部が11日に発行した『在韓米軍2019戦略ダイジェスト』で米国は、国連軍司令部を紹介するに当たり、異例にも日本に関する内容を掲載した。『戦略ダイジェスト』で、「国連軍司令部は、危機の際に必要な日本との支援および戦力協力を続ける」と記した。国連軍司令部が日本を通して戦力支援を受ける、と明示した」

 

韓国が、共産国家に占領される事態になれば、日本の安全保障に大きな影響が出る。それを防ぐには自衛隊進出もやむを得ないのだろうが、現在の日韓関係を前提にすれば、釈然としない話である。そういう事態にならないように、韓国は北朝鮮への守りを固めて貰わなければ困る。ここまで来ると、韓国の安保問題は日本の安保問題になってくる。

 

(3)「この文言を巡って論争が起こったことを受け、韓国国防部(省に相当)は「国連軍司令部の翻訳本ではない英文には『国連軍司令部は危機の際、日本を通して必要な支援・戦力を確保する』となっている。国連軍司令部の後方基地としての日本の原則論的な役割をあらためて強調したにすぎない」と説明した。国連軍司令部が英語を韓国語に訳す過程でミスをした、という趣旨だ。さらに国防部は「日本は朝鮮戦争参戦国ではないので、戦力提供国として活動はできない。国連軍司令部の参謀要員として活動する場合は当然、韓国国防部と協議した上で可能になる」とコメントした」

 

下線部分は、韓国国防部によって「国連軍司令部が日本を通して戦力支援を受ける」から、トーンダウンしている。これが、現実に日本ができる限界であろう。だが、米軍はそれ以上の協力を期待している節が見える。

 

(4)「韓国軍内外からは「『戦略ダイジェスト』の国連軍司令部紹介項目に日本関連の記述が初めて登場したことそのものが意味深長」という声が上がった。アジア・太平洋地域の安全保障問題で日本の役割に期待しているドナルド・トランプ政権の意図が垣間見える、というわけだ。韓国軍関係者は「最近米国は、日本に対する『安全保障のアウトソーシング』を拡大する傾向にある。米国の中国包囲構想であるインド・太平洋戦略の観点から、国連軍司令部の拡大・強化を望む米国が日本の参加を内心期待している流れがあるのは事実」と語った」

 

下線をつけた部分が米国の本音であろう。朝鮮半島での自衛隊による戦闘参加である。「アジア太平洋戦略」では、日本が戦力の主要部分を担うにしても、朝鮮半島有事の際は「御免被る」。これが、日韓双方の思いであろう。現在のような日韓関係では、自衛隊の朝鮮半島進出は不可能だ。