a0960_006618_m
   

ロシア企業が、素早い動きを見せている。日本が半導体素材3品目の輸出手続きを強化したことを受け、韓国企業へさっと「フッ化水素」の売り込みを始めているという。これまで、ロシア製のフッ化水素を使った経験がないだけに、品質のテストと操業過程に馴染むかどうかを調べる必要があるという。大々的に、ロシア製に触手を動かすと、日本から「それ見ろ」と言われかねない。そこは、慎重にならざるを得なくなろう。

 

『朝鮮日報』(7月13日付)は、「ロシアのフッ化水素供給提案に韓国業界は困惑」と題する記事を掲載した。

 

日本が韓国への輸出規制品目として発表したフッ化水素(エッチングガス)の輸出を、ロシアが韓国政府に提案してきたことが分かった。韓国大統領府関係者は12日、「ロシアがフッ化水素を供給するとの意向を韓国側にこのほど伝えてきた。現在、その提案を検討しているところだ」と語った。

 

(1)「今月1日に日本が輸出規制を発表して以来、フッ化水素の問題は連日取りざたされている。超高純度フッ化水素は半導体回路を形成し、不純物を除去するのに不可欠だが、韓国の半導体メーカーはこの素材を日本にほぼ100%依存しているため、供給が中止されれば韓国の半導体産業がストップする可能性があるからだ。ロシア製のものが日本製のものの代替品になるなら、韓国の半導体産業界にとっては好材料だ。しかし、同業界や専門家の間では「本当にロシア製のものが半導体製造工程で使えるかどうかを見るには、確認しなければならないことが多い」と話す」

 

突然、ロシアからフッ化水素の売り込みがあったという。ここ数年、使った経験がないので製品純度がどの程度かも不明だという。これは、正式のオッファーでなく、「立ち話」レベルのことかもしれない。

 

(2)「一般的に使われるフッ化水素は、99.99%以下の低純度製品だ。こうした製品は韓国はもちろん、中国・台湾・インドでも作られている。一方、半導体製造工程用のフッ化水素は99.999%以上の超高純度製品で、サムスン電子やSKハイニックスなどに納品している日本のステラケミファや森田化学工業が世界市場を掌握している。超高純度であることは製品不良率を下げるために不可欠な要素だ。半導体は10ナノメートル(㎚、1ナノメートルは10億分の1メートル)前後の超微細工程で作られる。純度が低く不純物が増えれば不良率も跳ね上がる。例えば、純度99.99%のフッ化水素内にある不純物は、純度99.999%のフッ化水素内にある不純物の10倍となる

 

フッ化水素は、99.99%以下の低純度製品では半導体製造工程に使えないという。純度が99.999%でなければ、半導体製造工程で不良品を生み出す要因になるからだ。この面で、日本製品は絶対的な強味を持っている。世界市場を席巻している理由だ。

 


(3)「半導体専門家らは、ロシア製フッ化水素を半導体製造工程に使えるかどうかについて判断できずにいる。韓国は最近6年間、ロシア製フッ化水素を輸入していない。ソウル大学化学生物工学部のソン・ヨンウン教授は「半導体製造工程で使用するには、大量の超高純度フッ化水素を安定した品質で供給できなければならないが、ロシア製はまだ何も証明されていない」と語った。ロシア製の純度が十分に高くても、サムスン電子やSKハイニックスがこれを実際の製造工程で使うまでには、少なくとも数カ月以上必要だ」

 

仮に、ロシア製の純度が99.999%で合格でも、実際の製造工程にそのまま使えないという。

 

(4)「半導体の製造工程は700段階に分かれており、このうちフッ化水素が使われるのは40~50段階で、段階ごとに使われるフッ化水素の純度や形態はすべて異なる。既存の工程は日本製のフッ化水素に最適化されているので、ロシア製を使う場合は工程をあらためて組み直さなければならない。それに、ロシア製が日本製のように純度99.999%であっても、使えない可能性がある。不純物の純度が同じだけで、不純物の粒子の大きさや種類が確認できないからだ」

 

純度が99.999%でも、不純物の粒子の大きさや種類の確認が必要だという。こうなると、一口にフッ化水素と言っても「性格」が重要になる。「相性」の問題であって、「生き物」という感じになる。これは、日本人でなければ製造できない芸当であろう。化学物質が、生物のような特性を持っているとは初耳である。