けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。
バブルの宴の後で
PPI低迷リスク
GDP3倍の債務
保守が改革派圧迫
中国の4~6月期のGDP統計が発表されました。事前予想の通り前年同期比で実質6.2%成長でした。リーマン・ショック直後の09年1~3月期を下回り、四半期ベースで統計を遡れる1992年以降で最低でした。
前期の実質成長率は6.4%。今期は、0.2ポイント低下しました。ここで注目されるのは、中国共産党が2012年の党大会で2020年までにGDP倍増という長期目標を決めていました。それによると、19~20年に平均6.2%の成長が必要になります。今後の米中貿易摩擦の結果しだいでは、6%割れの局面を迎えます。固く見れば、「GDP倍増計画」に警戒信号が灯った感じです。
バブルの宴の後で
GDP倍増計画には、「中所得国のワナ」を突破する目的もありました。「中所得国のワナ」とは、国民1人当たりのGDPが1万2000ドル前後で停滞して、高所得国グループに手が届かず、経済が停滞局面に陥る現象を指しています。多くの発展途上国が、「中所得国のワナ」にはまってきたのです。共通した理由は、豊富な労働力を使い果たせば、そこで生産性の上昇が止るというものです。
中国は2010年、総人口に占める生産年齢人口比率がピークでした。それまでの急速な経済成長は、生産年齢人口比率の上昇がもたらしたものです。2011年以降は、生産年齢人口比率が下降に向かっています。経済成長率が鈍化するのは不可避でした。
グライダーに喩えれば、飛行機(生産年齢人口比率の上昇)が牽引した経済は、2011年以降に推進力を失い滑降状態へ移行しています。経済成長率は、減速局面入りしたのです。中国経済は、このいかんともし難い人口動態変化の中に巻き込まれています。
中国は2010年以降、経済政策として不動産バブルを利用しました。土地国有制という「土地供給独占」によって地価を釣り上げ、空前の住宅投資を引き出したのです。中国経済が、セメントや鉄鋼という素材産業に結びついた歪な構造になった大きな理由です。目先のGDPを引き上げる目的で、不動産バブルを利用した「咎め」は現在、中国経済に大きな禍根を残しています。GDP規模に比べた過剰な債務を置き土産にしたのです。この問題に付いては、後で触れます。
今年上半期の経済データをまとめました。
公表された主要経済指標(前年比増減率)
1~6月 1~3月 差し引き
工業生産 6.0%増 6.5%増 0.5ポイント減
固定資産投資 5.8%増 6.3%増 0. 5ポイント減
社会消費品小売総額 8.4%増 8.3%増 0.1ポイント増
家計調査の消費額実質 5.2%増 5.4%増 0.2ポイント減
輸出 1.3%減 1.4%増 2.7ポイント減
これらの項目を見て気付くことは、1~6月の増加率が1~3月に比べて軒並み、低下しています。4~6月の落勢を示しているもので、とりわけ輸出の急減ぶりが目を引きます。米中貿易戦争の影響が強く出ていることを示しています。
PPI低迷リスク
米国の関税率引上の多くは、中国企業が負担しています。これは、生産者物価指数(PPI)の推移に現れています。次に、その推移(前年増加率)をマネーサプライ(M2)と比較します。(つづく)
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