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長年にわたる不動産バブルの終焉を迎えて、信用不安が一斉に噴き出している。今年上半期中国信用債(無担保社債)の債務不履行(デフォルト)規模が、668億元(約1兆475億円)に達し、前年同期比で実に約263%増となった。

 

米中貿易戦争の影響は、生産者物価指数(PPI)の低迷をもたらしている。米国の科した高関税率を中国企業が値引きで対応している結果だ。6月のPPIは前年比ゼロになっており、7月以降はマイナス基調へ転落すれば、企業売上は落込み利益が減って、信用不安は一層の激化が予想される。中国経済は、さらに苦境に立たされる。米中貿易戦争を続ける体力は、すでになくなっている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月20日付は、「中国で今年最大級のデフォルトか、債務危機が深刻化」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の複合企業が債務危機の深みにはまっている。保険や不動産、航空機リース業などを手掛ける中国民生投資集団(中民投、CMIGは19日、82日に償還を迎える5億ドル(約540億円)の3年債について、元本や利子の支払いができないことを明らかにした。中国企業のドル建て債デフォルト(債務不履行)としては今年に入り最大規模となる。中民投は表面利率3.8%の3年債を海外子会社のブーム・アップ・インベストメントを通じて発行した。香港のトレーダーによると、19日の取引で価格が3割近く下落し、額面1ドル当たり50セントとなった。これはデフォルトに陥る可能性が高いことを示している」

 

中国当局は、一昨年からドル建て債発行を薦めてきた。ドル資金調達が目的であることは明らか。当時、私はデフォルトになった場合の中国の受けるダメージの大きさを指摘した。その懸念が、ついに現実化する時期を迎えている。

 


(2)「2014年創業の同社は、中国の経済発展および広域経済圏構想「一帯一路」の関連投資に軸足を置く「世界有数の投資グループ」と自称している。バミューダ諸島に登記された不動産・損害保険のシリウス・インターナショナル・インシュランス・グループの大株主でもある。中民投の株主には多数の中国民間企業が名を連ねる。経営難に陥った理由については不明点が多いものの、元従業員によると同社は長期資産を支える資金を短期の借り入れで賄い、資金繰りが苦しくなっていた」

 

中国民生投資集団(中民投、CMIG)のデフォルトは、多くの点で教訓を残している。

    「一帯一路」関連ビジネスが上手くいかなかったことだ。過剰な投資に対するリターンが少なかったこと。その資金源が短期資金による調達であったこと。

 

    『一帯一路』のような低開発国向けのビジネスは、軌道に乗るまで長期期間を要する。この資金は、長期の調達でなければならないものの、CMIGの信用力が乏しく長期資金調達ができなかった。その欠陥を補うべく短期資金調達に乗り出した典型的な失敗例である。

 

(2)「中国の格付け会社、上海新世紀資信評估投資服務(上海ブリリアンス)は昨年10月のリポートで、中民投の2018年16月期売上高が144億元に半減し、純利益は77%減の12億6000万元に落ち込んだと指摘。昨年6月末時点の債務残高は134%増の2321億元に達する一方、資産総額は3096億元だと述べていた」

 

一帯一路事業が不振である結果が、このような事態を招いた理由である。中国が、闇雲に一帯一路へ乗り出したことが、大きな負担になってきた証拠であろう。発展途上国経済を、発展途上国の中国が支えることなど、最初から不可能であった。当然の結果と言える。