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けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

中国が「為替操作国」

家計部門の負債が急増

韓国は米中貿易被害国

野党が出す日韓和解案

 

米中貿易戦争は、長期化の様相を見せ始めています。これによって、韓国経済が受ける影響はきわめて大きく、どれだけのマイナス材料になるか懸念されます。それに加えて、日本との摩擦を抱えています。まさに、内憂外患の局面です。

 

韓国は、輸出主導型経済です。対GDP比の輸出は、37.7%(2017年)と高く、日本の14.1%(同)の2.7倍にも達しています。これでは、米中貿易戦争の影響を大きく受けて当然です。しかも韓国の輸出先国では、1位が中国、2位は米国です。これでは、韓国経済に与える打撃の大きさも自ずと分ります。

 

この結果、これからの韓国経済の行方は暗く、半ば決まったようなものです。そこで先ず、米中貿易戦争の現状と今後の展開を見ておきます。

 

中国が「為替操作国」

米中貿易戦争は、5月に妥結寸前まで行きましたが、中国保守派の巻き返しで頓挫しました。6月末の米中首脳会談で「休戦」したものの、7月末に行われた上海閣僚会議で結論が出ず、膠着状態に陥ったところでした。

 

これに業を煮やした米国は、中国に対して関税第4弾として3000億ドル相当分の製品に10%関税を科すと発表しました。これは、「休戦条件」に反するということで、中国は人民元相場の1ドル=7元という安定相場ラインを外して、人民元安(7元割れ)で対抗しました。対ドルの人民元相場を引下げれば、関税引上げ分を相殺できるという計算です。

 

この人民元相場の「7元割れ」について、米国は鋭く反応しました。米国財務省が中国を「為替操作国」に認定したのです。米中貿易戦争が、ついに米中通貨戦争にまで拡大したのは、中国に米国への報復手段がなくなった証拠です。中国は事実上、あと100億ドル分の製品に関税引上余地しかないと見られています。これでは、3000億ドルvs100億ドルで勝負になりません。中国がついに「通貨切下げ」という最終兵器を持出したのです。

 


米財務省は8月5日、中国を為替操作国に認定しました。中国が、「7元割れ」を容認した日に同時発表という迅速な動きでした。
為替操作国とは、どういう内容でしょうか。米財務省が、相手国が貿易で有利になるよう意図的に通貨を操作していると判断した場合、その国を「為替操作国」に認定します。

 

米国は相手国と協議しますが、国際通貨基金(IMF)に是正を働きかけることになっています。 米国が為替操作国を認定するのは、1994年に中国を認定して以来初めてとなります。米中は、経済面で「因縁対決の関係」と言えます。

 

米国の法律では、為替操作の判断基準として、

(1)多額の経常黒字

(2)大規模な対米貿易黒字

(3)継続的かつ一方的な為替介入

以上の3つを該当事項に定めています。今回は、(3)の為替介入に抵触したという判断です。中国は、「管理型変動相場制」です。その意味では、絶えず介入の疑いがかけられる「部分」を抱えています。今回は、明確に人民元の基準値を公表する時から「7元割れ」を意図していました。米国が、「伝家の宝刀」を抜くには、それだけの背景があるのです。

 

米国は、中国の「為替操作国」について、IMFと協議します。そのIMFはこの7月、米中の通貨について次のような調査結果(年次の「対外部門の安定性に関する報告書」)を発表していました。

 

「人民元はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿った水準である。ドルについては短期のファンダメンタルズに基づき6~12%過大評価されている」(『ロイター』8月6日付)

 

このレポートによれば、人民元の「7元割れ」はファンダメンタルズから外れていることになります。一方、ドル相場は割高であるので是正すべきという「答え」が出ます。今後、米中の通貨交渉が始ります。ただ中国は、米国の主張を受入れなくても、「罰則」に該当する事項がありません。すなわち、「米国での海外民間投資公社(OPIC)の資金調達禁止や政府の調達契約対象からの排除など」が、罰則事項です。中国は、米政府の主要調達対象でもなければ、OPICの主要投融資先でもありません。中国は、罰則を「スルー」できるのです。(つづく)