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中国は、苦しい処へ追い込まれてきた。米国が、9月から第4弾として3000億ドルに10%関税を科すことになったからだ。もはや、米国への対抗の目玉を失った中国は、「人民元安」という為替戦争へ舞台を回した。この苦し紛れの戦術が成功するか、大方は、「失敗」という見立てである。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月8日付)は、人民元に対して、つぎのように評価している。

 

(1)「人民元は1ドル=7元を割り込み、2008年以来の安値を付けた。これは経済基調にも同調している。中国の4~6月期経済成長率はほぼ四半世紀ぶりの低水準に落ち込んだ。人民元は8月5日のオフショア取引で約3%下落し、世界の市場に大打撃を与えた。投資家は、人民元の交換レートに影響力を持つ中国の政策立案者が、米中貿易紛争の沈静化という望みを捨てたと結論付けた。貿易紛争は世界的に企業心理を低下させている」

 

中国は、08年以来1ドル=7元を維持してきたので、「7元割れ」に世界の市場は衝撃を受けた。8月5日のオフショア取引で約3%も下落したことが、その衝撃の大きさを示している。これは、人民元への期待が裏切られたことを意味し、改めて中国経済の「実勢悪」に目がゆくことになった。

 

私は一貫して中国経済に対し疑問の念を抱き続けている。中国経済「世界一論」などは、仕組まれた話だ。例の中国による謀略筋が働きかけている「陰謀数字」と見ている。合計特殊出生率の急低下と、不動産バブルに伴う債務は今も増え続けている。この事実を見ると、確実に日本経済が歩んだ「失われた20年」のぬかるみにはまり込んだと見るべきだ。これ以外の判断材料があるとは思えない。

 

『ロイター』(8月8日付)は、「人民元の下落、歯止めかけるのは困難か」と題するコラムを掲載した。

 

中国は人民元の下落に歯止めをかけることが難しいと認識するかもしれない。元は、11年ぶりに1ドル=7元を割り込んだ。穏やかな元安はマイナスにはならないが、景気の減速で下落ペースのコントロールはより複雑になっている。

 

(2)「中国人民銀行(中央銀行)は、貿易戦争という機を捉え、苦境に陥っている輸出セクターの支援や利下げの準備という中銀として必要な対応をとった。トランプ米大統領が、中国からのほぼすべての輸入品に追加関税を課す方針を表明した今、人民銀行は元安容認をトランプ大統領のせいにすることができる。問題は程度だ。中国政府はおそらく、1ドル=7.1~7.3元程度の小幅な元安を望んでいるだろう。その水準なら大規模な資本逃避を引き起こすことなく、政策緩和を支えられる」

 

中国政府は、7.1~7.3元程度の小幅な元安を見込んでいるだろう。この程度ならば、米国が本気になって「怒ってこないだろう」と読んでいるのかもしれない。だが、冒頭で取り上げたように、「人民元は8月5日のオフショア取引で約3%下落し、世界の市場に大打撃を与えた。投資家は、人民元の交換レートに影響力を持つ中国の政策立案者が、米中貿易紛争の沈静化という望みを捨てたと結論付けた」(WSJ)。世界の投機筋が損失を被った以上、それを取り戻すべく「投機」を仕掛ける公算が大きい。

 


(3)「とはいえ、景気を浮揚させるためにどの程度の緩和が必要なのか判然としない。今年、3000億ドル規模の減税が実施されたが、はかばかしい効果はみられない。銀行システムへの資金供給もしかり。中国国家統計局が発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、景況拡大と悪化の節目を3カ月連続で下回った。輸入は年初から7月までの7カ月中、6カ月で減少しており、内需の弱さを示している」

 

人民元安で国内景気を刺激しようとしても、輸出の対GDP比は18.11%(2017年)だが、個人消費の対GDP比の38.39%(2017年)には及ばない。人民元安になれば輸入物価が上昇する。その分が国内物価で値上がりする計算だ。下線を引いた部分は、内需の弱さを示している。よって、人民元安が国内景気にプラスになるとは言いがたい。

 

(4)「中国共産党中央政治局が最近発表した声明では、いつも強調していた債務削減という文言が削除されていた。中国政府が安価なキャッシュを経済に供給すれば、元を押し上げることが一段と難しくなる。10%か、それを超える急激な元相場の調整が起これば、貿易相手国・地域のモノやサービスへの需要が減退する可能性がある。急激な元安で資本逃避防止策の強化を迫られれば、中国人の海外旅行での支出を抑えかねない。元安は、中国国内における米国の対中関税の影響を和らげる。一方で、あらゆる市場で中国製品の価格が下がり、日本やドイツのような安全通貨を持つ輸出大国は割を食う。多くの人は、中国政府が今回の元相場調整を穏やかなものにすることが可能であり、そうするだろうと考えて安心している。その目論見が外れた場合、それは急激な不安へと変わる可能性がある」

 

このパラグラフは、重要な点を指摘している。中国は、再び債務依存の経済運営に頼ろうとしている。そうなった場合、人民元安が進み過ぎて元へ戻そうとしても金融緩和が阻害要因になって、人民元相場は元高へ戻りにくくなる。思わぬ形の人民元安は、世界経済に想像外の波及効果で騒ぎが大きくなるリスクを抱える。危ない橋を渡ろうとしている。

 

IMF(国際通貨基金)は、中国の経済政策に関する年次審査報告書の中で、中国の為替政策には柔軟性と透明性で一段の向上が必要との認識も示し、為替市場介入の詳細を公表するよう促した」(『ロイター』8月9日付)。中国は、米国の「為替操作国」認定によって、IMFと交渉せざるを得なくなった。