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香港国際空港は12日、デモ活動に伴う混乱を理由に、発着する全ての便が欠航した。中国当局は、2カ月に及ぶ反政府抗議活動について「テロ」の兆しが見られ始めたとの認識を示した。

 

これは武力鎮圧の際、必ず中国当局が示す認識である。香港マカオ事務弁公室の報道官は北京で「香港は重大な岐路にある。抗議活動参加者らはここ数日、警察への攻撃に極めて危険な手段を頻繁に用いている。テロリズムの芽が出つつあり重大な犯罪行為だ」と指摘した。中国はテロリズムの脅威に触れることで、新疆やチベットで強硬手段を正当化してきた。一部抗議活動が公式見解でテロリズムと表現されたことについて、香港の法律専門家らは広範な反テロ法適用や権力行使につながる可能性を指摘する(『ロイター』8月12日付) 

中国当局は、香港デモが「テロリズムの芽が出つつある」と判断を固めれば、過去の事例から見て、武力鎮圧される危険性が強くなったことを示唆する。万一、鎮圧という最悪事態に陥れば、自由世界による中国への批判は一挙に高まろう。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月7日付)は、「香港を米中貿易交渉の切り札に」と題する社説を掲載した。

 

米中貿易交渉はただでさえ複雑化しているが、それでもまだ足りないかのように香港問題が合意を不可能にしかねない要因として浮上してきた。香港市民が、中国から約束された1997年からの50年間の自由を守るため、民主的改革を求め抗議行動を続けていることに対し、中国当局は次第に威嚇的姿勢を強めている。中国国務院香港・マカオ事務弁公室の楊光報道官は6日「火遊びする人々は、火によって滅びる」と述べるとともに、中国は抗議行動を鎮圧する「強大な力」を持っていると警告した。

 

(1)「香港での失政はすべて、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と彼女を支える中国政府当局者の責任だ。犯罪容疑者の中国本土移送を可能にする逃亡犯条例改正案をラム氏が強行可決しようとしたことが、抗議行動の引き金となった。彼女は、条例案は「死んだ」としながらも、同案の撤回は拒否している。彼女はまた、抗議行動参加者に対する警察と、中国政府の支援を受けた暴漢らの暴力行為に関する捜査も拒否している」

 

(2)「中国の習近平国家主席がデモを終わらせるために軍の派遣を決めれば、確実に暴力的な衝突につながり、恐らくは流血の事態を招くだろう。こうした侵攻は、自由貿易と金融の窓口としての香港にダメージを及ぼすだろう。だが習氏は、中国本土にとっては、民主主義の実例を示すデモの継続を容認するよりも、香港侵攻の方がリスクは小さいと考えるかもしれない

 

中国が、デモ鎮圧がもたらす後遺症への配慮なく実力行使に入れば、大きな政治的、経済的なブーメランに襲われることは確実である。


(3)「習氏が貿易分野での合意を望むのであれば、習氏にとって必要なアドバイスは「香港に侵攻すべきではない」というものだ。香港は中国だけの問題ではない。中国は香港返還に関する英国との取り決めにおいて「一国二制度」を約束しており、香港の将来は「国際的な」課題である。この特別な地位は、中国には認めていない通商上およびビザ(査証)の特権を米国が香港に認めている法律上の根拠となっている」

 

習氏が香港へ軍部の出動を決めれば、米国からの「報復」を受けるのは確実である。米国が、香港に与え、中国には認めていない通商上およびビザ(査証)の特権の法律上根拠を失うからだ。これによって、香港の経済的地位は一挙に落込み、中国にとって甚大な損害を招くはずだ。

 


(4)「トランプ氏は、香港問題で習氏の言い分を認めることが米中貿易交渉での合意成立の手助けになると考えているのかもしれないが、間違っている。中国軍部隊が攻撃態勢を取り、大量の逮捕者や死者を出すことになれば、民主党は、トランプ氏の発言内容を使い、同氏が中国による弾圧を招いたと主張するだろう

 

トランプ大統領は、中国に対して厳しく警告すべきである。もし、中国が武力行使すれば、米民主党は、トランプ氏を猛烈に批判するはずだ。トランプ氏は、米大統領選で苦戦を強いられるかも知れない。

 

(5)「トランプ氏はまた、中国との通商合意に対し、米議会で超党派による圧倒的な人数の反対に直面するだろう。そして、すでに決定済みのものよりも一層厳しい関税を中国に適用すべきだとの圧力に直面することになるかもしれない。トランプ氏が中国のとの通商合意を望むのであれば、習氏に対し、香港への中国軍部隊の出動を引き続き見合わせるよう伝えなければならない」

 

中国による香港への武力行使は、対中国関税をさらに引き上げさせる要因になりかねない。トランプ氏は、習氏に対して武力行使をしないように伝えるべきだ。武力行使でさらに混乱に陥れば、中国経済は計り知れない損害を被るであろう。