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すべてを権力闘争に結びつける中国が、日韓摩擦に対する見解を報じた。なかなか、うがった見方で興味深い。かつて日中が尖閣諸島を巡り角突き合わせた背景も分るからだ。中国という国は、外交関係を「力」と「力」のぶつかり合いで捉えている。これは、貴重な教訓となろう。

 

『人民網』(8月19日付)は、「日韓危機への対応、意味深長な米国の態度」と題する記事を掲載した。

 

日韓の摩擦は今年に入ってから次第にエスカレートし、歴史、安全保障、領土の各面で全面的に噴出している。両国関係は1965年の国交樹立以来最も困難な時期に陥っている。

 

(1)「日韓の対立と争いの行方を人々は注視している。今回の対立を引き起こした主たる原因は歴史問題だ。「慰安婦合意」をめぐる日韓の逆戻りと紆余曲折は、たとえ双方間で何らかの妥協に達しても、「これで後はずっと楽」とはいかず、その後もしばしば摩擦が噴出し、日韓政府間の関係悪化と国民感情の対立を引き起こすことを物語っている。現実的には、現在の日韓両国の国内政治情勢と民意から見て、双方の指導者が安易に譲歩することはない。このため、両国関係回復のタイムテーブルはまだ見えてこない

下線を引いた部分は、日韓の政治状況と民意からみて、双方の指導者が安易に妥協できないだろうと分析している。多分、韓国は来年4月の総選挙まで日韓対立を引っ張るだろうと見ている。日本に選挙はない

 

(2)「今回の危機は基本的に制御可能であり、戦争にまでいたるようなことはない。日韓関係が悪化し続ければ自国にとって不利益であることを、両国の指導者は共に分かっているからだ。とりわけ両国は互いに第3の貿易パートナーであり、産業チェーンが高度に融合していることから、貿易戦争が長期化すれば勝者はいない。日韓対立が激化し、日本からの経済的打撃によって、より大きな圧力を受けている文在寅氏が長期間持ちこたえられるかは実に疑問だ。日本が韓国に対して貿易戦争を発動したのには、威嚇行為に出ることで、歴史問題にこだわり続けるのを適当なところで止めるよう韓国に警告する狙いがある。金儲けのできる韓国市場を日本が放棄することはない」

下線部を順番にコメントしたい。

    「今回の危機は基本的に制御可能であり、戦争にまでいたるようなことはない」

中国は、国家間の対立を最終的に戦争で解決するという古いパターンであることを、図らずも漏らしている。このことから、尖閣諸島は、武力で奪取するのが中国流の解決である。このことに日本は厳重に警戒する必要がある。

 

    「日韓対立が激化し、日本からの経済的打撃によって、より大きな圧力を受けている文在寅氏が長期間持ちこたえられるかは実に疑問だ」

中国は、日本の韓国への「ホワイト国除外」を輸出禁止と誤解している。輸出手続きの厳格化に過ぎず、最長90日後に書類審査が済めば輸出されるもの。

 

③ 「日本が韓国に対して貿易戦争を発動したのには、威嚇行為に出ることで、歴史問題にこだわり続けるのを適当なところで止めるよう韓国に警告する狙いがある」

この部分が、最も興味深い。日本が、韓国の歴史問題で拘り続けることに対して、適当なところで止めるように威嚇行為に出たと見ている。これは、なかなか「意味深」である。韓国自身が、こういう受取り方をすべきだという「示唆」とも受け取れる

 


(3)「今回の日韓危機勃発後、韓国は米国に前面に出て調整するよう求めたが、米国が直ちに行動に出ることはなかった。その理由を突き詰めると、トランプ政権が自国のことで手一杯だからという見方がある。筆者は米国の「欠席」は、第1に歴史をめぐる日韓のいざこざはほぼ解決不能であることを熟知しているからであり、第2に日米韓同盟に対するトランプ氏の認識と関係があるだろうと考える。米国にとって日韓は重要な同盟国であり、地域における利益を実現するための最も重要な支点でもある。だが歴史や領土など各面で日韓の間に深いレベルの摩擦があるため、日米韓の揺るぎないトライアングルは完全に形成できずにいる。だがトランプ政権は日米、米韓の二国間軍事同盟の価値と役割をより重視しているとみられる。さらに重要なことに、米国はこの危機をまさに必要としているのだろうと筆者は考える

下線部分の上段は、次のような解釈だ。米国は日韓対立の原因が、歴史問題であることからほぼ解決不能と見ている。

 

下線部分の下段は、日韓が争っているから、米国の存在感がますます強まっていると見ている。日米と米韓という三角形の頂点が米国であり、その下に日韓がぶら下がっている形だ。日韓双方が、米国を必要とするという解釈である。