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韓国産業界は、政府によるGSOMIA破棄(日韓軍事情報包括保護協定)によって、日本がいつ報復強化に出てくるか、とおののいている。こういう「不確実性」増大が、企業活動にとっては、もっとも大きな重圧になるからだ。

 

日本政府は、今回の輸出手続き強化が輸出規制でないと繰り返し説明している。しかし、韓国政府がこれを歪曲して、「反日不買運動」に利用している。こういう韓国国内の政治的な動きが、企業にとって心理的な負担を大きくしているのだろう。

 

『朝鮮日報』(8月24日付)は、「韓国産業界,『日本の報復どう襲ってくるか見当も付かない』」と題する記事を掲載した。

 

(1)「23日の青瓦台の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄決定を受けて、4大グループのある役員が、「もう少し辛抱していたら何とかなるのではないかと期待していたのに、今回は本当にどうなるのか心配です。企業が最も避けたいと思っている不確実性ばかりが高まり続けていて…。日本は追加輸出規制措置を打ち出すかもしれない」と心配しながら言った。この役員は「いつ、どのような方法で日本の報復が韓国企業を襲うか見当も付かない」とも言った」

 

韓国によるGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄は、産業界に大きな不安の種を蒔いている。一つは、日本からの経済報復を招くこと。もう一つは、国際的に韓国の安全保障への懸念である。これが、「コリア・ディスカウント」(韓国評価の引下げ)に結びつきやすいという懸念だ。3回目の通貨危機リスクの増大である。

 

(2)「韓日関係悪化で韓国産業界の悩みは深まるばかりだ。日本は先日、韓国への輸出を規制した極端紫外線(EUV)用レジスト(感光材)を二度許可し、両国の確執が一息つくのではと期待されたが、GSOMIA破棄で一寸先も見えなくなってきたからだ。韓国産業界は、日本が8月28日に韓国をホワイトリスト国(輸出審査優遇国)から除外する施行令を発効させると共に、追加規制を打ち出すのではないかと心配している」

 

8月28日になれば、韓国が法的に日本の「ホワイト国除外」になる。そうなれば、日本政府は追加規制がしやすくなると不安を募らせている。繰り言になるが、今の政権が保守政権であれば、産業界の意見を十分に聞いてGSOMIA問題を考えたであろう。現政権は、与党の利益になることしか考えないのでその落差が大きい。

 

(3)「最も懸念が大きいのは、51日間にわたり日本製フッ化水素の供給が断たれている半導体業界だ。現在、サムスン電子とSKハイニックスは工程に投入するフッ化水素をこれまでよりも1020%減らして緊急対応している状態だ。このように節約して使っても在庫量は2カ月程度に過ぎない。業界関係者は「素材の国産化と供給の多様化が成功しても、必要なだけのフッ化水素を安定的に確保するには、早くても年末になるだろう」と語った」

 

半導体業界は、手持ちのフッ化水素を節約しながら使っても、在庫は2ヶ月ぐらいでなくなる。その後の見込みが立たないだけに苦悩は深まっている。日本政府は、民生用について問題なく輸出できると説明しているので、ギリギリの線で10月からは輸出が再開されるはずだ。

 

(4)「GSOMIA破棄で、韓国企業に対する国際的な信頼性や安全性が低下するという懸念も出ている。 10大グループの幹部は「すぐに影響を受けるわけではないが、大きなダムを崩す恐れのある小さな穴ができたようなものだ。安保問題により『コリア・ディスカウント』(韓国に対する評価が下がること)が発生するのではとみんな心配している」と言った。ある中小企業代表は「これまで日本が騒いでも対話の道が閉ざされたことはなかったが、今となってはこうした期待も難しくなっているのでは」と語った」

 

安全保障問題は、カウントリー・リスクで最大の注意点である。それが、韓国政府自らの手でGSOMIAを破棄してしまった衝撃は大きい。韓国が、国家としての安全保障を脆弱化させていると受け取られがちだ。米中貿易戦争激化の中で、韓国へ迫り来る経済危機のリスクを拡大させたのである。この点で、文政権は「禁じ手」を使ったという批判は免れない。

 

(5)「韓国産業界では、「日本がディスプレイ・半導体・機械産業に不可欠な素材を追加で輸出規制したり、関税引き上げや韓国人ビザ発給基準を強化したりするなどの報復措置に出るのではないか」という話もささやかれている。洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官も同日の懇談会で、GSOMIA終了措置で、今回の輸出制限による経済報復措置を対話で解決していくには困難があるだろう。日本の措置が長期間続き、経済に与える不確実性が高まるかもしれない」と言った。

 

政府の経済副首相が、GSOMIA破棄によって対話で日本政府と話合うことが困難になろうと説明している。大統領府の「86世代」は、日本へ報復したと意気揚々でも、産業界はそのリアクションに大きな不安を抱えている。