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韓国は学歴社会である。一日20時間程度、受験勉強しないとトップクラスの大学に入学できないというほど過熱化している。寝食を忘れて受験勉強する一方で、親の七光りで一流校へ「無試験入学」とは、あまりにもかけ離れた話だ。これでは、学生が怒り心頭でデモをしたくなるのは当然だ。

 

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の側近である曺国(チョ・グク)前民情首席秘書官の娘に大学への不正入学などの疑惑が浮上し、検察は27日、娘の母校など関係先を一斉に捜索した。ここで、気付くことは、前大統領の朴槿惠(パク・クネ)氏の失脚の理由の一つは、朴氏の長年の友人である崔順実(チェ・スンシル)の娘が、名門女子大へ無試験入学したことが発覚、これが朴前大統領弾劾へのバネとなった。

 

このように、文大統領と朴・前大統領は、側近のスキャンダルがよく似たケースとなってきた。崔順実の娘のケースは「ノー」だが、曺国氏の娘の場合は「イエス」とは行くまい。いずれは、文氏の側近である曺氏が重大決意をせざるを得まい。

 

『日本経済新聞 電子版』(8月29日付)は、「韓国揺らす側近スキャンダル、文在寅氏にもブーメラン」と題する記事を掲載した。

 

(1)「政権交代から23カ月。文政権の任期が折り返しに近づきつつある韓国では、次期法相候補の曺国(チョ・グク)前大統領府民情首席秘書官のスキャンダルが最大の話題をさらっている。曺氏をめぐり韓国メディアに報じられているのは、家族が経営する学校法人の不適切な相続の疑惑や、公職にありながら私募ファンドに投資していた疑惑など。なかでも娘の不正大学入学疑惑と奨学金不正受給疑惑が世論の激しい批判を浴びている光景は、朴政権時代の崔被告のケースと重なる」

 

韓国では、不正入学疑惑だけで「退場」を命じられるほど、厳しい社会批判を浴びる。曺氏もこのケースから逃れられまい。

 

(2)「『庶民派大統領』を志向する文大統領自身は朴前大統領と同様、派手なイメージとは程遠い。スキャンダルの内容は異なるとはいえ、側近に足をすくわれた構図は似ている。文氏が信頼を寄せ、「要職の秘書官法相」という花形コースを歩ませようとした曺氏に数々の疑惑が浮上した。同氏は「ポスト文」の一人にも名前が挙がる革新系のホープでもある。朴政権に向けた非難がブーメランとなって文氏に跳ね返ってきている形だ。就任以降、政権との長年の癒着を断ち切る検察改革を唱えてきた文大統領は、その指揮を曺氏に執らせようとしていた。それだけに今回、検察が曺氏の娘の母校など関係先を一斉に捜査したのを止めるわけにはいかないだろう。「公正」「正義」を旗印に若者の心をつかんできた文氏は求心力維持へ正念場を迎えている」

 

今回の検察捜査は、大統領府に事前の連絡も入れずに行ったという。多くの家宅捜索先ゆえ、「証拠」は揃えられるであろう。

 


『ハンギョレ』(8月24日付)は、「
危ういチョ・グク法務部長官候補の選択は」と題する記事を掲載した。

 

政権支持派のメディアである『ハンギョレ』は、曺氏の法相候補辞退を薦めるような記事である。民意の支持を失っては、法相としての業務遂行は不可能という理由だ、

 

法務部長官候補であるチョ・グク氏が危うい状況に置かれている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最も信頼する人物の一人と評価され、次期大統領候補にまで分類されたので、検証において激しい攻防が予想されたが、これほど激しいとは予想できなかった。とうとう彼の進退が取りざたされることが全くおかしくない状況にまで至った。

 

(3)「生涯を法曹文と共にしたチョ候補者が、正体の分からない国民感情法、すなわち民心の海にはまった状況だ。民心の海には澄んだ水ばかり集まるのではなく、あらゆるごみも一緒に集まる。しかし、大事なのはこのような混濁があるからといって海が海ではないわけではないという点だ。これまで多くの人々が、この国民感情法にはまって戻ってこられなかった。チョ候補者と同じ法曹人のパク・ヒテ元国会議長やアン・デヒ元最高裁裁判官などがそうだった。彼らはそれぞれ、娘の優遇入学、前官礼遇論争で落馬したが、彼らが退いた分だけ韓国社会は一歩進んだ」

 

「国民感情法」とは、喩えである。国民感情が受入れなければ「ノー」というもの。娘の優遇入学は、「国民感情法」の受入れない最たるケースである、

 

(4)「(進退の)選択はチョ候補と文大統領の役割だ。これまで「法的な欠陥がないので問題はない」という態度を示していたチョ候補者は、22日に「法的問題がないからといって知らないふりしない」と話した。彼が2015年に新政治民主連合の革新委員を務めた時、公職選挙候補から排除する者の第一条件に掲げたのは「道徳的・法的欠陥」だった。最も重要なのは国民の意思だ。チョ候補者が9日に長官候補者になって述べた言葉に答があるかもしれない。「権力を国民にお返しするのは、文在寅政府の国政課題であり、私の使命だった」。権力を国民に与えることは、国民の言葉に耳を傾けることから始まる」

 

曺氏が、かつて公職選挙候補から排除する者の第一条件に掲げたのは、「道徳的・法的欠陥」であったという。曺氏が法相候補として、すでに「道徳的・法的欠陥」を指摘されている以上、自ら辞退するのが順当であろう。「権力を国民にお返しするのは、文在寅政府の国政課題であり、私の使命だった」とも言った。その言やよし、だ。先ず、自らが実行することである。