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政治家にとって「民意を問う」は、民主政治の原点と言えます。だが、政治家本人が定見を持たず、民意を示す世論調査がサイコロの役割を果たすとしたら悲劇ですね。

 

その悲劇の政治家が、文在寅大統領です。今回の韓国政府による「GSOMIA破棄」は、まさに世論調査がサイコロの役割を果たしました。文氏には、日米韓三カ国による安全保障インフラという認識がなかったのです。

 

米国政府が、大統領補佐官や新国防長官を韓国に派遣して、「GSOMIA継続」を懇々と説明しました。その時文氏は、「分った」顔をしながら、ほかのことを考えていたのです。それが、文在寅氏の偽らざる姿でした。毎日、秘かに行っていた「GSOMIA破棄」についての世論調査で賛成が、反対をどれだけ上回っているかを調べていたのです。米国の要人に会っても、上の空であったに違いありません。

 

大統領府では、「GSOMIA」についてギリギリまで状況を見極めて決定すると言っていました。それは、世論調査結果の動向だったのです。世論調査で「破棄」が多数ならば、米国の要請を断っても「破棄」する方針でした。来年春の総選挙を考えれば、「破棄」が有利と踏んだのです。この浅ましいまでの「選挙至上主義」は、文氏の大統領引退後の運命に深い関わりがあるからです。

 

過去の例から見て、引退後の韓国大統領はほぼ「不幸」な運命を辿っています。賄賂などの事件が絡み、親族や本人がその罪を問われています。文氏も例外という保障はどこにもありません。労組との癒着、市民団体との蜜月関係。叩けば、必ず埃が出てくるに違いありません。文氏の後任大統領が保守系ならば、必ず「積弊」による保守党圧迫を取り上げ、そのからくりを究明すべく捜査を検察に委ねるでしょう。

 


こうしたリスクを回避するには、来年の総選挙を勝ち抜き、その余勢で大統領も進歩派で占めなければなりません。それには、米国へ不義理をしても「GSOMIA破棄」が、文氏の身を守る上で不可欠という結論になったのです。

 

事実、会議では外交部と国防部が「継続賛成」。反対は、大統領府の側近でした。彼らは、事前に打ち合わせし、次期大統領選を見据えた行動を取ったのです。大統領府の秘書官は、与党候補が次期大統領選で敗れれば、失職する人たちです。失業しないためにも「GSOMIA破棄」に持ち込まねばなりません。職がかかっていただけに必死だったでしょう。

 

文政権にとって世論調査は、サイコロの役割を果たしているのです。

 

現在、韓国社会で最大の問題は、次期法相候補の曺国(チョ・グク)前大統領府民情首席秘書官のスキャンダルです。チョ氏の娘による、大学不正入試が取り沙汰されています。韓国では、不正入試が最大の社会問題になる国です。すでにこれを理由に、文大統領の不支持率が初めて50%を上回る事態を迎えています。

 

ここで、文政権にとって決定的な世論調査結果が出ました。

チョ氏の法務部長官賛成:18%

         反対:48%

文政権の世論調査重視姿勢から言えば、チョ氏を法務部長官に就任させるわけにはいかないでしょう。文氏の後継者含みと言われているだけに、文氏はどう対応するのでしょうか。「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」ことができるか。文在寅氏の人間の器が試されています。