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中国が、間もなく経常収支の赤字国に転落するのは確実になっている。「一帯一路」で資金を大盤振る舞いし、高利貸しまがいの「債務漬け」にして発展途上国の港湾を差し押さえるなどよりたい放題できた。それも今は夢。中国自身が経常赤字国スレスレの状態に落込んできた。

 

昨年の中国の経常収支黒字はGDPの0.4%だった。世界の工場と呼ばれ、この比率が10%超に達していた10年余り前からは様変わりになっている。黒字縮小の一因は、輸出減による貿易黒字の減少。もう1つの重要な要因は、外国旅行する中国人が増えたことで、昨年はサービス輸入5000億ドルの大きな部分を占めた。今年の経常収支黒字は、GDP比で0.1%(ブルームバーグ予測)とさらに落込む見込みである。

 

『日本経済新聞』(8月30日付)は、「中国、資金流出を警戒、急激な元安混乱に備え」と題する記事を掲載した。

 

中国政府が海外への資金流出を抑制する新規制を導入した。資金流出が加速した場合、海外送金や外貨売却が多い銀行の評価を引き下げる新ルールを適用する。不動産会社には借り換え目的以外の外債発行を禁じた。米中貿易戦争が長期化するなか、人民元相場で11年ぶりとなる1ドル=7元を突破し、当局は当面この水準を容認しているが、元安に歯止めがかからない状況は回避したい考えだ。

 

(1)「中国政府は元安を容認して輸出企業への影響を緩和する方針だが、2015年の人民元切り下げを機に起きた「人民元ショック」のような急激な元売り圧力に襲われることを警戒する。このため導入したのは、元売りが膨らまないよう銀行の海外送金などを制限する新しい規則だ。金融システムの安定が損なわれかねないと判断した場合、国家外貨管理局は「非平常時」と認定する。各行の元の海外送金、外貨売却の状況を全国平均と比べ、差が大きいほど評価を下げる。低評価の銀行は業務に制限をかけられる可能性がある

 

「船底一枚下は地獄」の喩え通り、経常赤字の淵に立たされた経済運営である。今年の経常黒字の対GDP比は0.1%と吃水線スレスレである。この状態で米国と貿易戦争とは大した度胸である。そのため、下線部分のように各銀行の首に紐をつけている。元の海外送金、外貨売却の状況を全国平均と比べて大きければ「評点」を低くして銀行業務に制限を掛けるというもの。これでは、事実上の「送金停止」である。中国も落ちぶれたものだ。

 


(2)「現在も当局は海外送金を制限するため、個人顧客に詳しい資料を提出させるよう銀行を厳格指導している。留学費用なら入学許可書、仕送りでは相手先の在職証明などを求める。「不動産や保険商品の購入目的での海外送金は認めていない」(準大手銀行の支店)。元の海外送金と顧客への外貨売却は、元安や資金流出が止まらなかった1617年にも外貨管理局が規制した。このときは外国人が円換算で数十万円規模の送金をするのも難しくなった。手段を選ばない規制に海外から批判を浴びたが、今回は直接的な資本規制は回避して批判をかわす狙いだ。だが外貨管理局は平常時と非平常時の判断基準を示しておらず、当局のさじ加減で海外送金に支障が出る恐れがある

 

下線を引いたように厳しい制約を掛けている。だが、中国人は「規制破り」の名手である。すでに、抜け穴として「仮想通貨」が利用されている。ここまで追い込まれても、米中貿易戦争では胸を張って、米国と渡り合っている。「合意できるような環境を整えろ」と米国へ注文を出しているが、舞台裏かくのごとしである。落城が近い感じだ。