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中国は、南シナ海の権益を巡る争いで新たな動きを見せている。常設仲裁裁判所が、中国による南シナ海領有の主張を「全く根拠なし」と却下した。中国は、これに従わず無視しているが、提訴国フィリピンへの懐柔策を見せ始めた。南シナ海でのガス田共同開発の利益のうち6割をフィリピンへ無償で渡すというもの。ただし、南シナ海での判決を無視することが条件という。

 

盗賊が、6割を相手に渡すから「訴えないでくれ」というような話である。違法を前提にした利益誘導である。フィリピンが、こういう話に乗るようであれば、「国格」が著しく下がるわけで、中国と同じ「盗賊国家」に成り下がる。

 

『ロイター』(9月11日付)は、「中国が南シナ海開発で提案、仲裁裁判決無視が条件」と題する記事を掲載した。

 

フィリピンのドゥテルテ大統領は、中国の習近平国家主席との最近の会談で、南シナ海での中国の主張を退けた仲裁裁判所の判断をフィリピン側が無視することを条件に、同海でのガス共同開発の権益の過半数をフィリピンに譲渡するとの提案を受けたことを明らかにした。

 

(1)「大統領府によると、ドゥテルテ氏は10日遅くに記者団に、仲裁裁判断とフィリピンの領有権の主張を「脇に置く」ことができれば、中国側はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)にあるリードバンクの共同ガス開発事業の権益の60%をフィリピンに譲渡し、残る40%を維持すると習主席が提案したと紹介した」

 

中国は、こういう違法行為を積み重ねてゆき合法化させる意図であろう。黄河の中原から発した漢族が、現在のような広大な版図を抱えるまでにいたった裏事情が透けて見えるようだ。こういうやり方で相手の領地を奪ってきたに違いない。中国人は、過去に行った事例がない限り新たなことを始めない民族である。過去の成功事例をなぞっているにすぎない。その意味では、臆病な民族である。

 


(2)「中国外務省と在フィリピン中国大使館からドゥテルテ氏の発言についてコメントは得られていない。オランダ・ハーグにある仲裁裁判所は2016年に中国の主権の主張を全面的に退け、フィリピン沖約85キロにあるリードバンクのガス田を開発するフィリピンの権利を明確化する判断を下している。中国はこの判断を認めていない」

 

フィリピンは、せっかく仲裁裁判所から、リードバンクのガス田開発権利の正当性を認められている。その貴重な権利を棚上げして、わずかな権利で「身を売る」ような愚かなことをしてはならない。

 

(3)「ドゥテルテ氏はこれまで、南シナ海での中国による人工島造成などの活動について対立を避けてきた。フィリピンが仲裁裁判断を無視し、中国と協力することに合意すれば、同海の資源を巡り中国と領有権を争ってきたベトナムやマレーシアなどの諸国が不利な立場に置かれることになる。ドゥテルテ氏は習氏の提案に同意したかどうかは明らかにしていない。ただ、仲裁裁判断のEEZに関する部分については「経済活動を確保するために無視する」と言明した」

 

フィリピンは、ASEANの利益を守るという共通認識にたてば、ベトナムやマレーシアの権利侵害になるような取引を中国としてはならない。それにしても、中国の飽くなき領土拡張欲には驚くほかない。みっともない行為と思わないところが、専制国家の特色である。恥ずかし限りの行動だ。ロシアや中国は、旧帝政国家の流れを継ぐだけに、桁外れの行動をするから警戒しなければならない。