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米中貿易戦争の影響を大きく受けている韓国が、輸出戦略の転換を図ると発表した。だが、早くもその非現実性が指摘され、余りにも無謀という声が出ている。政府が現在、進めている「素材国産化計画」は、ここ20年間に政府が取り組んできたことの繰り返しとされている。これと同様に、輸出戦略の転換も同じ轍を踏む恐れがあろう。闇雲に計画を立てても、空理空論に終わるのだ。

 

『朝鮮日報』(9月15日付)は、「『新興輸出市場を育成し、先進市場の割合減らす』という机上の政策」と題する記事を掲載した。

 

(1)「洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相が11日に開いた「経済活力対策会議」で、企画財政部、産業通商資源部、中小ベンチャー企業部など関係官庁合同で示された「輸出市場構造改革方案」の主な内容は次のようなものだ。

①韓流を活用したブランドマーケティング強化

②化粧品など有望消費財に対する輸出保険優遇と現地展示会出展支援

ODA(政府開発援助)など政府レベルの通商協力推進

 

韓国政府は米国、中国、日本、欧州連合(EU)など従来の「主力市場」に対する輸出割合を2022年までに13.4ポイント引き下げ、東南アジア、中央アジア、中南米、アフリカなどに対する輸出割合を1.5倍に高めることで、全体の輸出を伸ばすとした。韓国企業が過去50年にわたり、血と汗を流して勝ち取った先進市場中心の輸出構造をわずか4年で大幅に変えようとするものだ」

 

この計画をより具体的に示すと次のようになる。

       2018年    2022年   市場

主力市場   53.4%     40%          米国・中国・日本・EU  

戦略市場   21%       30%   新南方・新北方国家

新興市場    9%       15%   中南米・中東・アフリカ

 

こうした青写真を見ると、欠陥はなさそうだが、後のパラグラフに出てくるように、いくつかの疑義が出されている。実現不可能というのだ。

 

(2)「業界からは、「先進市場の割合をわざわざ減らそうというのは話にならない」「官治時代でもないのに、政府が市場別の輸出割合の目標値まで示すにはとんでもない」といった批判が出ている。政府は昨年12月から先月まで輸出が9カ月連続で減少すると、「輸出市場多角化で輸出の第2の飛躍を成し遂げる」として、今回の方案を示した。政府は貿易保険に37000億ウォン(約3300億円)、グローバル研究開発(R&D)と海外での合併・買収(M&A)に27000億ウォンなど総額6兆ウォンを支援する計画だ」

 

政府は、下線を引いたような施策を行うとしている。貿易保険の拡充やR&D、海外のM&Aに総額6兆ウォン(約5100億円)で支援するとしている。文政権は、財政資金を湯水のように投入すれば、それで実現可能という安易さが見られる。「韓国企業が過去50年にわたり、血と汗を流して勝ち取った先進市場中心の輸出構造をわずか4年で大幅に変えようとするものだ」という反発が強い。

 

(3)「4大主力市場に対する韓国の輸出割合は現在も高いわけではないとの指摘が聞かれる。昨年の全世界の国内総生産(GDP)に占める米国・中国・日本・EUの割合は67%で、韓国の輸出全体に占める割合は53.4%だった。「主力市場に対する輸出を伸ばす余地が残されている」との主張が聞かれる根拠だ。西江大の許允(ホ・ユン)国際大学院教授は「先進市場で認められた企業は開発途上国市場に進出しやすいが、反対に開発途上国で成功した企業が先進国の消費者に認められるのは非常に難しい」とした上で、「政府の目標通りに先進国市場への売り上げ割合を減らし、開発途上国に集中する企業があるとすれば、市場から『滅びゆく企業』と評されるだろう」と話した」

 

下線を引いた部分が、韓国輸出の生命線になっている。米国・中国・日本・EUの4大主力市場でさらに輸出を伸した企業は、開発途上国市場に進出しやすい。逆はあり得ないと指摘しているが、その通りだろう。

 

日本の戦後の輸出戦略は、高所得国の米国市場開拓を目指して製品開発を進めた。重化学工業の育成である。米国での成功を足がかりにして、他国市場の開拓を進めた。こういうパターンが常道であって、所得の低い地域への輸出で成功した製品が、高所得国で受入れられるはずがないのだ。

 

こういう現実を知らない輸出戦略をひねり出した大元は、大統領府だろうと見られている。元学生運動家の秘書官が、現実を知らないで得意になって打ち出したものに違いない。亡国の秘書官である。