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第70回「国慶節」直前に、なんとも間が悪い研究報告が発表された。世界銀行と中国政府の国務院発展研究センターが、合同の研究ティームを立ち上げたレポートである。なんら改革しなければ、2030年代に「1%台」に落込むという衝撃的な内容だ。だが、これでは「拙い」と見たのか、理由もなく2049年の中国建国「100年」の経済成長率は、「2%台」に回復すると「花」を持たせたバラ色に飾ってある。これは、「お愛嬌」と言うべきであろう。「中国式社会主義」は死滅する運命だ。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月17日付)は、「中国、30年代に成長1%台も、改革なしなら」と題する記事を掲載した。

 

中国国務院(政府)のシンクタンク、国務院発展研究センターと世界銀行は17日、中国が技術革新(イノベーション)を通じて生産性を高めるように提言した報告書を公表した。中国が資源配分のゆがみを正すなどの改革を怠った場合、20311~40年の実質成長率が平均1.%に落ちるとの試算も盛りこんだ。

 
(1)「報告書は、「イノベーション中国」。2年にわたる共同研究の成果をまとめた。国務院発展研究センターと世銀は122月にも「2030年の中国」と題した報告書を共同でまとめており、今回はそれ以来となる。報告書は巨額の投資、人口ボーナス、農村から都市への人口流入といった中国の高成長を支えた要因を挙げ「中国はこれらに頼った成長はもうできない」と指摘した。金融危機後に「中国の全要素生産性の伸びが鈍った」として、先進国の半分にとどまる生産性を引き上げることが今後の成長維持に必要だとした。

 

過去の高度成長は、①巨額の投資、②人口ボーナス、③農村から都市への人口流入の3要因に基づく。経済政策の巧拙とは余り関係なく実現した。それだけに、内部矛楯も激しい。市場機構に依拠しない「人縁経済」(統制経済)ゆえに、矛楯が至る所にこびりついている。本来ならば、市場機構を使ってこの「垢」を取り除くのだが、それもままならぬと言う最悪事態に落込んでいる。

 

(2)「報告書は生産性向上のための具体策を3つ挙げた。まず土地、労働力、資金の配分のゆがみを正すこと。戸籍改革や国有企業と民間企業を公平に扱うことなどが必要とした。次に、いまある先端技術やイノベーションの成果を中国国内で広く普及させることを求めた。最後に、新たな技術やイノベーションを絶えず生むことが必要とした」

 

中国にとって最大の矛楯は、建国100年の2049年に米国経済を抜くという目標が、米国の強い反発を受けている点だ。グローバル経済からイノベーションを享受できるメリットが、米国の「中国包囲網」によって遮断されるデメリットは大きい。習近平氏の掲げる「中華の夢」は、それ故に阻まれるというジレンマに悩まされるに違いない。 

 

(3)「報告書は改革の進み具合に応じ、将来の成長率の見通しも示した。中国の成長率は18年に6.%だった。

 

  適度に改革した場合      改革しない場合   全面的改革の場合

21~30年平均5.%        4.0%      5.1%

31~40年平均2.%        1.7%      4.1%

41~50年平均2.%        2.3%      3.0%

 

上記の3ケースの中で最も現実的なのは、「中国式社会主義」にこだわる習近平氏の存在によって、「改革しない場合」であろう。習氏は民族主義者であり、西欧主義を敵視する軍国主義に立脚している。この視点から言えば、中国経済は「衰退」の一途であろう。だが、2041~50年に「2.3%」に戻る理由が不明である。習近平体制が終わって、「揺り戻し」が起こる、とでも言うのだろうか。それほど根拠不明の話だが、建国100年の2049年に花を添えようという程度のことだろう。