勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年07月

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    韓国人は、移り気である。北朝鮮の金正恩国務委員長の好感度が急上昇しているからだ。まだ、核放棄の具体的な日程も発表していない段階だ。それにも関わらず、「平和の使徒」のような持ち上げ方には驚く。実兄を暗殺し、叔父を粛清する人物である。多くの国民を強制収容所に放り込んでいる人間が、テレビに登場しにこやかに笑ったからと言って好印象とは早計であろう。

     

    『朝鮮日報』(7月5日付)は、「韓国での金正恩氏の好感度が急上昇」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「峨山政策研究院のキム・ジユン先任研究員などが7月5日に発表した『米朝首脳会談と韓国人の周辺国に対する認識』によると、韓国人の北朝鮮に対する好感度は4.71点(10点満点)で、2010年の調査開始以来最高となった。調査は米朝首脳会談の直後の先月1820日に、韓国全土の満19歳以上の男女1000人を対象に電話で行われた」

     

    (2)「北朝鮮への好感度は3月(3.52点)に比べ1点以上高くなった。米国に対する好感度(5.97点)よりは低いが、中国(4.16点)、日本(3.55点)を上回った。北朝鮮に対する好感度が中国を上回ったのは初めてで、日本を上回ったのも4年ぶり。南北、米朝の首脳会談を経て、北朝鮮との関係改善に向けた期待感が反映されたものとみられる」

     

    韓国人の北朝鮮への好感度は4.71(10点満点)。今年3月調査時点の3.52よりも1.19もの上昇である。中国(4.16)や日本(3.55)を大きく引き離した。南北は分断国家ゆえ、南が北を思う気持ちは格別な物があろう。このことについては、ごく自然のことだと納得する。

     

    問題は、次に結果が出てくる金正恩氏への好感度が高いことに「エッ」と驚かざるを得ない。

     

    (3)「金正恩委員長に対する好感度は4.06点で、昨年11月(0.88点)の約4倍、3月(2.02点)の約2倍となった。周辺国の指導者の中でも、米国のトランプ大統領(5.16点)に次いで2位となった。金正恩委員長への好感度は、中国の習近平国家主席(3.89点)より高く、日本の安倍晋三首相(2.04点)の約2倍に達した」

     

    金正恩氏は、韓国で「人気者」になっている。今回(6月調査=4.06)は、昨年11月調査よりも4倍。今年3月調査よりも2倍という好感度に達した。この倍々ゲームのような好感度を得ている理由は、テレビに映った姿だけである。高い「期待感」がこういう結果をもたらしたに違いない。「実績ゼロ」ゆえに急落する危険性は極めて高い「不安定人気」である。

     

    この「金人気」は、「文在寅大統領人気」にも通じたものがある。文氏も高い支持率を得ているが、経済政策は落第である。南北会談を実現したことが、文氏の高支持率の理由である。韓国人の価値判断基準は、「感情8割:理性2割」と言われている。金正恩氏も文在寅氏も感情論だけで支持されている点で共通した現象である。要するに、「熱しやすく冷めやすい」国民性の反映であろう。

     

    (4)「研究院は注目すべき点として、北朝鮮と金正恩委員長に対する20代の好感度が低いことを挙げた。北朝鮮に対する好感度は40代と50代が5点以上と高かった一方、20代は3.95点で唯一3点台だった。また、金正恩委員長に対する好感度も20代は3.00点で最も低く、60代以上(3.71点)と比べてもはるかに低かった。研究院は『若者層の“安保・保守”性向が際立つ結果となった』と説明した」

     

    ここでは、重要な指摘がある。「若者が金正恩氏へ好感を持っていない」という事実である。韓国の若者の大卒比率は世界一である。25~34歳の69.99%が大卒(2016年)だ。これが、金氏を冷めた目で眺めている裏付けであろう。この記事では、韓国の若者は「安保・保守」性向が強いと見ている。南北問題を冷静に分析しているのだ。「理性2割」の得がたい層かも知れない。

     

    韓国では、この若者層が他の世代と異なる価値観を持っている。文政権は、南北統一の旗を振りたいだろうが、若者は反対の立場だ。これ以上、北からの迷惑を被りたくない。それが本音である。彼らには民族統一への関心は薄い。それ以前にやるべき問題が山積しているという認識だ。雇用の改善と経済的な自立への願望である。文政権は、この問題に素通りである。


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    北朝鮮は、核放棄という「ルビコン川を渡った」のだろうか。世界の最貧国が、核とミサイルで防衛という図はやっぱり漫画に見える。早く、普通の国になって周辺国を安心させて貰いたい。これが、日本に住む人間の切実な願いである。

     

    北の金正恩氏は、第一回の南北首脳会談の際、ベトナム型の経済開発を考えていると韓国の文在寅氏に語った。中国モデルでなく、ベトナムモデルの理由は明らかでないが、北の本音である「中国嫌い」を漏らしている感じで興味深い。

     

    そのベトナムは現在、「TPP(環太平洋経済連携協定)11」のまとめ役として、日本に全面協力した間柄である。ベトナムは、中越戦争(1979年)で中国に侵略されたほか、南シナ海では島嶼を奪われた怨念の相手国である。北朝鮮は、こういうベトナムの苦悩に共感したのか。真相は分らない。

     

    北朝鮮がベトナムの道を歩んでいくには、市場改革と開放をし政治・経済の安定を維持しなければならない。実は、この基盤づくりが重要である。北朝鮮は、賄賂が盛んと言われており、市場経済になるための社会制度から整備する必要がある。北朝鮮は、かつて南北が合同で北の開城で操業した工業団地を、何カ所かつくればそれが雛型になる。こういう議論も聞かれるが、その程度のことで済むはずがない。

     

    北朝鮮経済に詳しい民間非営利団体(NPO)チョーソン・エクスチェンジ(本部・シンガポール)の創設者ジェフリー・シー氏は、米国経済通信社『ブルームバーグ』のインタビューで、外資による事業参入に少なくとも10年を要するとの見通しを明らかにした。

     

    ベトナムと中国は、「漸進的な改革で安定的な体制への転換に成功した。一方、ソ連と東欧の場合は、急進的な改革で計画経済から市場経済に移行した。この過程が非常に不安定だったことが、共産党崩壊につながった」(『中央日報』7月5日付)。北朝鮮の場合、強制収容所や公開処刑など、過激な政治体質を持っている。当然、国内には恨みを抱える人々は無数いるはずだ。金体制崩壊を狙うグループが現れないとも限らない。なおのこと、経済改革を行なうには、その準備過程が必要になるはずだ。

     

    『ブルームバーグ』(7月4日付)は、「北朝鮮経済、外資参入に最低10年、NPO見通し、市場開放の障壁多数」と題する記事を掲載した。

     

    この記事は、前記の北朝鮮経済に詳しい民間非営利団体(NPO)チョーソン・エクスチェンジ創設者、ジェフリー・シー氏のインタビューである。

     

    (1)「北朝鮮が米朝首脳会談後の制裁緩和を見据えて経済開放を進めるには、政府当局者による情報開示や透明性の欠如が障壁になると指摘。『市場開放に当たっては、この体制を変える必要がある。北朝鮮が海外のビジネスの流儀に合わせるのには、長い時間がかかる』との見方を示した」

     

    北朝鮮は、秘密の多い閉鎖国家である。情報開示や透明性の欠如が、市場経済への障壁になる。先ず、これを取り除かねばならないが、簡単に進むはずがない。米朝首脳会談の過程を見てもそれが分る。一言で言えば、謎の多い国である。

     

    (2)「貿易規制が緩和され、経済が徐々に開放されても、潜在的な外国人投資家を呼び込むに当たって課題は山積している。世界の汚職を監視する非政府組織(NGO)『トランスペアレンシー・インターナショナル』によると、世界の腐敗認識指数で北朝鮮は最下位。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、北朝鮮では政府による公開処刑、強制労働、拷問など国民への人権侵害が蔓延(まんえん)しているとしている。しかし、前出のシー氏によると、こうした政府の厳しい制裁下にあっても、国民の起業家精神は奪われてはいない」

     

    外国人が、北朝鮮で事業を始めるまでには超えなければならない山がいくつかある。賄賂の横行、人権弾圧、強制労働など非正常項目の一掃には相当の時間がかかるだろう。要するに、正常なビジネスをする前の障害克服が問題である。

     

    (3)「シー氏は北朝鮮で最も潜在的な成長力が大きい部門として、小売業や道路や鉄道などのインフラ開発を挙げた。米中央情報局(CIA)が発行する『ザ・ワールド・ファクトブック』によると、北朝鮮には豊富な天然資源があり、鉱業部門は有望だ。さらに、レストランやカラオケが人気を集めており、レジャー市場も成長が見込めそうだ」

     

    潜在的な成長力を持つ分野は、小売業や道路や鉄道などのインフラ開発。また、鉱業のほかにカラオケ、レストラン、レジャー市場など身近で手軽に楽しめる分野が有望だという。何か、戦後復興期の日本を想像する。1940年代の後半という感じで、70年前の

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    スポーツは勝って良し。破れた後の美しい涙もまた良しだ。ロシアW杯サッカーの日本代表はベルギーに惜敗したが、積極的な攻撃が世界のファンの心を捉えた。

     

    米TV『CNN』は4日(日本時間)、「日本代表はベルギー戦の後、自分たちが使用したロッカールームを清掃し、スパシーバ(ありがとう)というメッセージを残した」とし「日本代表が皆さんの親から休日のディナーに招待されるほどのマナーを持つことは疑いない」と評価したほど。試合に敗れて、マナーで得点を挙げた試合であった。

     

    『朝鮮日報』(7月4日付)は、「サッカーW杯日本代表・サポーターの美しい去り際に賞賛相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     
    日本は3日(韓国時間)に行われた決勝トーナメントのベルギー戦で23の逆転負けを喫した。日本のサポーターたちは涙でほほをぬらして自国代表チームの敗戦を悲しんだが、それでもいつも通り、用意してきたゴミ袋を持って会場だったロストフ・アリーナの隅々を歩き回った。観客約45000人が同アリーナに捨てたペットボトル・缶・ビニール袋などは瞬時に消えた。英日刊紙ザ・サンは「日本は試合では敗者だったが、スタジアムでは勝者だった。日本のサポーターたちは世界最高のマナーを率先垂範した」と絶賛した」

     

    「日本の選手たちも同じだった。国際サッカー連盟(FIFA)ゼネラルコーディネーターのプリシラ・ジャンセンズさんは試合直後、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ツイッター」に、日本代表チームが去った後のロッカールームの写真を掲載した。ロッカールームは床がピカピカで滑ってしまうのではないかと思うほど完ぺきに片付けられた状態だった。ジャンセンズさんは「日本代表チームはベンチはもちろん、ロッカールームまできれいに片付けた。しかも、ロシア語で『ありがとう』というメモまで残して去っていった。すべてのチームの鑑(かがみ)だ。彼らと一緒に仕事ができて光栄だった」と書き込んだ。FIFAは公式ツイッターで「日本に尊敬の拍手を送る」とコメントした」

     

    「勝っても、引き分けても、負けても、日本のサポーターの清掃マナーは変わらない。日本は初出場した1998年のフランスW杯から『立つ鳥跡を濁さず』とばかりに、とどまっていた場所をきれいにすることで有名になった。日本はこの時、グループリーグ3戦全敗で敗退したが、サポーターは黙々とスタジアムのゴミを拾い、仏紙ルモンドなど現地メディアに取り上げられた」

     

    「今回のW杯でも、コロンビアとのグループリーグ初戦から清掃・片付けをしていた。この様子を見ていたセネガルやポーランドなど、グループリーグ対戦国のサポーターたちも一緒にゴミ袋を持って片付けた。英BBCスポーツは『日本の試合がある日は、W杯ボランティア15000人が仕事がなくなる日だ。日本人は五輪やほかのスポーツの国際大会でも常にきれいに片付けてから競技場を去る、世界最高のスポーツ・ファン』と伝えた」

     

    かつて、欧州のサッカーのサポーターといえば、「荒くれ男集団」というイメージが付きまとっていた。気が付いたら、今ではそういう集団が姿を消している。日本のサポーターの礼儀を見倣ったのだろうか。海外メディアは、日本の代表選手やサポーターをこれだけ高く評価してくれた。立派な「外交官」役を果たした。改めて、感謝したい。


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    米中貿易戦争は、あすから双方が360億ドル相当の製品に25%の関税を科す。非生産的な振る舞いだ。原因は、米国が技術窃取を止めるように中国へ要求したのに対して、中国が「ノー」と答えた結果である。双方は断固、闘うと表明しているが、中国の劣勢は明らかだ。

     

    ここからが、中国の本領発揮である。例の「嫌がらせ」の連発が気になるところ。日本も韓国も、この「洗礼」を受けた。相手国産品の不買運動と旅行禁止措置である。得意の不買運動は、米国企業が単独で中国へ進出できず、中国資本との合弁形式である。となれば、米国産品の不買運動を始めると、中国のパートナーが損害を受けるので、不買運動の効果は期待薄になりそうだ。

     

    もう一つは、米国に対すうる「旅行抑制」である。ただ、表面きってハッキリとは言えないのが悩みだ。ニューヨークの目抜き通りから、中国人観光客が消えてしまったとなれば、「大ニュース」になって、世界中に配信される。これでは、中国政府の狭量さをわざわざ世界に宣伝するようなものだ。これまで、他国をいじめ抜いてきた中国が、はたと米国相手では手詰まり感が否めない。名案があるのだろうか。

     

    韓国紙『中央日報』(7月4日付)は、「米国と貿易摩擦中の中国、米国旅行注意令発動」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「『米国では銃器事故が多い。旅行者は怪しい人物に警戒しなさい』。中国と米国の貿易葛藤が深まる中、中国政府が米国を訪問する中国人に旅行注意令を発令した。在ワシントン中国大使館は、最近、公式サイトに掲示したお知らせを通じて、中国人観光客が米国を旅行する時は高、価な医療費、公共場所での銃撃と強盗事件、税関捜索および押収の危険、通信詐欺、自然災害などに注意しなければなければならないと警告したもの」

     

    駐米中国大使館は警告文で、『米国の治安状態は良くない。銃撃や強盗、盗難事件が頻繁に起こっている。したがって旅行者は周辺の環境や怪しい人々に警戒し、夜間は一人で外出してはいけない』と載せたわけだ。米国を低開発国並みに扱っている。これで、胸の溜飲を下げているのだろう。何か、「引かれ者の小唄」にも聞える話だ。中国のできる「嫌がらせ」がこの程度としたら、もはや米国へ撃つ弾もなくなってきた証拠かも知れない。

     

    米国産商品への不買運動はどうか。

     

    『ブルームバーグ』(7月4日付)は、「習主席の奥の手、米製品不買は中国側パートナーに打撃もたらす恐れ」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「米中貿易戦争の可能性が高まる中、中国の習近平国家主席の最大の武器の一つは、消費者による米国ブランドの不買運動になる可能性がある。しかし、不買運動は中国自体にも打撃を与える恐れがある。コカ・コーラやマクドナルド、ウォルト・ディズニーといった米ブランドの中国事業は中国政府の支援を受けた中国企業の共同所有となっているからだ。コカ・コーラの主要中国パートナーの一つは政府系の中糧集団であり、上海ディズニーランドは中国コンソーシアムが出資している。また中国国内のマクドナルドのフランチャイズの経営権は政府系複合企業の中国中信集団とプライベートエクイティ投資会社の中信資本が握っている」

     

    コカ・コーラやマクドナルド、ウォルト・ディズニーなど、米ブランドの中国事業は中国政府の支援を受けた中国企業の共同所有である。これでは、中国政府は不買運動という手に出にくくなる。こんな姑息なことをやる前に、米中貿易戦争を終わらせる方がはるかに有益なはずだが、さて、どうなるのか。



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     「失われた20年」。内外で、こうあざけられてきた日本経済も本領発揮である。あの高度経済成長時代を上回る労働力不足に悩んでいるからだ。完全失業率は2.2%。なんと25年ぶりとのこと。こういうデータが出てくると、少子高齢化時代だから当然、という説が流れるが間違い。少子高齢化時代では、潜在成長率自体が低下するもの。経済政策によって、この潜在成長率が引上げられ、労働需給が逼迫しているのだ。

     

    今後は、さらなる労働需給が逼迫化の見込みだ。TPP(米国を除いた環太平洋経済連携協定:11ヶ国)と日欧EPA(経済連携協定)が、今年と来年に相次ぎ発効する。両方の多角的貿易協定によって、GDPは13兆円、雇用が75万人も増える計算である。

     

    今ですら、人手不足は深刻である。この上さらに75万人もの労働需要が増えたらどういう事態になるのか。想像もできない騒ぎとなろう。あの高度経済成長時代の労働力不足は、地方の農村から次男や三男が都会へ出てきた。この人々が、大型団地で家族を持って日本経済を牽引した。今後は、外国から技能実習生」という名の人々が来日する。それでも人手が足りないことに変わりない。

     

    ここで、何が起こるのか。賃上げと設備投資の盛り上がりが期待される。

     

    先に成立した「働き方改革」で、同一労働・同一賃金が実現する。非正規雇用では年収200万円が限度であった。「これでは結婚もできない」と若者の悲痛な叫びを聞いて胸を痛めてきた。ところが、正規・非正規で賃金を差別してはならない時代へ移行する。ヨーロッパでは非正規雇用の待遇は、正規の80%見当と言われる。日本もその方向へ向かうはずだ。非正規雇用を冷遇したら、さっさと他社へ移ってしまう時代が来る。民主党政権時代では、想像もできなかった労働環境が現れそうだ。

     

    企業は、設備投資によって「省力化」を急がなければなあない。省力化という言葉も何十年ぶりに聞く言葉だ。日本経済の活力が戻って来た感じがする。

     

    『日本経済新聞』(7月4日付)は、「設備投資意欲高まる、日銀短観 機械など伸び率最高」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日銀が7月3日発表した6月の短観(業種別計数)によると、製造業では紙パルプが前年度比38.1%増、食料品が19.1%増とそれぞれ1974年度以降で最高の伸び率となった。生産用機械は29.6%と統計を遡れる2010年以降で最高だった。企業は長らく投資には慎重だったが、国内外の堅調な需要を受けて増産に動き始めている。各業種で設備投資が活況になってきたことは機械業種の投資計画の好調さにも表れている。生産用機械の投資計画は計画額、前年比伸び率ともに過去最高となった」

     

    製造業の設備投資計画では、紙パルプと食料品がそれぞれ1974年度以降で最高の伸び率となる。生産用機械も統計を遡れる2010年以降で最高という。久しぶりに聞く景気のいい話である。企業は、設備投資に踏み切る場合、長期の見通しが立つことが前提である。先行き、好展望という結論なのだろう。

     

    だが、米中貿易戦争になったらどうするのか。その対応は、次のようなものが予想される。

     

    第一、   急速な円高で1ドル100円突破のケース。「為替相場の耐性」が急速についているので収益に関係しない。人手不足は半永久的問題であるから省力の機械化投資をしなければ生き残れない。

    第二、   TPPと日欧EPAの合計によって、世界シェアは次のように高まる。

    GDP41.3%

    貿易額51.9%

    人口 15.5%

     

    まさに、日本経済は「大船」(おおぶね)に乗るから、大波が来ても安定度は高まると見られる。バブル崩壊は1990年1月の株価大暴落から始まった。あれから28年も時間がかかった。一口に「苦節10年」と言うが、「苦節30年」を経たのだ。あのとき生まれた赤ちゃんは、今は28歳だ。日本経済が、再び活力を取り戻すのに不足のない時間を経ている。


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