勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年07月

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    米国は、本気で中国に怒りを向けている。中国が、米国の技術を窃取しながらそれを認めない。そういう老獪なやり方に堪忍袋の緒が切れたのだ。中国による米国の知財権窃取は金額換算で6000億ドルに及んでいるという。濡れ手に粟で、米国の先端技術を盗み出そうという卑劣な行為に対して、鉄槌を下そうということだろうか。

     

    『大紀元』(7月28日付)は、「米、中国人研究者の入国ビザを不発給、技術漏えいを警戒」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米当局は、7月米国で開催された国際学術会議に出席する中国代表団全員のビザを不発給した。中国人『学術スパイ』による技術流出を強く警戒することが背景にあるとみられる。カリフォルニア州で1516日に開催された第42回「宇宙空間研究委員会(COSPAR)」で中国代表団は、地震電磁気観測衛星について研究発表を行う予定だった。しかし、米政府は全員にビザを発給しなかった。トランプ政権は、中国当局による米企業のハイテク技術の窃盗を防ぐため、6月11日から中国人留学生と研究者らへのビザ発給を制限し始めた。米通商代表部が昨年発表した調査では、中国による知的財産権侵害は、米企業に約6000億ドルの損失をもたらしたという」

     

    米国は、中国の送り出す「学術スパイ」に目を光らせている。国際学術会議への出席で入国ビザを申請した中国人研究者全員に不許可とした。これが、前例になって、中国人学者の米国入国は、事実上、不可能になった。米国の怒りのほどが分る。

     

    (2)「香港英字紙『サウス・チャイナ・モーニングポスト』(19日付)は、今回の代表団に元米国籍の中国人研究者もいると報じた。中国生物科学者で北京大学の饒毅(ジョウ・キ)教授は、1990年代米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)やハーバード大学で神経科学や生物化学の研究に従事していた。ミズーリ州のセントルイス・ワシントン大学で講師、教授を務めた後、米国籍を取得した。しかし、同氏は2007年、中国当局の海外人材呼び戻し計画、『千人計画』に応じ、米国籍を放棄し中国に帰国した。現在、北京市政府がバックアップしている北京脳科学と類脳研究センターの主任と同センター法人代表を務めている。饒氏は2016年以降、学術交流活動のほか、親族訪問のための渡米ビザも拒否されている」

     

    米国籍まで得た中国人学者が、米国籍を捨てて帰国して、米国で得た技術を中国へ持ち帰った例が報じられている。このように、米国を裏切る形になっただけに、米国の怒りは倍増している。その後、この当人は全ての米国入国を拒否されているという。当然であろう。

     

    (3)「米『ラジオ・フリー・アジア』(23日付)によると、在米中国人学者の楊占青氏は、『饒氏は米国で長い間、科学研究活動に携わった後、米のハイテク技術を中国に持ち帰り、現在中国でその分野の第一人者になっている。このような過去を持つ人に対して、米政府は警戒せざるを得ない』と分析した。米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は今年2月、上院情報委員会の公聴会で、中国人スパイが『教授、研究者、学生』の立場を利用して、米国の学術研究機関から技術情報を漏えいさせていると警告した」

     

    中国人が、「教授、研究者、学生」の立場を悪用して学術スパイを働く。これでは、中国人の信用は失墜してゼロであろう。孔子学院もその内に閉鎖命令が出るのか。すでに、FBIの厳重監視下に置かれている。中国政府は、罪なことを個人に課しているものだ。習近平氏の狙う世界覇権のために、個人が使い捨てになっている。反旗を翻す勇気ある人物はいないのだろう。



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    韓国も猛暑である。この暑さで頭がおかしくなったのでないか。そう思われる事件が仁川で起こった。

     

    仁川と聞けば、若い人たちには「仁川空港」がイメージされる。年配者には、「朝鮮戦争でマッカーサー元帥が立案し大成功を収めた、仁川奇襲作戦」であろうか。韓国軍は、北朝鮮軍の侵略で釜山まで追い詰められ絶体絶命の危機を迎ええていた。李承晩大統領(当時)は、日本の山口県に韓国政府を移転させる案まで立てたという。その韓国を救ったのが、仁川奇襲作戦である。韓国が共産主義の支配下に屈しなかった歴史的な軍事作戦である。

     

    こういう歴史的な意味のある「マッカーサー元帥像」が、左派系牧師らによって深夜、放火される事件が起こった。マルクス主義者が放火したというならば、韓国の赤化を妨害した「犯罪人」として反発したと思われる。だが、心の自由を説き、イエスキリストの道を諭す牧師の犯罪だけに驚く。同時に、韓国にある屈折した「親北・反米」の根強さを象徴する事件であるようだ。

     

    『朝鮮日報』(7月28日付)は、次のように報じた。

     

    (1)「仁川中部警察署は27日、仁川市中区の自由公園にあるマッカーサー将軍像に火をつけた疑いでイ・ジョク牧師(61)、アン・ミョンジュン牧師(60)ら反米団体『平和協定運動本部』メンバー3人を取り調べている」

     

    文在寅大統領もクリスチャンである。こういう過激なグループと関係はないだろうが、心底では通じるものがあるはずだ。文氏の「親中朝・反米」の基本スタンスは、この過激な牧師らによる後掲の「犯行声明」に頷く部分があると見る。

     

    (2)「3人は同日午前2時ごろ、はしごを使って高さ4メートルの銅像台座に登り、『私は大韓民国の牧師として民族分断の悲劇をもたらした戦争詐欺師マッカーサーの偶像をもう容赦できない』と叫んで像の足元に布団を巻き付け、火をつけた。また、『占領軍偶像撤去! 世界非核化! 米軍を追放せよ!』と書いた垂れ幕を出して台座の上でスローガンを叫び、降りた」

     

    マッカーサーを「戦争詐欺師」と呼び、民族分断の悲劇をもたらした張本人と位置づけている。マッカーサーが、仁川奇襲作戦さえ行なわなかったら、北朝鮮の勝利に終わったはずだというニュアンスである。朝鮮半島は、全て共産主議で統一されたと悔しがっているのだ。これが、心の自由を説いている牧師の本音である。北朝鮮の現状を見ればわかるように、人権が抑圧されている。韓国国民を、この状態にしようというのは、牧師として失格であろう。

     

    (3)「3人は一部メディアに送った文で、『共産化を防ぐことを名分に軍隊を永久駐留させ、戦争侵略演習をする米国は、韓国を支配しようとする戦争収奪国の帝国主義者に過ぎない』と主張した。また、『マッカーサーは南北を分断させた元凶であり、満州と我々の土地に核爆弾使用まで計画していた張本人であるのにもかかわらず、我々には共産化を阻んだ偶像としてあがめられている』と主張した。この放火により像の左脚の一部がやや焦げたが、大きな被害はなかった」

     

    南北の分断は、マッカーサーの決定ではない。彼は、第二次世界大戦の戦後処理を決めたヤルタ会談と米ソの話合いに従ったまでなのだ。米国の「文民統制の原則」(シビリアン・コントロール)によって、軍人が政治に介入できないシステムになっている。マッカーサーが、米大統領のトルーマン(当時)に解任された理由は、朝鮮戦争で原爆投下を進言して逆鱗に触れ、国連軍総司令官の座を追われた。ここにも、「文民統制の原則」が生きている。

     


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    ソフトな物腰。社会的弱者に寄り添う姿。どう見ても一国大統領という「厳めしさ」とは無縁な政治家である。弁護士時代に、盧武鉉・元大統領と共同法律事務所を構えた縁で、盧氏に請われて大統領府に入ったのが公人としてのスタートだ。大統領府の水が肌に合わないからと言って、1年余で大統領府を離れている。自由な身を望むなど、根っからの政治家ではない。

     

    こういう前歴が、「国民目線の大統領」として高い支持率を得てきた理由であろう。それもついに賞味期限を迎えた。最低賃金の大幅引き上げがもたらした失業者増加。消費景気の失速が、20代の若者と自営業者の支持を失わせた。「文氏はどこへ行く?」

     

    『朝鮮日報』(7月28日付)は、「文大統領支持率6週続落62%、就任以来最低」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅大統領の支持率が6週連続で下落した。韓国ギャラップが27日に発表した文大統領の支持率は先週よりも5ポイント低い62%だった。これはギャラップが調査した文大統領の支持率としてはこれまでで最も低い。先月第2週の調査では79%を記録したが、その後6週間で17ポイント下落したことになる」

     

    文氏の支持率が6週間で17ポイントもの下落である。過去最低になった。それでもまだ62%もの支持率を集めている。驚異的である。これまで、北朝鮮問題で高い支持率を得てきたが、この問題は「熱しやすく冷めやすい」ものだ。いずれ、日々の暮らしである国民生活が焦点になるはずだ。私は、「勝又壽良の経済時評」(アメブロ)でこういう診断を下していた。それが、現実になってきた。ただ、それだけである。

     

    (2)「支持しない理由は

    経済政策、庶民生活での問題(37%)

    最低賃金引上げ(12%)、

    北朝鮮との関係、親北的な政策(11%)

    今回支持率が最も下がったのは年齢別では20代でマイナス17ポイント、職業別では自営業者でマイナス12ポイントだった」

     

    支持率低下で目立つのは、20代でマイナス17ポイント、職業別では自営業者でマイナス12ポイントである。20代は就職難が、自営業者は最賃の大幅引き上げによる経営難である。これだけハッキリした理由も珍しい。

     

    (3)「支持する理由は

    外交・安全保障政策(13%

    外交政策がすぐれている(12%)

    北朝鮮との対話再開(12%)」

     

    支持者は、文氏の「親衛隊」と呼べるファンである。熱狂的な層である。文氏が立ち寄った喫茶店では同じ銘柄のコーヒーを頼むという人たちだ。この岩盤支持層が、支持率の下落をある水準で食い止めるだろう。だが、そこからの回復は、経済問題を解決できない限り不可能だ。


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    韓国政府は、今回のラオスのダム決壊事故に対して手早い対応をとっている。建設会社は民間であるが、建設費に政府資金を投入していることから、何らかの責任を免れないからだ。政府は緊急救援隊を現地に派遣したほか、100万ドル規模の救援物資・救援金を支援する。韓国軍も輸送機を利用し、医療チームで構成された「大韓民国緊急救援隊」(KDRT)を派遣する。救援隊は医療スタッフ15人、支援人員5人で構成された。

    韓国政府が先頭に立って救援活動を始めているのは今後、韓国とラオスの外交問題に発展することを想定したものと見られる。

     

    韓国『時事ジャーナルe』(7月27日付)は、「国家的問題に発展する可能性が高い」と伝えた。『レコードチャイナ』(7月27日付)が転載したもの。

     

    (1)「今回の惨事について、記事は『単純にSK建設だけの問題でなく、韓国とラオスの国同士の問題にまで広がる見込み』と伝えている。韓国の文在寅大統領は事故発生後、『救護チームの派遣など、政府レベルの強力な救護対策を立てよ』と指示した。事故の経緯に関係なく、迅速に救護決定したことは『適切だった』との評価を受けているという」

     

    事故発生と同時に、韓国政府が手早く対応をとったことが評価されている。

     

    (2)「また、『今回の問題は韓国政府が外交力を十分に発揮しなければならない事案』と分析する声も出ている。明知大学政治外交学科のシン・ユル教授は、『ダム関連事業にはタイやラオスなど利害関係者が複数いるが、SK建設以外の関係者が同じ立場をとる可能性が高い』とし、『SK建設の手に負えない状況にもなり得る。だでさえ苦しい経済状況を考えると、原因の究明だけでなく、政府の外交的な交渉力が非常に重要な状況』と主張した」

     

    今回のような事故が発生すると、多くの関係国が存在するだけに複雑な問題に発展する危険性も高い。そうなると、当事者のSK建設では手に負えなくなる。法的な問題になることを前提に、外務省が前面に出て解決する姿勢を見せることも欠かせないだろう。

     

    (3)「業界では、『今回の事故でSK建設が100%責任を免れることは難しい』との見方が強いという。また、業界では『もしSK建設の過失が明らかになった場合は、天文学的な賠償をしなければならない』と予想されている」

     

    数千人とされる罹災者への生活補償や住宅建設、決壊したダムの再建費用、周辺国への補償金が発生すれば、もはやSK建設一社の財力では手に負えまい。こうなると、政府の支援が不可欠だ。また、SK財閥の一員ということから、同グループの金銭負担が問題になれば、SKグループ自体の経営に響く事態となろう。


     今回の事故が、複雑な問題をはらんでいる理由は、ラオスの電力が周辺各国へ輸出されているという事情もある。すなわち、「ラオスの電力輸出量の9割前後はタイ向けだ。ミャンマー、カンボジア、ベトナムにも供給している。マレーシアに輸出する計画もある。ラオスから輸入する電力が国内消費に占める割合はタイが1割弱、ベトナムは数%とみられる。タイやベトナムなどには日本メーカーの工場も多い。ラオスからの電力供給が滞れば各国の経済成長の足かせにもなりかねない」(『日本経済新聞』7月28日付)。

     

     

     

     

     

     




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    米国は、4~6月期GDPが年率4.1%増と絶好調である。トランプ大統領は、ますます自らの政策を自画自賛している。確かに、大型減税が設備投資に火をつけており、先行き堅調を予想させる。経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は、「大型減税で潜在成長率が高まるため、インフレは発生しない」と主張するほど。

     

    もう一つ注目すべき動きは、家計貯蓄率が再び上昇していることだ。最新統計では、6.8%と過去の平均まで回復している。貯蓄を取りくず形での消費でなく、消費を増やしながら貯蓄を殖やす理想型になった。

     

    4~6月期のGDPを要約しておく(実質値:年率換算)。

    GDP      4.1%

    個人消費支出   4.0%

    民間設備投資   7.3%

    民間住宅投資  -1.1%

     

    設備投資や個人消費という経済を支える基本要因がしっかりした足取りである。こういう順風を受けて、対中国貿易戦争に立ち向かう気力・体力はともに充実、「いざ、闘わん」というムードだ。対中貿易戦争の指揮官であるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は7月26日、次のような発言をした。

     

    「ライトハイザー氏は上院歳出委員会で、『われわれが中国との間に慢性的問題を抱えていることは明らかだ』と証言。中国との貿易問題の解決には数年を要すると指摘した。また、中国は『国家資本主義』を用いて開放的な米経済を利用し、米国内の雇用や富を損ねているため、トランプ政権は中国に反撃すべきだと考えていると語った。中国の張向晨・世界貿易機関(WTO)大使は同日、ジュネーブで米通商政策について、『ゆすりや歪曲、悪者扱いは問題解決に役立たない』と語った」(『ブルームバーグ』7月28日付)。

     

    中国の張向晨WTO大使が、米国の強硬姿勢に対して、「ゆすりや歪曲、悪者扱いは問題解決に役立たない」と言って胸の溜飲を下げている。この辺りに、中国の劣勢が明らかに透けて見えるのだ。これまで、中国の他国への交渉姿勢は、まさに「ゆすりや歪曲」の類いであった。久しぶりに攻守所を変えた立場に追込まれたのだろう。

     

    前述のように、ライトハイザーUSTR代表は、「中国との貿易問題の解決には数年を要する」と指摘している。米国が、安易な妥協をしないという決意表明だ。また、ライトハイザー氏が「中国は『国家資本主義』を用いて開放的な米経済を利用し、米国内の雇用や富を損ねているため、トランプ政権は中国に反撃すべきだ」と強調している点にも注目すべきである。中国は「国家資本主義」であり、「市場資本主義」(正式にはこういう言葉はない。資本主義経済は市場メカニズムに基づき営まれる)を食い物にしている悪徳システムである。それ故、断固として中国経済を追い詰める、という認識を表明したと見られる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月28日付)は、「GDPに潜む成長余地、底堅い経済の行方」と題する記事を掲載した。

     

    「米国で4~6月期国内総生産(GDP)の年率4.1%という 高い伸び率である。基調的な傾向を見極めるため、最も変動しやすい3つの項目、すなわち純輸出、在庫投資、政府支出を取り除く。こうして割り出される国内民間消費は年率4.3%増となる。個人と企業の支出拡大が追い風となり、GDPの4.1%増も上回っている。その一部は、人々が減税で増えた所得を消費に回したための一時的な増加かもしれない。それでもこうした(国内民間)消費支出項目は過去12カ月で平均3.3%増と、やはりGDP(2.9%増)を上回る」

     

    GDP統計では、①純輸出(輸出-輸入)、②在庫投資、③政府支出の3つが変動しやすので、ここではGDPから除外して計算する試みをしている。前記の3項目を除外した「国内民間消費」は年率4.3%増となる。個人と企業の支出拡大が追い風となり、GDPの4.1%増も上回っていることが分る。このコラムの筆者は、表題に掲げたように、「GDPに潜む成長余地」が大きいと判断した根拠はここに求めたと見られる。

     

    過去12ヶ月の「国内民間消費」は、平均で3.3%増である。この間の平均GDPの伸び率2.9%を上回っている。米国経済は、民間の自力で動ける態勢である。中国経済のようにバブルまみれの状況とは、180度の違いがある。中国は、この米国と「貿易戦争」をやって勝てると思うはずがない。

     

     

     


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