勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年07月


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    旧友同士が、一時的な感情の行き違いが起こっても、話合えば「友情復活」というシーンを彷彿とさせた。トランプ米大統領と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は25日、ホワイトハウスで会談した。双方が自動車を除く工業製品の関税撤廃を目指すほか、貿易をめぐる協議が続く間は、新たな関税を導入しないことで合意した。

     

    米・EUが、「自動車を除く工業製品の関税撤廃を目指す」とは、ビッグ・ニュースである。このニュースを嘆息して聞いた国があるはずだ。中国である。先の中国・EU会談で中国は、米国を孤立させるべく、中国・EUの結束案を持ちかけたが断られていた。思想信条のことなる中国とEUが手を結び、米国と対立するなど「悪魔の囁き」そのものだ。

     

    『大紀元』(7月27日付)は、「EU、『敵』から一転、貿易戦回避へ、中国は苦境」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロイター通信などによると、米中貿易摩擦の激化を受けて、中国当局は今月初め、米国に対抗するよう、EUに対して連携を働きかけたが、EUはこれを拒否した。通商問題をめぐって米国とEUが歩み寄り、中国当局が一段と厳しい境地に追い込まれた。米とEUの和解は、米中貿易戦で中国が『完敗する』との見通しが濃厚となった。ホワイトハウスで行われた両首脳の記者会見で、トランプ米大統領は、米とEUが今後協力し、『強制技術移転』や『知的財産権侵害』『過剰生産』などの貿易手法に対抗していくと述べた。大統領は名指しを避けたものの、中国を念頭に置いて発言したとみられる」

     

    米・EUが、工業製品の関税撤廃に向けて協議をする方針を固めたのは、西側諸国にとって一大ニュースである。当然、中国は加わる術がない。孤立化の道であろう。米国が、貿易額という規模の面で見れば、TPPに復帰する以上の話だ。無論、工業製品の関税撤廃だけだからTPPレベルには達しない。それにしても、日欧EPA締結の署名を終えている日本にとっては良い話だ。

     

    (2)「米ラジオ・フリーアジア(26日付)によると、清華大学元講師の呉強氏は『米政府とEUが突然、貿易問題で緊張を緩和させたことは、中国当局にとって不意を突かれた』と指摘した。呉氏は、米とEUの協力関係強化で、貿易だけではなく、中国当局が取り巻く国際政治・外交環境も厳しくなるとした。一方、25日トランプ大統領は、米とEUの間の貿易規模は1兆ドルに達し、両地域の経済総規模は世界の国内総生産(GDP)の約半分を占めるとし、今後経済・通商における双方の協力関係を強化すべきだと提言した」

     

    米・EUが、トランプ氏の米大統領就任後、何かにつけてギクシャクしてきた。英紙『フィナンシャルタイムズ』のコラムでは、トランプ氏を「無学者」とまでののしるほど、「トランプ嫌い」のムードが広がっていた。文化が同根の米・EUが手を携えることは良いことだ。

     

    (3)「EUは今月17日、日本政府との間で経済連携協定(EPA)を調印したばかり。人口6億人、世界のGDP3割を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。これに加え、米とEUが自由貿易協定の締結に前進したことで、今後人口9.6億人、世界のGDP6割以上を占める超巨大市場が形成される。この巨大市場を狙うカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなども参入していくとみられる」

     

    来年の発効を待つばかりの日欧EPA。これに米・EUの貿易協定が加われば、人口9.6億人、世界のGDP6割以上を占める超巨大市場が形成される。今後は、トランプ氏の心変わりのないことを祈るばかりだ。そういう点で、まだ、手放しの楽観はできない。


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    痛ましい事故である。最貧国のラオスでは、電力が輸出全体の約30%を占めている。こういう経済状態の中で起こった事故だけに、ラオス国内では大きなショックを受けている。

     

    限られた情報であるため詳細は不明であるが、現時点で判明した点だけをお届けしたい。

     

    韓国紙『中央日報』(7月27日付)は、次のように報じた。

     

    「韓国国土交通部が26日に発表した「2018施工能力評価」で、最近決壊したラオスのダムを施工したSK建設がダム建設分野で韓国トップと確認された。2014年から4年連続で1位。特に2014年にSK建設が韓国西部発電と始めた「セナムノイ水力発電所」プロジェクト(注:今回のダム決壊事故)がダム建設分野1位の決定的な役割をしたという分析だ。しかし92.5%の工程率で工事をほとんど終え、来年2月に竣工して商業運転を控えていたラオスのダムが決壊したことで、SK建設の信頼度は大きく落ちた」

    韓国のダム建設1位の評価を受けているSK建設が関わった事故である。だが、地元ラオスでは、ここ数年にわたり環境問題で議論を呼んでいたという記事が報じられている。

     

    韓国紙『ハンギョレ』(7月25日付)は、次のように報じた。

     

    この数年間、現地の環境団体はセピエンセナムノイ水力発電計画が反環境的、反人権的だという理由で憂慮を示していたという。2013年、韓国企画財政部国政監査では、有償援助(EDCF)の一つである同事業が環境影響評価をきちんと受けていないという指摘が出ていた」

     

    「最貧国に分類されるラオスは、メコン川とメコン川支流が流れる利点を利用し、電気を輸出の主力商品に選定した。援助を受けてダムを建設し電気を作り、近くのタイなどに販売する方式だ。ラオス政府は『アジアのバッテリー』になるという抱負を明らかにしてきた。ラオス全域には39カ所の水力発電所があり、53カ所以上の発電所が建設中または建設計画が用意された状態だ。ラオスは水力発電で得た電気の3分の2を輸出しており、これはラオスの輸出全体額の約30%を占める」

     

     


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    中国が、米国の先端技術を窃取する手法の一つに、対米直接投資がある。だが、今年上半期は、米国の厳重警戒と中国の資本流出規制によって大幅な減少になった。まさに、「見る影もない」状態に落込んだ。

     

    ここで、最近の中国による対米直接投資の実態を見ておきたい。資料は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)から転載した。

    2015年 149億ドル

      16年 456億ドル

      17年 294億ドル

      18年  21億ドル(2018年は上半期)

     

    中国は、米国の大学から先端技術を窃取すべく中国人留学生の寄宿舎建設案を提出したり、米空軍基地の近くに工場建設案を持出すなど、手を変え品を変えて接近を試みている。だが、米国内では中国警戒論が根強く、「中国の狙いは何か」と詮索される始末で、米国のガードの堅さの前に撃退されている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)は、「輝き失った中国資本、米国内で警戒広がる」と題する記事を掲載した。

     

    中国人のデベロッパー、タン・ジシン氏は昨年9月、のどかなテキサス州タイラー市に16億ドル(1800億円)規模の集合住宅建設計画を携えてやってきた。地元の学校に数千人の中国人留学生を呼び込み、周辺の郡に1000人以上の雇用をもたらすとの触れ込みだった。だが地元当局者や有権者らはここにきて、安全保障上のリスクに加え、タン氏の資金調達能力や新規インフラに関する納税者の費用負担を巡り、懸念を口にし始めた。市の当局者はまだ、必要な土地利用規制条例の変更をまだ承認しておらず、タン氏が計画を実行に移すかは不透明だ。批判的な向きは、経済・軍事上の競合相手である中国政府からの指示、または資金援助を受けている恐れがあるとして、中国資本による投資案件は国家安全保障上のリスクだとみる」

     

    のどかなテキサス州タイラー市に、1800億円規模の集合住宅を建設する案だ。1000人以上の雇用を創出する計画だと言うが、半信半疑で飛びつくような姿勢はない。この留学生をテキサス州立大学に留学させ、先端技術を窃取するのでないか。地元では、こう疑っているという。ここまで中国の投資を疑い始めているのは従来にないことだ。

     

    米議会は、中国資本を主たる対象にして対米直接投資の厳重審査を開始する法的な手続きが進んでいる。米上下院は、国防権限法(NDAA)で海外勢による対米投資の審査を厳格化するもの。NDAAではまた、米政府機関の海外製通信機器の利用に関する規制強化規定が盛り込まれた。具体的には、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の技術を利用することを禁じる項目である。両院の本会議で再可決した上で、トランプ大統領の署名を経て成立すると、ロイターが7月23日に伝えた。

     

    米国は、徹底的に中国資本と中国技術を排除する重大決定を下した。米国の怖さはここにある。1911~12年にかけて、米国は太平洋での「対日戦争」の準備に入っていた。米国が一度、「敵」と決めた相手国には一切の妥協を排して追込んでゆく「一念」さがある。中国は、かつての日本が「敵対国」になったように、中国もまた同じ「座」に座らせられた。中国の将来が、おぼろながら分るはずだ。


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    中国の近代化は、都市人口比率の増加であると言い続けてきた。それが突然、真逆の政策を言い出した。「農村へのUターン」である。農村出身者は農村へ帰ろうというのだ。今までの政策はどうなるのか。そういう説明は一切ない。

     

    一つの理由は、都市部経済の行き詰まりである。これまで、「農民工」として農村出身者が都市部での労働力不足を補ってきた。だが、その必要性もなくなってきた。だから、都市部に農民工が留まっていることは不都合になっている。客観的には、こういう背景が考えられる。現に、都市部の失業問題が無視できなくなっているのだ。

     

    中国の国家発展改革委員会(発改委)は7月25日の定例会見で、米国との貿易摩擦が国内労働市場に不透明感をもたらしていると認めた。ただ、大規模な失業につながるような事態にはさせないと表明したが、具体案は不明である。中国は2018年における都市部の「調査に基づく失業率」を5.5%以内、別の公的指標である「登録失業率」を4.5%以内とすることを目指している。つまり、4.5~5.5%の失業率に抑えたいという「決意表明」である。この失業統計に農民工は入っていない。都市部の失業問題が深刻な状態では、「農民工」は、さらに厳しい事態であろう。

     

    『ロイター』(7月19日付)は、「農村に帰ろう、中国Uターン戦略の見えない勝算」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「高齢化が進む中国の農村経済は、多くが小規模農家や零細産業で成り立っており、生産性低下に直面している。代わりとなる新たな成長エンジンは現れていない。人材流出があまりにも進展したことを危惧した中国の習近平国家主席は、いまや才能ある人材が地方にUターンするよう呼び掛けている。都市化が繁栄への入り口だと位置づけている中国では、これまで考えられなかった動きだ」

     

    農村部では、満足に義務教育を終えた人も少ないという、徹底した「差別化」が行なわれてきた。今さら、これからは「農村の時代」と言っても若い世代は信用するはずがない。建国以来、経済成長=脱農村の政策を踏襲してきた国である。農村の疲弊は、日本の比ではない。中国の訪日観光客が驚くのは、日本の農村の生活水従と都会のそれが遜色ないことだ。中国の政策は間違えていた。

     

    (2)「これは、約5億7700万人が暮らす農村地方の状況を改善することで、社会不安の芽を摘み、消費を活性化させ、大都市の成長をコントロールしたいという、中国共産党の願いを反映している。また、習主席が昨年10月に打ち出した『農村振興戦略』の一環でもあると、中国国家発展改革委員会(NDRC)のアドバイザーを務める馬暁河氏は語る。農村地帯のインフラを改善し、近代農業を発展させ、『数兆元(数十兆円)』もの投資を呼び込む構想だという」

     

    ここでも、農村のインフラ投資によってGDPを押上げるという狙いが透けて見える。都市のインフラ投資が終わったので、今度は農村でインフラ投資という狙いであれば、この農村Uターン運動は失敗するだろう。農民戸籍の撤廃という古くて新しい問題を棚上げする狙いも隠されていると思われる。

     

    (3)「この戦略の発表以来、いくつかの地方政府が、起業家や高い技術力を持つ労働者、大卒者、そして『プロの近代農業者』などを、ルーツがある農村に呼び戻すためのインセンティブに取り組むことを約束した。中部河南省は、起業するために同省の農村地帯に移住する人を対象に、60億元(約995億円)を今年支出する。こうした「地方起業家」20万人を誘致したい考えだ。東風村など500以上の小さな村々に囲まれた湖南省双峰県をロイター取材陣が訪れると、地方へのUターンを奨励する活動が活発に行われていた」

     

    農村Uターンには、食糧自給率の向上目的もある。将来、米中軍事衝突が起こって、米国からの食糧輸入杜絶に備える目的もあるのだろう。習氏の発想法には、覇権争いという事態が頭にインプットされているに違いない。習氏は戦争が好きなのだろう。


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    中国は、米国の関税引き上げに対して意図的な人民元安で対抗する、いわゆる通貨戦争の決意を固めたのでないか。一時は、そんな憶測も飛んだが、その意図はなさそうだ、という見方が強くなっている。中国が、腹いせで1ドル=6.8元を割り込む相場へ持ち込むと、あとは収拾のつかない人民元暴落につながり兼ねない。そういう判断になったとすれば、為替相場は小康状態を維持できるのかも知れない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)は、「中国の元安誘導、狙いは対米反撃より景気てこ入れ」と題する記事を掲載した。

     

    中国経済は、正攻法の債務削減策として「影の銀行」へ圧力をかけた結果、インフラ投資にブレーキが掛かるという事態を招いている。中国の経済構造は幹の太い金融が支えるのでなく、迷路のような非正規金融ルートに依存する、先進国に見られない構造になっている。こうした事実を承認すれば、米国のような「ハイウエイ」経済に対抗して、中国が人民元相場を意図的に下落させることは、余りにも無謀という結論になるだろう。経済政策面で言えば、米国の「ミサイル」に対して、中国は「竹槍」というほどの違いを感じる。

     

    (1)「中国は、貿易を巡る米国との対立が激化する中で経済成長を支えるため、人民元の下落を容認している。それは失速が鮮明になっている景気のてこ入れが主な狙いで、トランプ政権に反撃しようとしているわけではない。政府関係者やエコノミストは、中国指導部がトランプ政権に反撃するために積極的な元安誘導を行うことはないと指摘する。『中国は貿易戦争を通貨戦争に発展させる意図は全くない』。ある政策担当者はこう語る」

     

    中国内部では、米国との関税戦争へ突入することに反対の人々が多く存在した。不動産バブルの処理もままならない段階で、新たな紛争要因をつくるリスクを指摘したものだ。最近、習近平氏への批判が強まっている背景には、米中貿易戦争を回避できなかった「初期対応」のまずさが指摘されている。「徹底抗戦」などと言葉は踊るが、実態経済は相当に傷んでいることは間違いない。

     

    最近、注目すべき動きは「農村に帰ろう」という「Uターン」運動が始まっていることだ。都市化こそ中国の近代化という大目標を掲げ、農民を農地から引き離す政策が大々的に行なわれてきた。それが突然、「Uターン」運動である。都市部での騒乱を恐れているのか。農村空洞化が、中国経済疲弊をもたらすことに気づいたのか。理由は、この二つが重なり合っているのだろう。

     

    (2)「急ピッチの元安は、中国の政策担当者が経済に関して大きな懸念を抱えていることを浮き彫りにしている。内需の不振や企業のデフォルト(債務不履行)増加、インフラ・設備投資の落ち込みなど、足元では景気減速の兆候が鮮明だ。そこに通商紛争を起因とする想定外の輸出の落ち込みが重なり、中国当局は債務抑制から景気支援へと政策の主眼をシフトさせたようだ。中国人民銀行(中央銀行)は金融システムへの資金供給を増やし、銀行の融資拡大を後押ししている。地方当局も、中央政府の緊縮措置で棚上げとなっていた投資を再開している。政府関係者やエコノミストによると、元安はこうした一段と緩和的な政策の代償にすぎないという」

     

    景気の落ち込みは深刻である。GDP計算ではデフレーターに手を付ければ、成長率を加減できる。だが、純輸出(輸出-輸入)のGDP寄与率は、今年上半期はマイナス0.7%ポイントに落込んでいる。インフラ投資も影の銀行を干し上げたら、途端に減少するという制御不能状態に陥っている。こういう混乱状態では、デレバレッジ(債務削減)は棚上げである。経済改革は不可能だ。これが、米中貿易戦

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