勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年08月

    a0960_008650_m


    中国政府は、新疆ウイグル族へ重大な人権侵害を行なう犯罪者である。共産党当局は2017年春ごろから、「強烈な宗教的見解」と「政治的に正しくない思想」を抱いているとして、新疆地区の大勢のウイグル族住民を「再教育施設」に拘禁している。

     

    ウイグル族は、青年から壮年まで大量の人々が拘束されている。多くの村や町で人がいなくなり「空っぽになった」という場所もあるという。住民は、「街は一部の老人と(共産党に)忠誠心のある人間だけになった」と述べた。以上は、『大紀元』(8月7日付)が伝えたもの。

     

    米国トランプ政権は、オバマ政権に比べて人権への関心が低いと批判されてきた。今回、上院与野党議員が、新疆ウイグル族問題を告発する準備を進めている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月30日付)は、「ウイグル弾圧で中国に制裁を 米議員がトランプ政権に要求」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国が新疆ウイグル自治区のイスラム教徒を一斉に取り締まり強制収容所で拘束している問題で、米連邦議会の議員団がトランプ政権に対し、中国当局に圧力をかけるよう迫っている。マルコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ)ら17名の与野党議員が29日、マイク・ポンペオ国務長官、スティーブン・ムニューシン財務長官宛てに書簡を送付。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が書簡の内容を確認した」

     

    米上院議員の与野党17人が国務長官と財務長官に対して、トランプ政権に対して中国へ圧力をかけるよう書簡を出した。遅すぎた嫌いはあるが、ともかく、世界的に反対世論を盛り上げるべきだ。中国当局は、違法な拘留者に豚肉やワインを強制するなど、嫌がらせをしているという。少林寺など古刹に国旗を掲揚させた。中国政府は、信仰を冒涜する行為を連続して行なっている。

     

    (2)「書簡では、拘束に関与した新疆の共産党トップなど中国当局者7人と、監視機器を製造した2社に対し、渡航禁止や金融制裁を加えるようトランプ政権に求めている。イスラム系少数民族ウイグルが多数を占める新疆では、中国当局が過去1年にわたり過激派などを拘束する措置を拡大。最近では、ウイグル族全般にその標的を広げている。新疆の強制収容所ではここ2年ほど、共産党の規定に反対するウイグル族を従わせるよう強制する取り組みが行われており、中国当局による弾圧の動きが拡大するのに伴い、ここにきて西側諸国から批判の声が高まっている」

     

    こういう違法な行為を止めさせるには、米金融機関との金融取引を止めてしまうことだ。金銭面で縛り上げなければ目が覚めない不埒な連中である。中国政府は、宗教弾圧をしながら世界覇権を狙う。こういうハチャメチャなことをやっていることの悪影響を計算に入れていないのだ。世界にとって、中国の存在がどれだけ迷惑であるか。それを改めて、考えさせる問題だ。


    a0005_000025_m


    中国共産党は、1000年以上の歴史を誇る中国名刹、河南省の少林寺と雲南省の圓通寺で8月27日と28日、相次いで国旗の掲揚式を行ったという。国内世論は、当局による宗教統制に対して強い批判が出ていると、『大紀元』が伝えた。

     

    信仰の世界まで入り込んできた中国共産党は、毛沢東さえ行なわなかった暴挙を始めた。お寺に共産党旗。なんとも奇妙な組み合わせである。共産党は本来、無神論のはず。それが、ここまで手を延ばしたことは、民衆の謀反を恐れ始めた顕われであろう。お寺を隠れ蓑にして暴動を企むことを事前に阻止しようという狙いだ。よほど、統治に自信が持てなくなってきた証拠だ。ここまで来たら、共産党員が集団で出国して、アフリカ辺りに「新共和国」でも旗揚げした方が身の安全のような気がする。

     

    『大紀元』(8月30日付)は、「中国少林寺などが共産党旗を掲揚 宗教統制に批判の声」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府系メディアは27日、少林武術で名を馳せる嵩山少林寺で同日早朝7時に、創建1500年以来初めて国旗を掲揚したと次々と報道した。河南省登封市党委員会常務委員の李力氏や少林寺方丈の釈永信氏と僧侶全員が出席した。背景には、7月末、北京で開催された全国宗教関連会議では、宗教活動拠点で国旗を掲揚すべきだと提案された」

     

    昨年秋の党大会以降、思想浸透工作を担う党中央統一戦線工作部が、国内宗教団体などを管轄することが決まった。中国当局は、党による宗教統制を一段と強化した。思想担当が、あの国粋主義者で中央政治局常務委の王滬寧氏である。彼は、党内序列5位という高いランクだ。イデオロギー担当であり、習氏を唆して始めたことであろう。米中貿易戦争をけしかけた男でもある。彼のやることは、全て目先のことしか考えない、思慮の浅さが目立つのだ。

     

    (2)「雲南省昆明市にある圓通寺は1200年前、唐の時代に立てられた。同寺も現地時間28日午前7時半ごろ、初めて国旗掲揚式が行われた。圓通寺方丈の淳法法師は国内メディアに対して、愛国は『仏教の伝統だ』『仏の弟子として、国にとって責任感のある新時代の僧侶になるべきだ』と話した。中国人権派弁護士の謝燕益氏は、仏教寺院での国旗掲揚について『馬鹿げている』と非難した。謝氏によると、昨年秋の党大会以降、思想浸透工作を担う党中央統一戦線工作部が、国内宗教団体などを管轄することが決まった。中国当局は、党による宗教統制を一段と強化した」

     

    政治が、信仰の世界まで支配を及ぼしていることは、歴史的に見れば暗黒時代の話だ。キリスト教でも政治と信仰が合体していたときは前近代のベールを身につけていた。そこから脱して、政治・信仰・法律・科学がそれぞれ独立して現代にいたっている。こういう、歴史の歯車を逆転させる動きは、共産党の混迷を反映したものだ。

     

    (3)「仏教信者は少林寺などが国旗を掲揚したことについて、仏教経典に書かれている釈迦牟尼仏と魔王波旬との会話が『現実に起きた』と嘆き、党が『魔王』ではないかと推測した。経典によると、魔王は『末法の時を待って、私の子々孫々をすべて出家させて、お前の法を滅ぼそう。彼らはお前の経典を歪曲し、お前の戒律を破壊して、私が今武力で果たせなかった目的を達成するだろう』と話したという」

     

    このパラグラフから引き出される結論は、習氏が「魔王」の位置づけである。まさに、「仏罰」に相当する振る舞いである。習氏と中国共産党に仏罰が下るのだろうか。


    a0070_000143_m

    韓国の現代自動車は、内外で経営不振に陥っている。中国の現地生産車が昨年、中国政府による経済制裁という「虐め」によって、販売シェアを大きく落とした。現在は、その制裁も解けたが、販売回復にいたっていない。後遺症が続いている。

     

    現代車は韓国トップのカーメーカーだが、売上高営業利益率はデッドラインとされる5%を割り込んでいる。経営危機を迎えた。中国市場での販売回復が、経営再建のカギを握る。それだけに、中国市場での落ち込み分を東南アジア市場で補う戦略だ。

     

    『ロイター』(8月30日付)は、中国 販売不振の韓国現代自 現地生産車を東南アジアに輸出へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「現代自動車と傘下の起亜自動車、以前は中国での売上高が第3位につけていた。しかし昨年、5番目の工場の操業開始と同時に韓国と中国の外交関係が悪化。中国の消費者の間で韓国製品離れが置き、現代自の販売とブランドイメージも悪化した。その後両国の外交関係は正常化したが、現代自は販売回復に手間取っている。中国でのシェアは4.4%と、両国関係悪化前の8.1%、2012年の10.5%を大きく下回る。7月の販売台数は3万0018台と前年同月比40%減少し、月間としては2008年の世界金融危機以来の低水準だった」

     

    尖閣諸島問題で日中が対立していた当時、日本車が不買運動に苦しみ、現代車は輝ける星であった。外国人によるデザインの良さと低価格が受けたのだ。その後、日本車が回復すると共に、現代車の販売が停滞に転じた。中国資本の車の品質がよくなり、韓国車のライバルにのし上がってきた結果だ。

     

    (2)「現代自は中国で人気の高まっているSUV(スポーツタイプ多目的車)の品ぞろえが薄いことや、国内勢(注:中国資本)との価格競争が激しさを増していることも販売不振に追い打ちを掛けている。現代自は中国の合弁会社でトップを交代するなど経営の立て直しを図り、今年は、昨年実績の78万5000台を上回る90万台の販売目標を掲げている。この目標は、165万台の生産能力のほぼ半分にすぎない」

     

    中国生産での現代車は、賃金コストが韓国国内の半分以下とされる。中国の賃金が安い上に、韓国におけるようなストライの頻発による臨時コスト増もないからだ。それだけに、中国生産を軌道に乗せることが、経営再建にとって極めて重要になってきた。


    a0007_001288_m


    親日的と見られてきた台湾の国民党が突然、慰安婦像を建てて日本を驚かした。国民党は野党に転落しているが、いずれは政権復帰を実現するはずだ。その際、日本は有力な友好国で協調関係を深めざる得ない相手である。その日本に対して、弓を引く形で反日カードを切るとは解せない行動である。

     

    『産経新聞』(8月30日付)は、「台湾・国民党、反日カードの効果は、初の慰安婦像罪要求、地方選へ皮算用」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「台湾の野党、中国国民党が11月の統一地方選に向け『反日』カードを繰り出している。福島など5県産食品の輸入解禁に反対する住民投票を地方選と同日に行うための署名集めを7月下旬に開始。8月には南部・台南市に台湾初の『慰安婦像』も設置した。いずれも民主進歩党政権が『日本に弱腰だ』と印象付け、有権者の反感をあおる戦略だが、どの程度の効果があるかは見通せない」

     

    国民党の反日カードが、自らの地方選を有利に戦うために利用しているとすれば、悲しい振る舞いというほかない。中台問題が深刻化した場合、米国に次いで頼りにしなければならない日本を、こういう形で批判するとは。弱小政党であれば、何をやっても気にもとめないが、台湾の二大政党であり、政権を担当した政党である。地方選に勝ちたいならば、ほかにキャンペーンするべき「ネタ」もあるはず。選りに選って、反日カードとは残念である。

     

    (2)「馬氏は(慰安婦像の)式典で、日本政府に「正式な謝罪と賠償」を要求。民進党政権が発足後2年間、この問題で日本に意思表明をしていないと批判した。一方、多数の日本人記者が取材に来ていることに気づくと、自身の任期中に日本統治時代の技師、八田與一の記念公園を整備したことや、東日本大震災後にテレビに出演して義援金を呼びかけたことを追加で説明。『台湾人民は日本に非常に友好的だが、われわれは正義を重視する民族でもある』と強調した」

     

    馬氏は、前総統である。米国留学で得た博士号のテーマは、「尖閣諸島は中国領」というものである。その馬氏は総統在職中、この問題に封印して親日ぶりを演出していた。馬氏は、こういう政治性を身につけている。今回の慰安婦像式典で、日本人記者が詰めかけていると気付いたとき、話題を変えて親日ぶりをアピールしたという。この演説に出てくる八田與一とは、台湾で農業用ダムを造り、台湾農民の食糧増産に多大な貢献をした人物として、今もなお盛大な式典が開かれ報恩の気持ちを伝えている。

     

    馬氏が、八田與一の名前を出して親日ぶりを強調したのは、彼の本心が反日でないことを日本側に知って貰いたいという苦肉の策かも知れない。それにしても、感謝している八田の祖国日本を慰安婦像によって批判する。与党批判テーマが、他になかったとすれば、この地方選で勝てるかどうか疑問符がつく。


    a0790_000217_m

    今さら悔いても始まらないが、胡錦濤時代の穏健な経済運営であれば、中国経済はここまで混乱しなかったであろう。「習皇帝」は、国粋主義者ゆえに「行け行けドンドン」で取り返しのつかない事態を招いた。高騰した住宅価格が出生率を引下げ、経済的な繁栄に水を差すのだ。これを察知したか、年内に産児制限の全面撤廃が議論されている。

     

    『レコードチャイナ』(8月19日付)は、「高い住宅価格は最もよく効く避妊薬 中国メディアが地域による出生率の違い」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『新浪網』(8月18日付)は、中国31の省クラス行政区画それぞれの出生率(2017年)の違いを紹介し、その原因を解説した。それによると、北京や上海など経済先進地域で1人当たりのGDPが高い。それにもかかわらず出生率が低く、『高い住宅価格は最もよく効く避妊薬』と表現したほどだ」

     

    高い住宅価格では、家計が多額の住宅ローンを背負い込むから経済的なゆとりを失う。だから、出産・育児で「一人っ子」が精一杯で、二人目の出産を諦めている。


    (2)「中国には31の省クラス行政区画(省、中央直轄市、民族自治区)がある。2017年に出生率(人口1000人当たりの新生児数)が最も高かったのは山東省で17.54だった。山東省では第2子の出生も多く、中国全国の13%を占めたという」

     

     参考までに、低出生率の地域を上げておく。北京市9.06人、上海市8.1人。天津市7.65人である。前記の山東省の17.54人から比べて、上海や天津は半分以下である。

    (3)「2017年における1人当たりGDP(地域内総生産)で、地域別で最も高かったのは北京の12万9000元(約207万円)を筆頭に、上海は12万5000元、天津は11万9000元、江蘇は10万7000元、浙江は9万3000元と続いた。ところが、これら5地域の出生率は極めて低く、浙江を除く4地域は中国全国でも下から数えて10位以内で、浙江も全国平均より低い。記事では、これら地域で不動産価格が高いことを理由として『高い住宅価格は最もよく効く避妊薬』という“名言”が改めて立証されたと論じた」

    2017年の1人当たり名目GDPでは、北京、上海、天津はいずれも190万円以上である。中国ではトップ3に数えられている。年収は高いが、それでも子どもを持ちたがらない理由は、高い住宅ローンの影響と見ざるを得ない。北欧では、女性が職業を持つほど子どもの数が多いというのが一般的である。中国の高所得女性だけが、「一人っ子で十分」という背景には、高い住宅価格がもたらす影と見られる。

     

    北京市の住宅価格が高い理由は、大都会だからという単純なものではなさそうである。投機で住宅を買っている層が、住宅価格を押上げたもの。その投機集団が、住まずに空き家で放置し、値上がりを待っているのだ。固定資産税(不動産税)が存在しない中国では、住宅投機が活発である。日本の住宅事情から言えば、空き家にしておけば中古になるのではという心配が付きまとう。中国では、入居する際に造作をするのが慣例である。だから、一般の中古住宅概念は当らない。

     

    『レコードチャイナ』(8月29日付)は、「北京中心部の空き家は90万軒以上、解決には課税が効果的?」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「『新浪経済』(22日付)は、北京市の六環路内の空き家は90万軒以上あり、解消のためには課税するのが効果的だとする業界関係者の意見を紹介した。記事は、中国の大手不動産会社・我愛我家の胡景暉(フー・ジンホイ)副総裁の発言を掲載。胡副総裁は『われわれは郊外に格安賃貸住宅や公共賃貸住宅を頻繁に建設しているが、北京市内の五環路や六環路内には90万軒もの物件が空き家状態となっている。北京政府はなぜ香港にならって空き家税を導入しないのか? 税金をかけるだけで90万軒の空き家をなくすことができる』と語ったという」

    北京市全体でどの程度の住宅があるか不明だが、90万軒という数は膨大である。これは、北京市だけの現象でなく、他の大都市でも起こっている現象のはずだ。住宅バブルとは、こういう投機が相当に入っている。庶民には、手の届かないような価格になる。

     

    これだけの投機を許したのは、固定資産税がかからないからだ。住宅保有コストがゼロであれば、いつまでも持ちこたえられるであろう。中国の住宅バブルは、①土地国有制、②固定資産税が存在しない。こういう特殊要因において発生したものであろう。

     

    この二つの特殊要因で発生したとすれば、住宅バブルの後遺症がそれだけ大きいという意味だ。中国政府は、住宅バブルによって長期にわたりGDPを押上げた。その後遺症は、前記のような特殊要因に基づく以上、長期にわたるマイナス効果を残すと見るのが常識的であろう。かくして、中国はバブルで急成長したが、その後遺症で長期に苦しむであろう。いよいよ、その段階に入った。

     

     


    このページのトップヘ