勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年08月

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    中国は、明らかに台湾を外交的に窮地へ追込む策略を始めている。7月中旬、台湾で開かれた国際会議に出席すべく訪台した中国代表団4人が、入国手続きで「15分待てば入国できる」と告げられたが拒否。「5分しか待てない」と中国へ帰国して騒ぎを大きくしている。

     

    この問題は、明らかに中国が台湾を陥れる目的で仕組んだものだ。改めて、中国の謀略国家の一面を浮かび上がらせている。「トラップ」は中国の十八番とはいえ、余りにも醜い小細工である。

     

    『大紀元』(8月1日付)は、「『15分待てば入国可能』 でも中国代表団が帰国、中台が対立」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「先月、国際会議のために台湾を訪れた中国代表団は入国せず、そのまま引き返した問題をめぐって、中台双方の言い分は真っ向から対立している。中国側は台湾が「邪魔した」と批判したのに対して、台湾は中国側が必要な情報を事前に提供しなかったと反論した」

     

    (2)「台湾メディア『蘋果日報』(731日付)によると、台湾政府は準備初期から、中国側と日程調整などで意思疎通を図った。しかし、中国側が4人の出席者に関する情報の提出を遅らせていた。中国当局は開催直前、中国代表団が台北行きの飛行機に搭乗してから、はじめて出席者の到着情報などを台湾側に連絡した。このため、代表団が台湾に到着後、直ちに入国できなかった」

     

    (3)「台湾外務省は7月29日、当時入国管理当局の移民署と協力して、中国代表団が速やかに入国できるよう動いたと説明した。報道によると、移民署担当者は、中国代表団に対して、15分間待っていただければ入国できると伝えたところ、中国側は『5分しか待てない』と話しながら、中国本土行きの便の搭乗手続きを始めた、と話した。結果的に、代表団は台湾への入国を拒否した上、その日のうち帰国したという」

     

    (4)「中国政府系メディア『環球時報』は、中国代表団に対する台湾側の態度が『極めて非友好的だ』と批判。中国外務省の耿爽報道官は30日の記者会見で、台湾が『事実をねじ曲げた』とし、『台湾側が全ての責任と結果を負わなければならない』と警告した。

    一方、蘋果日報によると、台湾市民の間では、台湾への圧力をさらに強めるために、中国当局が意図的にトラブルを引き起こそうとしたとの声が上がっている。『大げさに記者会見を行う中国を見れば、その狙いを読み取ることができる』としている」

     

    以上の経緯を見ると、中国がいかに策略国家であるかが分る。入国手続きで「5分しか待てない」という言動の中に、台湾を朝貢国扱いしている傲慢さが滲んでいる。この傲慢さもいつまでも続くまい。中国経済は、急速に悪化している。8月6日に発表される「今年上半期の経常収支赤字」によって、その脆弱性が明らかになろう。今回は、中国が「小さな大国」であることを証明した一件である。

     


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    事故発生から1週間以上たった8月1日になっても全容は不明なままだという。ラオス首相府は先月25日現在の被害として、死者26人、行方不明者131人、避難者約6600人、被災家屋約1300戸と発表した。その後、地元当局などが死者数を11人と下方修正したが、その他の被害状況などは不明だという。

     

    『産経新聞』(8月1日付)は、「韓国SKなど建設のダム決壊、ラオス首相は建設会社の責任追及」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ダムの建設は、SK建設など韓国企業とタイ、ラオスの企業との合弁会社が進めていた。ラオスのトンルン首相は」ダムが決壊した原因を徹底的に調査する』として、合弁会社側の責任を追及する姿勢をみせている。米紙『ニューヨーク・タイムズ』(電子版)は『欠陥建築か、大雨にかかわらず水をためすぎた判断が原因だろう』との専門家の見方を伝えている。合弁会社側は『予想を上回る大雨が原因』と主張している」

     

    ラオス首相は、建設に当った会社側の責任を追求するとしている。当然のことだろう。工事ミスか、予想を上回る大雨が原因か。今後の事故再発防止のために必要だ。SK建設は、事故発生時の10日間積算雨量が1000ミリを超え、事故の前日だけで438ミリの雨が降ったと報告している。 ラオス首相は、賠償問題についてプロジェクトの開発業者が全て責任を負う必要があると発言している。

    (2)「ダム建設に従事していた韓国人53人が全員避難して無事だったことから、『ダムの異変に気付き、いち早く逃げた』『国外逃亡した』との噂もあったが、韓国のSK建設側は『海外に避難したりはしておらず、現地で苦労しながらがんばっている』と否定した。建設に当たっていたラオス人関係者も産経新聞に『現場から先に逃げ出す人はいなかった』と話す」

     

    韓国人53人が全員避難したことから、「逃亡した」などと噂を立てられたが、現地に留まり救援活動に従事しているという。工事を請け負ったSK建設の調査報告で「ラオス側の対応が被害拡大の原因」との見解を示している。SK建設は当局と近隣の村長に対して避難指示を出すよう要求したがスムースに伝わらず、これが被害を大きくしたと見ているという。

     

    (3)救援活動では、韓国政府が救援物資を届けたほか、医療スタッフら20人を派遣。タイ、中国なども救援隊を現地入りさせ捜索活動などに当たっている。日本も国際協力機構(JICA)が、テントや浄水器などの救援物資を提供した。現地からの報道では、ラオスには、ベトナム戦争時に投下された不発弾や地雷が多く、日本も援助して除去作業が進められてきたが、今回の洪水被害でこれらの危険物が再び流出し、帰還や救援活動の支障にもなっているという」

     

    ベトナム戦争時の危険物が洪水で流出したとも伝えられている。二次被害が心配される事態だ。


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    中国の今年上期の経常収支が、8月6日に発表される。1~3月の実績は341億ドルの赤字であった。2001年4~6月期以来のこと。この傾向から見て、1~6月期の上半期に赤字が予想されている。これが現実になれば、中国がWTO加盟(2001年)以来の大事件だ。「衰えたり中国経済」との印象を拭えない。

     

    中国は現在、3兆1000億ドル台の外貨準備を擁している。無論、世界一の保有高である。2位日本の1兆2500億ドルをはるかに引き離している。中国の月間輸入高が大きいゆえに、それに見合った外貨準備高が必要としても、一時(2014年6月)は、4兆ドル台接近の外貨準備高を保有したこともある。その後は、2015年の株価急落と人民元安によって外貨が流出、3兆ドル割れを経験したここもある。

     

    中国は社会主義経済である。政府が全てを管理しなければ安心できない。そいう心理的な脆弱性を抱えているが、最大の理由は世界一の外貨準備高が国威発揚になると錯覚していることだろう。世界一の外貨準備高を保有する経済的な合理性はゼロである。むしろ、この他国を引き離す外貨準備高を持つデメリットが、経常収支構造を歪めている。この矛楯を気づかせるのが、8月6日発表の今年上期の経常収支赤字であろう。

     

    中国の適正外貨準備高はどのレベルなのか。

     

    みずほ総合研究所の試算によれば、次のような結果が出ている(2017年1月発表)。この試算には、IMFモデルを用いている。資本取引規制がある場合が1.7兆ドル。同規制がない場合は2.8兆円である。驚くことに、現在の3兆1000億ドル台の外貨準備高は、資本取引規制を外した場合の必要外貨準備高(2.8兆ドル)と3000億ドルしか余裕がないのだ。

     

    外貨準備高は、完全変動相場制に移行すれば、為替需給は為替相場によって調整される。そうなれば、中国は現在の1ドル=6.8元を守るか否かという問題を超えて、大幅な人民元安に見舞われるはずだ。極端にいえば、1ドル=10元を超える事態も発生する。こうなると、資本は大幅に流出するはずだ。中国経済は、見る影もなく発展途上国へ逆戻りとなろう。「米国覇権に挑戦する」などと言える状況でなくなる。

     

    こう見てくると、中国が必死で外貨準備高3兆1000億ドル台にしがみついている理由が分る。まさに、国威発揚をかけた闘いなのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月31日付)は、「トランプ氏、中国の対米黒字縮小に反応薄か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「エコノミストらによると、中国政府が86日に発表する今年16月の経常収支は赤字となる公算が大きい。これは事実上、輸入額が輸出額を上回ったことを意味する。マッコーリー・キャピタルのエコノミスト、胡偉俊氏は赤字幅が240億ドル(約2兆6600億円)で、その大半は1~3月期に発生したものだと予想している。実際に赤字となれば、半期の赤字計上は、中国が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから初となる」

     

    ここに登場するエコノミストによれば、1~6月の経常収支赤字は240億ドルと見込んでいる。1~3月は、341億ドルの赤字であった。上期が赤字であれば、2001年以来のこと。中国の競争力が低下した証明である。

     

    (2)「エコノミストらは、中国経済の成長減速で輸入が減るとみて、2018年通年では1000億ドル程度の経常黒字になるとの見方を変えていない。ただ、これだけの黒字を計上したとしても、国内総生産(GDP)に対する比率は1%弱で、1995年以来の低水準となる。対照的に、2007年には同比率が10%近くに達していた。それ以降、同比率は下がり続けており、2019年には0.5%へ落ち込むとモルガン・スタンレーやスタンダード・チャータードなどは予想している」

     

    2018年の経常黒字は1000億ドル程度に減って、対GDP比は1%との予測である。IMF予測では1.18%であるから大きな違いはない。2019年には0.5%へ落ち込むとの予測だ。2006~08年には、同8~9%の時代もあった。もはや、この時代に戻れるはずはないが、余りの凋落に息を飲む思いだ。「奢れる者久しからず」である。

     

     

     


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    最低賃金の大幅引上げに端を発して、韓国経済の基盤がメチャクチャであることが浮き彫りになってきた。「反日騒動」で見せたあの勝ち誇った姿は、もはやどこにも見られない。さらに、大きな社会問題になっているのは、自営業者の金策が著しく難しくなってきたことだ。

     

    韓国では、なぜこれほどまでに自営業者のウエイトが高いのか。定年退職後、退職金のほかに借金までして自営業を始める理由は何か。韓国では、年金を含めた社会保障制度が完備していないことにある。これは、データ面で確認できる。日本で、定年退職後に自営業を始める人は珍しい。生活のために小商売を始めるよりも、今まで勤めた会社で嘱託などのコースを選ぶ。

     

    韓国では、高齢者の1人当たり社会保障費が、OECD35ヶ国中32位(2013年)、対GDPの社会保障費が、同34位である。日本はどうか。前者が10位。後者が7位である。日本の方がはるかに恵まれている。だから、老後に、商売を始める人がいないワケだ。

     

    『韓国経済新聞』(7月31日付)は、「借金まみれの韓国の自営業者、金利上がれば48万人が信用不良者」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「退職金に加え借入までして食堂などの店を開きながら借金を返せなくなり廃業する自営業者が増加している。『商売さえうまくいけば負債を返すのは一瞬』という考えから無理に貸付を受けたが利子も返せないほど、経営状況が悪化したためだ。急激な最低賃金引き上げなどで各種コストが増える中で景気が悪化し消費者が財布を閉じ始めたためと分析される。金融当局は事実上、自営業者への貸付総量を引き締め始めた。『貸付の崖』に直面した自営業者は消費者金融まで訪ね始めた。彼らが倒れれば金融システムだけでなく実体経済まで衝撃は避けられないと指摘される」

     

    自営業者の経営悪化問題は、最賃の大幅引上げがきっかけになって津波のように広がっている。これが、個人消費を沈滞化させており、自営業者の金繰りに影響を及ぼしている。正規の金融機関が警戒し始めており貸出を絞っている。日本のように、自営業に親身になる金融機関は存在しないのか。こういう韓国の金融システムでは自営業者を追い詰めるだけだろう。文政権は、自営業者の金融隘路を打開しなければ、自営業を救えない。最後に行き着く先が消費者金融では、高金利で自らの首を締めることになろう。

     

    (2)「自営業者は銀行、貯蓄銀行、農水畜協など相互金融の貸付が閉ざされると、消費者金融まで探しに出た。これに伴い、消費者金融利用者のうち自営業者の割合だけ増えたことがわかった。消費者金融で金を借りた低信用者のうち自営業者は昨年6月末の18.8%から12月末には21.6%に増加した。今年上半期は25%まで増えたというのが金融圏の分析だ」

     

    消費者金融まで金策に出かけるのは、韓国経済がすでに下降局面に入っていることの証明である。政府は、この実態も知らずに来年の最賃を10.9%も引上げている。何ともチグハグナ話だ。すでに、自営業者が消費者金融利用者の4分の1とは、尋常ならざることだ。

     

    (3)「金融当局は、全自営業借主約160万人のうち、償還力が落ち金利上昇に弱い借主は約48万人(貸付金38兆6000億ウォン)に達するとみている。このうち格付けが7等級以下や消費者金融などで高金利貸付を受けた約18万人(貸付金12兆5000億ウォン)は高危険群に分類している。金利上昇時には彼らが経済の信管になりかねないという指摘だ」

    全自営業借主約160万人のうち、約48万人が「信用不安者」に分類されているという。このうち、約18万人は「高危険群」である。文政権は、こういう実態を把握しているだろうか。文氏は毎日、午前3時まで資料を読んでいるという。それも結構だが、
    街へ出て庶民がどのような暮らしぶりしているのか、それを見るべきだ。

     



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    吉村洋文市長が7月24日、サンフランシスコ市のロンドン・ブリード市長に次のような書簡を送ったことが判明した。大阪市は、米国サンフランシスコの公園に設置された慰安婦像が、今後も設置される場合、姉妹都市提携を解消するとしたもの。吉村市長は、前サンフランシスコ市長に当てた書簡でも慰安婦像の設置継続であれば、60年にわたる姉妹都市提携を解消すると明らかにしていた。今回も同様の内容である。

     

    以下の記事は、韓国の『中央日報』(8月1日付)が、「慰安婦像を撤去しなければ姉妹提携解消、大阪市が米サンフランシスコ市をまた圧迫」と題する記事を掲載した。韓国メディアが、この問題をどのような視点で捉えているかを知るためである。

     

    (1)「昨年、サンフランシスコに設置された慰安婦像は、韓国と中国、フィリピンの3人の少女が互いに手を取り合って背中合わせに円形に立ち、これを慰安婦被害者の金学順(キム・ハクスン)さんが見つめる構図となっている。像はカリフォルニア・カーメルで活動する著名な彫刻家Steven Whyte氏が「女性の強靭さの柱(“Comfort Women” Column of Strength)」というタイトルで製作した」

     

    (2)「昨年11月、当時のサンフランシスコ市長エドウィン・リー氏は、市内にあるセント・メリーズ公園に設置された慰安婦像の受け入れを公式化する文書に署名した。これに対し、サンフランシスコと姉妹提携都市である大阪市は、1カ月後に幹部会議を開いて提携解消を正式に決めた。だが、同月、親韓派に挙げられてきたリー氏が急逝し、大阪市は新市長の就任を待って書簡を送った」

     

    (3)「吉村市長は、『慰安婦像をサンフランシスコの公共物として扱わず、両市の市民が友好的に交流できる環境をつくる意向があるのなら、姉妹都市関係を継続することに異論はない』と迫った。また、吉村市長は今年9月末までの回答を求めたと共同通信は伝えた」

     

    サンフランシスコ市のロンドン・ブリード市長は、今年7月11日就任である。まだ日も浅いが、問題の経緯は充分に理解されているだろう。過去60年にわたる密度の濃い交流の歴史があるだけに、日本への理解も十分と思われる。日本が、第二次世界大戦後歩んできた道と、世界的にも平和国家という高いイメージ(ランキングでは5~6位)を得ている現実を十二分に理解して欲しいものだ。


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