勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年08月

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    中露関係は、一体化されているように見えるが、それは表面上にすぎない。ユーラシア大陸で、「両雄並び立たず」の喩え通り、ロシアが中国の経済的な膨張を警戒しているからだ。ロシア政府は、次世代通信機「5G」で中国通信機メーカーのファーゥエイ・ZTEの製品導入を拒否する方針が伝えられている。ロシアの中国警戒の一端だ。

     

    『大紀元』(8月28日付)は、「露、ファーウェイ・ZTEの輸入規制を検討。米豪に続き」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシア政府は、米国、オーストラリアに続き、問題視されている中国通信企業の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の通信設備に対する輸入規制を検討している。米『ラジオ・フリー・アジア』(23日付)によると、露紙『コメルサント(Коммерсантъ)』(20日付)は、政府担当者の話を引用し、同国の通信設備メーカー数社と業界関係者から、ファーウェイとZTEを含む外国通信設備の輸入禁止を提案されたと報じた」

     

    ロシア政府は、中国通信企業のファーウェイとZTEの5G製品の輸入規制を検討している。自国の情報が中国へ筒抜けになるリスクの回避である。中国製通信機には、秘かに情報を北京へ送る機能が仕掛けられている、として警戒されている。すでに、米英豪に続き日本政府も導入拒否を検討中と伝えられている。ロシアも、この「拒否戦列」に加われば、中国製品市場は大きく狭められる。

     

    (2)「『コメルサント』の報道では、中国勢はロシア通信設備市場の主要な供給源だと示された。同国通信業界関係者の話によると、2017年ロシア通信設備市場の総規模は2500から3000億ロブールに達したが、ロシア通信企業が占める市場シェアがそのうちの6%から8%(約150から240億ルブール)にとどまった。ロシア通信企業の実際の生産能力は市場の8割以上をカバーできるにもかかわらず、現状ではファーウェイとZTEなどの外国勢が市場の大半を占めているという」

     

    ロシアでは、中国製通信機が圧倒的なシェアを占めているが、後のパラグラフにあるように、正当な競争で勝ち得たシェアではなさそうだ。不正競争の結果とされている。ロシア通信機メーカーでも、ロシア市場の8割以上をカバーできる能力があるという。

     

    (3)「露ニュースサイト『Akket』(20日付)は、ロシア通信業界が、中国のファーウェイやZTE、スマートフォンメーカーの小米(Xiaomi)などが様々な手法で関税や付加価値税の賦課を回避し、露企業に不公平な競争環境を強いたと批判した、と報道した。『

    コメルサント』によると、メドヴェージェフ首相が通信業界の提言を財務省や産業貿易省など各政府機関に配布し、審議・調査するよう要求した」

     

    メドヴェージェフ首相は、ロシア通信業界の提言を財務省や産業貿易省など、各政府機関に配布して審議・調査するように要求したという。話がここまで進んでくると、中国製通信機の「5G」導入は困難であろう。

     

    ロシアが中国を警戒するのは、中国の「一帯一路」である。ロシアの裏庭に当る中央アジアへ進出しており、着々と政治的な影響力を高めている。専門家は、中国の中央アジアにおける影響力拡大は、ロシアの地域的利益を真剣に脅やかすと考えている。今回の「5G」拒否も、この流れの一環であろう。「一帯一路」は、中国の命運に負の影響を与え始めたことは確実である。領土拡張を狙う習近平の「国粋主義」が、各国で壁に突き当たってきたと言えそうだ。


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    中国が、最も恐れるのは資本流出である。外貨準備高3兆1000億ドル台を取り崩すことが、中国の国威を傷つけると考えているからだ。理屈の上では、そのようなことはないのだが、外貨準備高を「見せ金」に使う中国政府は深刻に受け止めている。

     

    その忌み嫌う資本流出につながりかねない現象が起こっている。短期金利で中国が米国の金利を下回ることが起こっているからだ。市場関係者は、この動きに注目している。

     

    『ブルームバーグ』(8月28日付)は、「中国から資本流出のリスク 米中短期金利が逆転」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の金利が米国より低くなることはめったにない。だが7月と8月にそれが起きた。中国当局が景気を支えようと、金融緩和的措置を講じた結果、起こったものだ。世界1、2位の経済大国の短期金利が逆転した」

     

    米国は金利引き上げ、中国が市場金利を引下げて景気下支えを図っている。この米中による政策意図の逆転が、中国からの資本流出につながる前兆である。資本流出は、中国経済の根幹を揺るがす「大問題」へ発展する。中国の投資ファンドすら中国株に厳戒態勢だ。警戒すべきであろう。

     

    (2)「中国の翌日物金利は7月、米フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の上限を下回った。この現象は少なくとも2015年以来のこと。中国が、一連の景気刺激策を打ち出す中でおこり、8月に入ってもそうした状況にある。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の曲天石エコノミスト(上海在勤)は、米中の短期金利逆転は大きなリスクをはらむと分析する。中国の資本動向における最近の安定を打ち砕く可能性もあるとみている」

     

    米中の短期金利逆転は、滅多に起こらない現象である。それが、7月、8月と続いている。これは人民元相場の安定を突き崩す。中国当局は、急に人民元高へと誘導を始めた。米中金利逆転に警戒し始めた結果とも読める。

     

    (3)「前出の曲天石氏は、米中間の金利逆転が『投資家がドル資産の保有を望む一方で、企業は債務を人民元建てで保有したいと考えることを意味し、資本流出につながる』と述べ、『中国人民銀行(中央銀行)は比較的短期間ならこうした逆転現象を容認することができるが、資本流出を招くため長期間は無理だ』と指摘した。華宝信託の聶文エコノミスト(上海在勤)は『中国が直面しているより大きな問題はどのようにして加速しつつある経済成長鈍化ペースに歯止めをかけるかだ。予想以上に景気減速が進めば人民銀は利下げさえも検討するかもしれない。企業の資金調達コストがはっきりと下がるまで、低水準の借り入れコストがかなり長く続くだろう』と話した」

     

    専門家は、金利逆転現象に警戒している。投資家はドル資産の保有を望み、中国企業が債務を人民元建てで保有したい意向の表れと読む。債務を人民元建てにすれば、返済時にドル高の影響を受けないからだ。これらを総合すれば、ドル高・人民元安を前提にした行動である。この積み重ねが限界に達すれば、一挙に「ドル流出・人民元暴落」へつながる。「蟻の一穴堤を崩す」の喩えが身に沁みるのだ。


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    トランプ大統領の大型減税は、レーガン政権が実施した1986年以来、約30年ぶりの抜本改革となった。これによって、消費面から米国経済を支え、米中貿易戦争を乗切る体制が確立した。

     

    具体的な内容は、次のようなものだ。

     

    企業の税負担が10年間で6500億ドル(約73兆円)減り、個人は1兆ドルを超える。企業や個人を潤して活力を高め、企業の投資を呼び込む。米国を豊かにする好循環をつくるというのだ。この段階で、米中が貿易戦争へ突入する。中国は、不動産バブルによる過剰債務が、企業と家計を襲っている。不況抵抗力は極端に低下した。片や、米国はトランプ減税がうなりを上げて始動し始めた。中国に歩があるとは思えない。習氏は玉砕覚悟だろうか。

     

    次に掲げる記事は最近、米国の家計貯蓄率調査において、これまでの常識を覆す結果が出てきたことを報じたもの。これによって、「米国経済強し」という印象を一層、高めるのだ。米国家計が、浪費好きというこれまでのメ-ジから一変し、家計に堅実性が戻って来た。また、「資産効果」と言って、株価が上昇すれば個人消費が増えて、貯蓄率が下がるという仮説が否定された意味も大きい。米国家計が、プロテスタント的なものに変化した点は、今後の米国経済を見る上で大きな要因となろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月21日付)は、」米国経済、家計貯蓄が意外な防波堤に」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米国経済が直近2回のリセッション(景気後退)に陥る前、家計は無防備だった。数年にわたり株式や持ち家など資産価値の上昇が続き、雇用見通しが改善する中、貯蓄はあまり必要ないと消費者は考えていた。そのため2001年と07年からの2回のリセッション時に失業率が上がり、資産価値が下がると、消費者は支出を厳しく引き締め、経済は収縮した。数週間前まで、一部のエコノミストは歴史が繰り返されることを警戒していた」

     

    これまでの「浪費好き米国家計」のイメージが変わった。具体的には、次のパラグラフで指摘されているが、堅実型に変わったのだ。そのきっかけが、2001年と07年のリセッションで塗炭の苦しみを味わい、貯蓄を取り崩してまでの消費を控えるようになった。これは、地味ながら底堅い個人消費の流れをつくっていく期待を持たせる。

     

    (5)「商務省経済分析局(BEA)が7月発表した貯蓄データの改定値で、家計が数年にわたり、はるかに多くの貯蓄をため込んでいたことが分かった。米国の世帯は、以前考えられていたよりはるかに多くを貯蓄に回しているようだ。今年1~3月期だけをとって見ても、BEAは個人貯蓄率の推計を従来の3.3%から7.2%へと倍以上に引き上げた。この数字は1990年代の平均貯蓄率である6.4%を上回る。直近の底である05年の2.5%に比べると3倍近い。1~3月期分の上方修正だけでも、年率にすると貯蓄が6135億ドル(約67兆7400億円)増えたことになる。今回の個人貯蓄率の見直しは少なくとも2002年以来の大幅修正となった」

     

    家計貯蓄データの見直しが行なわれた。その結果、家計が予想よりもはるかに多くの貯蓄をしていたことが判明した。今年1~3月期だけ見ても、BEAは個人貯蓄率の推計を従来の3.3%から7.2%へと倍以上に引き上げた。これだけの貯蓄率を維持し、生活をエンジョイする中で米国経済の好循環が続いているのだ。

     

    (6)「エコノミストらは、07〜09年のリセッションで痛手を負った消費者が貯蓄を決意した可能性が高いとみている。リセッションは数百万人の失業を招き、住宅の価値は決して下がらないという信念を覆した。この仮説を支えるのは、失業率が半分に下がり、株価が跳ね上がったにもかかわらず、修正された貯蓄率が13年からほぼ変わっていないという事実だ。この点について、JPモルガンの首席米国エコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「マクロ経済のより確かな規則だと考えられてきた」資産効果に逆行すると指摘する。家計の資産が増えると消費が増え、貯蓄は減るというのが資産効果の理論だ」

     

    07〜09年のリセッションで痛手を負った消費者が、貯蓄の重要性を決意した可能性が高いと見られる。人間一度、痛い目に遭えば、二度とそれを繰り返したくない気持ちになる。今後とも、無駄を省きながら堅実な消費生活を続ける可能性が強い。ここへ、さらにトランプ大型減税で10年間に1兆ドル以上の減税が寄与する。米国経済が、個人消費面からも支えられる構造が強化されたと言えよう。

     


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    中国が、意に従わない国に下す手段は、自国観光客を渡航させないことだ。観光客の「武器化」を実践している。人間が、鉄砲弾の代わりをしているが、こういう行為は、大国にふさわしくない振る舞いである。だが、そういう認識はゼロ。中国の民度が大国クラスでなく、発展途上国クラスと見られている理由だ。

     

    『大紀元』(8月28日付)は、「中国当局、中国人観光客を武器化、外交カードとして」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国連世界観光機関(UNWTO)によると、中国人観光客の海外での消費額は世界全体の5分の1以上を占め、2位の米国の倍程度だという。ホテル予約サービスサイト、Hotels.comによると、2016年に12200万人もの中国人が海外旅行をしており、今後も80年代90年代生まれの世代を中心に増加する見込みだ」

     

    中国人観光客の海外消費額は、世界全体の5分の1以上を占め、2位の米国の倍程度だという。「爆買い」をやるから消費額が増える理屈だ。中国国内の医薬品や食品の安全性に問題があるので、先進国でこれら生活必需品を購入せざるを得ない事情もある。ただ、中国人観光客の増加は、国際収支の「サービス収支」赤字を増やしており、経常収支の黒字幅圧迫要因になっている。

     

    今年の経常収支黒字は1000億ドルまで減る予想だ。来年は500億ドルを下回る恐れが出ている。となると、いずれ中国で海外旅行が割り当て制になる可能性を否定できない。米中貿易戦争が激化して貿易黒字が減れば、経常赤字転落は必至だ。

     

    中国で海外旅行の割り当て制になったらどうなるか。国民の不満は沸騰しよう。そうなれば、習政権は保つだろうか。そろそろ、そういう頭の体操も必要だ。

     

    (2)「世界の観光市場を左右する中国人観光客だが、中国政府はこれを外交カードとして利用している。米ウェブニュース『Axios』は826日、『観光の武器化:中国』と題した記事で、中国政府は外交の都合で、自国から海外へ向かう旅行者の緩和や規制を操作していると指摘した。同記事は、819日にロイター記事を引用し、太平洋の小さな国であるパラオは現在、中国による観光を武器とした圧力で苦しんでいるとのレポートを発表した」

     

    パラオのほかに韓国がまだ虐められている。こういう振る舞いに義憤を感じる。中国は、大国風を吹かすのが大好きゆえに、まだ続けるのだろう。近く、経常赤字で本当に割り当てをやらざるを得なくなる時期が来たとき、バツの悪い思いをするに違いない。奢れる者久しからず、だ。


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    米国による対中制裁の第3弾として、2千億ドル相当に25%関税を科す予定だ。9月末が、発動時期とされている。中国経済には重大な影響が出る。家具までがその対象とされているからだ。投資ファンドでは、この危機をいかに回避するか知恵を絞っている。できるだけ現金保有比率を高め、対応を早める臨戦態勢だ。中国政府から、こういう逼迫感は伝わってこないのが不思議である。

     

    『ブルームバーグ』(8月27日付)は、「リターン618%の中国株ファンド、資産の半分を現金保有-先行き慎重」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国株式市場はまだ底入れしていない。2008年開始以降のリターンがプラス618%を記録した中国の株式ファンドが慎重な見方を示した。運用資産が約200億元(約3270億円)に上る北京源楽晟資産管理は、そのうち100億元相当を現金で保有している。ファンド幹部は中国経済の見通しや対米貿易摩擦を懸念しており、株式に対する極めて弱気なセンチメントの回復には、数年を要する可能性があると予想している」

     

    投資ファンドの「北京源楽晟資産管理」は、2008年以降に618%の上昇率を実現した屈指の好成績ファンドである。2015年の株価暴落でも無傷だが、現状の中国株価は「見通し難」としてさじを投げている。市場は超弱気が覆っており、回復には数年を要するというほどの重症である。

     

    (2)「源楽晟の曽曉総経理は先週、北京でインタビューに応じ、『多くの銘柄が下落し、価格水準が魅力的に映りつつあるが、中国経済の先行き不透明感があまりにも強い』と指摘。『われわれはしばらくマーケットエクスポージャーを抑え気味から比較的低水準に維持する方針だ』と述べた。源楽晟の投資姿勢は、中国国内の資産運用会社がいかに悲観的にみているかを示している。売買は減少しており、株式のバリュエーションが14年以降で最も低くなっているにもかかわらず、買いを入れようとする機運が乏しいことを示唆している」

     

    ここでは、中国経済の先行き不透明感が余りにも大きいと、指摘している。この状態を習近平氏はなんと聞くだろうか。彼らに、「米国衰退・中国発展」と聞かせたら腹を抱えて笑いこけるに違いない。まともな知識を持っていれば、習氏の国粋主義的な見通しは子どもの描く夢の類いだ。

     

    (3)「源楽晟を設立した呂小九ファウンディングパートナーは、『貿易戦争はわれわれの投資戦略に大きな影響がある。自動車部品や家具、一部の軽工業を含む輸出依存型の業種など影響を受けそうな業界への投資見送りを決めた』と話し、家電銘柄も売却したことを明らかにした」

     

    中国経済は、消費も売上が鈍化している。輸出関連は、米中貿易戦争で八方ふさがり状況にある。要するに買える銘柄がないと言うことだ。企業格付けも信用できず、投資ファンドの防衛策としては、総資産の半分を現金化しておく。それが、最善の投資戦術と言える。中国市場はここまで落込んだのだ。

     

     


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