勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年09月

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    米国は、対中貿易戦争の次に、新疆ウイグル族の人権侵害問題に取り組む。監視カメラを製造している世界最大手の中国企業に対して、監視カメラの根幹機能を果たすICチップの輸出禁止措置が取られたとの報道も出てきた。これが現実化すれば、監視カメラの製造企業は、第2のZTE(中興通訊)になりかねないリスクに直面する。

     

    910日、米ニューヨーク・タイムズは米政府当局者の話として、新疆地区の人権弾圧を重く見るトランプ政権は、少数民族の人権弾圧と監視システムに加担する中国企業を制裁対象に入れることを検討していると報じた。すでに米政府機関は、世界大手監視カメラ・メーカー、深圳の海康威視(Hikvision)や大華科技等中国公司(Dahua Technology)の使用を停止している。

     

    『大紀元』(9月25日付)は、「ZTEの二の舞か、欧米が世界最大手の中国監視カメラ企業を制裁の動き」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世界大手監視カメラ・メーカー、深圳の海康威視(Hikvision)や大華科技等中国公司(Dahua Technology)の両社は、ウイグル自治区での監視カメラ開発に政府と協働してきた。中国政府が「天網(スカイネット)」と名付けた全国展開するAI機能付き監視システムについて、中央当局は2020年までにさらに4億台以上に国内に監視カメラを設置する計画がある。海康威視は中国監視カメラの40%、世界では11%の市場を占有する」

     

    海康威視は、中国監視カメラ市場で40%、世界市場で11%を占めている。この主要部品である、カメラの画像認識ICチップは米国製だ。米国が、これを輸出禁止すれば「第2のZTE」になって、経営危機の懸念が出てくるだろう。

     

    (2)「監視カメラの根幹機能をもたらすICチップの輸入禁止措置が欧米のメーカや政府当局により図られているという報道もある。英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』の取材に答えた、監視カメラ開発に関わる北京の研究員によると、あるオランダ企業は、中国の監視システムに必要な技術の輸出を停止した。また、主に米国から輸入していた、監視カメラに画像認識機能をもたらすICチップの輸入は、まもなく停止すると可能性があるという。中国本土へ機密製品の中継貿易を担っていた香港にも、輸出が止まっていると述べた。国連人種差別撤廃委員は8月、新疆ウイグル自治区における100万人収容について、法的根拠のない拘束、収監をやめるよう批判する声明を出した」

     

    監視カメラ開発に関わる北京の研究員は、内部の事情を次のように説明している。

       あるオランダ企業は、中国の監視システムに必要な技術輸出を停止した。

       米国から輸入していた監視カメラの画像認識機能ICチップは、まもなく停止する可能性がある。

       中国本土への中継貿易を担当してきた香港へ米国からの輸出が止まった。

     

    中国政府は、新疆ウイグル自治区で100万人以上という大規模な人権侵害を行なっている。その責任が厳しく問われ始めた。先ず、監視カメラ用のICチップの輸入禁止から、監視カメラの製造ノウハウに至るまで広範に及ぶ。さらに、本丸である中国政府の政治責任追及である。


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    韓国の出生率の急低下は深刻である。一人の女性が出産する子どもの数を示す「合計特殊出生率」が今年に入って1人を割って世界最悪の事態になっている。日本の1.4人も少なくて、政府はこれを1.8人まで引き上げると奮闘中だ。

     

    それほど、出生率低下は国家の将来を左右する重要問題である。韓国の場合、日本以上に難問に直面している理由は、家賃制度にあることがおぼろげながら分ってきた。ならば、この家賃制度を変えれば良いのだ。それが、すぐにできないところが韓国の悩みである。儒教社会ゆえに、過去からの仕来りが重い足かせになっている。なんとも不合理な話である。

     

    『朝鮮日報』(9月24日付)は、コラム「結婚放棄世代」を掲載した。筆者は、同紙の朴恩鎬(パク・ウンホ)論説委員だ。

     

    (1)「韓国は2015年の時点で2049歳の女性の37%が独身だった。2000年は27%だった。昨年の結婚数264500件は人口1000人当たり5.2件で、1970年の統計開始以来最低となった。「韓国消滅」という事態を防ぐには、非婚人口・晩婚人口をまず減らすべきだという分析がある。ソウル大学のイ・チョルヒ教授が2016年に配偶者のいる女性を調査したところ、平均で2.23人を出産していた。これは2000年の1.7人よりもむしろ増えている数値だ。つまり、「結婚→出産」という流れはより強まっているのだ」

     

    ここで重要な点が指摘されている。結婚した女性の子どもの数は、2000年の1.7人から2016年には2.23人へ増えていることだ。結婚しても子どもを持ちたがらない。そういう通説は否定されている。ところが、20~49歳の出産可能世代が37%も独身である。これは、相性がいい男性に巡りあえず結婚ができないことを示唆している。

     

    (2)「深刻なのは、独身男女が結婚を避ける理由がますます増え、しかも強くなっているということだ。本紙「少子化」取材チームが会った3035歳の非正規職未婚男性は「ソウルで暮らすには、『伝貰』(チョンセ=住宅賃貸時に高額の保証金を大家に預け運用してもらう代わりに、月額賃料を支払わない賃貸契約)も2億ウォン(約2000万円)以上必要だ。そんなお金をいつ貯めろと言うのか」と嘆いた。それなりの企業に正社員として就職するのも夢のまた夢だ。青年失業率はますます悪化している。「最近は金持ちの家の子しか結婚できない」とまで言われている。結婚が特権になってしまったら、その国に希望はない」

     

    韓国男性は、結婚問題についてどう考えているのか。結婚願望は強いものの、住宅問題がネックで結婚できない。そういう事情が浮かび上がってきた。韓国では、「伝貰」(チョンセ)という昔からの貸家制度がある。住宅賃貸時に高額の保証金を大家に預け運用してもらう代わりに、月額賃料を支払わない賃貸契約だ。その保証金が、なんと2億ウォン(約2000万円)以上も必要というから驚く。この「伝貰」が、結婚を邪魔しているならば止めればいいのだ。それができないところに悩みがある。

     

    韓国の最大の問題はここにある。過去からの習慣を変えられないのだ。これぞ儒教社会の落し穴であるが、儒教は空気となって韓国社会を強制しているのであろう。韓国男子は、結婚するにはそれなりの資産を貯めないと、女性に結婚を申し込めない。「男子の威厳」とやらに縛られているのだろう。好きな女性がいれば、「愛情第一」で家庭を持てば良いのだ。その勇気が、韓国社会の仕来りによって邪魔されている。なんとも、不思議な社会に思える。



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    連鎖反応と言うべきか。政治色の濃厚な一帯一路計画に対して、アフリカのザンビアでも反対デモが始まった。「アジアがだめなら、アフリカがあるさ」との軽い気持ちも吹き飛ばされたであろう。中国が動くところは、全て汚職の種が蒔かれる。中国は、「賄賂の国」ゆえに倫理感が麻痺しているからだ。純朴なアフリカまで、賄賂のバイ菌をまき散らしてはならない。

     

    ザンビアは1964年の独立以来、中国と経済的にも軍事的にも友好関係にある。しかし、1998年、銅鉱山を買い取った中国人による労働組合設立の弾圧。2006年、中国人監督が中国人による賃金未払いへの労働者デモに発砲し、46人が射殺された事件など、ザンビア国民の対中感情は悪くなっている。2006年秋の大統領選では、野党候補が中国追放論を主張したほど。結果は敗れたものの、28%もの支持を得たという。今回、ザンビアで「反中デモ」が起こるには、それなりの十分な背景がある 。

     

    『大紀元』(9月25日付)は、「ザンビアで反中デモ、中国融資が経済を圧迫」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「南アフリカの国・ザンビアの首都ルサカで924日、反中国デモが発生した。現地紙『サンデイ・タイムス』によると、デモ参加者は、中国共産党の影響力が国内で広がるだけでなく、過剰な融資が国の脆弱な経済をさらに悪化させることに懸念を抱いている。『ザンビアにおける中国の影響と腐敗を、国際社会に注目してもらいたい』デモ参加者は同紙に答えた」

     

    ここでも、中国によるザンビア乗っ取りを警戒されている。どこへ行っても札ビラを切って歩いているのだろう。だが、世界中にわき上がる「中国警戒論」は、中国の野放図な行動に一矢報いるにちがいない。

     

    (2)「中国はザンビアの主要な出資国であり、インフラの入札は中国企業が請け負う。空港、道路、工場建設、警察所に至るまで、中国の融資で建設されている。ザンビアの公的債務は106億ドルと言われているが、隠れた融資があると懸念され、国際通貨基金(IMF)は13億ドルの融資交渉を延期した。デモ参加者は、ザンビア政府は国営電力会社、空港、国営放送の管理権を中国に明け渡すのではないかと考えている。『中国は、ザンビアからすべて奪い取ろうとしている。ザンビア政府は、議会の承認もなしに、中国の融資を受けている』でも参加者は述べた」

     

    ザンビアも、中国によって食い物にされている。IMFは、13億ドルの融資交渉を延期した。隠れ債務の存在が疑われているという。中国の差し金でIMFから融資させて、その資金を中国に返済させる「暗躍」でもしているのだろう。パキスタンでも同じ手を使う積もりだったが、米国が釘を刺して沙汰止みになった。中国は、次第に「金欠病」にはまり込みつつある。潤沢な資金保有というイメージは昔のことだ。

     

    (3)「野党である国家発展統一党のスティーブン・カツカ代表は、ザンビアの労働環境への変化も危惧する。『仕事場では、中国の管理者に従わないザンビア人が暴行された例もある』『こうした事態が続けば、外国勢力の侵略に繋がる恐れがある』と述べた。ザンビアの民間部門開発協会のエコノミスト、ヨシフ・ドディア代表は、中国投資をチャンスとみなされるべきではないとAFP通信の取材に語った。インフラなど中国の投資は約100億ドルにのぼるが、かならずしも現地経済に波及していないという。ザンビアの業者は、中国の支配的な仕事に不満を抱いている」

     

    2006年、中国人監督がザンビア労働者デモに発砲し、46人が射殺された事件はまだ尾を引いている。最近でも、「仕事場では、中国の管理者に従わないザンビア人が暴行された例もある」ように、この不満は「外国勢力の侵略に繋がる恐れがある」と不気味な予告が出ている。「中国人追放」の軍事行動でも起こったら、中国のイメージは墜落だ。「新植民地主義が追い払われる」といったニュースが世界を駆け巡りそうである。中国は、どこへ行っても悶着を起こしているのだ。


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    中国政府は最近の通達によって、地方政府の資金調達機関である「地方融資平台」の倒産を容認する方針を明らかにした。ただ、この地方融資平台の資金を補強する手段として、「混合所有制改革」(国有企業への民間企業の資本参入)を推進していくとも強調している。民間企業からの出資で、地方融資平台の資金繰りを付ける。こういう「便法」が浮上しているのだ。国有企業が、すでに惨憺たる状況に追い込まれており、習近平氏が描いた国有企業中心の産業構造にヒビが入った形だ。

     

    『大紀元』(9月25日付)は、「中国、地方債務を民間に転嫁か、傘下投資会社の破たんを容認する方針」と題する記事を掲載した。

     

    (6)「中国当局はこのほど、債務超過に陥った地方政府傘下の投資会社を清算し破産させる方針を明らかにした。当局のこの政策が新たな金融・社会的不安を引き起こす恐れが大きい。当局は13日、各地方政府に対して『国有企業の資産負債の制約を強化する指導意見』(以下、指導意見)を通達した。なかでは、『深刻な債務超過に陥り、償還能力を失った地方政府融資平台企業に対して、法に基づき破産重整または清算を実施す』と記された。破産重整は、中国の3種類の法的倒産続きのうちの1種類だ。日本の会社更生手続きに相当する」

     

    地方政府は当初、債券発行を認められないにもかかわらず、経済成長維持のためにインフラや不動産の開発を積極的に行った。その財源確保のために、法の抜け穴として「地方融資平台」(融資プラットホーム)と呼ばれる投資会社を設立した。地方政府は、国債や土地使用権、国有企業の株式などを担保に、銀行や債券市場から資金を調達した。銀行の場合、地方融資平台への与信資金を、個人向けの資産運用商品、いわゆる理財商品を販売して投資家から集めた。

     

    このように、地方政府と銀行は、「地方融資平台」を間に入れて資金調達しインフラ投資を支えた。だが、不採算事業ゆえに収益性は低く、借入金返済の段階で行き詰まった。中央政府は、この「地方融資平台」を倒産させるとの通達を出したのだ。金融情勢は大きく揺さぶられている。金融機関の破産は、「一波万波」の喩え通りに信用機構そのものを毀損する。安易に考えていると、中国経済の命取りになるだろう。

     

    (7)「中央当局は、融資平台の負債について地方政府の債務と認めていないため、地方政府の『隠れ債務』と見なされている。その全容がいまだ不明だ。経済ニュースサイト『華爾街見聞』は今年2月に、長江産業経済研究院の調査報告について、融資平台1870社の2016年末までの負債規模が30兆2700億元(約484兆3200億円)に達したと報じた。さらに、金融情報サイト『和訊網』(8月23日)によると、清華大学経済管理学院の白重恩・院長が率いる研究チームの調査では、17年6月末まで、融資平台の債務残高が47兆元(約752兆円)であることが明らかになった。しかし、これはまだ地方政府の『隠れ債務』の一部にすぎない」

     

    中国政府は、無責任である。地方政府に財政資金手当もせずにインフラ投資をさせながら、「地方融資平台」による債務は認めないという虫の良さに驚く。インフラ投資によるGDP押上げ効果は、習近平氏の手柄にした。資金調達については、「隠れ債務」で預かり知らぬという仕打ちだ。「一帯一路」で弱小国を食い物にしている構図とピッタリである。清朝時代の流儀を真似ているに違いない。

     

    (8)「中国のセルフメディア『掃雷小組』が今年2月中旬に掲載した記事によると、中国当局は各地の隠れ債務規模の実状について調査を乗り出した後、危険な水準にあるとの結果を得たという。『掃雷小組』は、全国地方政府の隠れ債務が、少なくとも公表された数値の4倍であると試算した」

     

    全国地方政府の「隠れ債務」は、少なくも公表債務の4倍はあると見ている。中国財政部(財務省)が7月に発表した統計によると、今年6月末まで、全国の地方政府の債務残高が16兆8000億元(約268兆8000億円)である。「隠れ債務」が公表債務の少なくも4倍とすれば、1072兆円に達する。公表と隠れ分の債務を合計すると、1600兆円強の債務総額だ。習近平氏は、この天文学的な地方政府の債務総額に対して、「知らなかった」「責任はない」と言えない立場だ。習氏は、無理矢理にインフラ投資でGDPを押上げた責任があるからだ。

     

    地方融資平台を救済するために、民間企業の資金を取り入れる「混合所有制改革」を制度化している。アリババ系のアリペイが強引に「銀聯」へ合併させられたケースが続出するのだろう。これでは、民間企業の活力を奪うことになる。ますます、中国経済の将来は暗澹たるものになろう。

     


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    米中貿易戦争の原因を探れば、WTO(世界貿易機関:1995年設立)の規定が曖昧であったことが原因である。「全員一致原則」という理想的な規定に縛られて、なんら改革ができずにきた。中国が、WTOに加盟したのは2001年である。「上に政策あれば、下に対策あり」というルール破りの名手が中国だ。WTO規則を徹底的に研究して、その曖昧な所や抜け穴を上手く利用してきたとされる。

     

    これに対して米国は、悔やむことしきりだ。「WTOに中国を加盟させなければ良かった」と嘆いている。中国のような「掟破り」を想定してWTO規則をつくったのでない、とも言っているのだ。

     

    日米欧の通商閣僚会合が9月25日昼(日本時間26日未明)ニューヨークで始まった。機能不全が指摘される世界貿易機関(WTO)改革の共同提言に向けて本格的に議論する見通という。米国がWTOを批判するなか、共同で改革案を打ち出し、米国を多国間の枠組みにつなぎ留めたい考えだ。以上は、『日本経済新聞 電子版』(9月25日)が報じた。WTO改革への動きが始まったばかりである。

     

    『ブルームバーグ』(9月13日付)は、「カナダ、WTO改革案公表へ、米保護主義の影響緩和目指す」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「10月の世界貿易機関(WTO)閣僚会合の議長国カナダが作成したWTO改革案の草案が明らかになった。今月20日、スイス・ジュネーブで開かれる各国の貿易担当高官による協議に向け草案を公表し、WTOからの脱退を辞さない姿勢を見せる米国の保護主義の影響を緩和する狙いだ。ブルームバーグが入手した草案の写しによると、『WTOの強化と近代化』と題する草案を8月に策定した。カナダの通商当局者らは、『多国間貿易システムへの信頼回復と保護主義的な措置・対抗措置の阻止』に向け、立場の近い国の間で同盟を結成しようとしている。ジュネーブでWTO改革案を議論するのに続き、カナダ・オタワで10月24、25両日に閣僚会合が開かれる」

     

    カナダは、10月のWTO閣僚会合の議長国である。保護貿易主義を食い止め、多国間貿易システムを守るには、各国がWTO原則を守ることであろう。中国のように表と裏の顔を持ち、WTOを悪用してはならない。原則を忠実に守れば、問題は簡単に解決するはずだ。もう一つ、「全員一致」という小学校のクラス会のような取り決めを止めること。貿易大国と貿易小国が、同じ土俵で議論するのは、議論の一致を妨げるのだ。

     

    (2)「カナダ案はWTO改革で重点を置く3分野として(1)監視機能の効率性と有効性の改善(2)紛争処理システムの保護・強化(3)実質的な貿易ルールの近代化に向けた土台作り-を挙げた。緊急改革に向け2つの重要分野に優先的に取り組むことを目指している。WTOの紛争処理システム正常化とWTOによる国際貿易慣行の監視能力の改善だ。さらに、インターネットを介した貿易、国境を越えた投資、各国固有の規制、政府系企業などを含む21世紀の貿易慣行に対処し、WTOルールを近代化することを目指す」

     

    カナダ改革案では、次の3点が強調されている。

       監視機能の効率性と有効性の改善

       紛争処理システムの保護・強化

       実質的な貿易ルールの近代化に向けた土台作り

     

       監視機能の効率性と有効性の改善は緊急性を要する。米中貿易戦争は、まさに監視機能が働かず、中国の「ヤリ徳」を許してきたことにある。先進国にとっては、知財権保護は最重要課題である。発展途上国が、懐手で先進国の開発した技術やノウハウを窃取するのは許しがたい行為だ。中国は、それを長年続けてきた。先ず、この①だけでも緊急に着手することだ。改革案全てを同時に実施に付すという悠長なことは無理である。

     

    (3)「ただ、草案は全体的な改革を指向しているにもかかわらず、加盟164カ国が拘束力のある新たな多角的な合意や重要な機構改革を短期間のうちにまとめることには消極的であるという事実も認めている。結果的に、WTOの組織や最後の見直しから23年を経過したWTOルールの本格的な改善には『長期的な討議が必要になる』としている。米国のWTO脱退は同国が構築に寄与した第二次世界大戦後のシステムを弱体化させ、世界経済にとって米中貿易摩擦よりもはるかに重大な出来事になるとみられる」

     

    WTOのアゼベド事務局長は日本経済新聞のインタビューに応じ、WTOに批判的な米国と対話をしながら組織改革を進める考えを表明した。具体的には原則、全164の加盟国・地域の同意が必要な全会一致原則について「改善の余地がある」と指摘。IT(情報技術)など新産業分野などを念頭に迅速なルール作りの枠組みを検討する意向を示した(『日本経済新聞』9月4日付)。

     

    米中貿易戦争という緊急事態の解決のためにも、早急な話合いが必要になってきた。


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