中国メディアが、40年間も続けられた日本のODA(政府開発援助)に、謝辞を述べようという記事を掲載した。この裏に、中国政府の「指示」があったことは分かっている。それでも、「ありがとう」の一言を聞くとうれしい。不思議なものだ。
中国メディア『今日頭条』(10月23日付)は、安倍首相の訪中を好意的に報じつつ、「まずは謝謝(ありがとう)と言うべき」と伝えた。『サーチナ』(10月28日付)が、転載した。
日本の対中ODAは、中国が改革開放政策を打ち出した翌年の1979年から、有償資金協力の円借款や無償の資金協力、技術協力など合わせて計3兆6500億円を供与し、中国の経済成長を支えてきた。安倍首相はこのたび、「中国が世界第2位の経済大国へと発展し、その歴史的使命を終えた」として、今年度の新規案件をもって終了する意向を表明した。
(1)「記事は、これに対する中国人の反応について、「打ち切られたことに腹を立てるどころか、感謝する」大人の対応を見せていると紹介。このODAが中国にもたらした経済効果を認め、日本国内で反対の声があったものの日中関係を重視した日本政府を評価した。1980年代にはインフラ整備を中心に、90年代以降は環境対策や人材育成など幅広い分野で活用されてきたと紹介している」
2012年、日本が尖閣諸島の国有化を決めた際の対日批判では、このODAもヤリ玉に上がっていた。「日本企業は対中ODAで儲けていたのだから感謝する必要はない」と高飛車だった。それが、ここまで「ありがとう」を言ってきた。日本が中国と「融和姿勢」を見せたことがうれしいのであろう。
(2)「また同時に、今回の安倍首相のあいさつからは日中関係を重視していることがうかがえると伝えた。明治維新150年の節目の年であるにもかかわらず、明治維新の特色である「富国強兵」にも「脱亜入欧」にも言及しなかったことは、一種の誠意の表れだと高く評価している。米中関係が緊張している今、あえて米国の肩を持つような言い回しを避け、軍事拡張にも言及しないことで、中国人の感情に配慮したということのようだ」
明治維新150年の現在、NHK大河ドラマ「西郷どん」でみるように日本開国は、薄氷を踏むものであった。日本が独立を維持できたのは外国勢力(英・仏)と手を結ばなかったからだ。当時の英仏は、欧州で覇権争いの真っ最中。その争いの舞台が、日本へ移っていたもの。徳川慶喜の大政奉還は、日本が「第二の中国」という列強支配を免れた英断であろう。こういう歴史秘話を知れば、日本が明治維新を自慢するどころか、危ない橋を渡っていた。
(3)「記事は結びに、改めて今回の安倍首相の訪中を評価し、「この訪中が日中関係の新たな転換点になることを望む」と結んだ。日本が長年にわたって中国に対してODA援助をしてきたことは、これまで中国人にはあまり知られていなかった。今回打ち切られることを受けてODAを高く評価し、感謝すべきとの声が出るのはこれまでにない傾向である」
日中はこのように、いつまでも譲り合える関係であればベストである。だが、この「互譲精神」はいつまで続くか。中国は、米中貿易戦争がつづく限り日本へ低姿勢でも、その後は分らない。これが、正直なところであろう。ただ、経済的に衰退過程が明らかになれば話は別だ。日本を頼るようになると見る。中国は、不動産バブル崩壊後の過剰債務処理で、国力を使い果たす。日本が、辿った道と同じだ。