勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年10月

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    「まぐまぐ!」から「勝又壽良の経済時評」のタイトルで、毎週木曜日に配信いたします。

    現在、アメブロで「勝又壽良の経済時評」を2010年5月より、毎日執筆、掲載しています。これをメルマガへ移行させます。

     

    中国政府は、今回の安倍訪中で「オモテナシ精神」を全開させている。中国政府が初めて、日本の対中ODA(政府開発援助)が、3兆6500億円にも上がる事実を公表した。これ以来、ネットには日本への感謝が書き込まれているという。

     

    中国政府が、これまで親日的ニュースを封印してきたのは、中国国内にくすぶる「反日勢力」への刺激を避けた結果であると説明されてきた、とすれば、現在の「親日的雰囲気」の裏になにか政治的変化があるのかが問われる。習近平氏が、ここまで「親日」OKのサインを出しているのは、「反習近平勢力」の力が衰えたのか。あるいは、依然として「反習近平勢力」は存在するが、日本と妥協しない限り、中国の経済危機を乗切れない。そういうコンセンサスができているのか。

     

    中国の内政はこれまで、日本問題が影を落としてきた。日本と接近しすぎれば、反対派が力を持つ。このように、日本問題は「磁石」のような位置にあった。それが、ここまで「日本歓迎」へ切り替わったのだ。正解は、日本と握手しない限り、中国の危機は乗り切れない。だから一時的に政治休戦にするという見方が正しいかも知れない。

     

    『レコードチャイナ』(10月25日付)は、「安倍首相の訪中直前、中国ネットが突然、日本に感謝」と題する記事を掲載した。

     

    『参考消息網』(10月24日付)は、『安倍首相の訪中直前、中国ネットが突然日本に感謝」と題する記事を掲載した。以下はその概要。

    (1)「安倍首相が25日、中国を訪れる。日本の首相の訪中は7年ぶりだ。意外なことに日本が対中政府開発援助(ODA)を終了するとのニュースが直前に報じられ、中国のネット上で『日本に感謝』というちょっとしたブームが巻き起こった。この期せずして姿を見せた『感謝』も、安倍氏訪中の背後にある日中関係の『正しい軌道への立ち戻り』を描写するものだ」

    (2)「中国にとって最大の援助国である日本のODAは1979年に始まった。つまり、改革開放の40年間、常に日本のODAの存在があったということだ。79年以降、日本が拠出した額は3兆6500億円に上る。巨額の援助、困窮の中で寄せられた日本の善意に、多くのネットユーザーが『これまでの援助に感謝する』とのコメントを書き込んだ。中国人民大学国際関係学院の時殷弘(シー・インホン)教授は、ネットユーザーが日本の対中ODAに感謝の意を示したことを肯定的に捉えている」

     

    (3)「中国外交部の23日の定例記者会見でも、『日本の資金協力は積極的な役割を果たした』とのコメントが報道官から聞かれた。こうした様相は10年前に起きた四川大地震を思い起こさせる。当時、いち早く駆け付けた日本の救援隊が犠牲者に黙とうする写真がネットで紹介され、ネットユーザーらは感謝の気持ちを惜しみなく示したのだ」

    ネットに、日本への感謝の言葉が見られるのは、中国政府がそういう雰囲気をつくっている結果でもある。これまで、この事実は伏せられてきたので、中国市民が初めて知った驚きもあろう。繰り返しになるが、中国政府はなぜここまで、日本への親近感を示すのか。

     

    私には、次のように見えるのだ。中国にとって米中貿易戦争が死活問題としてのしかかっている。その脱出口を日本に求めた。もはや、「反日」などと言っていられない。そういう切迫感があるのだろう。

     


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    文在寅政権は、経済問題で危機に立っている。就業者の急減という最悪事態を迎えているのだ。「雇用惨事」という言葉まで登場している。原因は、言うまでもなく「大幅最賃引上」にあるが、政権の支持母体である労組の目が光っているので、撤回も引上幅圧縮もできずにいるのだ。

     

    今年の最賃引上幅は、16.4%。来年は10.9%の引上げが決定済みである。この2年間で約30%のアップになる。来年の雇用は「大惨事」必至だ。ソウルの目抜き通りは、「仕事寄こせデモ」が起っても不思議はない事態を迎えるだろう。文政権は、労組と心中する決意のように見える。

     

    韓国メディアでは、このままだと与党「共に民主党」は、次期大統領選での敗北必至論まで登場している。日本の民主党やフランスの社会党が、政権から転落して現在、少数の議席に留まっている例まで持出されている。政権を取った「奢り」が、原因である。

     

    『韓国経済新聞』(10月25日)付は、「雇用惨事を『短期バイト』で埋め合わせようとする韓国政府」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国政府が『特段』と予告した雇用対策は結局『公共アルバイト』性格の短期雇用5万9000件を急造する臨時方便策だと明らかになった。青瓦台(チョンワデ、大統領府)による圧迫をめぐる議論まで起こった公共機関体験型インターンをはじめ、環境美化、山火事監視など労働期間2~3カ月の単純労務が新規雇用の大部分だ。韓国政府は『青年の仕事経験を蓄積し就職力を強化する』という名分を掲げているが、現実的に求職活動の時に履歴書に書くのもきまり悪い仕事だ。韓国政府が惨事水準まで悪化した雇用状況を根本的に改善させるよりは今年の雇用目標だけ満たすための『雇用粉飾』に汲々としたのではないかとの指摘が出る」

    文政権は、日本の民主党政権と同じで、実現不可能な政策を掲げて自縄自縛に陥っている。韓国メディアはこう分析しているが、その通りだ。大幅最賃を引揚げても、それをパスできる業種がないから、失業者が増えて雇用が減っているに過ぎない。文政権は、この現実を認めず、労働期間2~3カ月の単純労務が新規雇用の大部分という「公共アルバイト」を増やして雇用増を図ったと強弁する。こうした「雇用粉飾」は、国民が見透かしている。

     

    (2)「政府内では今年半分になった雇用目標も達成しにくいという懸念が根強く出ていた。韓国政府は7月に発表した「下半期経済政策方向」で雇用目標値(就業者増加幅)を当初の32万人から半分水準の18万人に引き下げた。その後青瓦台のチャン・ハソン政策室長は8月に国会に出席し、「10万~15万人が正常な就業者増加だと考える」として目標値をさらに低くするような発言をした。企画財政部が4日に公共機関に「3カ月以内に採用できる単純・短期雇用を増やせ」と指示したのも結局年末の雇用指標をどうにか引き上げるための「小細工」と解釈された。毎月15日が属する1週間の収入を目的に1時間以上だけ働けば就業者と見なされるためだ」

    韓国政府は、雇用目標値を次々とさげている。

       7月に当初の32万人から半分水準の18万人に引き下げた。

       8月に10万~15万人に引下げる

       10月に3カ月以内に採用できる「単純・短期雇用を増やせ」と指示

     

    「バナナの叩き売り」と同じで、政府の雇用目標は次々と引下げられている。現在は「公共アルバイト」増加だ。もはや政権の体をなしていない。こんな政権が、「反朴槿惠」ムードに乗って登場してしまった。革新政権といっても、「口先幸福論」を唱えるだけ。実行力を伴わないようである。


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    安倍首相は、きょう訪中する。経済人500人を引き連れ「日中復交40年」を記念する日中首脳会談に臨む。中国の歓迎ぶりは、これまでの日本冷遇を跳ね返すような派手なものになるという。国家元首級の歓迎と言われている。中国の日本に期待する大きさが、これだけでも十分に分る。

     

    『ロイター』(10月24日付)は、「安倍首相の訪中、日中関係緊密化の節目に、気になる米の反応」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「安倍首相は25、26日の2回にわたって李克強首相と会談。26日には習近平国家主席との首脳会談も行われる。その間、25日には日中平和友好条約締結40周年イベントに参加。26日は李首相との会談後に共同会見が予定され、午後は北京大学も訪問する。また、中国側は25日夜に李克強首相主催の非公式晩餐会、26日昼に李克強首相夫妻主催の昼食会、同日夜に習近平国家主席夫妻主催の夕食会と、元首級の接遇となっている。ある政府関係者は、中国側の対日接近を典型的に示す日程と指摘する。この背景について、複数の政府・与党関係者は、トランプ米政権が中国からの輸入品に高関税をかけ、この影響で中国経済にスローダウンの兆しが見えており、米側をけん制する意味で、米国の同盟国である日本に接近してきているとの見方を示している」

     

    中国は、得意の熱烈歓迎である。中国側は25日夜に李克強首相主催の非公式晩餐会、26日昼に李克強首相夫妻主催の昼食会、同日夜に習近平国家主席夫妻主催の夕食会と、元首級の接遇という。あれだけ悪口雑言を言い放っていた中国が、日本を「親友」扱いである。米中関係が悪化している限り、このムードが続くであろう。「条件付き」歓迎である。

     

    (2)「今回の訪中で行われる一連の会談では、日本の尖閣諸島国有化を受けた日中の関係悪化で失効していた通貨交換(スワップ)協定の再開、第三国でのインフラ整備での協力、イノベーションや知的財産保護を巡る協力、中国の大国化で形骸化していた対中ODA(政府開発援助)の廃止などで合意する見通し。パンダの新規貸与や、日本の東北地方産を中心とした食品に対する中国の輸入規制緩和についても、何らかの議論が進むことを日本側は期待している」

     

    このパラグラフを読むと、中国が熱烈歓迎するわけが分る。

       通貨交換(スワップ)協定の再開

       第三国でのインフラ整備での協力=「一帯一路」への協力

       イノベーションや知的財産保護を巡る協力=技術の提供

    中国にとっては、喉から手が出るほど欲しい項目がズラリと並んでいる。ご馳走攻めにして当然であろう。

     

    (3)「対中強硬姿勢を強める米国は、日中接近を注視し続け、複数の政府・与党関係者によると、通貨スワップ再開についても非公式に不快感が示されたという。また、通貨スワップを巡っては「与党内の反中派から根強い反対論があった」(政府・与党関係者)とされ、西村康稔官房副長官は11━12日のツイッターで、中国国内において金融システムに関連して不具合が生じた場合、邦銀の人民元調達を助けることが目的だと説明。金融危機時の中国救済措置ではないとの見解を示した。財務省や外務省も「邦銀のための措置」と、繰り返し説明している」

     

    日中通貨スワップ協定では、米国が不快感を示しているという。米国の本音は、人民元相場が急落して、中国経済が混乱すれば良い。そういう感情があるに違いない。米国は、人民元で中国を為替相場操作国に指定したい気持ちが強い。指定条件を変える準備を始めている。何が何でも中国に、一泡吹かせてやりたい。そういう怒りの火が燃えているのだ。中国は、米国をここまで怒らせてしまった。米国の本質は、ルール破りに厳罰を与えるという、あの「西部劇」のシーンを思い出せば分る。

     

     

     


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    安倍首相の訪中で、日本が行なってきたODA(政府開発援助)は、40年間3兆6500億円の大事業が幕引きを迎える。2010年、中国はGDPで日本を抜き世界2位になったにもかかわらず、日本からODAの支援を受けてきた。世にも不思議な話である。これまで、ODAを打ち切ろうとしても、中国の反対でそれができなかったのだ。

     

    中国は、日本からのODAを受け入れながら日本批判をするという、反倫理的な振る舞いを続けてきた。「反日教育」と「反日ドラマ」である。本来なら、批判するような国の提供する資金を受入れることなどできない話だ。中国は、それを平気で行える国である。

     

    『大紀元』(10月24日付)は、「日本政府、裏の戦後賠償40年継続のODA終了、見返りは反日教育」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府は23日、40年間継続してきた中国への政府開発援助(ODA)は、一定の効果が得られたとして計画の終了を発表した。北京空港や中日友好病院の建設など、ODAの支援額は総額36500億円を超える。昭和54年(1979年)以来、日本はODAを通じて中国を経済援助してきた。北京国際空港はODAにより1999年に大増築が行われ、第2ターミナルをはじめ現在の規模に拡張された。日本国際協力機構(JICA)によると、1984年に北京の中日友好医院は、日本政府から165億円あまりの無償資金援助を受け開業した。また、同院は「中国国民の信頼は厚く政府から北京100病院の一つに選ばれており、2003SARS流行では、患者99%を治癒させた」という」

     

    中国では、ODAの存在を国民に知らせずにきた。すべて、中国政府が自らの成果として横取りしてきた。日本政府も弱腰であった。腫れ物に触るように、ひたすら波風を立てずにきたことが、日本へは何を言っても良いという風潮をつくったのだろう。韓国に対する姿勢と通じている。

     

    (2)「いっぽう、中国国内でその成果はほとんど知られておらず、逆に中国共産党政府は官製メディアを駆使して抗日思想(反日)を積極的に宣伝し続けている。香港紙・蘋果日報は24日の記事で「日本の40年間続いた援助の見返りは反日教育だ」と報じた。中国公式発表のGDPには信ぴょう性が疑われるが、中国は「世界第2の経済大国」と主要メディアは報じるようになった。日本のネットユーザーは、現在中国は十分な経済規模があるにもかかわらず、日本の税金から政府経済援助を受け取り続けたとして、ODAは「姿を変えた第二次世界大戦の戦後賠償」と揶揄されている」

     

    香港紙『蘋果日報』は24日の記事で、「日本の40年間続いた援助の見返りは反日教育だ」と報じたという。お金を出して「反日教育」をやられる。随分と、中国政府から見くびられてきたものだ。この「反日教育」は今後もつづくのだろうか。中国は、「日中対等」と言っている以上、日本政府は堂々と「反日教育」と「反日ドラマ」の禁止を要求すべきだろう。日本も、もっと言いたいことはすべて伝えることだ。言われっぱなしでは、精神衛生にも良くない。

     


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    日本に対してあれだけ高姿勢であった中国が、ここまで変わって「ニーハオ」と言い出した。その裏には、米中貿易戦争という高い壁ができたことが理由だ。米国は、「新冷戦」の構えで中国へ対峙している。中国が想像もしなかった事態へ急変した。こうなったら、日本へ頭を下げて関係改善を図るほかない。気の毒になるほど、中国は米国の本音を読めなかったのだ。「米国覇権へ挑戦する」。こんなことを広言すれば、米国からどういうリアクションが起るか。それすら計算していなかった中国外交は、幼稚な「中華思想」そのものである。

     

    『中央日報』(10月24日付)は、「安倍氏の訪中をどのように見るべきか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のオ・ヨンファン/軍事安保研究所副所長・論説委員である。

     

    (4)「米国と中国は既存覇権国と新興強国間対立の『トゥキディデスの罠』に陥りつつある。関税戦争に突入した。軍事的には米国の西進と中国の海洋進出・アクセス拒否戦略が衝突している。自由貿易は重大な挑戦に直面した。米国が作った伝家の宝刀が色あせている。同盟も不況、漂流の時代だ。費用が安保と共通の価値を優先する。世界は秩序を主導する勢力がないG0(ゼロ)に近い。25~27日の安倍晋三首相の訪中はこのような環境とぴたりと重なる」

     

    安倍首相の訪中は、米中情勢が冷戦化する中で行なわれる。米中関係を悪化させたのは、中国の「世界覇権宣言」である。米中の総合力から見て、この宣言はかけ離れた絵空事である。中国の「国際競争力ランキング」(世界経済フォーラム調査)は28位に過ぎない。むろん、米国が1位だ。1位(米国)VS中国(28位)という圧倒的な格差がある中で、米中対峙が中国にとって著しい不利益を強いるはずだ。中国が、米国と対決する実力を持つ前に、米国から種々の掣肘を加えられるのは不可避だ。これによって、中国の発展自体に相当の歪みを受けるに違いない。中国には、何の利益にもならない「大言壮語」であった。

     

    未熟状態の中国は、米国から種々に先制攻撃を受けるのは当然であろう。そこで中国は、これまで疎遠にしてきた日本との関係を修復して、しばし息をつこうという戦略をとらざるを得なくなった。中国には、想定外の展開のはず。なぜなら、今年の1月末までは、相変わらず辛辣な日本批判を繰り広げていたからだ。それが、2月以降にピタリと止んだ裏に、中国の当惑した姿が浮かび上がるのだ。

     

    (5)「中国は2年前の日中首脳会談場では、両国の国旗さえ掲げなかった。日本無視だった。それでも安倍は習近平中国国家主席に手を差し出してきた。今は習近平が色目を使っている。日中の接近は米中摩擦の副産物だ。米国の対中政策はけん制を越えた事実上の経済・安保封鎖だ。今月初め、マイク・ペンス米副大統領の対中政策演説はその決定版だ。中国脅威論を網羅した新冷戦宣言という言葉も出ている。ここに中国経済は貿易戦争の余波が現実化している。今年7~9月期の成長率が6.5%で、10年前の世界金融危機以降で最も低い」

     

    中国の対日戦略は、中国外交部(外務省)が独立の日本担当部局をなくして、日韓を同じ部局に担わせたことに現れている。日本への対応を格下げしたのだ。この一事こそ、「日本軽視」外交そのものを示している。中国の対日外交は、このように完全に目測を誤ったのだ。これは、米中関係さえ上手くいけば、日本の扱いは自由自在に操れると錯覚したのだろう。ところが、肝心の米中関係が齟齬を来し、中国外交は漂流することになった。そこで、日本という柱に掴まって、遭難を免れようという危機に陥っている。お粗末な中国の外交なのだ。

     

    (6)「習近平の動きはもう一つの合従連衡だ。日米同盟の対中圧迫を緩和して日本を米中衝突の緩衝材にしようとの腹積もりのようだ。そうでなくても習近平のユーラシア広域経済圏構想である一帯一路は敵を作っている。中国の援助開発が周辺国に「借金の山の罠」になりながらだ。日本官民の条件付き一帯一路への参加は、中国にとって恵みの雨だ。日中は安倍訪中期間、第3国でのインフラ共同開発に関する数十件の了解覚書を締結する。「安倍の訪中が中国インターネットで広範囲に歓迎されている」という15日付の環球時報は現在の中国の立場を象徴している」

     

    中国外交は、始皇帝以来一貫して合従連衡政策である。日米関係に杭を打ち込み、日本を米国から引き離して中国へ引き寄せる。日本が、このような「平凡」な策に乗せられるはずがない。日本の世論調査では、中国へ親しみを感じるのは約10%しかいない。後は「中国警戒論」である。日本は明治以降、批判はあるにしても「脱亜入欧」である。アジアから学ぶものが少なく、欧米こそ「学びの対象」としてきた。この思考路線からみて、日本が中国へ傾斜することは100%あり得ない。もっとはっきり言えば、古代中国は尊敬するが、現代中国には、そうした感がいささかも存在しないのだ。

     

    日本は、「一帯一路」に参加する形だが、全く違う意識であろう。中国に任せといたらアジアが食いものにされる。それを未然に防ぐには、日本自身が参加することがベターという判断だ。中国にやらせておいたら碌(ろく)な結果を生まない。そういう中国への潜在的な意識が存在するはずだ。日本人の意識では、日本がアジアの総合的なリーダーである。

     

     


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