勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年12月


    中国は、先進国から排除される雲行きになったので「仲間捜し」に必死である。とりわけ、ファーウェイ製品がスパイ網の最先端であると指摘されるにいたり、中国へのイメージはさらに悪化している。こういう中で、日本のメディアが「反米親中」になったという記事を流し始めているという。「?」である。

     

    『レコードチャイナ』(12月28日付)は、「どういうこと?!日本メディアが突然『反米親中』に」と題する記事を掲載した。

     

    中国『参考消息』(12月27日付)は、「どういうこと?!日本メディアが突然『反米親中』に」と題する記事を掲載した。「レコードチャイナ」が転載した。

    (1)「米通商代表部(USTR)が21日に公表した日米貿易協定の交渉目的に言及。「一般のネットユーザーからメディアに至るまで、『米国と手を握る』ことに慎重になるよう求める声が上がった」とし、こうした中で複数の日本メディアが中国との協力を呼び掛けていることを伝えた。記事は、「米国は日本の自動車、農業分野に再び照準を合わせた」などと説明し、公表内容が日本にとって厳しいものであることを指摘する。その上で、『日本が非市場国と自由貿易協定を結ぶなら、透明性と適切な行動を確保するためのメカニズムを設ける』との一文に日本メディアが関心を寄せた」と述べ、

     

    この記事に信頼性がおけないのは、引用記事の出典が不明であることだ。引用の場合は、必ずその出所を明記するのがルールである。

     

    米国が、カナダ・メキシコと結んだ新NAFTAには、加盟国が非市場経済国(中国を指す)との貿易協定を結べば、新NAFTAから離脱するという一項目が入っている。米国は、この項目を他国と結ぶ貿易協定に挿入させる意向だ。日米貿易協定が成立する場合、挿入させたいのであろう。中国排除を目的にしている。

     

    日本が、この項目に反対した場合のデメリットを考えることだ。米国市場を捨てて、中国市場で利益を上げられるか、である。挙げられるはずがない。日本にとっての最大の顧客は米国である。この現実をしっかりと認識すべきだ。

     

    (2)「ある大手紙は、「日本と中国の自由貿易協定締結をけん制するためのもの」との声が上がったと紹介。さらに「偶然だが…」と前置きした上で、「日米貿易協定が空前の反対に遭う中、日本メディアは中国との協力における積極的な面に次々と言及し始めた」と続け、「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は非常に重要な経済枠組み」「日本は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を歓迎すべき」などと述べる記事が見られたことを報じた」

     

    前のパラグラフに示したコメントから言えば、米国市場を捨てて中国へ接近することは、経済的なメリットがないこと。加えて技術窃取に遭い、日本の安全保障の基盤が棄捐する。ましてや、AIIBに参加する意味など欠片もない。こういう主張をするメディアは、日本共産党の『赤旗』ぐらいであろう。

     

    (3)「記事は、10月に中国を訪れた安倍首相が「中国の発展は日本にとって重要なチャンス」と強調したとも説明する。このほか、中国現代国際関係研究院日本研究所の樊小菊(ファン・シャオジュー)氏が、「日本国内では経済や安全保障の面で米国に対する不信感が増している」と見ていること、「米国が通商問題でむやみにプレッシャーをかければ日本の反米感情はさらに高まるだろう」と指摘したことを伝えた」

     

    下線部分は、中国がそう願っているというだけだ。米国への小さな不満はあっても、日米同盟を解消するという話ではない。明治維新以降の歴史で、日本が平和であったのは、日米が密接な関係を維持していた時期だけである。こういう歴史の教訓から言っても、「反米親中」など、荒唐無稽の作り話に過ぎない。

     

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    訪日観光客の1位は中国人である。1月1日から入国ビザの発給条件が緩和される。これにより、一段と訪日観光客の増加に拍車がかかる気配だ。日本が、中国における海外旅行最大の人気国になっている。2月の春節(旧正月)海外旅行の予約は、日本が断トツの1位という。

     

    この背景には、日本への距離の短さ・清潔さ・礼儀正しさ、などが「目から鱗が落ちる」という強烈な印象を残している。同じアジア人で、どうして中国と日本はこれだけ違うのか。そういう深い疑問に突き当たっているようだ。その答えを探す旅でもある。

     

    『レコードチャイナ』(12月30日付)は、「訪日中国人旅行客数が800万人突破、80・90年代生まれが中心に」と題する記事を掲載した。

     

    華字紙『中文導報 電子版』(12月26日付)はこのほど、同紙編集部が選出した『2018年日中関係10大ニュース」を伝えた。その一つとして、『訪日中国人旅行客数が800万人突破、8090年代生まれが中心に』と題する特集をした。

    (1)「2018年の訪日中国人旅行客数は800万人を超える見通しで、中国は4年連続で日本への最大の観光客供給源となる。オンライン旅行大手の携程、配車大手の滴滴出行、観光宿泊施設紹介サイトの途家など中国の旅行関連企業が相次いで日本での展開を加速させ、新たな機会をもたらしている。携程はリポートで『2018年の訪日中国人観光客は800万人を超え、記録更新の見通し』と伝えた」

     

    訪日中国人観光客が、4年連続で1位になっていることから、中国の旅行関連業者が積極的に日本での営業を展開している。次の3社である。

    オンライン旅行大手の携程、

    配車大手の滴滴出行、

    観光宿泊施設紹介サイトの途家

     

    これら業者が、中国人観光客を日本へ誘導する好循環が起っていると見られる。一度、こういうビジネス環境ができると、自然に増えていく面もある。「1対8の原則」によれば、日本人1人当たりの年間消費額は、8人の外国人旅行客の消費額に匹敵するという。中国人800万人の日本での消費額は日本人100万人の年間消費額になる計算だ。日本で「100万人都市」が出現するような経済効果が期待できる。

    (2)「中国人の訪日を促すため、日本はさまざまな政策を整備している。中国の若い世代は現在、旅行における主要なユーザーグループであるだけでなく、訪日旅行の主力でもある。携程の統計によると、今年催行された日本ツアーへの参加者のうち、80・90年代が占める割合は44%に達しており、19年は50%を超えると予想されている」。

     

    80・90年代生まれの中国人は、従来の中国人の価値観とは大きく異なる。一人っ子政策で、6人の父母・祖父母に大切に育てられた世代だ。モノへのこだわりが少なく、旅行を好むという大きな特色がある。収入の半分を旅行に使うという人も珍しくなく、リピーターになる可能性が大きい層だ。現在の「日本ブーム」は、多分にリピーターがリードしている面もあるように見える。日本にとっては、大切な客層である。

     

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    韓国経済は、文大統領の就任で急坂を転げ落ちる状況に陥っている。理由は言わずと知れた、最低賃金の大幅引き上げだ。自営業者などの経営を直撃しており、最低賃金引き上げを実現できない事業体が、解雇者を増やしている。まさに、「人災」である。

     

    来年についても、最低賃金は予定通り10.9%の引上げである。今年の16.4%に次ぐ引上である。もはや、これを乗り切れない零細自営業者では、解雇や倒産が続出するものと予想される。暗い予測がまかり通っている。政府が、これに有効な手も打てないのだ。「所得主導成長論」という幻の経済理論を盲信している結果である。

     

    『中央日報』(12月30日付)は、「韓国の大卒3人に1人は未就業者」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の大学・大学院卒業生3人に1人は未就業者であることが分かった。特に、しばらくの間上昇傾向にあった就職率が文在寅政府発足以降、再び減少傾向に転じた。若者が体験している最悪の雇用難が政府の公式統計で確認された。昨年末、全体の就業者は33万7899人で前年より1万1685人減少した。卒業生に比べた就業者の割合である就職率から見ると2016年末67.7%から昨年末66.2%へと1.5%ポイント減少した」

     

    韓国の厳しい大卒就職状況に比べると、日本は「天国」である。2018年3月に大学(学部)を卒業した人の就職率が前年比1.0ポイント増の77.%である。文部科学省が発表した学校基本調査(速報値)で分かった。8年連続で上昇した。韓国の昨年卒業の大卒就職率は66.2%。日本の昨年の大卒就職率は76.1%である。この差は、9.9%ポイントである。

     

    (2)「2011年以降就職率が67%以下に落ちたのは今回が初めてだ。特に、2014年(67%)から2015年67.5%など上昇傾向にあった就職率が今回再び減少傾向に転じた。教育界内部では今回の調査結果が十分に予想されていたものという分析が出ている。匿名を求めた私立大学教授は『現場で感じる若者の就職難は1997年通貨危機の時より深刻だ』として、『今年より来年が厳しいものとみられるというのがさらに大きな問題』と話した」

     
    「雇用政権」という看板を掲げてきた文政権が、大卒就職率では前政権よりも悪化する皮肉な事態になった。大学の現場の印象では、若者の就職難は1997年通貨危機の時より深刻だという。この時の通貨危機は、アジア通貨危機の一環として韓国が襲われたもの。来年の就職率はさらに悪化すると見られている。

    最近の文政権の支持率の調査では、若者の支持率が最も下がっている。文政権の誕生に当っては、若者が熱狂的に支持した。現状は全くの逆で人気離散である。理由は、就職難だ。大統領選の公約が、実現されていないことへの反発である。

     

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    韓国は、二言目には日本を「戦犯国」と呼んで蔑んでいる。そのたびに、日本人は、「ぐっと」胸に刺さるものを感じるのだ。海外では、日本をそういう目で今も見ているだろうか。

     

    日本は、ODA(政府開発援助)を行い、発展途上国の側に立って資金援助を行なってきた。最近の中国は、率直に日本のODAを評価するようになった。韓国に対しては、日韓基本条約で無償3億ドル、有償2億ドル、借款6億ドル以上の合計11億ドル以上を支援した。だが、一切の感謝はなく、「謝罪が足りない」「賠償が足りない」と言われ続けている。

     

    外務省が12月28日、海外世論調査の結果を発表した。共同通信が伝えた。

     

    (1)「米国、中南米5カ国、オーストラリア、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国で今年2~3月に実施した対日世論調査の結果を発表した。日本を「信頼できる」とする回答は、全ての国・地域で70%以上となった。日本を「とても信頼できる」「どちらかというと信頼できる」と答えた人の割合はインドが最も多く、94%に達した。ASEAN10カ国84%、オーストラリア76%、中南米5カ国(メキシコ、ブラジル、コロンビア、アルゼンチン、トリニダード・トバゴ)70%が続いた。米国は質問形式が異なるが「信頼できる」が87%だった」

     

    韓国は、日本を「戦犯国」と軽蔑する。だが、太平洋戦争で最も大きな被害を及ぼしたASEAN(東南アジア諸国連合)は、日本に対してどのようなイメージを持っているのか。外務省報告から直接拾ってみた。

     

    ASEAN10か国(ブルネイ,カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,ミャンマー,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナム)

     

    .対日関係については,ASEAN全体で,87%(前回調査89%)が「とても友好関係にある」又は「どちらかというと友好関係にある」と回答しており,日本との関係に関し肯定的なイメージが広範に定着していることが示されました。

     

    .対日信頼度は,ASEAN全体で,84%(前回調査91%)が「とても信頼できる」又は「どちらかというと信頼できる」と回答しており,日本に対する評価が高いことが確認できました。

     

    .戦後70年の日本の平和国家としての歩みについてどう思うかとの質問については,ASEAN全体で85%(前回調査88%)が評価すると回答しました。

     

    .日本の世界経済における役割について,日本が世界経済の安定と発展にどの程度重要な役割を果たしているかという質問に,83%(前回調査84%)が「非常に重要な役割を果たしている」又は「やや重要な役割を果たしている」と回答し,日本の世界経済に対する貢献が評価されていることが確認できました。

     

    .日本の青少年交流(JENESYS等)を含む人的交流における取組についても,88%(前回調査90%)が「評価する」と回答しました。

     

    .また,この50年間最もASEANの発展に貢献してきた国(地域)を選ぶ質問(複数回答)では,65%(前回調査55%)の回答者が日本を選択し,日本の貢献がASEAN諸国から最も高い評価を得ていることが確認できました。

     

    ASEANの対日イメージでは、韓国のいう「戦犯国」という印象はゼロと言って差し支えない。

     

     戦後70年の日本の平和国家としての歩みについて、85%が評価すると答えている。また、この50年間最もASEANの発展に貢献してきた国(地域)では、65%の回答者が日本を選択し、日本の貢献がASEANから最も高い評価となった。もはや、日本を「戦犯国」と見る国は存在しない。韓国だけである。その韓国のASEANでの評価は、日本にはるかに及ばないはずだ。日本が全体の65%に達しているから確実である。

     

    この世論調査では、日本の防衛計画を聞いていないが、ASEANへは初歩的な装備の供与をして手助けしている。中国や韓国は、周辺国が日本の「軍事大国化」を警戒していると、勝手な推測記事を流している。だが、日本との深い信頼関係から、そのようなデマ記事に踊らされる懸念はないだろう。

     

     

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    40年前の12月、深圳が中国の改革開放の起点になった。中国経済発展の原動力として、深圳を舞台にIT関連企業が大きく羽ばたいてきた。だが、米中貿易戦争で、ハイテク産業が最大の争点になっている。順風が一転して逆風に変った。米国は、中国のハイテク企業がスパイ活動の一翼を担うと警戒の目を向けているからだ。先進国は、一斉にファーウェイ(華為技術)製品を排除する方針を固めている。

     

    これでは、ファーウェイ墜落は必至である。深圳のリーディングカンパニーであるファーウェイの凋落は、深圳の凋落にもつながる。危機感が強まってきた。

     

    『ブルームバーグ』(12月30日付)は、「改革開放40年起点の地深圳、逆風に直面、貿易戦争で富の流出続く」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「香港に隣接する深センには、ブルームバーグ・ビリオネア指数に基づく世界の富豪上位500人に入る資産家が経営する企業8社が本拠を置く。馬化騰氏の騰訊控股(テンセント)や王伝福氏の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)などだ。だが、モーニングスター・インベストメント・サービスのアナリスト、チェルシー・タム氏は、『トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争に伴い、中国インターネット株から2018年に“富の流出”が起き、既に深圳では多くの富豪が打撃を受けている』と話す。インターネットビジネス向けの広告収入が減少し、経済成長鈍化への懸念が響いている」

     

    深圳は、世界の富豪上位500人に入る資産家が経営する企業8社が本拠を置く、という。いかに急成長したかの証である。

     

    (2)「ハイテク銘柄の多い深圳総合指数は年初来で約30%下げており、11年以来最悪の年間パフォーマンスに向かう。北京にある長江商学院の劉勁教授(会計・財務)は『深圳など各地の企業家は今後数年、強い逆風に直面するだろう。世界の市場はもはやオープンではなく、国内需要も十分ではないという可能性が目の前にある』と述べる」

     

    株価の深圳総合指数は、年初来30%の下落になった。上海総合指数の下落率25%を上回る不振である。深圳の発展は、中国のハイテク企業の成長にかかるが見通しは暗い。前述の通り、ファーウェイへの海外評価が極めて警戒的であることだ。

     

    英国国防相は、次のように警戒発言をしている。

     

    英紙『タイムズ』は12月27日、英国のウィリアムソン国防相が、英国の第5世代(5G)移動通信システムに中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が参入すれば、通信システムを通じて中国のスパイ活動が可能になるとの懸念を示したと報じた。日米などでは同社製品を排除する動きが出ており、英国でも本格化する可能性がある。同国防相は、5G通信網へのファーウェイの参入に関して「重大で、非常に強い懸念を持っている」と述べた。その上で、セキュリティー上のリスクを全面的に点検することが必要だとの見解を示したという。以上は、日本経済新聞12月28日付が伝えた。

     

    ここまで、はっきりとファーウェイ製品が次世代通信網「5G」へ進出する危険性を指摘している。ファーウェイ製品が、中国国内だけでは需要不足は明らかである。まさに、ファーウェイの危機は、深圳の危機でもある。

     

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