勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年12月


    中国は、APEC(アジア太平洋経済協力会議)において、我が儘な振る舞いをして批判を浴びた。その舞台となったパプアニューギニアで、「汚名挽回」とばかりにソフト路線に転換した。なんと、中国の「国技」とも言える卓球の普及に乗り出したというのだ。これで、借金漬けの汚名も一緒に洗い流したいのかも知れない。発想が単純である。金銭搾取の恨みは、ピンポンでは消えるはずがないのだ。

     

    『ロイター』(12月4日付)は、太平洋地域で中国が卓球外交一帯一路構想に新展開と題する記事を掲載した。

     

    (1)「太平洋諸国の1つ、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーには中国の資金で建設されたスポーツ施設があり、その中では同国随一の卓球選手が技の向上に励んでいる。この選手は数カ月前、中国の費用で上海に派遣されることも決まった。ラグビー熱が盛んなことで知られるパプアニューギニアで、卓球の普及を図ろうという試みはまさに中国の後押しがあればこそ、だ。実際、国内で卓球の位置づけは高まっている。競技団体は、間もなく何人かの選手がオリンピック出場資格を獲得し始める可能性があるとみており、実現すれば南太平洋地域では異例で、もちろんパプアニューギニアにとっては初の卓球代表となる」

     

    始皇帝以来、漢族がこうやって周辺の弱小国を膝下に治めてきた遣り方が分って興味深い。にこやかに近づいて、相手を油断させる。現在のスパイ作戦も、こういう調子で獲物に接近するのだろう。

     

    (2)「習氏は(APECでパプアニューギニア)訪問に先立ってパプアニューギニアの新聞に寄稿し、スポーツなどをきっかけとして国民同士の草の根の友好関係を築き上げることを目指していると述べた。西側諸国が太平洋地域に影響力を強めつつある中国に対し警戒感を強める中で、こうした中国の動きは、習氏の掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」がソフトパワーの推進という新たな段階に入ったことを表している」

     

    「ニーハオ」と言って近づいてくる。だが、借金漬けという恐ろしい手を使う中国へ、ピンポンで騙されるだろうか。未開部族にタバコを呉れるような過去の手法が使えるとは思えない。どんなに小規模国でも、国連加盟国である。世界情勢を知っているはずだ。ピンポンで国を奪われる時代ではない。

     

    (3)「南太平洋地域で、中国からの借り入れの最も大きい国がパプアニューギだ。主として道路や競技場、大学、水産加工施設などの建設費用として約5億9000万ドルの債務を抱える。そのため西側諸国の間では、パプアニューギニアがこうした債務のために中国の意向に逆らいにくくなるとの懸念が高まってきた。先月には米国とオーストラリアが、中国側の提案を退ける目的でパプアニューギニアに海軍基地を建設すると表明した。もし中国の施設が出来上がれば、戦略的に重要なこの地域に中国海軍艦艇が停泊しかねないからだ」

     

    西側諸国も念には念を入れている。中国が、パプアニューギニアに海軍基地を建設しないよう、米豪が海軍基地を建設する案を公表した。中国は、これほど嫌われる国になっている。その中国が、「第二の母国」とまで思う人もいる。人、それぞれである。


    韓国メディアの安倍批判は、すっかり影を潜めている。「右翼」「軍国主義者」などと言いたい放題であったが、日本経済の好調と外交で成果を上げていることから「絶賛」に転じた。確かに、G20の首脳会談に見る集合写真で米大統領の横に映っている。

     

    かつて、中曽根首相(在任期間1982~87年)が国際会議で米大統領の横に立った写真が報道されたことがある。日本国内では、驚きの声が上がったものだ。後日、中曽根氏の述懐によると、米大統領の横に立つことを狙っていた。撮影直前に、スッと前に出て「成功した」というのだ。当時、日本のGDPは世界2位。それでも、こういう涙ぐましい努力が必要であったのだろう。国際社会で一目置かれるには、それなりの外交成果が求められる。

     

    安倍首相は、ごく自然にトランプ大統領の横に立っている。韓国の文大統領の姿を探すと2列目に立つ。韓国メディアが日本に羨望の念を持つのも分る。

     

    『韓国経済新聞』(12月4日付)は、「安倍氏の実利外交」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ソンテ論説委員である。

     

    (1)「最近、日本の安倍晋三首相の足取りはいつも以上に軽快だ。「失われた20年」を克服して、経済に復活の道筋をつけたうえに国際政治舞台でもこれまでにない存在感を放っているからだ。安倍氏は先週末、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議期間中、どの国の指導者よりも忙しい日程をこなした。米国、中国、ロシア、フランス、インドなどの首相と相次いで単独および3国間会談をしながら安保と経済という二兎をすべて捕まえた」

     

    G20で安倍首相は、文大統領と握手を交わしただけだったという。APEC(アジア太平洋経済協力会議)では、文氏の方が安倍氏に駆け寄り握手を求めて来た。その時、中国首相が話しかけて来たので、文氏とは会話せずに終わったという。文氏は、安倍氏と話をしたいのだろう。何か、文氏の淋しい立場が伝わってくる。

    (2)「何よりも米国と中国の間で徹底的に実利を取ろうとする姿が際立っていた。トランプ米大統領に米中貿易戦争の緩和を注文する一方、北朝鮮非核化のための制裁維持も要請した。トランプ大統領は「歴史上、両国がこのように近かったことはなかったと思う」という言葉で満足感を示した」

    (3)「習近平中国国家主席との首脳会談では「両国関係が過去よりも良い状態で、経済貿易分野での協力潜在力が非常に大きい」という好意的反応を引き出した。また日中は東アジア包括的経済連携(RCEP)の早期妥結に向けて協力することにした。

    (4)「安倍氏の実利外交でほとんど唯一の「例外」は韓国だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領とは首脳会談を5回しているが、依然として両国関係は冷え込んだままだ。日本側の誠意に欠ける態度や慰安婦和解・癒やし財団の解散、日帝強制徴用賠償判決などが関係改善をさらにこじらせている局面だ。安倍氏の実利外交が韓日関係でも光を発揮することを期待する」

    実利外交とは、「ウイン・ウイン」がなければ成立しないはず。日韓には、その肝心な点が存在しない。韓国の日本への姿勢は、「ギブ・ギブ・ミー」である。「もっと呉れ」では外交は成立しない。安倍首相が、米国・中国・ロシア・フランス・インドの各首脳と会って話せるのは、そこに共通の利益確保が存在する結果だ。

     

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    米中首脳会談で、米国の裏方を仕切った米通商代表部(USTR)代表のライトハイザー氏が、対中通商交渉のトップを務めることになった。これを見ても分るように、ホワイトハウスでは対中タカ派が主導権を握っている。ハト派が主導権を握っているとすれば、ムニューシン米財務長官が対中通商交渉のトップに座るはずだ。

     

    『ロイター』(12月3日付)は、「USTR代表が中国との通商交渉を当面担当ーナバロ通商政策局長」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米ホワイトハウスのナバロ通商製造政策局長は3日、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が向こう90日間、中国との関税、市場アクセス、知的財産権などを巡る交渉を率いることを明らかにした。ナバロ局長はナショナル・パブリック・ラジオに対し、「ライトハイザーUSTR代表がこれらの交渉を率いる」とし、ライトハイザー氏は関税、および非関税障壁の引き下げ、市場アクセスを阻んでいる構造的な慣習の撤廃を目指すと述べた」

     

    ライトハイザー氏は1980年代前半、日米経済摩擦で日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさせた人物だ。交渉の席で、日本の提案書を紙飛行機に折って投げ返したという逸話もあるほど。当時は、USTR次席代表であったが、その辣腕ぶりは有名で、日本側はほとんど彼の言うままに切り込まれた経緯がある。そのライトハイザー氏が、対中通商交渉のトップになる。中国はきりきり舞いさせられるであろう。弁護士出身であるから、中国は、ことごとく論破されるに違いない。

     

    今日のブログの、国、「対中交渉」政権内ハト派とタカ派の争い深刻報道「本当か」

    を併せて読んでいただきたい。

     

    メルマガ8号 「日本に背を向ける韓国、来たるべき経済危機をどう克服するのか?」が、『マネーボイス』で紹介

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    米ホワイトハウスは、ハト派とタカ派が争っていると報道されている。先の米中首脳会談で、「90日間猶予」という結論になったので、タカ派が後退したという趣旨の報道がある。果たしてそうだろうか。私は、海外通信社の短い記事でも丹念に積み上げてきた。そこから見ると、今回の「90日間猶予」は、タカ派がハト派の顔も立てながら要所、要所を締めて引き出した結果であろう。中国へは、相当の圧力をかけたはずだ。中国の金融システムは今、重大危機を迎えている。習氏は、屈服させられたと見る。

     

    『日本経済新聞』(12月3日付夕刊)は、「トランプ政権、溝深く 対中強硬派勢い 関税猶予に不満」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中両国は1日の首脳会談で、米国による追加関税の発動を90日猶予することで合意した。貿易戦争激化の回避に胸をなで下ろすムニューシン米財務長官ら国際協調派に対し、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表ら対中強硬派は批判を弱めておらず、トランプ政権内の溝は深まる一方だ90日後のシナリオも白紙で、強硬派が巻き返す余地を残している」

     

    ハト派はムニューシン米財務長官らである。中国国家副主席の王岐山氏らと太いパイプを持っている。中国は、このハト派を通じて米国へ働きかけていたが成果がなかった。最後まで、米国の動きが掴めず混乱していたのが実情だ。ホワイトハウスは、USTR(米通商部)代表のライトハイザー氏らタカ派が、青写真を描いていたのである。

     

    このライトハイザー氏は、米中首脳会談直前に次のような発言をしている。ここがポイントだ。

     

    『ロイター』(11月30日付)は、「米中会談で重要な案件討議へ、合意は両首脳次第ーUSTR代表」と題する記事を掲載した。『大紀元』が転載した。

     

    「ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は30日、翌日に予定されている米中首脳会談について、『極めて重要な案件』を巡り良好な協議が実施されると予想しているとしながらも、何らかの合意が得られるかは両首脳に『完全に依存している』と述べた」

     

    「トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は12月1日の夕食会の席で会談を行う。ライトハイザー代表はこれについて、会談後は双方に『前向きな』雰囲気が生まれるだろうとし、今回の首脳会談が成功に終わらなかった場合は驚きに値すると述べた。ただ、両首脳が通商問題を解決できるかどうかについては明言を避けた」

     

    この記事を読めば、ライトハイザー氏らタカ派がお膳立てしたことは一目瞭然である。タカ派が「休戦」の場合、その期間を最短にして中国に食い逃げさせないよう90日に絞ったのだ。トランプ氏が、ハト派よりタカ派に重心を置き対中政策決定していることは明からかである。

     

    (2)「『米中首脳による素晴らしいディール(取引)になった。中国には巨大な関税障壁と非関税障壁があるが、この多くを取り除く』。首脳会談を終えたトランプ米大統領は、アルゼンチンから米国に戻る大統領専用機で記者団に上機嫌にまくし立てた。もともと不動産経営者でディールを好むトランプ氏。短期決戦での成果にこだわるトランプ氏の性格を見越し、ウォール街に近いムニューシン氏やクドロー国家経済会議(NEC)委員長は習指導部との橋渡しに動いた

     

    上記の下線部分は、従来の見方である。

     

    トランプ氏が帰途の機内でご機嫌であったのは、①中国が米タカ派の描いた青写真に乗ってきたこと。②米国の農産物を輸入すること。③米国製自動車にかけている関税の引き下げ・撤廃を約束したことである。中国は、ホワイトハウスの主導権がタカ派に移り、全く手がかりがなく暗中模索状況であった。だから、米国の提案をすべて受入れるほかなかった。

     

    ライトハイザー氏と見られる発言を紹介したい。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月2日付)は、「米高官、『偉大な1日』貿易などG20宣言を高評価」と題する記事を掲載した。

     

    「20カ国・地域(G20)首脳会談に参加した米政府高官は1日、首脳宣言を『世界貿易機関(WTO)は目的を満たしておらず改革が必要だと盛り込んだことは画期的だ』などと高く評価した。『保護主義と闘う』との文言を削除するなど、首脳宣言にはトランプ政権の意向が強く反映されており、米高官『米国にとって偉大な一日だ』と述べた米政府高官はアルゼンチンで開いたG20会議の閉幕後、記者団に『G20の首脳宣言は米国の大きな目的を数多く満たしている』と力説した

     

    「米国にとって偉大な一日だ」との発言の中に、交渉責任者の実感が溢れている感じである。この米高官は多分、ライトハイザー米通商部(USTR)代表と見られる。発言内容からそう推定する。彼は、ホワイトハウスのタカ派として中国封じ込めの代表で活躍している。90日の猶予時間を与えることで、米政権内のハト派の顔も立てているから、「偉大な1日」であったに違いない。

     

    トランプ氏の本質はタカ派である。争いごとを回避せずに突進していく荒馬タイプだ。その代理人がライトハイザー氏と見る。

     

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    文在寅大統領にとって経済問題は鬼門のようだ。G20の帰途、専用機内で記者懇談会を開いたが、文氏は「経済問題について質問するな。答えない」と一方通告。記者から手厳しい質問が出ることを予想して先手を打ったもの。「雇用政権」という触れ込みで政権に就いたはずだが、最早そういうことを考えるゆとりもないほど、追い込まれているのだろう。

     

    『中央日報』(12月3日付)は、「文大統領。経済成果問われると『国内に関する質問受けない』片手落ちの懇談会」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が1日(現地時間)、就任後3回目となる機内記者懇談会で、青瓦台(チョンワデ、大統領府)特別監察班全員交代をはじめ、国内の懸案に対してはいかなるコメントもしなかった。

    (1)「文大統領はこの日、アルゼンチンで主要20カ国・地域(G20)首脳会議を終えた後、大統領専用機が正常高度に入るとすぐに懇談会を始めた。文大統領は『メディアが(G20などの)多国間会議に関して関心が低い。もう少し関心を持ってほしい』と所感をまず明らかにした。その後『事前に約束をどのようにしているのか知らないが、国内問題については質問を受けない。外交に関してはどのような問題でも分かる範囲で答える』と質問対象を制限した」

    (2)「ある記者が「文在寅政府3年目を迎えて経済分野でも成果を出さなければならないという声が大きい」と経済懸案などに関して質問しようとすると、文大統領は「それ以上お話しにならなくてもいいと思う」とし「外交問題における来年度の目標なら、早期に第2回米朝首脳会談が実現し、その会談を通して北朝鮮の非核化で画期的な進展がなされること、それに伴い南北関係が共に歩調をそろえて発展していくことが外交での最も重要な課題」と述べた」

    (3)「これに対して、次の記者が「国内で関心事が大きな事案が広がり、質問をしないわけにはいかない。短かくても質問したい」というと、文大統領は「短くても質問を受けず、答えることもない」と言葉を遮った。それでも懸案質問はまた出てきた。また別の記者が「出国前のSNSで正義の国は作ると述べたことについて説明してほしい」と要請したが、文大統領は「外交に(関する質問に)戻ってほしい」と答えた。これについて「また返事に困るのか」と再度質問されると、「南北間に平和を成し遂げて完全な非核化を実現することも正義の国に含まれる」と述べた」

    一々、コメントを付ける必要もないが、経済問題についての質問も答えるべきだ。前任の朴槿惠大統領は「不通大統領」と不評だったが、文大統領はそれ以上だと悪評である。

     

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