習近平氏の描く国有企業中心の中国経済は、一段と行き詰まり状況を見せている。国際金融協会(IIF)のティモシー・アダムズ最高経営責任者(CEO)は、中国の債務が対GDP比で300%に達したとスイス・ダボス会議で語った。日本経済新聞 電子版が、28日に伝えた。
中国の電子商取引(EC)大手アリババグループが出張経費を削減するとともに、新規採用の一部を延期したことが分かった。関係者が明らかにしたもの。成長鈍化に対応するためだという。関係者によると、一部の新入社員は4月からの新年度まで勤務を始められないと言われたという。ビジネスクラスの航空運賃が部門ベースで制限されるなど出張費も削減され、社員にできるのは往復で20時間を超える出張旅行5回ごとにプレミアムキャビンを選択することだけだという。ブルームバーグ1月28日付が伝えた。
上記二つのニュースは、きわめて衝撃的である。世界一の通販業者のアリババが、出張経費の削減に動きだしたのは、業績が悪化している証拠である。どこの企業でも不況対策の第一弾がこれだ。毎年、「独身の日(11月11日)」のセールスは、驚異的な販売実績を上げることで有名なイベントである。去年も大騒ぎしたが、売上増加率は鈍化過程にはいっている。
アリババのみならず、中国インターネット検索最大手、百度(バイドゥ)や中国のオンライン旅行代理店、携程旅行網(Cトリップ・ドット・コム・インターナショナル)も苦しみ始めている。アリババの7─9月期決算は、売上高が市場予想を下回った。中国経済の減速とアリババの失速の兆候をあらためて浮き彫りとする内容だ。売上高は前年同期比54.5%増の851億5000万元(123億9000万ドル)で、リフィニティブがまとめたアナリスト予想の865億1000万元を下回った。中国経済は、確実に底冷え状態に入っている。
『日本経済新聞 電子版』(1月28日付)は、「中国国有企業の資金調達、成長につながらず」と題する記事を掲載した。
(1)「世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)を訪れた、国際金融協会(IIF)のティモシー・アダムズ最高経営責任者(CEO)は、23日に日本経済新聞のインタビューに応じた。世界の約70カ国・地域の約450の主要銀行が加盟するIIFによると、中国で政府、民間、金融部門を合わせた債務は2018年7~9月時点でGDP比約300%にのぼる。10年前の09年時点では約200%だったが、その後で急増している。アダムズ氏は背景の一つとして、国有企業がインフラ開発などのために資金調達している点を指摘。『補助金、政府系銀行からの借り入れ、社債などのかたちで多額の資金が回っている』と分析。雇用創出に国営企業が寄与する割合は11%にすぎず、借金が増えても安定した経済の成長につながっていないとした」
中国の総債務は、2018年7~9月時点でGDP比約300%にのぼる。10年前の09年時点では約200%だった。経済成長率が鈍化する過程で、債務だけが積み上がる悲劇的な状態が続いている。借金が増え続けるのは、債務による投資がそれに見合うリターンを生んでいないことを意味している。政府が、当面のGDP押上げだけを目的とする非効率投資を行なっている結果だ。
国有企業には、「補助金、政府系銀行からの借り入れ、社債などのかたちで多額の資金が回っている」が、非効率投資ゆえに採算の悪化を招いている。雇用面での国有企業の寄与は11%に過ぎない。
(2)「また地方政府も公共事業に頼った景気刺激をねらい、債務増加が目立つという。『商業施設建設、宅地開発などが続くが、借金を返すだけの税収などを生んでいない』と述べた。中国の債券、株式市場についてアダムズ氏は『格付けなどの面で市場の透明性が低い。投資家が十分判断できず、結果的に政府が現状を維持しやすい』と語った。ただ、成長がさらに鈍れば投資家が離れ、市場が急速に冷え込む可能性もあるため『今の状態をいつまでも続けられない』と指摘した」
このパラグラフから得られる結論は、中国経済が破綻に向けて最後の「コーナー」を回ったということである。経済発展に必要な制度的なインフラを欠いたまま、高度成長を続けてきた矛楯が、もはやこれ以上隠蔽できない限界点を迎えている。米中貿易戦争という悲観材料が、ぐらつく中国経済を押し倒すテコの役割を果たしていると見る。