勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年02月

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    韓国の次期大統領選は2022年。早くも、世論調査で候補者選びが始っている。与党「共に民主党」は、今後とも革新派政権を継続させる目的で、保守派に強力な圧力を加えている。「積弊一掃」という名の下に小さい理由でも付けて、司法当局へ告発しているのがそれ。だが、与党陣営で次期大統領候補と目されてきた有力者が、相次いで事件を起こし有罪判決を受け、刑務所に収監される騒ぎだ。一人は、婦女暴行罪(罪名は恥ずかしくて書けない)。もう一人は、世論操作の罪だ。韓国革新派の恥部を余すところなく暴露した。

     

    『レコードチャイナ』(2月2日付)は、「2022年、ポスト文在寅は現前首相の争い、出馬予想政治家の支持率調査で接戦」と題する記事を掲載した。

     

    2022年に行われる次期韓国大統領選挙の有力候補として、文在寅政権の李洛淵首相と朴槿惠政権の首相だった黄教安氏が早くも浮上してきた。最新の世論調査で2人の支持率は拮抗。保守系の黄氏は、大統領選を意識してか最大野党に入党し、文政権の経済政策などへの批判を強めている。

     

    (1)「聯合ニュースによると、韓国の世論調査会社「リアルメーター」が1月29日に発表した22年の次期大統領への出馬が予想される政治家の支持率調査で、黄氏(元首相)が前月より3.6ポイント上昇して17.1%となり、初めてトップとなった。李首相は同1.4ポイント上がった15.3%で2位だった。調査対象は大統領選への出馬が予想される与野党の主な政治家12人の支持率。実施は21~25日で、全国の成人2515人を回答者とした。黄、李両氏が接戦の様相を呈す中、両氏以外の人物の支持率は下落した」

     

    世論調査では、現首相の李氏と元首相の黄氏の二人が、他の人物を引き離して接戦状態になっている。政党別の支持率では、与党「共に民主党」と野党・自由韓国党の差は一桁内に接近した。与党有力者の相次ぐ不祥事が、与党支持の足を引っ張ったもの。これだけでなく、経済政策の失敗も重なっており、予断を許さない状況だ。

     

    (2)「野党の『正義党』と『民主平和党』を含む進歩(革新)系与党陣営の支持層や無党派では李氏(21.2%)、保守系野党の『自由韓国党』と『正しい未来党』の支持層や無党派では黄氏(31.9%)がそれぞれ支持率トップだった。黄氏は元検察官で朴政権発足後の2013年、法務部長官に起用された。15年には首相に就任。国政介入事件などで国会が朴氏の弾劾案が可決した16年12月から、文政権が発足した17年5月まで大統領権限代行を務めた。リアルメーターが12日発表した次期大統領選の支持率調査では、李首相(13.9%)に続き、2位(13.5%)だった」

    黄・元首相支持率:13.5%→17.1%

    李・現首相支持率:13.9%→15.3%

     

    現職首相が、元首相の支持率を下回るというのは、文政権の不人気度を表わしている。最低賃金の大幅引上げで、庶民の雇用を奪い失業させている政治は、どう見ても高い評価には値しない。国民は、文政権に見切りを付け始めたとも言えるようだ。

     

    (3)「黄氏は115日、最大野党の自由韓国党に入党し、党代表選出馬を宣言。フェイスブックに『庶民経済の崩壊、直接見ました』という題名で投稿し、文政権を『経済を生かす政策ではなく経済を殺す政策を国民相手に実験している』などと非難した。聯合ニュースは黄氏について『乗り越えなければならない難題が山積している。朴氏の弾劾当時、大統領権限代行を務めた経歴は最高の政治資産になる得る半面、最大の弱点ともなる』と主張。『朴氏を支持する極右勢力が黄氏を中心に集まる可能性もあり、中道勢力が離れるなど、党の支持率に悪影響を与える懸念もある』との見方を示した」

     

    私は、今なお朴槿惠・前大統領裁判を疑いの目で見ている。現政権が、司法に圧力をかけて収賄罪に仕立て上げたという強い疑念だ。結婚もせず、地味な生活を送ってきた朴氏が、莫大な収賄をする合理的な理由がない。次の記事(『朝鮮日報』1月28日付)が、その一端を明かしている。

     

    「韓国の朴槿恵前大統領の弁護士だった蔡明星(チェ・ミョンソン)弁護士がこのほど、朴前大統領の弾劾、裁判過程を回顧した本を出した。『弾劾インサイドアウト』と題する本には弁論過程での裏話が一部盛り込まれている。それによると、朴前大統領が2017321日に初めて被疑者として検察の取り調べを受けた際、突然すすり泣き、取り調べが中断する場面があったという」

     

    「サムスンからの収賄についての検事の質問に対し、朴前大統領は『国のために夜も寝ずに3年間を苦労とも思わずに生きてきたが、わたしがそんな汚れたカネを受け取るなんて。なぜそんなに汚い人間に仕立てたいのですか』と言い、泣きだしたのだという。蔡弁護士は『事故が起きるのを恐れ、取り調べが一時中断された。大統領はあまりに悔しかったのだろう』と話した」

     

    次期政権が保守党に変れば、「朴裁判」の真相が明かされるだろう。それを期待している。


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    今年に入ってからの中国経済が、一段の苦境に立たされている。製造業PMI(購買担当者景気指数)が、2ヶ月連続で不況を示す50割れしていることで明らかだ。特に、民営企業が苦境に沈んでいる。

     

    米国は、貿易戦争で中国に要求を受入れさせるには絶好の機会を迎えた。中国は、改革開放政策以来40年、自由貿易原則を踏みにじり、技術窃取に明け暮れしてきた。その成果が、現在のGDP世界2位とも言える。この「悪習」を糺すには今をおいてほかにチャンスはあるまい。そういう絶好の位置に立った米国だが、本当にこの機会を生かし切れるのか、懸念も指摘されている。例のトランプ米国大統領の「気まぐれ」である。この問題については、後で取り上げる。

     

    中国経済が、切羽詰まった状況へ追い込まれているのは、もはや打つ手がないことだ。それを物語るのが、次の記事である。

     

    「(格付け会社)S&Pの推計によると、中国地方政府が抱える負債は既に6兆ドル近くに達している。地方政府は負債の返済を主に土地売却収入に頼っているが、不動産投資は落ち込み、土地入札は減少している。減税を行えば地方政府の財政はさらに悪化するだろう」(『ロイター』1 月29日付コラム「景気対策手詰まりの中国、残る道は減税か」)

     

    この指摘が、中国経済の苦境のすべてを物語っている。タコが、自分の足のすべて食い尽くしたと同じ状況だ。これまで、不動産バブルでGDPを押上げてきた。それが限界に達したという意味である。S&Pの推計によれば、地方政府が抱える負債は既に6兆ドルに達している。この重圧を背負って、中国経済が生き延びられるか疑問である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「トランプ氏の対中交渉、歴史的勝利か空騒ぎに終わるか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中貿易交渉を巡り、合意がまとまる可能性がささやかれている。優位に立っているのはドナルド・トランプ米大統領だ。問題は、トランプ氏がその優位性を生かすか、それとも市場を盛り上げ、地元有権者の歓心を買うために面目を保つ程度の合意で手を打つかどうかだ。90日間の交渉期間が期限を迎えるまでに1カ月近くあるが、今のところ状況は芳しくない。トランプ氏と中国の劉鶴副首相(経済担当)が131日に協議した主なテーマは、中国による500万トンの大豆輸入拡大だった。具体的な期限は不明だ」

     

    中国は、経済政策で有効な手が打てない状況下にある。一方の米国も大豆の輸出が止まった状態で農家が苦しんでいる。中国が、ここへ焦点を合わせて妥協策を出してくる可能性は大きい。だが、この目眩ましに騙されてはいけない。

     

    (2)「米国の大豆農家は苦境にあり、いかなる救済措置も歓迎されるはずだ。だが数字には根拠が必要だ。米農務省(USDA)によると、中国は2017年に3200万トン近い大豆を米国から輸入した。大豆は米国最大の輸出農産物だ。181月〜10月の輸入量はわずか820万トンと、前年同期に比べ63%減少した。これを踏まえれば、手始めに500万トンの追加というのは、極めて小さな提案だ。仮に、米国の関税が撤回され、中国の大豆とエネルギー輸入が単に以前の水準に戻り、米企業の中国進出に対し厳しい制限付きの市場開放策が少しばかり付け加えられるだけだとすれば、これまでの騒ぎは何だったのか説明がつかない」

     

    米国の農家は、トランプ氏の強力な支持者である。次期大統領選を考えれば、中国と適当な線で妥協する懸念も捨てきれない。その場合、トランプ大統領の「不公正貿易是正」というこれまでの目標は何だったのかという批判にさらされる。民主党から見れば、絶好の餌食になるはずだ。ここでの妥協は、トランプ氏が次期大統領選で勝てない要因を自らつくるようなものであろう。

     

    (3)「だがそうなるとは限らない。中国の経済メディア「財新」が1日発表した1月の製造業購買担当者指数(PMI)は、製造業の活動が20162月以来の大幅な落ち込みとなったことを示した。景気は向こう数カ月で一段と減速しそうだ。(中国が)真に成長を取り戻そうとするなら、中国は不公平な保護策や国営企業の優遇措置を取り払わなければならない。それは米交渉団の中核的な要求だ」

     

    トランプ氏が、ここで小さな「エサ」に満足して矛を収めれば、中国経済にとっても抜本改革の機会を失う。世界経済の次なる発展のためにも、トランプ氏は小さな成果で妥協してはならないのだ。

     

    (4)「筋金入りの国家統制主義者である習近平国家主席にとって、軌道修正は政治的に困難だろうが、必要なことだ。中国が本当に技術革新の原動力となることを望むのであれば、知的財産の保護強化は中国にも長期的に国益をもたらす。トランプ氏は米中両国の経済を強化できる歴史的機会に恵まれている。妥協をせず、中国の真の譲歩に対して米国も真に譲歩する心構えであるならば」

     

     

    トランプ大統領は、ここで妥協せず初期の目的達成のために努力すべきだ。それが、中国の改革派に力を与え、真の経済改革のテコになり得る。レーガン元・米国大統領が、ソ連崩壊をもたらしたように、トランプ氏もまた中国の門をこじ開ければ、自由貿易実現の勝利者になる機会が与えられるのだ。


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    韓国の輸出に占める対中シェアは、約26.8%である。中国経済の影響を強く受ける関係にある。中韓の経済関係は切っても切れない関係なのだ。

     

    韓国経済は、景気循環の判定から言えば、昨年10月から「不況局面」に入っている。ただ、韓国統計庁が正式発表をしないだけ。不思議なことに、韓国メディアはこの問題について一切、言及していない。景気循環の知識が欠如しているのか。その理由は不明だが、政府もお構いなしである。

     

    『中央日報』(2月1日付)は、「韓国の1月の輸出5.8%減、半導体・原油価格下落に中国成長鈍化の三重苦」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今年1月の韓国の輸出が前年同月比5.8%減少した。昨年12月(1.3%減)に続いて2カ月連続のマイナスだ。輸出が2カ月連続で減少したのは2016年9、10月以来。半導体価格と原油価格が下落したうえ、米中貿易紛争の影響などで対中国輸出が減少する『三重苦』のためと考えられる。1月の半導体輸出は74億2000万ドルで、前年同月比23.3%減少した。半導体輸出は昨年9月の最高実績(124億3000万ドル、28.3%)から減少傾向だ」

     

    今年1月の輸出減少率(前年同月比5.8%)が、昨年12月の減少率(同1.3%減)を上回ったことは、韓国を取り巻く輸出環境の悪化、とくに中国経済の急減速が影を落としている。この点については、後で取り上げる。

     

    (2)「イ・マンウ高麗大経営学科教授は、『特に半導体は固定費の比率が高く、単位当たりの変動費が少ないため、売上減少が営業利益に大きな影響を及ぼす業種』とし、『半導体業界の利益が大幅に下落するかもしれない』と述べた。オン・ギウン崇実大教授は、『輸出の減少はしばらく続く可能性が高い』とし、『世界景気の鈍化が1、2年ほど続くと予想され、半導体を中心に輸出単価の下落も続く見通し』と話した。また『輸出の減少で国内の経済成長率も2%台維持が厳しくなりそうだ』と語った。一方、今年の半導体メモリー価格と輸出減少局面は『上低下高』で、下半期に安定化するという分析もある」

    韓国の輸出減少で痛手になるのは、半導体輸出の減少である。半導体製造は、装置産業と言われるように膨大な設備投資を必要とする。そのため、固定費が大きくのしかかる特性と持っている。好況時の利益幅は大きいが、不況時で価格が下落すれば赤字になりかねない。韓国経済には、こういうリスクを抱える半導体産業に依存する欠陥があるのだ。輸出が落込めば、純輸出(輸出-輸入)が内需不振をカバーできず、マイナス成長に落込む危険性が大きい。

     

    (3)「1月の対中国輸出は108億3000万ドルと、前年同月比の減少幅は19.1%だった。韓国の最大輸出国(2018年基準で輸出比率26.8%)である中国の成長鈍化の影響により3カ月連続で輸出が減少している。1月の対中国輸出は船舶・コンピューターを除いて多くの品目が振るわず、特に半導体・石油製品・石油化学が大幅に減少した」

     

    このパラグラフでは、対中国について重要な事項の指摘がある。

        成長鈍化の影響により3カ月連続で輸出が減少

        1月の対中輸出は、前年比19.1%減

        半導体・石油製品・石油化学が特に大幅減少

     

    上記の3点から見ると、対中国輸出はかなり警戒しておかなければならない。

     

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    中国経済は、世界のGDPの16%を占める。その「巨漢」が、急減速に見舞われあちこちに波紋を呼んでいる。日本が、平成バブル崩壊で急減速したときは、これだけの騒ぎにならなかった。この日中の差が、経済体質の違いを表わしている。

     

    日本経済は、徹底的に輸入しない体質になっていた。海外から原材料を輸入して、それを製品にするまで一貫体制を築いた。川上から川下までの産業群を揃え、国内技術で生産し、輸入を極力減らすという産業配置を完成していた。だから、バブル経済が崩壊しても、原材料輸入が減るだけで、世界への影響は少なかった。

     

    中国の場合は、全く異なる。日本が緻密型産業構造とすれば、中国は粗放型産業構造である。もともと、近代的技術体系を持たず、資源浪費型の産業配置である。資源ガブ飲み型であるから、大量の資源を輸入してきた。日本のGDP1単位を産み出すに必要な資源必要量(原単位)と比べて、中国は多くの資源を使い環境を悪化させてきた。この中国経済が、急減速して輸入が減れば、日本と比べ大きな影響が出るのは当然のこと。日本経済の体質を筋肉型とすれば、中国は肥満型で「資源浪費型経済」といえる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月1日付)は、「中国経済の急減速、反動で世界に衝撃波」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府を悩ませている巨額債務の蓄積、過剰投資、民間企業に対する制約など、国内経済の弱点は、貿易摩擦と相まって、世界第2位の経済規模を誇る同国の成長率を30年ぶりの低水準に落ち込ませた。工場生産と消費の減退は、他のアジア諸国、米国、欧州諸国からの中国の輸入に打撃を与えている。こうした経済減速の余波は、各種の株価指数をはるかに超える範囲に及び、中国から遠く離れた地域の経済成長をも阻害している。中国は、長年の急速な経済成長を背景に、世界中の国々の主要な貿易相手国となった。過去10年間、中国が世界の輸出入の伸びの5分の1をもたらした」

     

    中国経済の急減速が、世界貿易に大きな影響を与えていることは確かだ。だからと言って、これまでの野放図な経済成長がいつまでも続くはずがない。現在の急減速は、「いつか来る道であった」はずである。それが、ついに来ただけである。私のように、2010年5月から中国経済を毎日ウオッチしてきた立場から言わせて貰えれば、現在の事態到来は遅すぎたのである。ここまでバブル経済が悪化する前に、習氏は引締めに転じておくべきだった。それが、自己保身と絡んでもはやどうにもならない所まで放置した。その責任はきわめて重いと言うほかない。

     

    (2)「中国経済の弱さは、あらゆる分野に影響を及ぼしている。中国での半導体製造装置やスマートフォン部品の需要減退は、世界第3位の規模を誇る日本の昨年12月の輸出を、前年同月比で3.8%減少させた。この減少幅は、過去2年強の期間で最大だった。ドイツは対中輸出拡大に力を入れてきたが、欧州最大の同国経済の昨年の成長率は、その対中依存の大きさが主因となって、わずか1.5%に減速した。これは過去5年間で最も低い伸びだ。オックスフォード・エコノミクスの調査によれば、米国を含む経済規模の大きい先進諸国や、アジア諸国の昨年の対中輸出は、前年比10%近く落ち込んだ」

     

    日本の昨年12月の輸出は、中国経済の急減速により前年同月比で3.8%減少になった。韓国は、全輸出の26%が中国向けであり、昨年12月は前年同月比1.3%減であったが、今年1月は同5.8%減へ拡大した。中国の「粗放型経済」のもたらすガブ飲みが減れば、途端に他国へ影響が出るのは致し方ない。

     

    (3)「中国経済の減速はアジアに特に大きな打撃を与えている。アジア諸国の対中輸出は、衣料品、自動車から中国の巨大製造業企業を支える技術に至るまで多岐にわたる。昨年末にかけての中国の需要の落ち込みは、著しいものだった。その落ち込みは、より好調だった時期を含む昨年1年間のデータでは、覆い隠されている。こうした状況は、中国の輸入の15%を占め、同国の成長に欠かせない半導体の分野で特に明確になっている」

     

    中国が、半導体を輸入(全輸入の15%)し電子製品に組立て輸出してきた。この半導体関連輸出の恩恵を受けてきたのが韓国である。日本の対中輸出は投資財が主で、中国の設備投資減退の影響を早めに受けた。韓国の輸出は、半導体などの中間部品が主体である。今後、時間が経つとともに、中国経済減速の影響が強く出てくるにちがいない。


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    米国は、中国へ向けて次々と矢を放っている。これ以上、米国を利用するなと言う怒りである。中国政府が、米国に対して温和しくしていればまだしも、米国から覇権を奪い取るなど豪語するにいたって爆発。しかも、この米国籍取得目的の出産ツアーに参加しているのが、中国高官夫人という。米国の怒りは倍加している。

     

    『大紀元』(2月1日付)は、「米当局、出産ツアー企画の中国人を一斉摘発、20人起訴」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米当局は1月31日、出生する子どもの米国籍取得目的で中国人妊婦を訪米させる『出産ツアー』を企画運営していた中国系の経営者20人を、ビザ詐欺や資金洗浄などの容疑で逮捕・起訴した。米国法では、米国で生まれた子供は無条件で国籍を取得する資格が付与される。出産ツアーは、米国法の乱用として国内で問題視されていた。検察の挙げた20人の一例として、李冬媛(女性)は中国人女性に、妊娠を隠して旅行ビザで訪米することを教えたり、入国ビザ取得のための面接の訓練を施した」

     

    習近平氏は、中国人が理想の国として「出産ツアー」を組むほどの米国に対して、その覇権へ対抗するという無鉄砲なことを考えついた。冷静に考えれば米中の格差は、民度まで計算に入れれば、月とスッポンである。とうてい実現不可能なことに挑戦すると言いだしたのだ。その無駄を計算できないほど、専制主義は非合理的なものであることを示している。

     

    (2)「検察発表によると、李はカリフォルニアで出産ツアーを企画運営する『You Win USA』を経営。2年間で500人もの妊婦を中国から呼び、300万ドルの利益を得た。料金の相場は4万ドル~8万ドル3カ月の米国滞在中の出産やその前後のケア、国籍申請代行などの費用が含まれている。李容疑者は20軒のマンションを賃貸し、妊婦らを住まわせていた。ロサンゼルス米連邦検察トム・ムロージェク報道官は、出産ツアー関連で他に十数人を起訴したが、多くは中国に逃亡したと考えられているという」

     

    出産ツアー『You Win USA』の料金は、4万~8万ドル(440万から880万円)である。この金額を払える中国人と言えば、相当の所得層である。この種の出産ツアーは、これまでも話題に上がっていた。米当局は取り締まることはなかった。それが、ここへ来て取締対象になったのは、米中関係の悪化である。米国の「許すまじき中国」という怒りが、そうさせたに違いない。

     

    それにしても、中国人は利に賢い民族である。儲かると聞けば、外国まで出かけてビジネスをする。違法だろうが何だろうがお構いなしである。とても、世界の良識ある仲間には、加えられない。

     

    (3)「連邦大陪審も同日、出産ツアーを企画する『Star Baby Care』を運営する4人を起訴した。会社は2010年から約8000人の妊婦を子供の国籍目的で米国へ入国させる手続きを行った。半数は中国で、ほかロシア、ナイジェリアなどの出身者である。『Star Baby Care』の顧客に共産党の高官がメインだった。こういう『VIP』の顧客に10万ドルのツアー費用を請求している。河南人民ラジオ局、北京市政府公安局と黒竜江省ハルピン医科大学など政府部門に勤務する共産党幹部などが顧客だった。『魅力のある国籍』『きれいな空気』『優良な教育環境』『手厚い老後の保障』のため、顧客らは躊躇することなく費用を支払っているという」

     

    出産ツアーを企画する『Star Baby Care』の場合、顧客の半数は中国人である。河南人民ラジオ局、北京市政府公安局、黒竜江省ハルピン医科大学など政府部門に勤務する共産党幹部が顧客である。これら「VIP」の料金は、10万ドル(約1100万円)であった。

     

    これら顧客は、下記のようなキャッチフレーズに引き寄せられていたようだ。本来ならば、中国共産が実現すべきテーマである。自国では、実現できないから米国出産で我が子に与えよう。そういう、親ばか丸出しの話しだ。

     

    魅力のある国籍

    きれいな空気

    優良な教育環境

    手厚い老後の保障

     

    (4)「米当局は中国共産党政府の高官が顧客になっているため、出産ツアーが国家安全にリスクをもたらすと指摘する。生まれた子どもは中国で育てられた後、米国に戻り、21歳になったら両親を呼び寄せることができる。米国の入国管理・関税執行局マーク・ジト国土安全保障調査特別補佐官は、出産ツアーについて『深刻な国家安全保障上の懸念と制度の脆弱性だと考える』と述べた。ジト氏は、この法の抜け穴を使って外国政府による悪用もありうるとした」

     

    中国のような謀略国家では、何を企んでいるか分らない。21年先を睨んで、中国人スパイを送り込むことも可能である。このケースでは、米国政府が、「米国人」を監視するという矛楯に陥る。次の例は、中国政府が中学生段階からスパイ活動へ組み込んだ話である。

     

    米スタンフォード大学物理学、名誉終身教授である中国人の張首晟氏は昨年12月1日、55歳の若さで亡くなった。自殺とみられる。この張教授は15歳の時から中国情報機関の管理下に置かれ、スパイ活動に組み込まれていた。1978年、独学で高校の内容を勉強し、中学3年生だった張教授は、諜報計画のために設置された名門・復旦大学のある学部に入学した。その後、米国の大学で数々の研究業績を上げ、世界的にも著名な学者に上り詰めた。その裏では、スパイを強要されていたのだろう。ついに、良心の呵責に耐えかねたのか、自ら生命を絶つ悲劇的な人生を終えた。『大紀元』(1月25日付「中国情報当局の管理下に、中国の元政府高官が暴露」)が伝えた。中国とは、こういう人の運命を狂わせることも平気でやる国である。

     


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