勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年02月

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    与党「共に民主党」は野党時代、保守政権のインフラ投資を「土建国家」と批判し続けた。今は、文政権も同じ道に陥っている。来年の国会議員選挙を控えて、なんとか景気対策を打たざるを得ない立場に追い込まれているのだ。

     

    昨年10~12月期の所得下位20%の世帯所得が、前年同期を約18%下回り、2003年の統計開始以来で最大の減少幅を記録した。税金による公的補助金を除けば、約30%も落ち込んだことになる。「雇用政権」という看板を掲げる文政権にとっては、致命的な結果だ。最低賃金の大幅引上げが失業者をもたらす、政策意図とは真逆な結果になった。

     

    政府は、政策失敗を認めて最賃政策の手直しをするどころか、自らを正当化するという、「韓国的正義論」に打って出ているから驚くのだ。金尚祖(キム・サンジョ)公正取引委員長は、「政府の努力が一部で緩衝作用となった」と言ったもの。何もせずに放置していたらさらに深刻になっていたはずだが、政府が支援してやったおかげで所得の減少幅がこの程度だったという意味である。

     

    これは、政府の補助金(5兆3000億円)で、アルバイトなどの短期雇用を長期雇用に変えたことを指している。だが、無茶な大幅賃上げをしなければ、政府の補助金も必要なかったはず。文政権の「経済音痴」が招いた悲劇である。

     

    政府支持の『ハンギョレ新聞』(1月29日付)は、「雇用難突破に苦肉の策、『土建国家』批判が舞い戻る懸念も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「企画財政部は昨年10月、「革新成長と雇用創出支援策」を発表し、地域経済に波及効果の大きい公共投資プロジェクトを積極的に推進すると明らかにした。これについて、人為的な景気浮揚策である社会間接資本(SOC)投資から距離を置き続けていた文在寅政府の政策方向が旋回するシグナルだという分析が出た。4大河川事業を推進した2009年以降10年たってはじめて、文政権が地方自治体に『予備妥当性調査免除』を先に提案したためだ」

     

    予備妥当性調査とは、大型SOC事業の経済性・効率性と財源調達方法を綿密に検討し、事業推進が適切かどうか判断する手続きである。こういう条件が、大型インフラ投資に義務づけられたのは、インフラ投資の濫用を防止して効率的な投資を行なう主旨である。ただし、緊急な経済・社会的理由があったり、地域バランス発展のための事業など国家政策的に必要な場合には、例外的な措置として予備妥当性調査を免除できることになっている。

     

    現在、大型SOC事業の相当数は、予備妥当性調査で事前審査を受けている状況だ。文政権は、このブレーキを取り外して一気に工事に進む方針を発表したので、世間の厳しい反発を受けている。予備妥当性調査が免除されれば、建設投資が急増し、最近の景気不振や雇用低迷の克服に役立つ。これが文政権の狙いだ。余りにもご都合主義である。日本のような責任内閣制であれば、総辞職すべき段階だ。文政権は「ミソ」を付けた政権である。

     

    歴代政府の予備妥当性調査免除の現状

    盧武鉉政権 1兆09075億ウォン

    李明博政権 60兆3109億ウォン

    朴槿惠政権 23兆6161億ウォン

    文在寅政権 29兆5927億ウォン

    (『ハンギョレ新聞』掲載の資料)

     

    文政権は、すでに朴槿惠政権を上回る予備妥当性調査免除の事業を承認する方針である。最終的には、李明博政権を上回る金額が想定されているという。こうなると、文政権は最大の「土建国家」経済に落込んだと言える。

     

    (2)「2017年8月、政府は2018年度予算案を発表し、SOC予算を2017年(22兆ウォン)に比べ14%(3兆ウォン)も削減した。「大規模なSOC投資は行わない」という大統領選公約を守ったのだ。しかし、昨年2月から就業者数の増加幅が10万人台を下回り、7月と8月には5千人と3千人に激減する雇用低迷が続くと、政府は「予備妥当性調査免除」カードを切り出した」

     

    文政権は「土建国家」経済を批判して、「所得主導経済」に踏み切ったが、韓国経済はガタガタになっている。背に腹はかえられず、これまで批判してきたインフラ投資に大きく依存する。ならば、これまでの批判は何だったのか。文政権は、確固たる裏付けのある政策に乗らず、あやふやな雲を掴むような「最賃大幅引上げ政策」に乗って、国民ともども奈落の底へ落込んだ。死んだ政権である。


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    米中貿易協議は大きく進展している模様だ。米中双方が、合意を必要としている事情を抱えていることが要因である。とりわけ、中国経済が深刻な事態にあること。米国は、大統領選を控えて、景気を維持しなければならぬという事情がある。

     

    『ロイター』(2月22日付)は、「米中、3月にも首脳会談、通商協議継続し合意期限延長へー米大統領」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は22日、米中は貿易戦争終結に向け合意に至る公算が極めて高いとの認識を示し、合意を得るために3月1日に設定している交渉期限を延長する意向であることを明らかにした。また、中国の習近平国家主席と3月にも会談する見通しを示した。米中は21日、ワシントンで閣僚級の通商協議を再開。追加関税の発動期限を3月1日に控え、貿易戦争終結に向けた合意を目指している」

     

    トランプ氏は、合意を前提に3月1日の交渉期限を延長とする意向を示した。この延長は、中国側の要請であろう。中国が、米国に譲歩を求めて優位な交渉をしたという「アリバイ」づくりと見られる。中国国内には、根強い妥結反対論もあるのでそれを意識している。

     

    (2)「トランプ大統領はこの日、中国の劉鶴副首相らと協議。ホワイトハウスで記者団に対し、進展が見られているため、今回の協議を2日間延長すると表明。『ディール(取引)が成立する公算が大きいとの感触を双方が得ている』と述べた。また、習主席と間もなく会談する見通しだとし、自身と習主席との間で通商を巡る最大の決定を行うと表明。会談は3月に、米フロリダ州のリゾート施設『マー・ア・ラゴ』で行われる公算が大きいとの見方を示した。中国の劉副首相は、習主席の書簡をトランプ大統領に届けたことを明かした。習主席は書簡で交渉で大きな進展が見られたとし、両国が譲歩に向け一段と取り組むことを望んでいるとした。このほかトランプ大統領とムニューシン財務長官は、通貨に関して強固な合意をまとめたとも明らかにした」

     

    米中首脳会談について、今後のスケジュールがここまで決まってきたこと。習氏の親書が届けられたこと。通貨問題(元相場安による抜け穴防止)で中国の合意を取り付けたこと、などを見れば、すでに大筋合意に達している感じだ。

     

    (3)「ただ、トランプ大統領は、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が中国との合意の枠組みを覚書(MOU)の形で取りまとめていることに不満を表明。MOUは短期的なもので、より長期的なディールが望ましいと述べた。ライトハイザー代表はこれに対し、MOUには拘束力があると指摘した」

     

    トランプ氏とライトハイザーの間で意見の食い違いが見られる点は、警戒すべきであろう。トランプ氏は、決着を急いでいる。ライトハイザー氏は、中国に「食い逃げ」されないように覚書(MOU)作成にこだわっている。もし、この点が無視されると、ライトハイザー氏

    が土壇場で辞任するという大波乱が起り兼ねない。

     

    中国は、このトランプ氏とライトハイザー氏の離間を策しているかも知れない。ライトハイザー氏の強硬姿勢に泣かされてきただけに、中国が仕掛ける最後のワナとも見られる。トランプ氏が「ディール」という甘い言葉に酔って、覚え書きという「証文」を中国から取らないと、再び、だまし討ちに遭うかも分らない。トランプ氏の真価が問われる場面だ。トランプ氏は、勝利宣言して株価を押上げることを夢見ている。あまりそれにこだわると、落し穴になろう。

     

     


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    1月の「社会的融資総量」は、1年半ぶりの伸び率になった。2月の春節を控え、大量の資金引き出しに備えて万全の体制を取った結果である。万一、銀行で預金を下ろそうとしたが、現金がなかったという事態が起ると、一気に信用不安に陥る瀬戸際にあるからだ。

     

    「社会的融資総量」とは、中国独特の概念で、次のような内容である。

        銀行融資

        オフバランス融資(信託融資、委託融資など)

        直接融資(社債発 行、株式発行、ノンバンク融資など)

    特に銀行を介さないオフバランス融資、いわゆるシャドー バンキングを経由した資金供給を捉えている。シャドーバンキングの存在が大きい中国では、ここに関心が集まっている。

     

    企業や個人の資金調達総額を示す「社会融資総量」残高は1月末で前年同月比10.%増えた。伸び率は昨年12月末より0.6ポイント拡大した。伸び率が拡大するのは17年7月以来のこと。このように増加に転じた裏には、中国人民銀行(中央銀行)の並々ならぬテコ入れがあった。

     

    第一は、預金準備率の引き下げである。1月に2回に分けて計1%引下げ13.5%にした。これは2008年のリーマンショック時を下回る。この事実が物語るように、中国経済を取り巻く環境は、当時よりも悪化しているという当局の認識を表している。

     

    第二は、銀行が不良債権を抱えて資本勘定の毀損が著しいことへの対策である。銀行は、永久債というもっとも条件の悪い債券発行に追い込まれているが、買手がいないので中国人民銀行が買い取るという事態になっている。

     

    日本の平成バブル時に、体力の落ちた金融機関は「日銀特融」を受けた。中国人民銀行も同じ羽目に追い込まれている。不動産バブル崩壊の何よりの証拠だ。中国人民銀行の潘功勝副総裁は19日、国内銀行の永久債発行を一段と支援するとの考えを示した。それだけ、銀行の資本勘定が痛んでいるのだ。

     

    第三は、背に腹は変えられず、一度は絞り込んだシャドーバンキングに再び資金を流していることである。高利資金が、民営企業やインフラ投資に回る事態は、従来とまったく変っていない。いくら緊急事態といえども、中国の信用機構に何らの改善も見られず、その日暮らしにあえいでいる様子が分る。

     

    『ブルームバーグ』(2月21日付)は、「中国首相、銀行に長期融資の増加呼びかけ-過剰な流動性供給は否定」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の李克強首相は短期貸し付けの急増に伴うリスクを警告し、銀行は実体経済への長期貸し付けを増やすべきだと主張した。李首相は20日、国務院の会合で発言。国務院がウェブサイトに掲載した発表文によると、首相は中国の慎重な金融政策に変更はなく、政府が経済を過剰な流動性で『あふれさせる』こともないと述べた」

     

    李首相の発言は、次のように要約できる。

        短期貸し付けの急増に伴うリスクを警告

        銀行は実体経済への長期貸し付けを増やすべし

     

    短期貸出は、在庫手当など運転資金を意味する。長期貸出は、設備投資資金である。だが、今年は、設備投資循環(10年)のボトム期に当っている。過去の過剰投資の調整期に当るので、新規設備投資は出るはずがない。中国最高指導部は、こういう景気循環の認識を持たなければダメだ。これが、計画経済に見られる最大の弱点である。再言すれば、今年の設備投資は沈滞したままである。詳細は、私の「メルマガ21号 中国、『9の付く年』必ず波乱、今年も何かが起る!」で説明した。

     

    (2)「李首相は、『中国の最近の金融政策については、市場参加者を中心に外部から総じて肯定的な評価を得ているが、これは量的緩和なのかとの疑問も浮上している』と述べた上で、『慎重な金融政策を変えてはおらず、今後変えることもない。われわれは経済をあふれさせることには断固反対だ』と続けた。中国は人民銀行(中央銀行)が1月に、市中銀行の預金準備率を合計1ポイント引下げ、経済全体のファイナンス規模は同月に市場予想を上回る伸びとなっていた」

     

    中国は、金融の量的緩和に入ることをはっきりと否定している。病人が、重湯を飲んでいる状況にある以上、「過食」が健康を害すると同様に、金融緩和が実物投資に回らず、不動産投機に回ることを警戒している。純然たる市場経済であれば、不動産投機の咎めは不動産価格の下落に現れる。中国は、それが怖くて下落を管理している。これは、不動産の過剰在庫整理を遅らせるだけである。中国経済の回復が、それだけ遅れるのだ。こういう認識がないから、価格下落に歯止めを掛けるという愚かなことをしている。膿をためて、切開手術を遅らせているに等しい間違いである。

     


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    中国の国際感覚は、時代遅れである。トランプ氏は、大統領選で対中国関税引き上げを連呼していたが、まさか実現しまいと高かをくくっていた。現実は、津波のような高関税率が掛けられ、卒倒しそうな事態に直面している。貿易戦争の当初、中国は米国に対して超強気で対抗したものの、逆に米国の怒りを買って動きがとれなくなっている。誤算の連続だ。

     

    中国は苦し紛れに、米国案に合意して置こうという考えが出始めているという。来年の大統領選は、トランプ氏の評判が悪いことから「再選されまい」と踏んでいる。となれば、中国が一時しのぎで貿易戦争に終止符を打つ選択をする。こういう憶測が出てきた。次期大統領選は、民主党候補が当選すると期待しているのだ。

     

    果たして、そうなるだろうか。仮にトランプ氏が敗退して、民主党候補が大統領に返り咲いたとして、中国へ宥和姿勢を取るだろうか。

     

    『ロイター』(2月22日付)は、「トランプ後も終わらない中国の貿易問題」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「現在の米中貿易協議でトランプ政権が求める厳しい条件を受け入れたとしても、トランプ氏が来年の選挙で敗れれば、一切なかったことにできるのではないか、と中国側は算盤をはじいている。中国はたとえ不利な条件で合意しても来年の選挙で別の米大統領が誕生すれば、そうした条件の撤回は可能だと期待するようになっている、ところが野党・民主党の大統領候補指名が有力視される人物、例えばシェロッド・ブラウン上院議員やバーニー・サンダース上院議員らもまた、対中強硬派なのだ」

     

    民主党は保護貿易。共和党は自由貿易というのが、長い歴史の中で示された傾向である。民主党は、労働者が支持基盤であることを忘れてならない。これから見ると、民主党政権になったから中国の期待する線に戻るとの期待は的外れ。中国は、より厳しい要求が突付けられよう。

     

    (2)「米民主党の多くの急進派は、トランプ氏の強腰を支持しており、対中貿易問題は与野党の足並みが揃うめずらしい分野であることを示している。ブラウン氏もサンダース氏も、トランプ氏による中国製品への関税適用に賛成した。やはり民主党の大統領候補指名争いで一目置かれているエリザベス・ウォーレン上院議員は、これらの関税は米国の通商政策改善に必要な取り組みの一部だと発言。ブラウン氏に至っては、トランプ氏の関税発動権限を制限しようとする共和党の一部議員の動きを阻止したほどだ」

     

    民主党の左傾化は、中国との対決を鮮明にすることもあり得る。かつて、毛沢東はニクソン大統領に「民主党より共和党の大統領に期待していた」とリップサービスした。民主党は、「屁理屈」を言うので、毛沢東は好きでなかったようだ。現在の中国共産党幹部は、勉強不足である。

     

    (3)「こうした急進派は、民主党を左傾化させつつある。比較的穏健派だったカマラ・ハリス上院議員でさえ、大統領選出馬を表明して以降、国民皆保険制導入などよりリベラル色の強い政策を掲げるようになった。ハリス氏をはじめとする中道路線の候補は今後、指名争いを勝ち抜くために貿易問題でも強硬姿勢にならざるを得なくなるだろう。2016年にヒラリー・クリントン氏が、サンダースの挑戦に対抗する上で自由貿易協定への支持撤回を迫られたのと同じように」

     

     

    クリントン氏は当初、TPP(環太平洋経済連携協定)に賛成していたが、途中から反対に回った。この経緯は、急進左派のサンダース氏の主張に引っ張られた結果である。

     

    (4)「中国が直面している問題は、米国に限った話ではない。欧州と日本も知的財産を盗まれたり、技術移転を強要されることに不満を募らせている。そのため米国と協調し、中国により厳しく対処する方法を含める形で世界貿易機関(WTO)の改革を進めているところだ。中国としては、どちらを向いても困難な貿易環境から逃れる道は見出せない。

     

    日米欧は、強固な連帯感で結ばれている。中国が、この中に割って入ることは不可能である。同じ価値観で結ばれている強味を知ることだ。習氏の戦略は、巨大軍備を保てば世界覇権を握れる、という軍事国家意識である。これは、中国を統一した秦の始皇帝的発想だ。中国国内は同じ価値観であるが、世界は多種多様である。習氏は、この違いを無視して世界覇権の夢に溺れている。中国の価値観では、世界統一が不可能なのだ。


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    中国新疆ウイグル自治区では、中国政府によって300万人以上の人々が強制収容されている。ウイグル族を「民族浄化」しようという、恐るべき犯罪行為だ。民主世界は厳しく糾弾している。

     

    イスラム世界は、この同胞に降りかかった災難について見て見ぬ振りをしている。イスラムの宗派間の争いは深刻であるが、新疆ウイグル自治区で起っている悲劇になぜ、声を上げないのか。アラーの神は許すだろうか。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月22日付)は、「中国のウイグル族迫害、傍観するイスラム世界」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ウイグル語を話すウイグル族の苦境は現在、深刻化している。中国政府は新疆ウイグル自治区のイスラム文化を一掃し、中国人と同化させることを目指している。国連の報告者によると、最大100万人ものウイグル族やその他のイスラム教徒がネットワーク化された「過激思想対策のためのセンター」に収容されており、さらに200万人が強制的に「政治・文化的再教育キャンプ」に送られているという」

     

    新疆ウイグル自治区では、300万人以上が強制収容所に入れられている。これほどの人権無視の残酷な事件があるだろうか。中国は、こういう阿漕なことをやりながら、世界覇権を目指しているのだ。

     

    中国政府は、IT機器を多用して民衆を管理するノウハウを蓄積しつつある。世界中にファーウェイ製品を設置して、世界を「一元管理」するというとてつもない構想が練られているに違いない。新疆ウイグル自治区の強制収容所は、その準備作業の一つであろう。

     

    (2)「トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、中国政府が2017年に開始した新疆ウイグル自治区の弾圧に対して、自ら声を上げてはいない。他のイスラム諸国の指導者もほぼ一様に口をつぐんでいる。これは、パレスチナ人に対するイスラエルの扱いや、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの危機的状況について、イスラム諸国が一貫して非難を続けているのと対照的だ。新疆ウイグル自治区での組織的な迫害について、トルコ政府は今月に入ってようやく「人道的に恥ずべき行為」との反応を示した。この例外的な非難のコメントは、外務省報道官の声明という形をとっており、エルドアン氏がしばしば行う、イスラム教の大義に関する世界に向けた感情に訴える発言のような重みはなかった」

     

    イスラム諸国は、「ダブルスタンダード」である。中国におけるウイグル族虐待については沈黙して語らない。だが、他国におけるイスラム教信者への弾圧に対しては、強い抗議の声を出す。これは、どう見てもおかしなことだ。中国に対しても強烈な抗議と、ウイグル族解放という名での「実力行使」をしてもおかしくない状況である。現実は、黙して語らずである。

     

    (3)「こうした変化の説明は容易だ。「一帯一路」構想による大規模な投資戦略と、拡大し続ける軍事・技術面の影響力を背景に、中国がイスラム世界、そして全世界においても、あまりにも中心的役割を果たすようになったため、ウイグル族の大義は重視されなくなったのだ。米国の外交政策が予測不可能な現状において、イスラム諸国が保険として中国に接近している状況では、こうした傾向は特に強まらざるを得ない「中国は、その経済力と政治力を使って、イスラム世界を黙らせることに成功した」と言われているほどだ」

     

    米国がはっきりと抗議すれば、イスラム世界も米国の支援があると見て、中国へ抗議するだろうと指摘している。確かにそういう側面はある。米国自身が、中国へ本腰を入れて制裁を加えるくらいに立ち向かう必要がある。

     

    (4)「中国の人権問題を検討するため国連が11月に開いた会合では、批判の声は主に欧米の民主主義諸国から示され、サウジアラビア、パキスタン、バングラデシュなどのイスラム諸国は中国政府を褒めたたえた。パキスタンのイムラン・カーン首相は、1月にテレビインタビューでウイグル族の扱いや収容キャンプについて質問された際、自国の国境のすぐ先にある新疆ウイグル自治区について「正確な状況」を把握していないという決まり文句を繰り返した」

     

    イスラム各国は、中国の経済力の前に中国批判を封印せざるを得ない。情けない現実だ。だが、中国の経済力は、これから「下り坂」一方である。10年後の中国経済を想定したことがあるだろうか。内政は大いに乱れているはずだ。高齢化の進行とともに、年金を貰えない国民が大量に増えくる。人民解放軍の退役兵の年金不足は、すでに深刻な事態に入っている。

     

    膨大な軍拡費用と年金財源が両立できず、しわ寄せは広く年金財源枯渇をもたらすであろう。その時、退役兵士と民間人が手を組んで、騒ぎ(主張貫徹)を起こす可能性が高いと見る。習近平氏が、被告席に立たされることも妄想とは言えまい。中国の歴史は、こういう繰り返しである。


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