韓国は、8人の長官(大臣)の交代人事を発表した。先の米朝会談決裂を事前に把握できなかった外交・安保のトップは、予想外にも留任となった。韓国メディアからは強い批判が浴びせられている。いずれも、実績より文大統領からの「受け」が良かった結果と見られている。
韓国の外交・安保トップの能力不足問題は、日本の河野外務大臣が、米朝首脳会談直前、「進展は難しい」という情報を得ていたことを日本の国会で答弁して明らかになったことも影響している。
「河野外相が8日、2回目の米朝首脳会談に関し、米国側から事前に進展は難しいという言葉を聞いていたと伝えた。NHKなどによると、河野外相はこの日の衆議院外務委員会で「(米朝首脳が)合意に至らなかったことは残念だが、事前の実務協議の段階で『なかなか進展は難しい』ということを日米で共有していた」と明らかにした。『中央日報』(3月9日付け)が伝えたもの。
米朝首脳会談について、日米は情報を共有していた。だが、韓国は蚊帳の外にいたわけである。韓国は、日本以上に情報収集に動かなければならない立場であるにもかかわらず、こういう結果になった理由は何か、だ。米韓関係が冷え切っている点が第一に想像できる。米韓が共同して北朝鮮に当らなければならない局面で、韓国は南北融和に大きくカジを切ってしまい、協調関係を乱している。
文大統領は、米朝首脳会談の失敗を深刻に受け止めれば、外交・安保のトップを変える人事を行なうはずだが続投させた。真意が訝られているのだ。
『中央日報』(3月9日付け)は、「理解しがたい韓国政府の外交安保ライン人事」と題する社説を掲載した。
(1)「昨日の内閣改造で最も残念なのは、問題が多い外交・安保ラインに手を加えずほとんど留任させた点だ。2017年5月の文在寅(ムン・ジェイン)政権発足と同時に起用された康京和(カン・ギョンファ)外交部長官と鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は1年10カ月間の在任期間中、情報力と判断力が不足して非核化や対日関係などで少なからず外交的失敗をしたという評価を受けている。特にベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談を控え、2人は会談当日まで米国などパートナーとの情報共有が十分でなく判断を誤ったと伝えられた。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は会談の結果を楽観し、文大統領が米朝首脳の署名式をテレビで見守るイベントまで準備していたという。これは2人に相当な責任がある」
康京和外交部長官は、もともと外交官出身でなく、国連の通訳官であった。英語はネイティブ並みで見事である。だが、「英語の専門家」であっても外交は素人に過ぎない。常に、批判が絶えず、内閣人事のたびに更迭の噂が出る人物だ。米国要人の懐に飛び込む、情報をかき集める能力には不足があるのだろう。
(2)「ワシントンの雰囲気は尋常でない。米上院の対北朝鮮政策を主導する外交委員会のガードナー東アジア・太平洋小委員長は先日、「今は北朝鮮が非核化するまで最大限の圧力を追求する時」とし『これは、平壌(ピョンヤン)の行動に変化がない中でも南北協力を熱心に追求しようとするわが友人の韓国に送るメッセージ』と述べた。北朝鮮がミサイル基地復旧の動きを見せる中で経済協力のアドバルーンをあげている韓国政府に警告したのだ」
韓国政府の、南北交流事業への熱意はきわめて強い。これをテコに国内景気立て直しという「一石二鳥」を狙っている。この政治的な思惑先行が、米韓関係悪化の主因である。米国の韓国への感情は、怒りに変っている。
(3)「与党はハノイ会談の決裂後、『文大統領が米朝間で仲裁者の役割をすべきだ』と声を高めてきた。しかし米国との疎通で問題点を表した外交部長官・安保室長は留任させ、制裁でなく経済協力を主張する人物を統一部長官に起用すれば、仲裁どころか平壌の誤った判断とワシントンの疑心をさらに招いて事態がこじれてしまう。韓国政府はワシントンと国際社会の一致した対北朝鮮圧力基調を直視し、対北朝鮮政策の基調を現実的に修正する必要がある」
文大統領自身が、北朝鮮の核放棄の判断を間違えている。金正恩氏の発言を鵜呑みにしており、北に核放棄させることがいかに難しいか、その認識がゼロなのだ。こういう大統領の下に付く外交・安保ラインだから、この程度の「軽量人事」でお茶を濁しているのであろう。要するに、似たもの同士なのだ。