勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年03月

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    韓国経済は、文政権による現実無視の最低賃金の大幅引上げによって悪化の一途を辿っている。経済協力開発機構(OECD)は7日、韓国の経済成長率予測値を当初の2.8%から2.6%に引き下げている。信用格付け会社のムーディーズは2.1%という厳しい予測をするにいたった。

     

    景気悪化予測の理由が明らかである以上、最低賃金の大幅引上げを手直しして、国民の不安を和らげなければならない。それが、政治の務めのはずだ。文大統領の関心は、南北問題に向いたままである。なぜ、厳しい経済の現実を見て、改善策を講じようとしないのか。「雇用政権」という看板を掲げて発足したはずの文政権は、皮肉にも「雇用破壊政権」に成り下がった。

     

    文氏が、最低賃金の大幅引上げの修正に踏み切らない理由は、自らの支持基盤である労働組合との暗黙の約束を破る結果になるからだ。文氏を大統領にまで押上げた最大の功労者は、労組と市民団体である。朴槿惠・前大統領弾劾運動の起爆剤となり、大統領選挙で大車輪の運動を展開してくれた。そういう支持団体の要望に反する政策はできないのだろう。だが、庶民の受ける被害は、日々の生活にまで及んでいる。貴族労組の賃金をさらに押上げ、日雇いやアルバイトで、その日を暮らす庶民の生活を犠牲にしている政策だ。それでも心は痛まないのだろうか。

     

    『朝鮮日報』(3月8日付け)は、「経済実験の結果報告、見たくないと目をそらす文大統領」と題する社説を掲げた。

     

    (1)「(韓国の各)官庁は、国務総理室(首相室)に業務計画書を提出し、首相が3月中旬以降に大統領に報告を行うという。通常は1月に行う新年の業務報告が3月まで遅れたのもおかしいが、対面報告ではなく、書面報告の形式を取るのも例がない。政府の業務で経済や市民生活よりも重要なものがあるというのだろうか」

     

    (2)「前日には企画財政部が大統領報告を行った。生産、投資、雇用のてこ入れなど重要な政策が含まれている。しかし、経済副首相すら大統領に会えず、書類提出だけで済ませた。企画財政部の書面報告は既に発表した対策の焼き直しばかりだ。これまで文在寅大統領が対面で報告を受けたのは、昨年下半期の内閣改造で閣僚が交代した教育部、国防部、環境部、雇用労働部など7官庁だけだ。国民の生活問題を担当する経済官庁の大半は対面報告から除外された」

     

    首相が、各官庁の業務報告を文書でまとめ、それを大統領に報告するという。一見すると、そういう業務の流れかと納得しがちだが、現在の韓国経済の置かれた状況から見て、文書で報告して済む段階でない。担当大臣である経済副首相すら大統領に会えず、書類提出だけで済ませたとは一体、どうなっているのか。鳩首、協議して最善策を講じるべき緊急課題である。日本であれば、首相官邸に関連大臣が集まり直接、協議する課題である。文政権は、文書で報告させて、関連大臣(韓国は長官)から事情を聞き、相談することはないというのだ。

     

    (3)「企業の活力が低下し、上場企業の売り上げが減少している。強硬な労働組合は自分たちの天下が訪れたかのように振る舞っている。貧困層の勤労所得は37%減少した。目を疑いたくなる数字だ。自営業者は生死の分かれ道に立っている。全て現政権が行った経済実験の結果だ。自分たちの過ちで経済のあらゆる分野に警告ランプがともっているにもかかわらず、責任者である大統領が報告も受けていない現実を国民はどう理解すべきなのか。おかしな実験で経済が崩壊すると、それは見たくないと目をそらしているのだろうか。到底納得できない

     

    経済だけは副首相である。それだけ経済問題が重視されている証拠である。だが、失業率が09年の経済危機当時に匹敵する状況でも、文氏は副首相と面談せず文書で済ましたのだ。会えば、何らかの対策を打ち出さざるを得ない。最低賃金の大幅引上げは、労組の手前もあり手直しできない。そこで、財政資金でアルバイトの長期雇用という目先の策で逃げている。原因である最賃の大幅引上を修正しない限り、問題は解決しない。それを回避するために、副首相と面談しないで文書で済ましているのだろう。これでは、韓国経済は、さらに悪化して当然である。

     


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    習近平氏は、5日からの全人代をどのような気持ちで迎えたただろうか。習氏は1月、党幹部に対して「7つのリスク」と称し強烈な危機感を訴え、幹部に共同責任まで問うたという。しかし、習氏は最高意志決定権を握っており、習氏に最高責任があることは明白。企業でも、社長に意思決定権がある以上、最終責任は社長が負うべきものだ。習氏は命令を下すが、責任を部下に取らせる。これでは、将たる器でないことを証明するような話である。

     

    習氏は、経済危機である現在、その真価が問われている。軍拡に夢中になるよりも、内政充実に進まなければ、現在の経済危機は政治危機へ転化する恐れが強い。注意すべきは、不動産バブル崩壊後の経済停滞は不可避である。それは、日本経済がすでに経験済みだ。一帯一路や軍拡に資金を使うより、国民生活の充実こそが、最も重要な政策選択であろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月7日付け)は、「米中貿易合意、中国が切望する真の理由」と題する寄稿を掲載した。

     

    筆者のジョナサン・コラッチ氏は中国や日本に関する著述が多く、著書に「China Mosaic」「At the Corner of Fact & Fancy」などがある。

     

    (1)「中国の習近平国家主席は2012年にトップの座につくと、直ちに臨戦態勢に入った。習氏は自身が掲げる「チャイナドリーム(中国の夢)」構想について「中華民族の偉大な復興」だと定義付けし、外国の侵略者による屈辱の歴史、すなわちアヘン戦争や外国の統治領、日本による占領などを学校で子供たち一人一人にたたき込んだ。人心を掌握した習氏は、苦もなく共産党の「核心」に自らを指名し、任期上限を撤廃した。改正された党規約には「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」という指導理念が盛り込まれた」

     

    習近平氏は、民族主義者である。内政充実よりも外延的発展を重視している。これは、「中華民族の偉大な復興」という時代めいた言葉の中に現れている。中国が、帝国主義的な発展を志向していることは疑いない。この延長線上に、一昨年秋の「世界覇権論」が出てきたものだ。帝国主義的発展は、植民地論につながる危険な思想である。この季節外れの発言が出てきた点に、習氏の政治的な限界を見る思いがする。

     


    (2)「ここにやってきたのが、米国の関税措置を引き金にした中国の景気減速だ。現実を政治スローガンで取り繕うことはできない。中国・西南財経大学の甘犁教授は、国内で6500万戸のアパートが空室のままだと指摘。「われわれは既に難しい経済状況にある。減速すればさらに悪化するだけだ」。中国政府が、ドナルド・トランプ米大統領との貿易ディールを切望するのは無理もない。もし中国経済がこれ以上ぐらつくならば、習氏の脳裏を離れない懸念、すなわち「不安定」に直面せざるを得なくなる。「中国の夢」が揺らぎ、中国の資金力が衰える中で、習氏が国民の機嫌をとり続けるためには並々ならぬ努力が必要となる」

     

    中国は、国内に6500万戸のアパートが空室のまま、さらに不動産開発することの無益を考えるべきだ。景気への即効性だけを考え、インフラ投資に資金投入すれば、さらに債務を増やすだけで、信用機構への負担が増すばかりである。要するに、中国経済は二進も三進も行かない袋小路にはまり込む。ここは戦線整理の段階だが、選挙で選ばれた政権でないから、景気失速=政治不安に直結する脆弱性を抱えている。こうなると、民主政治の有難味が嫌と言うほど分る。それを言っても、今は繰り言でしかない。

     

    (3)「国庫が乏しくなる状況では、巨額投資が必要な中国の2つの大規模プロジェクトの再評価と規模縮小は避けがたいだろう。一つは広域経済圏構想「一帯一路」だ。当初の狙いは中央アジアや中東、欧州にまで中国の影響力を広げることだったが、今では世界規模に拡大している。もう一方の「京津冀協同発展」は、北京市・天津市・河北省(京津冀)を1億人の住むメガロポリス(巨大都市圏)に発展させる計画だ。中国がすでに数百億ドルをつぎ込んだ「一帯一路」は各国の強い反発に遭っている。スリランカやエクアドルなどは今や、中国が仕掛ける「債務のわな」は仮面をかぶった植民地主義だとみなしている。仮に中国の経済成長がこの先も停滞すれば、習氏は壮大な構想を後回しにして生活の質の向上を優先するかもしれない。それこそ中国の庶民が最も切望することだ

     

    「一帯一路」は、壮大な資金の無駄使いである。資金貸付先国家を「債務漬け」にして、中国の衛星国にでもするつもりでいたはずだ。腐敗政権に賄賂を贈り、相手国経済に見合わない建造物を建設して、植民地化する計画であった。この目論見は、相手先国民から拒絶されている。賄賂を掴まされた政権は、次々と選挙に破れている。こうして、中国の目指した「新植民地政策」は、失敗に終わったと見て良い。今後、中国の経常収支は赤字化が予想されており、「一帯一路」に回す資金はなくなるだろう。こういう中で取るべき政策は、外延的発展政策を止めて、自国民を大切にする「内政充実」策に戻ることだ。


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    ラオスと言えば、中国と密接な外交関係を結んでいるが、国民から見た中国資本は警戒の的である。言葉巧みに農地を取り上げる術に長けているからだ。ミャンマーでも高速道路建設条件として、道路の両側500メートルの土地を無償提供せよと要求。結局、破談になったケースがある。ともかく、中国企業の土地への執着が強い。値上がりを見込んでおり、転売して巨額の利益を狙っているのだろう。

     

    中国企業が、土地に異常な関心を持つのは、これまでの不動産バブルで「土地は儲かる」という悪知恵がついてしまった。ラオスでは、中国資本がいかなる甘言を弄して土地収奪に出てくるか分らない、と警戒しているのだ。中国は、国も企業も警戒対象である。

     

    「大紀元」(3月6日付け)は、「ラオス住民、中国資本の観光開発に強く反対、現地調査が無期限延期に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「風光明媚なラオスの村落で持ち上がった中国資本の大規模開発は、住民や現地観光業社の強い反対で、無期限に延期された。1月中旬、中国の開発会社は東南アジアの人気観光地バンビエンを囲む、3つの村で初期調査を行った。同地はラオスの首都ビエンチャンから北へ車で約4時間のところにある。「会社は村人の敷地や土地を調査しようとした。これに反対する村人たちと言い争いが起こった」「この騒動は地域政府当局者が仲裁に入って、ようやくおさまった」と匿名者はRFA(ラジオ・フリー・アジア)に語った」

     

    ラオスの国際収支は、経常収支、貿易収支、所得収支などがすべて赤字だが唯一、サービス収支が2億ドルほどの黒字である。海外からの観光客の落とすカネが黒字を生んでいるのだ。こうなると、風光明媚な景色は何物にも優る資源であり、大切に守らなければならない資産であろう。

     

    この貴重な資源を、中国資本に荒らされたのでは、元も子もなくしてしまう。韓国の済州島で、中国観光資本が大風呂敷を広げて観光開発すると申入れたことがある。地元では、大きな期待を掛けたが一向に工事に着手する気配がなかった。やがて持出してきた条件が、土地の無償提供。地元では、中国の狙いが土地をただで手に入れることにあることに気付き、契約を破棄した例もある。中国資本は、愛想良く接近してくるが油断できない相手だ。ラオスの村人は、それを見抜いたのだろう。

     

    (2)「3村にまたがるこの調査は、中国企業の「ラオス・バンビエン新地域開発会社」による開発計画の影響を受ける22村のうちの一部に過ぎない。この中国企業は2018年、ラオス政府とバンビエン地域開発の覚書を交わした。現地メディアによると、計画は3段階で総計55億米ドルを投じて、5万人の雇用を創出するという。村長の1人は次のように述べた。「多くの村民たちは、中国の会社による調査を望んでいない。皆、彼らに土地を奪われるのではないかと恐れている。もし住まいがなくなれば、私たちはどこへ行けばいいというのか」。バンビエン現地観光業に従事する人物はRFAに対して、中国の開発企業は虎視眈々と、計画進行のためにできることを模索していると述べた」

     

    中国資本は、開発計画は3段階で総計55億米ドルを投じる。5万人の雇用を創出するという触れ込みである。済州島の開発計画と同じで、地元民が飛びつくような「大袈裟」な計画を持ち出しているように見える。5万人の雇用と言っているが、これだけの大掛かりな事業となれば、全村立ち退きであろう。工事を途中で中止されたら、土地を売った農民の行き場がなくなる。危ない。

     

    (3)「伝えられるところによれば、多くの村民は中国側の測量や調査に協力的ではない。住民は、一連の反対運動は、単に貧しい村人たちによる富裕な開発者への抵抗ではないと語った。人気の観光地でビジネスをする商人や土地所有者さえも、中国の開発者が地域環境に大きな変化をもたらすことに反対している、と彼は述べた。環境維持を考える観光専門家らは、これらの大規模開発が、ラオスにおいて貴重な観光資源である自然の美しさを破壊する恐れがあると指摘する。住民らも、生活環境の変化で混乱がもたらされると懸念している

     

    中国の観光資本が見せつける札束攻勢に、農民・商人・地主のすべてが抵抗している。中国資本がいかに信用されていないか。その証明でもある。


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    現代自動車は、中国の売れ行き不調が続いている。売上高営業利益率は、自動車企業の最低ラインとされる5%を大きく下回る2%台にまで落込んでいる。経営陣の強化など対策を打っているが、効果はこれから。赤字出血が続く中国工場の抜本的対策として、北京にある3工場の一つが廃止予定に上がってきた。

     

    現代自の中国国内での生産能力(年産181万台)に比べると、昨年の稼働率は44.5%にすぎなかった。前年の45.7%よりも低下している。昨年の販売台数は79万台で、前年(78万5000台)に比べ小幅ながら増加した。在庫調整が遅れ、生産が減少しているもの。特に商用車を生産する四川現代の稼働率は10%にとどまった。

     

    自動産業の最低稼働率は60%見当とされている。これから見ると、昨年の中国での工場操業度は大きく下回っている。一時、アジア市場への輸出戦略も練られていたが奏功しなかった。現代自が、このように苦境に立たされているのは、THAAD(超高高度ミサイル網)設置をめぐり中韓政府間で紛争となり、中国から不買対象にされた影響も大きかった。だが、中国の経済制裁解除後も不調が続いている。中国市場不振の根本原因は、品質面で欧州車や日本車に押され、価格面では中国車に押されて競争力が低下したと分析されている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月6日付け)は、「現代自、中国で工場稼働中断検討」と題する記事を掲載した。

     

    現代自動車が中国合弁を通じて運営する北京の3工場のうち1つの稼働を中断する方向で検討していることが6日、分かった。現代自は2017年の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)問題の余波で中国販売が苦戦している。18年の現地工場稼働率は5割以下に落ちており、生産見直しが避けられないと判断したもようだ

     

    (1)「現代自と中国自動車大手の北京汽車集団との合弁会社「北京現代汽車」は、北京と重慶、河北省滄州で合計5つの工場を操業している。このうち02年に稼働した最も古い北京第1工場(年産能力約30万台)の稼働を中断する公算が大きい。現代自関係者が日本経済新聞の取材に明らかにした。同工場の従業員は2千~3千人とみられる。中断の時期については「地元政府などと調整が必要で、確定していない」(関係者)」

     

    現代自は、中国の合弁相手と意思疎通が円滑でないという欠陥も抱えている。合弁相手が一時期、部品納入企業へ大幅な単価切下げ要求を出し、部品納入が止まるという事態まで引き起こした。これは、合弁相手が経理を握るという変則状態によって、生産現場との意見調整ができなかった面が影響した。合弁形式自体にも問題がある。その点が、調整されたのかどうか。

     

    (2)「北京現代の年産能力は5工場の合計で推定約180万台。だが、18年の現地販売は前年比9%減の約75万台にとどまり、ピークの16年と比べて約3割減少した。単純計算による18年の工場稼働率は4割超で、北京第1工場の老朽化した設備の維持費負担が大きな課題になっていた」

     

    北京第1工場は老朽化が激しいので、ここが操業停止の候補工場のようである。中国の労働者は、韓国労働者に比べて勤勉でストライキもないという。そういう協力的な労働者を解雇するのは、情において忍びないものがあろう。ましてや、中国全体で失業者が増えているだけに、工場閉鎖発表のタイミングが難しい。

     

    (3)「現代自は17年に重慶で5つ目の工場を稼働し、韓国の文在寅大統領を現地に招くなど最近まで中国事業は成長の柱に据えられていた。しかし、18年は中国市場全体の新車販売台数が前年から約3%減り、28年ぶりのマイナスになった。THAAD配備を機に広まった「韓国車離れ」の逆風を約2年たっても払拭できず、誤算が続いている」

     

    今年の中国自動車市場は、販売台数の伸び率で前年に続きマイナスが見込まれる。EV(電気自動車)の補助金も絞り込みが行なわれ、来年以降は廃止方向である。中国自動車市場はこれまで、順調そうに見えてきたが減税効果の支えによるものだった。世帯普及率は、限界とされる20%に接近している。日韓とも、20%接近で伸び率が鈍化した。中国も同じ動きが予想される。

     

     


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    独裁国家の経済危機とは、こういうものかという見本が今の中国である。共産党による一党独裁政治ゆえに、共産党に代わる受け皿がない。新たな発想に基づいた政策転換ができないのだ。だから、景気下支えといえば、インフラ投資しか俎上に上がらないという繰り返しである。

     

    中国のインフラ投資資金は、中央政府が面倒を見るものではない。地方政府が適宜、資金調達せよという極めつけの無責任体制だ。地方政府は、やむなく土地売却益(土地利用権販売益)を捻出するというもの。不動産バブルを仕掛け地価を押上げない限り、インフラ投資の資金が集まらない仕組みである。胴元が、賭博を開帳して「寺銭」を稼ぐ図式である。この寺銭が土地売却益である。どう見ても、不健全そのものである。こういう不合理な経済運営で、中国は不動産バブルの蜜を吸ってきた。

     

    今年の経済成長率目標は、6.0~6.5%に設定された。当局は、6.0%成長は絶対に守らないと、失業者増加による社会不安を懸念している。経済危機が政治危機に直結するところが、専制政治の弱点である。そこで、借金頼みのインフラ投資が「全面稼働」する。今年の経済成長だけが眼目で、来年以降にいかなる副作用が出るか。そのことを考えるゆとりさえ失っている。苦し紛れの火事場のような騒ぎに違いない。

     

    『日本経済新聞』(3月6日付け)は、「中国、投資頼み再び、地方は苦肉の公共事業」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は5日開幕した全国人民代表大会(全人代)で「いかなる困難な試練にも打ち勝つ」と6%成長維持への意思を強調した。景気下支えの手っ取り早い対策は投資の拡大で、財政難の地方政府も苦肉の公共事業に動いている。米中摩擦の悪影響も強まるなか、債務を圧縮するはずだった構造改革の逆行は中国をむしばむ。

     

    今年は、最低限6.0%成長を「マジノ線」にして防御したいとしても、来年以降は6%割れが確実である。実際のマジノ線は、ドイツ軍によって突破され、フランス軍は降伏するのだが、中国経済もそのような動きになろう。一時の気休めに過ぎない。

     

    (2)「「早く移転すれば、早く補償を受けられる」。1人当たり域内総生産が上海市の半分ほどの中堅都市、山東省滕州市。郊外にあるれんが造りの家屋やブロック塀に朱塗りで退去を促す文言が大書されていた。「棚改」と呼ばれる老朽住宅の再開発現場だ。すでに街の一部はがれきの山になっている。「近隣の600世帯すべてが追い出される。住み替えは10万元(160万円強)から20万元の持ち出しだ」。新しくできるマンションに入居するにはお金を払わなければならないと、自転車修理店を営む80歳男性は嘆いた。住民から半ば強引に合意を取りつけ、再開発に必要な土地や資金も吸い上げる。財政難の地方政府主導による苦し紛れの公共事業の姿だ」

     

    住民が住んでいる住宅を強制的に追出し、住み替えように用意された住宅にカネを払わせる。何とも無慈悲はことまでやって、GDPを押し上げようとしている。不条理な話である。GDPという冠を守るために庶民を泣かせているのだ。こういうGDPにいかなる意味があるのか。依然として、GDP信仰から離れないのだろう。

     

    (3)「投資拡大は債務を増やす。多くは政府系企業の負債である「隠れ債務」の形をとる。中国の格付け会社、中誠信国際信用評級の推定では17年末の隠れ債務は最大で359200億元。18年も概算ベースで「40兆元を超えた可能性が高い」(汪苑暉アナリスト)。中央が認める「公式」の地方政府債務は18年末で18兆元強。隠れ債務と合わせると19年末には50兆~60兆元に達するとの予想が多い。中国の国内総生産は90兆元を超えたとはいえ、高齢化で社会保障支出が膨らむ将来の足かせになる」

     

    地方債務は、公式・隠れを合計した金額が19年末に50~60兆元、日本円で最大1000兆円に達する。この巨額の債務をどのように返済するのか。中国の合計特殊出生率は未発表のため詳細は不明だ。人口問題の専門家の易富賢氏は、中国政府の人口統計は水増しされた報告に基づいており、実情に即していないと非難するほど。18年の出生率は1.05前後で、人口は既に減少に転じたとする独自の分析結果を公開している。こうなると、労働力人口の低下に伴い、経済成長率は一段の低下となる。返済は不可能である。

     

    それでも、政治的理由で非効率なインフラ投資を行なうとは自殺行為に等しい。独裁政権の恐ろしさはここにある。旧ソ連は、建国満69年で破綻した。中国はこの10月で満70年になる。この先どこまで寿命を保てるか。そういう競争であろう。

     


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