勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年03月

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    韓国のソウルと仁川が、大気汚染ワースト世界1位と2位になった。5日午前、ソウル・光化門広場から約2キロメートルの距離にある北岳山が見えなかったという。 5日連続で微小粒子状物質(PM2.5)をはじめとする粒子状物質が韓国全土を覆っている。この緊急事態で活躍するはずの環境団体が、完全沈黙しているという世にも不思議な現象が起こっている。

     

    韓国紙は、日本のきれいな空気の秘密を解く記事を流し、韓国政府との違いを指摘している。日本は高度経済成長期(1960~80年代)に大気汚染に苦しんだが、地道な対策の積み重ねで現在の環境を保っている。その原動力になったのが、環境団体を先頭とする市民団体であった。これに、関連業界や政府が協力したものだ。

     

    韓国の環境団体や市民団体は、なぜ抗議の声を上げずに沈黙しているのか。それは、彼らが利権集団、猟官集団に成り下がっており、文在寅政権の要職を占めて権力の一角に棲み着いているからだ。この実態こそ、韓国政治がいかに「軽量内閣」であるかを物語っている。

     

    『朝鮮日報』(3月7日付け)は、「大気汚染にお手上げの韓国政府、だんまり決め込む環境団体」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「韓国政府が太陽光や風力発電などに100兆ウォン(約10兆円)を投じると言ったのにもかかわらず、石炭火力発電の割合が2017年の33.5%から2030年は31.6%と変わらないのは、脱原発のためだ。石炭火力を大幅に減らすには、安価で安定した電力を生産できる原子力発電に頼らなければならない。脱原発に固執しながら粒子状物質対策として石炭発電削減を主張するのは矛盾している文在寅大統領は大統領選挙で、「粒子状物質30%削減」を公約した。人工降雨や空気清浄器の設置は、がんになった人に軟こうを塗るようなものだ。学校の空気清浄器設置も必要だが、国民が望んでいるのは粒子状物質の根本的な削減であって、税金を使って空気清浄器を設置することではない」

     

    文大統領は、大統領選で大気汚染の原因である「粒子状物質30%削減」を公約した。選挙目当ての話であった。現在の緊急事態で行なっていることは、人工降雨実権や学校への空気清浄器の設置だという。人工降雨実験は失敗した。文政権の欠陥は、原因を除去せず、財政資金を投じて場当たり的対策でお茶を濁していることだ。

     

    最賃の大幅引上が、失業率を高めると何をしたか。原因である最賃引き上げ幅の修正でなく、失業対策費の増加で約5兆2000億円も無駄金を使っている。大気汚染対策も全く同じことをやっている。

     

    (2)「こうした中、多くの人々が困惑しているのは、粒子状物質が災害レベルに達しているのにもかかわらず、あれほど執拗(しつよう)な環境団体がやけに静かなことだ。韓国最大の環境団体「環境運動連合」は6日、粒子状物質が飛び交う中、ソウル中心部で「核廃棄物 答えはない」という市民宣言式を開催した。今月に入って6日間連続で全国民が「PM2.5地獄」に苦しめられているのに、環境運動連合はデモどころかコメントや声明すら発表していない」

     

    環境団体が市民団体は、社会問題などが起ると、最初に立ち上がって運動を始める。今回のような大気汚染という健康被害を及ぼす事態が発生しても、前記の団体は音沙汰なしである。どうしてしまったのか。この謎を解く鍵は、環境団体のリーダーが文政権で要職を占めているので政府批判できないのだ。完全な「御用団体」である。

     

    (3)「(各環境団体は)国民の健康にとって本当に重要な粒子状物質に対して完全に無視したり、形式的な論評をしたりするだけにとどまっている。その理由を推測するのは難しいことではない。現政権発足以降、各環境団体の出身者たちは『おいしい役職』に就いている。環境運動連合の事務総長を務めた人物たちは現在、首都圏埋立地管理公社の社長や韓国原子力安全財団の理事長をしている。環境正義の事務局長を務めた人物は埋立地管理公社の事業理事、緑色連合の政策委員は原子力安全技術院の監査だ。現在の環境部長官も環境正義で活動していた。これらの人物たちが追い求めているのは環境や国民の健康ではなく『おいしい役職』だ」。

     

    韓国の市民団体は、政治と無関係な団体ではない。政治屋的な側面を持っている。一種の利権屋的な動きをするのだ。猟官運動のために革新派の看板を立てているだけだろう。ここで、連想されるのが、この延長で「反日運動」をやっていることだ。反日=選挙で有利、という図式ができあがっている。環境運動=利権という浅ましい実態が浮かび上がっている。


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    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    中国経済に迫る4つの重力

    ソ連は満69年で没落した

    習氏が掲げた7つのリスク

    韓国経済への波及が現実化

     

    北京では3月5日から、年1回の全人代(国会)が開催されています。全国から集まった代表の宿舎には、今年始めて鉄条網が張られ、厳重な警戒体制が敷かれています。今まで見られなかった現象です。全人代では李克強首相が、最初に政府活動報告を行ないました。その際、横に座る習近平国家主席は李首相と目も合わせない冷たい仕草が写真とともに報じられました。両氏の「不仲」が理由のような内容でした。実際は習氏にとって、厳しい政府活動報告であることに忸怩(じくじ)たる思いがあったのでしょう。

     

    昨年の全人代で習氏は、中国の指導者として絶対的な存在でした。国家主席の「2期10年」の任期制限を撤廃させ、終身支配への道を固めていたのです。「習近平思想」なるものまで掲げて他の追随を許さない立場を固めました。しかし、あれから1年後の現在、習氏を取り巻く環境は大きく変っています。中国経済が、急減速に見舞われているからです。昨年の春から始った米中貿易戦争が、大きな影響を及ぼしたからです。

     

    中国経済に迫る4つの重力

    私は、米中貿易戦争はきっかけに過ぎないと判断しています。それ以前に、中国経済が景気循環上で、設備投資循環(約10年周期)と在庫循環(約4年周期)が重なる下落局面にあることです。さらに、不動産バブル崩壊に伴う過剰債務が、「雪崩」のように覆い被さっています。ここへ、米中貿易戦争が加わりました。要するに、4つの重力が中国経済へ一度に集中して加わったと見るべきでしょう。これでは、中国経済が急減速して当然です。

     

    米中貿易戦争は、3月中に予想されている米中首脳会談で決着の見通しが強まっています。中国経済に加わっている重力の一つが消えるだけです。また、米中貿易問題がこれで「一件落着」ではないのです。中国が、米国との約束を守らなければ、米国は一方的に関税を引き上げること。その際、中国は報復できないという協定ができれば、中国にとって手足を縛られる状態になります。

     

    米中貿易戦争は、中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した2001年以来、WTOルールを破ってきた総決算と見るべきでしょう。中国が、WTOに加盟できた裏には米国の強い支援がありました。それにも関わらず、WTO規則破りの常連国となり、技術窃取するという「悪行」の数々を重ね、GDP2位の経済にまで上り詰めたのです。このまま放置すると、米国の国益を損ねるという切羽詰まった末に起ったのが、米中貿易戦争の本質でしょう。

     

    こう見ると、中国経済の運行軌道に赤信号が灯ったというべきです。WTOルールの完全履行を迫られる中国経済は、従来の速度を落とさざるを得ず「慣性の法則」が働き、大きな衝撃が加わります。「慣性の法則」について、卑近な例で説明します。乗り物が急停止すると乗客は前方に倒れそうになります。乗客は「慣性」によって前に動き続けようとしているのに、乗り物が止まってしまうからです。

     

    中国経済は、改革開放政策(1978年)以来、過剰債務のレールを走ってきました。その結果が、対GDP比で約300%といわれる総債務残高を抱える事態になっています。この状態を改善するためには、債務返済を優先すべく経済速度を落とさざるを得ないのです。習近平氏は2012年の国家主席就任以来、逆に経済成長を優先しました。自らの権力基盤を固めるには不可欠だったのでしょう。これが、現在の中国経済にもたらした成長優先という「慣性」です。急減速によって、その衝撃は倍加されているのです。

     

    ソ連は満69年で没落した

    中国は、今年10月で建国70年を迎えます。中国が手本とした「ソ連」は、建国満69年で崩壊しました。戦争をして敗れ崩壊したのではありません。「ソ連式社会主義」経済が行き詰まったのです。中国は、「中国式社会主義」を標榜しています。中国式社会主義とソ連式社会主義とは、質的にどこが異なっているでしょうか。共通点を上げます。

     

    1.   専制主義

    2.   軍事優先

    3.   領土拡張

    4.   市場軽視

     

    ソ連と現在の中国は、驚くほど一致点が多いのです。習近平氏は、毛沢東崇拝主義者ですから、習近平時代になれば毛沢東=ソ連型経済へ回帰して当然です。私の持論ですが、習近平氏が国家主席にならず、李克強氏がなっていたとすれば、鄧小平→胡錦濤→李克強とつながり、中国は軟着陸に成功したかも知れません。歴史に「if」はありません。(つづく)


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    中国は、環境崩壊で住みにくい国だ。もう一つ、政府が決めたルールに違反すると飛行機や高速鉄道にも乗れない、とんでもない規制が加わっている国である。そのルールとは、薬物所持、脱税、罰金の未払い、交通違反などを社会信用システムの規制対象と定めている一方で、デモの参加やソーシャルメディアでの体制批判の発言も「違法行為」と認定される。本当の狙いは、デモ参加や体制批判の発言を恐れているのだろう。

     

    これだけ国民をがんじがらめにしておきながら、当局の本音部分では民衆蜂起を最も恐れているようだ。1月、中国が500億ドル以上も貸付けている南米ベネズエラで、国会議長が暫定大統領宣言する事態が起こった。これに仰天したのが、中国最高指導部であることが分った。早速、「習近平思想」なるものを勉強させる「御触れ」を出すほど。そう言っては失礼だが、習氏の説教にそれほど御利益があるのだろうか。

     

    こういう弱腰の共産党幹部を見ていると、中国で限界状況が起こったとき、いの一番に逃げ出すのは共産党幹部であることは間違いなさそうだ。弱い犬ほど吠えるというのは、事実かも知れない。

     

    『大紀元』(3月7日付け)は、「中国昨年2千万人超、飛行機などの利用禁止、社会信用スコアで」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国当局が現在進めている『社会信用システム』の下で、昨年、約2千万人以上の国民が「信用スコアが低い」との理由で、航空券や高速鉄道のチケット購入を禁止されたことが明らかになった。独メディア『ドイチェベレ中国語電子版』(34日付)によると、中国社会信用情報センターの記録では、2018年中国当局は、『違法案件の当事者1750万人』に対して国内外への旅行を制限し、航空券の購入を禁止した。また、他の550万人に対して高速鉄道や列車の利用を禁じた」

     

    「社会信用システム」ほど、人権蹂躙の制度は存在しない。国民に選挙権も与えない国家のやりそうなことである。中国では、支配階級は好き勝手なことができると言う暗黙の了解があるにちがいない。話は飛ぶが、韓国でも文政権は同じようなことをしている。政権側は、そのことの矛楯を感じない点も共通している。

     

    儒教社会は、支配・被支配の関係が明瞭であるが、これと関係ありそうだ。儒教の陰陽五行説では、あらゆるものは流転(循環)していると説く。それ故、支配階級になったら好き勝手をすることが黙認されている。しかし、いずれ舞台は変って、時の支配階級は落ちぶれる。共産党幹部が、国民を支配しているのは刹那的なものと自覚しているはずだ。だから、謀反が起こったとき先ず幹部が逃げ出すのは、彼らが「運やツキ」から見放されたと観念する結果だろう。中国史では、民衆が組織的に抵抗すれば、いかに頑丈な組織でもぶち破れることを教えている。その裏には、陰陽五行説があるのだ。

     

    (2)「中国当局は2014年『社会信用システム構築の計画概要(2014~2020)』を発表した。社会信用システムでは、中国全国民の個人情報をデータベース化し、『違法行為』や地方奉仕、社会貢献の有無などで、国民の『信用スコア』を決める。信用スコアの低い国民の名前をブラックリストに載せ、一般公開している。昨年のゴールデンウィーク期間中、安徽省合肥市など10都市の高速鉄道駅では1カ月にわたり、ブラックリスト入りの市民の写真と個人情報を大型スクリーンに映し出していた。今年1月、河北省は現在地から500メートル以内にいるブラックリスト入り人物を検索する、スマートホン向けアプリを開発した。該当者の住所、身分証明書番号、違反内容などを閲覧できる」

     

    ブラックリスト入りした市民は、顔写真が公衆の面前にさらされる。これが、人権侵害に当るという認識がないことに驚かされる。私は、中国や韓国の記事を読んでいて、ビックリさせられることが実に多い。その理由は、儒教という価値観の全く異なる世界の出来事が、普遍的な価値を持ち得ないということだ。中国と韓国は、異質の価値観に支配されている。中国が、世界覇権への野望を持つならば、先ず儒教倫理を捨てることだ。

     

    (3)「国際社会は、中国当局はこのシステムを通じて、14億人の国民に対する監視を強めており、人権侵害に当たるとして強く批判している。ペンス米副大統領は昨年10月、中国の社会信用システム制度について、『ジョージ・オーウェルの描いた超監視社会のようで、人々の生活を含むあらゆる面をコントロールしようとしている』と非難した」

     

    中国社会で生きることを強制される人々には、お気の毒という一言しかない。中国の民衆は、不服従運動でもやって、共産党支配から脱する道を探すしかないだろう。


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    中国が、台湾解放を声高に叫べば叫ぶほど、台湾は危機感を強める。米海軍は、これに呼応して米艦船に台湾海峡を通過させ、中国を牽制するという悪循環に陥っている。

     

    中国政府が、折りに触れ台湾解放を言い募る背景は何か。

     

    中国国内の引締め目的もあろう。国内の経済的な混乱の目を外に向けさせるという、支配者独特の世論操作である。中国経済は、経済情報が統制されている。従来ならば当然、報道されてしかるべきものが隠蔽されている。例えば、環境関連情報は極端に減っている。大気汚染や土壌汚染、水質汚染などはゼロである。これは、国内で報道が禁じられている結果である。国民が気づいた時はすでに遅しで、回復には莫大なコストがかかる。

     

    人口情報も完全遮断である。合計特殊出生率は韓国並みに「1」を割り込んでいるはずだが、関連データの公表がなく不明である。悪い情報は出さず誇大宣伝の時だけは、外部を利用すべく大袈裟に報道する。要するに、国内では悪い情報を排除して「真空状態」にしておき、そこへ台湾解放情報を流して、国民を結束させるというテクニックを使っているのだ。

     

    しかし、中国は大誤算をしている。台湾の武力解放を声高に叫べば叫ぶほど、米台両国に防衛意識を高めさせていることに気付いていないのだ。人民解放軍内部では、「いつでも戦える」と戦意を昂揚させているが、この海軍部隊は実戦経験ゼロである。米台軍に大敗したら習氏の責任問題になろう。

     

    こう見てくると、台湾を攻める、攻めると騒ぎ立てても、現実に武力行使せず、習氏が軍部を手懐けておく手段に使っている可能性もある。敗北を喫すれば、習氏の国家主席の座は飛ぶに違いない。反習近平派も増えている現状を見ると、腑に落ちないことが多すぎるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月7日付け)は、「台湾、米に新型戦闘機の売却要請、計66機、中国反発も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「台湾の国防部(国防省)は6日夜、米国に対しF16戦闘機の売却を要請したと明らかにした。複数の現地メディアは計66機に上る大規模な要請だと報じている。中国は台湾を譲ることのできない「核心的利益」と位置づけており、米台が軍事面での連携を強めれば反発する可能性が高い」

     

    トランプ政権は、「反中」スタッフで固まっている。ボルトン補佐官は、ホワイトハウスに入る前から、親台湾派として行動していた。トランプ政権発足にあたって、米国は台湾関係を重視すべきと種々、献策してきたほどだ。中国の世界覇権論が登場したことが、米国にとって台湾の地政学的位置を一層高めている。習近平氏の「失言」がもたらした米台の親密化である。

     

    (2)「台湾メディアの報道を受け、国防部が「防空能力の強化に向け、正式ルートを通じて米側に新型戦闘機の購入の必要性を伝えた」との声明を出した。報道では「F16V」と呼ばれる新型戦闘機が対象とされる。2017年ごろから中国軍機が台湾本島を周回する軍事演習を活発化し、中国の軍事的圧力は強まっている。一方で米国は2月、軍艦2隻を台湾海峡に派遣し航行させるなど、中国の海洋進出をけん制している。台湾へのF16の大量売却に動けば、米中間の摩擦は一段と激化する」

     

    (3)「戦闘機の売却総額は最大で130億ドル(約14500億円)規模になるとの報道も出たが、台湾の国防部は「臆測だ」と否定した。「装備などにより価格差が出るため、米側からの返答を待って改めて協議する」とした」

     

     戦闘機の購入代金は130億ドルだが、台湾経済にとっては何ら問題なく購入できる規模だ。台湾経済は次の通りである。いずれも2017年現在。

    GDP    5558億4700万ドル

    経常黒字    828億8200万ドル

    貿易黒字    579億8300万ドル

    外貨準備高  4515億ドル

    対外純資産1兆1808億2400万ドル

     

    人口2355万人の経済が、これだけに成果を上げていることは高く評価すべきだろう。中国が、攻め滅ぼせる経済規模でないことを銘記する必要があろう。

     


    ムシトリナデシコ
       


    現在、開催中の全人代における中国当局の発言に、市場は最大の関心を寄せている。李首相は金融緩和しないと発言しているが、1月の貸付け増加ぶりから見て、信用できないと警戒している。

     

    そういう疑問の根拠は次の発言にもある。

     

    中国の李克強首相が5日開幕の全国人民代表大会(全人代)で行った政府活動報告で、住宅は投機対象ではないと呼び掛けていた習近平国家主席の発言が盛り込まれなかった。中国が住宅市場規制の緩和にオープンな姿勢に転じた可能性を示唆した。習氏は2017年の演説で「住宅は住むもので投機の対象ではない」との考えを示した後、この方針が定着していた。その文言が削除されたことで中国政府が景気減速への対応に乗り出す中、不動産規制の緩和を容認するとの観測が今後広がりそうだ。以上は、『ブルームバーグ』(3月5日付け)が報じた。

     

    不動産バブルに火をつけるには、金融緩和が必要である。そこで、中国政府は苦し紛れに「禁断の手」を使うのでないかと警戒されている。

     

    『ブルームバーグ』(3月6日付け)は、「19年は再レバレッジの年に UBS 景気対策で中国の債務増予想」と題する記事を掲載した。

     

    スイスのUBSグループが2019年の中国経済は再び債務増に見舞われそうだと指摘した。景気減速への対応が影響する。

     

    (1)「UBSの中国経済調査責任者、汪涛氏(香港在勤)はこのほどまとめたリポートで、中国の債務総額の対国内総生産(GDP)比が今年、再び上昇するとの見通しを示した。17年は横ばい、18年は低下していた。1月の新規融資は市場予想を上回り、例年に比べて伸びが大きくなった。公式統計で最も幅広い与信動向を示す中国経済のファイナンス規模の伸びは19年に12%前後と、昨年の9.8%から持ち直すと汪氏が分析。一方、インフレ率は鈍化するとみられ、今年の名目GDP成長率は約8%と9.7%から減速する見通しだという。この結果、債務の対GDP比は上昇することになる」

     

    金融市場が、金融緩和を歓迎せず警戒するとは、中国経済が異常事態に突入している証拠である。糖尿病患者に甘い物を食べさせると危険である、という理屈である。1月の新規融資は市場予想を上回り、例年に比べて伸びが大きくなったことが理由である。これについては、2月の春節を控えて潤沢な資金供給をしただけ、という当局の説明もある。実際には、2~3月の金融統計を見なければならないが、市場から警戒の声が出ていることに注目すべきだろう。

     


    (2)「汪氏は、「再レバレッジは短期的な成長率と株式市場にはプラスに働きそうだが、レバレッジと金融セクターをめぐるリスク抑制という中国の中期目標に関する投資家の懸念は高まる恐れがある」と指摘した」

     

    再レバレッジ(負債依存)は、目先は資産価格(株価や不動産)を押上げるが自殺行為である。金融緩和しても、実物投資である設備投資に資金が回る可能性はゼロに近い。予想収益率が下がっている以上、設備投資に踏み切る見込みはないのだ。となれば、余った資金はどこへ流れるのか。株式や住宅の投機資金に化けるだけである。

     

    『ロイター』(3月6日付)は、「出現するか中国の 「灰色のサイ」 試される緩和強化の効果」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「2019年の中国の金融政策方針では、18年の「穏健中立」から「中立」が削除され、「合理的で潤沢な流動性供給」が追加された。全人代初日の5日の演説で李首相は、金融政策について「引き締め過ぎず、緩め過ぎないように維持する」と表明した。だが、最近の金融データは、金融緩和が「穏健」を逸脱し、大胆な緩和に転じたことを示唆する。金融システムから経済に供給されたネット資金量を示す「社会融資総量」は、今年1月に4兆6353億人民元と前年比51%の増加となった。同総量の内数の「新規人民元建て融資」とともに過去最高を記録した。融資の内訳では、企業向け貸出比率が1月に前年比43.3%と大幅に拡大した」

     

     世界の金融メディアが、揃ってここまで警戒し始めている以上、中国政府は不用意に金融緩和に踏み切ると、一斉に「株式は売り時期」と書かれることは避けられなくなった。中国政府にとっては想像もしていなかった「お目付役」が登場したことになる。中国経済への警戒論がこれほど高まると、習近平氏と言えでも手出しができなくなった。

     


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