勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年03月

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    米中貿易戦争が始って約1年経つ。米国の要求が、ほぼ100%実現する形で決着する見通しが強まった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』が報じた。

     

    習近平氏は緒戦、「受けて立つ」と大向こうを唸らせるような見栄を張ったが、結末は全面敗北である。非が中国にある以上、この貿易戦争は長引けば、長引くほど中国が不利になるものだった。中国の民営企業家は、「トランプの言い分が正しい。トランプと友人になれる」と発言するほどだった。習氏の国営企業中心主義が、いかに間違っているかを証明するような話である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月4日付け)は、「米中貿易協議、最終段階入り、3月下旬に正式合意もー関係者」と題する記事を掲載した。

     

    米中貿易協議は合意に向けた両政府の話し合いが最終段階に入っている。中国側は関税の引き下げに加え、米国から輸入する農産物や自動車製品などへの規制を緩和する方向。米国は昨年発動した中国製品への関税の多くを撤廃することを検討している。

     

    にわかに信じられないような内容である。中国経済の現状が、いかに深刻であるかを間接的に物語っている。これが実現すれば、中国では民族派が大きく後退し、経済改革派が実権を取り戻せるのかもしれない。そういう意味で、今回の米中貿易戦争が持つ意味は極めて大きいであろう。

     

    (1)「事情に詳しい関係者らによれば、2月にワシントンで開かれた協議を経て合意内容はまとまりつつある。ただし乗り越えなければならない課題もあるほか、両政府とも相手国に譲歩しすぎだとの反発が国内で広まる可能性がある。一方で事情に詳しい関係者らによると、依然ハードルは残るものの話し合いは進んでおり、327日頃に予定されている米中首脳会談で正式な合意が結ばれる可能性も出てきた

     

    正式な合意となれば、トランプ氏は政治的に大きな得点になる。同時に、それは習近平氏の過激な民族主義に修正を迫る契機になろう。歴史の歯車は、独裁主義の後退を告げるものだ。

     

    (2)「中国は合意の一環として、自動車合弁事業への外資出資に関する規制撤廃に向けた手続きの迅速化を約束する見込み。また輸入車にかけられている15%の関税を引き下げる意向も示している。中国はさらに、貿易不均衡是正を掲げるドナルド・トランプ米大統領にアピールするため、米国製品の輸入量も増やす予定。事情に詳しい関係者らによれば、その中には米シェニエール・エナジーから天然ガス180億ドル相当の購入も含まれている。米国は国内企業、特に国営企業を優遇する中国政府の方針を非難しているが、この点については交渉が継続中。またロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は先週、100ページ以上に及ぶ書類のうち、30ページ近くは知的財産権の保護に関する規定だと話していた」

     

    中国は、早く決着したいという焦りが、米国への譲歩案となっている。中国の経済改革派の勝利=市場拡大を意味している。

     

    (3)「米中の交渉担当者はさらに、米企業からの苦情を解決するメカニズムの構築を目指している。協議中のプランでは、紛争を裁定するため両政府当局者による2国間会合を開くことになっている。話し合いが合意に至らなければ、米国は関税を課す可能性があるとライトハイザー氏は警告している。他の関係者によると、米国側は仮に米政府が制裁を科すとしても、中国は報復しないことに同意するよう求めている。中国側にとってこれは大きな譲歩となる。中国の交渉担当者は19世紀に欧米列強が同国に課した不平等な条約と同じ結果にならないようにしたいと話している」

     

    米国のライトハイザー氏は、強気の交渉である。かつての日本も鉄鋼交渉で、このライトハイザー氏に屈した経験がある。豪腕交渉家である。私は、当初からこの点を強調してきた。ライトハイザー氏を甘く見ていると、中国は大怪我をするはずと。非が中国にある以上、ライトハイザー氏に歯が立たないのだ。

     

    (4)「米中交渉の『ワイルドカード』の一つが、ベトナムで開かれたトランプ氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談が物別れに終わったことの影響だ。米当局者は、提案内容が不十分だと思えばトランプ氏は拒否するということを中国の習近平国家主席が学んだはずだと期待する。その一方で、逆の教訓を得た可能性もあると懸念する。つまりトランプ氏はどうしても成果が必要な状況に追い込まれたということだ」

     

    トランプ氏が、米朝首脳会談で席を立った効果は、米中首脳会談にも影響を及ぼしそうである。トランプ氏は、米中首脳会談でも同じ行動に出ないとも限らない。中国としては、最も避けたい場面だ。事前協議では一点の曖昧さも残さない合意が要求されている。中国には、それだけ負担が増える。

     


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    3月5日から年に1度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕する。米国から突付けられている2000億ドル相当の対米輸出の関税引上げは、延期された。中国にとっては命拾いした感じだろう。予定通り3月2日から引上げられていたら、全人代どころの話でない。トランプ米国大統領が、それとなく「恩を売っている」感じである。

     

    中国が、ここまで米国の鼻息を窺わなければならぬのは、バブル経済崩壊というどうにもならない事態が横たわっている結果だ。市場経済国ならば、ここまで事態を悪化させる前に「自動調整」が行なわれたはず。ところが、中国では価格というシグナルをすべて無視してきた経済だから、どうにもならない事態になって気付いたもの。すべて、手遅れである。その責任の大半は習氏にある。市場機能に封印した最大の責任者である。

     

    経済成長の鈍化が鮮明になり、米国との対立も深まるなか、習氏への不満が出やすくなっているのは当然である。経済政策は本来、首相の管轄である。習氏がそれを横取りしてこの結果である。全人代で陳謝しなければならない場面だ。ところが現実は逆である。「習近平の思想で全党を武装し、人民を教育し、力を結集しなければならない」。党中央委員会が2月27日に発表した意見書は、習氏への忠誠を求めている。「一部の党組織と党幹部が政治を軽視する問題がまだ目立つ」としたうえで、党による「集中統一指導」を堅持するよう指示。「ニセの忠誠を決して許してはいけない」とまで訴えた。

     

    習近平氏が、間違った経済判断をしたから、現在のような経済混乱が起っている。当人が陳謝しないで、党員に対して忠誠を求めるというあべこべなことを強いている。こういう点が専制国家の無責任体制である。反省のない最高指導者が習氏である。こういう中国は、今後も同じような間違いを起こして、そのたびに党員に忠誠を求める。「習近平を裏切るな」という儀式だ。何とも滑稽な振る舞いである。

     

    戦後の日本でも同じようなことが起った。国民に対して「一億総懺悔」というムードがあった。日本国民は戦争の被害者である。軍部の一部の跳ね上がり分子が、勝手に戦争を始めて国民に多大の被害を与えた。それにも関わらず、「一億総懺悔」と言い出すとは責任回避の典型例である。

     

    『日本経済新聞』(3月3日付け)は、「中国、成長率目標下げへ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「19年の経済成長率の目標は、現行の「6.%前後」から2年ぶりに引き下げる見通し。経済の下押し圧力に対応するため減税など大規模な景気対策も打ち出す。19年の成長率目標は全人代の初日に李克強(リー・クォーチャン)首相が読み上げる政府活動報告で公表する。「6~6.%」と幅を持たせた目標とする公算が大きい。17年に「6.5~7%」から「6.%前後」に下げて以来となる」

     

    19年の成長率目標は、6.0~6.5%が予想されている。今年は在庫循環と設備投資循環が重なるので、6.0%スレスレへの落込みを見込んでおくべきだろう。債券デフォルトの頻発が懸念されている。地方政府の「融資平台」が、最大の注目点である。中央政府は、「融資平台」発行の債券を担保権のついた公的債務と認めないと予防線を張っている。

     

    中央政府は、この「融資平台」で調達した資金でインフラ投資をさせ、過去のGDPを押し上げさせた経緯がある。果実は政府が頂き、債務は「知りません」という虫の良い話が通るだろうか。中央政府は、「融資平台」の債務が余りにも多く腰を抜かしているのだ。習近平政府は、無責任極まりないのだ。ならば、無理なインフラ投資をさせなければ良かった。

     

    (2)「米国との貿易摩擦への対応も焦点だ。中国は今回の全人代で18年12月に草案を公表したばかりの『外商投資法』の成立をめざす。中国が行政手段を用いて外資企業に技術移転を強要することを禁じる規定を盛った。技術移転強制を懸念する米国の懸念に配慮したものだ」

     

    米国は、この「外商投資法」がザル法と警戒している。USTR(米通商代表部)は、「外商投資法」を信じていないから、別途、米中貿易協定で規定しようとしている。違反があれば、罰則として即時に関税を引き上げて罰する方針である。米国は、こうした中国の立法行為が、何ら効果をあげない「お飾り」と警戒している。中国への信頼はゼロである。

     

     


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    けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    米朝交渉への文氏の思惑

    米国の強襲に敗れた南北

    南北の描く危険な反日策

     

    ベトナムで、2月27~28日に開かれた米朝首脳会談は、物別れとなりました。米国による核の完全放棄の要求に対して、北朝鮮の経済制裁解除要求が噛み合わなかった結果です。北朝鮮は、寧辺の核施設解体に向けた提案内容が明確でなかったことが、米国の疑念を招きました。米側は、北朝鮮の隠してきた新たな核施設も指摘して、北朝鮮を驚かせる一幕もありました。米国は、用意周到に会談へ臨み、成果が期待できないと見るや、会談を打ち切るなど、主導権を握りました。

     

    北朝鮮は、今回の米朝首脳会談で米朝終戦宣言を実現できると楽観的でした。事前に、合意書の準備もされ署名を待つばかりの状況であったことが、北朝鮮の詰めの甘さを呼んだと見られます。この裏には、韓国の文在寅氏の影もちらつきます。文氏が、米国の全面的な核廃棄要求スタンスを、北側へ正確に伝えなかったと見られます。そうでなければ、北朝鮮があれだけ楽観的な姿勢を見せるはずがなかったでしょう。

     

    北朝鮮の金正恩氏は、今回の米朝首脳会談でベトナム旅行に当たり、事前にスケジュールを発表するなど、「会談成果間違いなし」のムードでした。また、首脳会談終了後は、ベトナムに滞在して工場見学を企画するなど、会談後の経済発展策の準備をする予定でした。だが、会談が決別したショックか、正恩氏は体調を崩したと報じられています。こうして、ベトナムにおける残りのスケジュールを取り止め3月2日、帰国の途についたのです。

     

    北朝鮮は、米国から「肘鉄」を食って、面目が丸つぶれとなりました。従来の例では、烈火のごとく怒り米国を批判します。今回は、「会談成功」と発表しました。これは、米国と引き続き交渉する姿勢を示唆したことになります。米国の「完全非核化」要求を前提に、米朝交渉を進めざるを得ないという意味です。北朝鮮は、老朽化して使えない核施設の廃棄だけで、経済制裁解除を取り付けようという思惑は外れました。

     


    米朝交渉への文氏の思惑

    金正恩氏は、文在寅氏と連絡を密にして、今回の米朝会談に臨んだはずです。その点で米朝首脳会談失敗は、文氏の見通しが誤っていたとも言えます。文氏は、なぜこのような楽観的な予測をしたのか。その背景には、きわめて興味深いものがあります。

     

    第一は、国内経済の不振を南北交流事業でカムフラージュしようとしたことです。韓国経済は、最低賃金の大幅引上げで失速しています。普通の感覚であれば、最低賃金の引上げ幅を修正するはずです。フランスでもかつて、最賃の大幅引上で景気が失速し急遽、手直しをしました。文政権は、自らの支持基盤である労組への義理立てもあって、修正に手を付けません。

     

    その代替案として、南北交流事業を取り上げたのです。北朝鮮の鉄道や道路などのインフラ投資は荒れ放題と言われます。ここへ韓国の資金を投じれば、韓国の国内ムードは一変して明るくなるという思惑が先行したと思います。そうなれば、最賃の手直しはしないでそのまま続けられる。さらに、南北交流事業が新規に加わって、「さすがは進歩派政権」という評価につながり、文政権の支持基盤は盤石なものになる。このようにソロバンを弾いたとしても不思議はありません。

     

    ここで、北朝鮮の概略をみておきます。

     

    韓国国会予算局(NABO)は2015年の報告書で、韓国政府が人道支援を提供し平和的シナリオで26年に統一を果たすと仮定した試算があります。それによると、北朝鮮のGDPを韓国GDPの3分の2程度に押し上げるためのコストは、約2兆8000億ドル(約310兆円)に上ると見られました。19年の韓国予算の約7倍にもなるのです。北朝鮮には、大変な投資機会が存在するのです。

     

    韓国にとって、北朝鮮は「宝の山」に映るでしょう。しかも、韓国で出生率(合計特殊出生率)が昨年、歴史上でもっとも低い「0.92人」という絶望的な事態に直面しました。一方、北朝鮮の出生率は「1.91人」(2016年)です。韓国のざっと2倍です。韓国の平均年齢は40.78歳(2015年)ですが、北朝鮮は34.04歳(2015年)と6歳余りも若いのです。この点も、韓国には魅力です。(続く)

     

     


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    韓国与党は、今回の米朝首脳会談決裂で安倍首相を批判するというピンボケ発言が飛び出した。日本が完全非核化を主張したから、まとまる話がまとまらなかった。北朝鮮の金正恩氏は、30代の若さで国を率いていて可哀想だという同情論が背後にある。

     

    この話が報道されて、韓国人の思考回路はどうなっているのか不思議である。正恩氏になぜ同情するのか。選挙で選ばれたリーダーではない。「金ファミリー」という政権簒奪家系の一員である。この圧政の下で苦しんでいる2500万人の北朝鮮国民が一番、気の毒である。気の毒がる対象を間違えている韓国与党有力者の発言は、全くのピンボケと言わざるを得ない。

     

    『朝鮮日報』(3月3日付け)は、「米朝首脳会談、韓国政界に金正恩氏同情論と安倍首相批判」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「2回目の米朝首脳会談の結果をめぐり、韓国与党内外では『金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長への同情論』と共に、日本の安倍晋三首相に対する批判の声が上がっている。盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団理事長の柳時敏(ユ・シミン)氏は2日、動画共有サイト「ユーチューブ」の自身の番組で『30代前半の若い権力者である金委員長が、貧しい状況にある国を率い、執権してまだ間もないという条件下で、米国と韓国の国内政治や世論の動向を全て勘案しなければならないのだから、実に大変だと思う』と述べた」

     

    柳時敏(ユ・シミン)は、文大統領と学生時代に火焔瓶闘争やった仲間である。ここでの発言は、文氏の気持ちを代弁していると見られる。30代の若者が世襲で政権を継承し、叔父や異母兄を殺害する人間になぜ同情するのか。本来、政権の座につくべき人間でないのだ。これが、韓国進歩派の論客による発言である。進歩派というお面を付けたウルトラ保守派である。

     

    (2)「柳氏はまた、『依然として『キーマン』は金正恩委員長』だとして『米国に対する恐れが70年間あっただろうが、金委員長がそれを振り払ってくれればと思う。大胆な挑戦が必要なときだ』とも述べた。柳氏は『韓国政府が、『北朝鮮が自分たちの力で米国と相対することができないのなら、国際世論と友好的な周辺国を信じて協力していこうと呼び掛け、北朝鮮が思い切って全てを賭ける選択ができるよう仲介すれば(いいのではないかと思う)』とも話した」

     

    北朝鮮が、これまで米国を騙して核開発を続けてきた。このことには一切、言及していない。北は核放棄する機会を与えられ、それに見合う「報奨金」も手にしてきた。それが、米国が怖くてという理屈をつけて北朝鮮を弁護するのは「利敵行為」である。韓国進歩派は、精神的に「金ファミリー」と深くつながっている。金日成の「チュチェ思想」に文在寅氏を初めとして傾倒しているのだ。正恩氏と韓国与党は、思想的な親戚筋に当たる「危険な関係」である。

     

    (3)「柳氏はまた、『全世界の中で(会談決裂を)最も喜んだ人物は日本の安倍晋三首相だったのではないか』として『(安倍内閣の)閣僚たちも満面の笑みで(決裂して)良かったと言っている。三・一節(独立運動記念日)にそのような姿を目にしてかなり怒りがこみ上げた』と話した」

     

    このパラグラフで、韓国与党が金正恩氏と連携していたことを問わず語りに示している。過去同様に、今回も不徹底な核放棄の約束で制裁解除すれば、その資金が再び核開発に回らないという保証があるのか。過去二回は、こうやって北朝鮮に騙されてきたのだ。そのことについてどう弁解するつもりか。

     

    韓国与党は、正恩氏と連携して「核付き」の南北統一を画策している。この危険な企みを阻止するためにも「完全核放棄」が経済封鎖解除の条件である。日本が、こういう主張してどこが悪いのか。米国自身が、日本と同じ考えであるから「完全核放棄」を要求しているのだ。

     

    私の「メルマガ35号」では、この問題を徹底分析した


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    北朝鮮の金正恩氏は、今回の米朝首脳会談に当たり自信満々で臨んでいた。米朝が、終戦宣言に調印し、韓国の協力を得て経済開発に邁進する予定であった。ところが、土壇場でトランプ氏の肘鉄を食い、すべての計画が振り出しに戻った。正恩氏の受けた衝撃は大きく、体調を崩したといわれる。このため、帰国途上、北京に立ち寄って習近平氏への挨拶も省略すると観測されている。

     

    『中央日報』(3月3日付け)は、「正恩委員長、会談決裂の衝撃で習近平主席に会わずに帰国も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「北京の外交消息筋は3日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が2回目の米朝首脳会談決裂による衝撃で体調が良くない状況だと伝えた。このため、金委員長は北京に立ち寄って習近平中国国家主席に会わず、すぐに平壌(ピョンヤン)に戻る可能性が大きくなったとの観測が出ている。当初は帰路に習主席を表敬訪問して中国国内を往来したことに対して謝意を示し会談結果を共有するだろうとの見通しが多かった」

     

    (2)「消息筋は、『今回は中朝首脳が会わないことで整理されたと理解している』と伝えた。消息筋は、金委員長の健康は深刻な水準ではないが、ベトナム訪問時よりは大きく悪化した状態とも伝えた。中国外交消息筋の間で「平壌直行説」の観測が出ているのは、中国でも今回の米朝首脳会談決裂が米朝関係だけでなく北東アジア情勢に悪影響を及ぼす恐れがあると懸念していることを示している」

     

    (3)「これに先立ち2日午後にベトナムのドンダン駅を出発した金委員長は現在、中国広西チワン族自治区の憑祥を通過し北上中だ。金委員長が深夜にたばこを吸った姿がカメラに捉えられた南寧にはすでに大型の遮蔽幕が設置された」

     

    『聯合ニュース』は、次の通り伝えている。「北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)は3日、特別列車で中国内陸部を通り、最短ルートで北上している。詳しい消息筋らによると、金委員長の列車は2日に中国との国境に近いベトナム北部のドンダン駅を出発。中国の憑祥や南寧などを経て、3日午前、中部の長沙を通った。午後には武漢を通過し、北上を続けているという」。北京に立ち寄らない公算が大きいと報じた。

     

    (4)「金委員長の平壌帰還ルートは現在3通りが考えられている。まず金委員長がベトナムに向かって南下したルート逆行するコースだ。南寧から湖南省衡陽と長沙などを通過し湖北省武漢、河南省鄭州などを経由する。2番目は南寧から広東省広州を回って北上するルートだ。金委員長が習主席と会わないならばベトナムに向かった時と同じく北京を経由せず天津を通るものとみられる。4日午前に天津を通過する可能性が高い。中朝を結ぶ中朝友誼橋を見下ろせる中国・丹東の中聯ホテルは5日まで予約を受け付けておらず、この日のうちに金委員長が中国を抜け北朝鮮に戻ると予想される」

    正恩氏が、北京へ立ち寄らず「直帰」する理由は、ショックを受けているとすれば、今後の対応策が決まらないということであろう。正恩氏が、結論を出さない段階で習氏に会う訳にもいくまい。

     

    中国外交消息筋の間で「平壌直行説」の観測が出ているのは、中国でも今回の米朝首脳会談決裂が米朝関係だけでなく、北東アジア情勢に悪影響を及ぼす恐れがあると懸念しているという。これは、米中関係に悪影響を及ぼすという意味だろう。中国は「トランプから難題を突付けられる」ことを恐れて、正恩氏の「北京立ち寄り」を忌避したとも読めるのだ。


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